KY活動(危険予知活動)は、作業にひそむ危険を、作業の前に見つけて確かめる活動です。危険を見つける力を小集団の話し合いで鍛える「訓練(KYT)」と、その進め方を使って作業の直前に危険を確かめる「毎日の短時間KY」の2つでできています。
訓練で進め方が身についていないまま、朝礼後にKYボード(危険のポイントを書き出す板)へ記入するだけを続けると、毎朝の中身が同じになりやすくなります。そうして、形だけの活動になってしまいます。
この記事では、KY活動の基本であるKYT基礎4ラウンド法の進め方を、厚生労働省と中央労働災害防止協会(中災防)の資料に沿って整理します。
そのうえで想定例の記入例、毎日の短時間KYの回し方、リスクアセスメントとの違い、形骸化させない工夫の順に見ていきます。
KY活動とは|KYT・指差し呼称・TBMとの関係
KYは「危険(Kiken)」と「予知(Yochi)」の頭文字です。
中災防の説明では、危険予知訓練(KYT)は職場や作業にひそむ危険要因と、それが引き起こす現象を小集団で話し合う訓練です。危険のポイントや重点実施項目を指差唱和・指差呼称で確認して、行動する前に解決します。
題材には、作業の状況を描いたイラストシートのほか、現場で実際に作業をしてみせる方法も使われます。
言葉の使い分けも押さえておきます。中災防の資料では、KYTや指差し呼称などを組み入れて一体的に行う活動を「危険予知活動」と呼んでいます。
事業場によっては「KYK(危険予知活動)」とも呼ばれ、危険予知活動はKYTを含むより広い概念と考えられます。この記事では、日々の実践までを含めて「KY活動」と呼びます。
厚生労働省の職場のあんぜんサイトによると、危険予知訓練はもともと住友金属工業で開発された手法です。
中災防はそれを、職場の問題解決の手法である「問題解決4ラウンド法」と結びつけました。さらに旧国鉄の安全確認手法である指差し呼称を組み合わせた「KYT4ラウンド法」が、標準とされています。
専門紙の労働新聞社『安全スタッフ』によれば、きっかけは1973年のことでした。中災防が派遣した欧米の安全衛生視察団に加わった同社和歌山製鉄所の担当者が、ベルギーの化学会社で1枚のイラストを目にしたのです。
翌1974年に「どんな危険があるか」「あなたならどうする」の2ラウンド方式で開発され、鉄鋼各社に広がりました。その後、1973年に中災防が提唱したゼロ災害全員参加運動(ゼロ災運動)の主要な手法として取り入れられたとされています。
訓練で型を身につけ、毎日の作業前と作業の要所で使う、という関係です。
※中災防・厚生労働省・東京労働基準協会連合会の資料をもとに編集部作成。呼び方は業界や事業場によって異なります。
製造業では、KY活動が日々の安全活動の中心になっている職場が少なくありません。
厚生労働省の確定値では、令和7年(2025年)の休業4日以上の死傷者数は全産業で135,333人、このうち製造業は26,371人で業種別の最多でした。
災害の全体像や主な事故の型は製造業の労働災害の現状と安全管理の基本で整理しています。
KYT基礎4ラウンド法の進め方

KY活動の型は、KYT基礎4ラウンド法で身につけます。中災防は「危険予知活動を進めるには、まず、KYTの体験学習が基本となります」としています。
中災防の資料では、ワンポイントKYや1人KYTといった短い手法のベースになるのも、このKYT基礎4ラウンド法だと説明されています。
4つのラウンドの名称は、中災防の表現では次のとおりです。
第1ラウンド(現状把握)どんな危険がひそんでいるか、第2ラウンド(本質追究)これが危険のポイントだ。続いて、第3ラウンド(対策樹立)あなたならどうする、第4ラウンド(目標設定)私たちはこうする、です。
危険を広く出してから絞り、対策を出してから絞る、という「広げて絞る」を2回繰り返します。
※厚生労働省 職場のあんぜんサイト「危険予知訓練(KYT)」の進め方をもとに編集部作成。
準備:チーム編成と役割
職場のあんぜんサイトでは、チームは一人ひとりが意見を出しやすいよう5〜6人を標準とし、リーダー(司会・進行)と書記を決めるとしています。必要に応じてレポート係や発表者、コメント係も置きます。
始める前に、リーダーは訓練の趣旨を短く説明し、全員の発言を求めます。訓練では題材の良し悪しよりも、全員が本音で話せる雰囲気のほうが結果を左右します。
題材は、慣れるまでは市販や公的機関のイラストシートを使い、慣れてきたら自職場の写真や作業に置き換えると、話が具体的になります。
第1ラウンド:現状把握(どんな危険がひそんでいるか)
リーダーがイラストの状況を説明し、「この中にどんな危険がひそんでいるか」と問いかけます。メンバーは気づいた危険を、「〜なので(危険要因)〜して〜になる(事故の型)」の形で発言し、書記が番号をつけて模造紙に書き出します。
この型が大切なのは、「危ない」「滑る」のような単語で終わらせず、原因と結果をセットで言葉にするためです。
中災防は危険要因を「労働災害や事故の原因となる可能性のある不安全行動や不安全状態」としており、人の動きだけでなく、設備や置き場、床面の状態にも目を向けます。
この段階では他人の意見を批判せず、数を出すことを優先します。
第2ラウンド:本質追究(これが危険のポイントだ)
第1ラウンドで出た危険のうち、チームにとって問題のある重要な危険はどれかを問いかけます。メンバーが番号を挙げ、書記が赤で○印をつけます。
そのうえで、対策に緊急を要するものや重大事故になる可能性のあるものを選びます。それらをみんなの合意で1〜2項目に絞り込み、◎印とアンダーラインをつけて「危険のポイント」とします。
最後にリーダーのリードで「〜なので〜になる ヨシ!」と指差し唱和して、全員の認識をそろえます。
第3ラウンド:対策樹立(あなたならどうする)
◎印をつけた危険のポイントについて、「あなたならどうする」と問いかけます。メンバーは具体的で実行できる対策を「〜する」の形で発言し、危険のポイントごとに3項目程度を出します。
ここで出てくる対策が「注意する」「気をつける」ばかりになっていないかを、リーダーは必ず確かめます。
誰が見ても実行したかどうかを判定できる行動になっていなければ、次のラウンドで行動目標に落とし込めないからです。
「治具を作る」「置き場を変える」のように設備や配置の改善が出た場合は、その場で消さずに書き留め、後で上司に上げます。
第4ラウンド:目標設定(私たちはこうする)
第3ラウンドの対策から、チームとして「必ず実施しよう」というものを合意で絞り込み、赤で※印とアンダーラインをつけて「重点実施項目」とします。それを実践するための「チーム行動目標」を全員の合意で決め、指差し唱和で確認します。
チーム行動目標は「〜するときは(〜のときは)〜を〜して〜しよう ヨシ!」の形にすると、いつ・何をするのかがはっきりします。目標の数を増やすと現場で思い出せなくなるため、危険のポイントごとに1項目が基本です。
確認:指差し呼称項目とタッチ・アンド・コール
最後に、重点実施項目に関連して実際の現場で確認する指差し呼称項目を全員で決め、リーダーのリードで3回指差し唱和します。締めくくりはタッチ・アンド・コールです。
タッチ・アンド・コールは、全員で手を重ねたり、輪になって触れ合ったりしながら唱和する方法です。中災防の資料では、タッチ型・手かさね型・リング型などが紹介されています。
全員で気合を一致させ、チームの一体感・連帯感を高めることをねらいとした指差し唱和の一つのやり方です。
記入例で見る4ラウンド(想定例:卓上ボール盤の穴あけ)

4ラウンドの流れを、架空の作業で記入例にしてみます。ここでは「卓上ボール盤で、小さなアルミ板に穴を4か所あける作業」を題材にしたKYシートの想定例を示します。実在の職場や事故を再現したものではありません。
1Rは原因と結果をセットで書き、3R以降は実行したか判定できる行動で書きます。
2. 軍手をしたまま作業するので、回転するドリルに手袋が巻き込まれて指をけがする
3. 切りくずを素手で払うので、鋭い切りくずで手を切る
4. 保護めがねをかけていないので、飛んだ切りくずが目に入る
5. 袖口が開いているので、袖が回転部に巻き込まれる
6. 部材箱を足元に置いているので、つまずいて転ぶ
◎ 1「手で押さえているので、部材が振り回されて手を打つ」
◎ 2「手袋が回転するドリルに巻き込まれて指をけがする」
◎2:手袋を外してから機械の前に立つ/手袋の置き場を機械から離れた棚に決める
※ 手袋を外してから作業する
チーム行動目標:「ボール盤作業のときは、部材をバイスで固定し、手袋を外してから穴あけしよう ヨシ!」
※架空の作業による想定例です。実際の作業では、各社の作業標準書と機械の取扱説明書に従ってください。○印の3〜5(切りくずは回転停止後にブラシで除去、保護めがねの着用、袖口を締める)も、作業標準として別途守る前提です。
この想定例の手袋に関する対策には、法令の裏付けがあります。
労働安全衛生規則第111条は、ボール盤や面取り盤など回転する刃物に手が巻き込まれるおそれのあるときは、労働者に手袋を使用させてはならないと定めています。
KYで出た対策が、法令や作業標準で決まっているルールの再確認になることは珍しくありません。
反対に、3Rで「治具で部材を位置決めできるようにする」「バイスを常設にする」といった設備側の改善案が出ることもあります。
その場で行動目標にはできませんが、KYシートの余白に書き残し、職長から上司や生産技術へ上げる流れを決めておくと、KYが設備改善の入口になります。
よくある書き方の失敗も並べておきます。1Rを「巻き込まれ注意」のように事故の型だけで書く、2Rで◎を3つも4つもつける、3Rと4Rに「安全確認をする」とだけ書く、の3つです。
どれも、翌日に同じ作業をしたとき、何を確かめればよいのかが分からなくなります。
毎日の作業前に回す短時間KY

4ラウンド法を毎朝そのまま行うのは、始業前の限られた時間では現実的でない職場が多いでしょう。そこで現場では、4ラウンドの考え方を保ったまま時間を縮めた手法を使い分けます。
中災防の資料では、チームレベルのワンポイントKYやSKYT(短時間KYT)、作業指示者レベルの作業指示STK訓練や問いかけKYが挙げられています。1人レベルでは、1人KYTや自問自答カードKYTなどがあります。
班で始業前に、1人で持ち場で、作業の要所で、と場面ごとに手法を変えます。
※中災防「ゼロ災害全員参加運動について」、東京労働基準協会連合会の手引き、建設荷役車両安全技術協会「KY活動実践ガイド」をもとに編集部作成。
ツール・ボックス・ミーティングで行うKY
ツール・ボックス・ミーティング(TBM)は、道具箱の近くで行う作業の打ち合わせが語源です。
東京労働基準協会連合会の手引きは、TBMの本質は「危険予知活動」であり、朝の作業開始前に5分から10分程度で行うのが一般的と説明しています。
必要に応じて、昼食後の作業再開時や作業の切り替え時にも行います。
進め方は、職長がその日の作業範囲、段取り、分担を明らかにし、全員で安全のポイントを確認する形です。
建設荷役車両安全技術協会のガイドでは、作業場所で3〜5分集中して行う例が紹介されています。その際、作業内容・危険のポイント・私たちはこうする、の欄を設けたKYボードを使います。
製造業のライン作業は毎日同じに見えますが、実際には段取り替え、応援者、設備の不調、材料ロットの違いなど、日によって変わる点があります。TBM-KYでは「今日いつもと違う点」を最初に確認すると、題材が毎日自然に変わります。
ワンポイントKYと1人KY
ワンポイントKYは、中災防の研修でKYT基礎4ラウンド法とあわせて学ぶ「初歩的な活用技法」の一つです。中災防の資料ではチームレベルで行う手法の一つに挙げられており、短時間で行えるため毎朝のTBMにも組み込みやすい手法です。
1人KYは、作業者が持ち場で作業を始める前に、個人で行う危険予知です。
中小建設業特別教育協会の解説では、始業前の点検で点検項目を絞って指差し確認し、予測される危険を踏まえた行動目標を指差し呼称項目にして唱える流れが示されています。
「自問自答カード」に沿って声に出して確認する方法もあり、単独作業や夜勤など、班でKYをしにくい場面で役立ちます。
指差し呼称のやり方と効果
指差し呼称は、作業対象・標識・信号・計器類を指差し、その名称と状態を声に出して確認する動作です。職場のあんぜんサイトによると、もとは国鉄の蒸気機関車の運転士が信号確認のために行っていた動作で、現在は製造業を含む幅広い業界で行われています。
見る、指差す、確かめる、振り下ろすの4動作で、確認の精度を上げます。
※厚生労働省 職場のあんぜんサイト「指差呼称」をもとに編集部作成。左手を腰に当て、背筋を伸ばしてキビキビ行うことが奨励されています。
効果としてよく引用されるのが、1994年に財団法人(現・公益財団法人)鉄道総合技術研究所が行った効果検定実験です。
職場のあんぜんサイトによれば、操作ボタンの押し間違いの発生率は、指差しも呼称もしない場合が2.38%、呼称のみが1.0%、指差しのみが0.75%でした。指差しと呼称を両方行った場合は0.38%で、何もしない場合の約6分の1でした。
ただし、これはボタン操作の誤りを測った実験室での結果で、工場の労働災害がそのまま6分の1になることを示したものではありません。
職場のあんぜんサイトにも「指差呼称だけでヒューマンエラーの根絶を実現することはできません」との記述があります。そのうえで、意識レベルを上げて確認の精度を高める有効な手段と位置づけています。
手順の中に指差し呼称を組み込む方法は、作業標準書が守られない原因と対策でも触れています。
KY活動とリスクアセスメントの違い・法令上の位置づけ
KY活動とよく並べて語られるのが、リスクアセスメントです。どちらも「危険を事前に見つける」活動ですが、行う時期、対象、決める対策の種類が違います。陸上貨物運送事業労働災害防止協会(陸災防)の資料が、両者の違いを表にまとめています。
KYは作業の直前に危険を回避する活動、リスクアセスメントは危険そのものを根本から減らす手続きです。
※陸上貨物運送事業労働災害防止協会「はじめての『リスクアセスメント』」の比較表をもとに編集部作成。
両者は競合するものではなく、互いにつながるものです。
厚生労働省の「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」の施行通達は、リスクアセスメントで参考にする資料の例を挙げています。その一つが「危険予知活動(KYT)の実施結果」です。
KYで繰り返し出る危険は、リスクアセスメントで設備や手順の対策を検討する材料になります。手順の詳細は工場のリスクアセスメントのやり方で解説しています。
KY活動そのものを定めた条文はない
法令との関係を整理します。労働安全衛生法と労働安全衛生規則を確認した範囲では、KY活動そのものを名指しで義務づける条文はありません。「KYをしていないから法令違反」という関係ではない点は、誤解のないようにしておきたいところです。
一方で、関係の深い規定はいくつかあります。
労働安全衛生法第28条の2は、製造業などの事業者に、設備や作業行動などによる危険性・有害性の調査と、その結果に基づく必要な措置を求めています。ただしこれは努力義務で、一定の化学物質のリスクアセスメントは別の条文により義務です。
同法第59条は雇入れ時や作業内容の変更時の安全衛生教育を、第60条は政令で定める業種(製造業など)で新たに職長などになった人への教育を定めています。
職長等の教育の内容を定めた労働安全衛生規則第40条には、危険性又は有害性等の調査とその結果に基づく措置が含まれます。ほかにも「労働災害防止についての関心の保持及び労働者の創意工夫を引き出す方法」といった項目があります。
KY活動は、こうした教育や自主的な安全活動を現場で具体化する手段の一つとして位置づけるのが実態に近いでしょう。
KYだけでは設備の対策の代わりにならない
同じ指針は、リスクを下げる措置の優先順位を定めています。
まず危険な作業の廃止・変更など設計や計画の段階での対策、次にインターロックや局所排気装置などの工学的対策です。その次にマニュアル整備や教育訓練などの管理的対策、最後が個人用保護具の使用です。
KY活動が受け持つのは、上位の対策で取り切れなかった危険への日々の対応です。
※厚生労働省「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」とその施行通達をもとに編集部作成。KY活動を管理的対策に位置づけたのは編集部の整理です。
中災防の資料も、ヒューマンエラー事故の防止にはまず物の面(設備・機械・環境など)の安全衛生対策を進めることが重要としています。そのうえで、KYTや指差し呼称はそれと一体で進める人の面の対策という位置づけです。
巻き込まれの危険がある機械でKYを毎日繰り返しても、ガードやインターロックがない状態を解消したことにはなりません。
保全作業のように設備を止めて行う作業では、KYで危険を確かめるだけでは足りません。エネルギー源を遮断して錠と札で固定するロックアウト・タグアウトのような仕組みで守ることが前提になります。
KY活動が形骸化する原因と工夫
KY活動の形骸化について、公的機関が原因を網羅的に列挙した資料は見当たりません。ここでは、中災防や業界団体の資料で示されている進め方のポイントをもとに、現場でよく見られる症状と工夫を編集部が整理しました。
中小建設業特別教育協会の教材は、指差し呼称やKYTなどを漠然と行うだけではゼロ災運動にならないとしています。一人ひとりが自分の問題と捉え、自主的な運動という意識で実践しなければすぐに息切れし、マンネリ化してしまうとも指摘しています。
形骸化は、やり方の問題であると同時に、運営する側の姿勢の問題でもあります。
症状ごとに、起きていることと打ち手を対応させています。
※症状の分類は編集部の整理。工夫は厚生労働省、中災防、東京労働基準協会連合会、建設荷役車両安全技術協会、中小建設業特別教育協会の資料で示されている進め方をもとにしています。
題材を毎日変える仕組みをつくる
毎回同じ内容になる職場では、題材を選ぶ段階で工夫が要ります。
建設荷役車両安全技術協会のガイドは、KYTを成功させるポイントを挙げています。日常の作業から身近なテーマを選ぶこと、状況の範囲を狭めること、不安全行動だけに限定せずあらゆる角度から問題点を挙げることなどです。
題材の供給源として使いやすいのが、職場で集めたヒヤリハットです。
東京労働基準協会連合会の手引きは、ヒヤリハット報告で蓄積された情報をKYTに活用することを勧めています。厚生労働省の職場のあんぜんサイトのヒヤリ・ハット事例や災害事例のイラストを、教材に使う方法も紹介しています。
報告そのものが集まらない場合の対策は、ヒヤリハット報告が集まらない原因と対策で整理しました。
「気をつける」を行動の言葉に言い換える
職場のあんぜんサイトの進め方では、3Rの対策を「具体的で実効可能な対策を『〜する』と発言」することが求められます。1人KYの解説でも、あいまいな表現を避け、具体的で分かりやすい行動目標にすることが強調されています。
言い換えのこつは、第三者が見て「やった・やっていない」を判定できるかで確かめることです。「足元に気をつける」は判定できませんが、「通路に部材箱を置かない」「台車は押して運ぶ」は判定できます。
リーダーが「それは見て分かる行動ですか」と一言問い返すだけでも、目標の質は変わります。
管理監督者が関心を示し、個人の注意に頼り切らない
あんしん財団の広報誌に掲載された中災防ゼロ災推進センター所長のインタビューでは、リーダーや管理・監督者の声かけの効果が語られています。
「今日の作業で危険なのはどういうところ?」「今朝はどんな指差し呼称に決めたの?」と声をかけると、当事者意識が生まれ、やらされ感がなくなるそうです。
KYボードを見て一言返すことは、管理職ができる最も手軽な支援です。
そのうえで、KYで同じ危険が何度も挙がるなら、それは作業者の注意力の問題ではなく、設備や手順に原因が残っているサインと受け止めます。
行動目標で当面の危険を避けながら、改善案を設備や作業標準の見直しにつなげることで、KY活動は「毎朝の儀式」から職場を変える仕組みに近づきます。
整理・整頓が崩れて通路や置き場の危険が繰り返し挙がる場合は、5Sが定着しない工場の共通点もあわせて確認すると原因をたどりやすくなります。
これから始める・立て直すときの進め方
これからKY活動を始める職場や、形だけになった活動を立て直したい職場では、いきなり毎朝のKYボードから始めるより、次の順番で進めると定着しやすくなります。
- 4ラウンド法の訓練:リーダー役がイラストシートで4ラウンドを体験し、進め方と発言の型を覚える
- 毎朝の短時間KY:TBMにワンポイントKYを組み込み、危険のポイントと行動目標を決める
- 記録の見返し:KYボードを週に1回見返し、繰り返し出る危険と設備の改善案を拾い出す
- 改善へつなぐ:繰り返し出る危険をリスクアセスメントや作業標準の見直しに上げ、結果を班に返す
STEP 1のリーダー育成には、中災防や各地の安全衛生団体が開く研修を使う方法もあります。中災防の1日研修では、ゼロ災運動の理念とKYT基礎4ラウンド法を中心に、ワンポイントKYTなどの活用技法を体験学習する内容が案内されています。
外国人労働者や新人が加わる班では、KYやTBMという言葉自体がなじみのないものです。
東京労働基準協会連合会の手引きは、活動の意義や手法を十分に説明すること、本音で話せる工夫をすることが重要だとしています。
イラストや写真、実物を指差しながら進めるKYは、言葉の壁がある班でも共有しやすいという利点があります。

まとめ
- KY活動は、型を身につける訓練(KYT)と、作業前の短時間KY・指差し呼称の2層でできている
- KYT基礎4ラウンド法は、現状把握・本質追究・対策樹立・目標設定の順に「広げて絞る」を2回行う
- 対策と行動目標は「〜する」の形で、実行したか判定できる行動にする
- KY活動を名指しで義務づける条文はなく、設備や手順の対策の代わりにもならない。繰り返し出る危険はリスクアセスメントへつなぐ
- 形骸化を防ぐには、題材を毎日変える仕組み、管理監督者の声かけ、改善案を上げる流れが要る
KY活動は、職長や班長が毎朝回す現場の活動であると同時に、工場全体の安全管理につながる情報源でもあります。関連する職種としては製造・オペレーションや工場長・マネジメントの記事が、この活動を運営する立場と深く関わります。
安全衛生に関するほかの記事は、職場環境・安全衛生のカテゴリからあわせてご覧ください。
出典
出典・参考資料(15件)を開く出典・参考資料を閉じる
- KYTの定義・進め方:中央労働災害防止協会「危険予知訓練(KYT)とは」、同「危険予知訓練(KYT)の進め方」
- KYTの手法の種類・指差し唱和・タッチ・アンド・コール:中央労働災害防止協会 ゼロ災推進部「ゼロ災害全員参加運動について」
- 4ラウンド法の進め方・由来:厚生労働省 職場のあんぜんサイト「危険予知訓練(KYT)」
- 4ラウンドKYTの進め方(批判を避けて洗い出す):厚生労働省「製造業向け 未熟練労働者に対する安全衛生教育マニュアル」
- 指差し呼称の手順と効果検定実験:厚生労働省 職場のあんぜんサイト「指差呼称」
- KYTの開発の経緯:労働新聞社『安全スタッフ』「危険の大きさでKYを使い分け 開発から深化する取組み/住友金属工業 鹿島製鉄所」(2012年7月1日)
- ワンポイントKYT:中央労働災害防止協会 関東安全衛生サービスセンター「KYT(危険予知訓練)研修会(1日コース)」
- TBM・ヒヤリハットとKYTの連動・外国人労働者への配慮:東京労働基準協会連合会「第5章 日常的な安全衛生活動」
- KYボード・KYT成功のポイント:建設荷役車両安全技術協会「『KY活動』実践ガイド」(平成23年3月)
- 1人KY・マンネリ化の指摘:中小建設業特別教育協会「1人KY」、同「ゼロ災害全員参加運動とは」
- 管理監督者の声かけ:あんしん財団「かけがえのない従業員を守る『KYT(危険予知訓練)』でゼロ災運動」(広報誌2020年3月号)
- KY活動とリスクアセスメントの違い:陸上貨物運送事業労働災害防止協会「はじめての『リスクアセスメント』」(岡山労働局掲載)
- リスク低減措置の優先順位・KYTの実施結果の活用:厚生労働省「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」、同「指針 同解説」
- 法令:労働安全衛生法(第28条の2、第59条、第60条)、労働安全衛生規則(第40条、第111条)(e-Gov法令検索)
- 労働災害の統計:厚生労働省「令和7年の労働災害発生状況を公表」(令和8年5月27日)
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