ポカヨケの種類と事例|作業ミスを仕組みで防ぐ考え方と作り方

位置決めピンとブロックで部品の向きを決める組立治具

ピン1本や小皿1枚の工夫で、部品の入れ忘れや付け間違いを防げることがあります。こうした仕掛けを、製造現場ではポカヨケと呼びます。

ポカヨケは、うっかりミス(ポカ)を避ける(よける)ために、治具(部品を固定・位置決めする道具)や設備、手順の側に組み込む仕掛けです。人の注意力に頼らず、間違えようがない状態や、間違えたらその場で分かる状態をつくります。

この記事では、ポカヨケの定義と似た用語との違い、代表的な種類の分け方、ミスの種類別の事例を整理します。あわせて、センサーや画像を使った方法、作り方の5ステップ、効かなくなる落とし穴の順に見ていきます。

目次

ポカヨケとは|人ではなく仕組みの側を変える

ポカヨケとは、うっかりミス(ポカ)を避ける(よける)ために、工程や設備、治具に組み込む仕掛けのことです。トヨタ自動車は、トヨタ生産方式の紹介の中で、ポカヨケを「単純なミスを起こさないための」仕組みとして取り上げています。

同社の説明では、組み付け工具と連動して部品の締め忘れがないかなどを自動的にチェックし、問題があればランプで知らせて不良品の発生を防ぐ、とされています。

異常が起きたら止めて不良を後工程へ流さないという自働化の考え方と、同じ流れの中で紹介されている仕組みです。

ポイントは、対策の向きです。品質管理の分野でこのテーマを研究してきた中央大学の中條武志氏は、同じ考え方を「エラープルーフ化」と呼びます。同氏は、人を作業方法に合わせるのではなく、作業方法を人に合うように改善することだと説明しています。

中條氏の講義資料は、ヒューマンエラーは「注意力」「教育・訓練」「人による検査・確認」で防げる、という3つの考えを誤解として挙げています。人の意識の状態は変動するもので、そこにまずい作業方法が重なるとエラーが起きる、という見方です。

なお、ミスがうっかりなのか、手順を知っていて守らなかったのかで対策は変わります。ヒューマンエラーと違反の見分け方や、手順書そのものの直し方は、次の記事で詳しく扱っています。

フールプルーフ・フェールセーフとの違い

ポカヨケは、英語のフールプルーフ(fool proof)に近い言葉として使われます。

JIS Z 8115:2019(ディペンダビリティ用語)は、フールプルーフを次のように定義しています。「人為的に不適切な行為,過失などが起こっても,システムの信頼性及び安全性を保持する性質」です。

混同されやすいのがフェールセーフです。同じJISでは「故障時に,安全を保つことができるシステムの性質」とされており、相手にしているのは人のミスではなく、機器の故障です。

逆向きには挿さらないコネクタはフールプルーフ、信号が途絶えたら安全側に止まる設計はフェールセーフ、と分けて考えます。

フールプルーフは製品設計にも設備設計にも使われる広い言葉です。そのうち、製造現場の作業ミスを対象に、現場の工夫として作り込むものをポカヨケと呼ぶことが多い、と整理しておくと混乱しません。

図1:ポカヨケと似た用語の違い

何を相手にして、何を守るのかで区別します。

相手にするもの
守るもの・代表例
ポカヨケ
製造現場での作業ミス(入れ忘れ、向き違い、順序抜けなど)
製品の品質。向きが合わないと入らない治具、締付回数のカウントなど
フールプルーフ
人の不適切な行為や過失の全般
システムの信頼性と安全性。製品や設備の設計にも使う広い概念
フェールセーフ
機器や部品の故障
故障したときの安全。信号が途絶えたら安全側に止まる設計など
安全のインターロック
人が危険な箇所に近づくこと
作業者の身体。ガードが開いている間は危険な動きをさせない装置

※フールプルーフとフェールセーフの定義はJIS Z 8115:2019による。安全のインターロックは、記事の後半で取り上げます。

名前の由来と考案者

ポカヨケの考え方を体系立てて広めたのは、生産改善のコンサルタントだった新郷重夫氏です。1985年の著書『源流検査とポカヨケ・システム』(日本能率協会)にまとめられ、1986年には英訳も出版されました。

英語圏でも poka-yoke の名前で通用します。

英訳版の出版社は、この本の主張を、源流検査とポカヨケの装置を組み合わせることが不良ゼロへの方法である、と紹介しています。できあがった製品を検査して選別するのではなく、不良のもとになるミスを発生した場所で押さえる、という発想です。

新郷氏は英訳版の著書の中で、当初は「バカヨケ」という言葉を使っていたと述べ、1963年ごろ、この呼び方に傷ついた作業者がいたという出来事を紹介しています。現在はポカヨケと呼ぶのが一般的です。

古い資料でバカヨケという表記を目にしても、社内文書では使わないほうが無難です。

考え方そのものは、さらに古くからあります。

トヨタ自動車75年史によると、1925年に発明された自動織機には予備杼溜(杼を納めておく容器)がありました。作業者が正しい姿勢で杼(よこ糸を通す部品)を入れないと収まらない仕組みでした。

同社はこれを、いわゆるポカよけの起源といえる装置と紹介しています。

ポカヨケの種類|代表的な3つの分け方

ポカヨケの分類は、文献や会社によって異なります。ここでは、よく引用される3つの分け方を紹介します。どれか1つが正解というわけではなく、自分の職場のミスを別々の角度から見るための道具として使ってください。

止めるか、知らせるか(規制式・注意式)

1つめは、ミスを見つけたあとの動きによる分け方です。新郷重夫氏が著書で示した分類です。

  • 規制式:ミスがあると作業や設備が先へ進まない。治具に入らない、次の工程のスイッチが入らない、など
  • 注意式(警報式):ブザーやランプで作業者に知らせる。止めるかどうかは人が判断する

確実なのは規制式です。注意式は、ブザーに慣れてしまったり、騒音で聞き逃したりする余地が残ります。一方で、止める仕掛けを付けにくい手作業や、途中で止めるとかえって不良になる工程では、注意式が現実的な選択になります。

何で見つけるか(接触式・定数式・動作ステップ式)

2つめは、ミスを見つける手段による分け方です。これも新郷氏の著書にある分類です。

図2:検出の方法で分けた3つの型

何を手がかりにミスを見つけるかで分かれます。

形・寸法接触式形状や寸法の違いを、ピンやガイド、検出器に当たるかどうかで見分ける。向き違い、異品の検出に向く
回数・個数定数式決まった回数や個数に達したかを数える。締付本数や部品点数の抜けに向く
順序・動作動作ステップ式決められた動作を、決められた順に行ったかを確かめる。工程飛ばし、取り出し間違いに向く
見つけたあとの動きは2通り。作業や設備を先へ進ませない「規制式」と、ブザーやランプで知らせる「注意式」。検出の型と組み合わせて考える。

※新郷重夫『源流検査とポカヨケ・システム』の分類(英訳版 Zero Quality Control 第6章で確認)。代表的な分け方の一つです。

新郷氏の著書は接触式を、製品と検出装置が接触するかどうかで、形状や寸法の異常を見つける方法と説明しています。治具のピンやガイドのほか、リミットスイッチなどの検出器を当てる形も含まれます。

非接触のセンサーで形や寸法の違いを見分ける方法も、製品の特徴そのものを見ているという点で、同じ仲間として扱われることがあります。

実際のポカヨケは、2つの分類の掛け合わせです。たとえば締付回数を数えて、足りなければ次へ進めないなら「定数式×規制式」、ランプで知らせるだけなら「定数式×注意式」になります。

どの段階で効かせるか(発生防止と波及防止)

3つめは、ミスの流れのどこに手を打つかによる分け方です。中條武志氏と久米均氏は、1984年に日本品質管理学会の学会誌『品質』に論文を発表しました。

機械製品の組立ラインで集めたフールプルーフ事例およそ700件から、5つの原理を取り出したものです。

5つの原理は、ミスを起こさせない発生防止(排除・代替化・容易化)と、起きたミスを広げない波及防止(異常検出・影響緩和)に分かれます。現場で「発生防止」と「流出防止」を分けて考えるのと近い整理です。

図3:フールプルーフ化の5つの原理

ミスを起こさせない対策と、起きたミスを広げない対策に分かれます。

発生防止ミスそのものを起こさせない
3つの原理
排除ミスしやすい作業や注意そのものを不要にする
代替化記憶・判断・動作を人以外に任せる
容易化作業をやさしくして間違えにくくする
それでも起きたミスに備える
波及防止起きたミスを不良や事故に広げない
2つの原理
異常検出ミスに途中で気づき、直せるようにする
気づけなかった場合
影響緩和ミスの影響が致命的にならないよう和らげる

※中條武志・久米均「作業のフールプルーフ化に関する研究」(『品質』14巻2号、1984年)の5原理。各原理の説明は大阪市水道局の資料の表現を参考にしています。

ポカヨケと聞くと、センサーで異常を見つける「異常検出」を思い浮かべがちです。

しかし、同じ枠組みには別の手もあります。部品の共通化でそもそも取り違えが起きないようにする(排除)、締付を自動機に任せる(代替化)、部品箱を色分けする(容易化)といった手です。

検出の仕掛けは、ミスが起きたあとに働くものです。先に発生防止の3つを検討し、残ったものを異常検出で受け止めるという順で考えると、センサーだらけの工程になるのを避けられます。

ミスの種類別に見るポカヨケの事例

ねじ・座金・ばねなどを仕切りごとに分けた部品トレー

ここからは具体例です。まず公式資料で確認できる実例を3つ挙げ、そのあとにミスの種類ごとの典型的な形を想定例として整理します。

公式資料で確認できる実例

1つめは、先ほど触れたトヨタの予備杼溜です。杼を正しい姿勢で入れないと杼溜に収まらないため、誤った入れ方のまま織機を動かして壊すことを防げます。形で誤りをはじく、接触式×規制式の原型といえます。

2つめは、現在のトヨタの組立工程です。同社の説明によると、組み付け工具と連動して締め忘れがないかを自動でチェックし、問題があればランプで知らせます。工具の動作をもとに抜けを見つけ、ランプという注意式で知らせる形です。

3つめは製造業以外の例ですが、原理の当てはめ方の参考になります。大阪市水道局は、配水ポンプの回転速度スイッチと吐出し弁の開閉スイッチを取り違えて瞬時断水が起きた事例に、5つの原理を当てはめた案を公表しています。

  • 排除:スイッチにカバーを付け、容易に操作できないようにする
  • 代替化:設備が故障したときは、自動的に予備機へ切り替わるようにする
  • 容易化:吐出し弁のスイッチをレバー式からボタン式に変え、違いをはっきりさせる
  • 異常検出:吐出し弁が動いている間はチャイムが鳴るようにする
  • 影響緩和:2つの配水区域を相互に融通させ、断水しないようにする

1つのミスに対して、5つの原理から1案ずつ出している点に注目してください。最初に思いついた1案に飛びつかず、原理ごとに案を出してから比べると、安くて確実な手が見つかりやすくなります。

ミスの種類別の想定例

次の図は、組立工程でよくあるミスを6つに分け、それぞれに合う型と仕掛けを並べたものです。特定の工場の事例ではなく、仕組みを説明するための想定例として見てください。

図4:ミスの種類とポカヨケの型(想定例)

ミスの起き方によって、合う型が変わります。

向き違い・逆付け
接触式治具に非対称のピンを立て、正しい向きでしかワークが収まらないようにする
異品・類似部品の取り違い
接触式品種ごとに受け治具の形を変え、違う品種の部品は収まらないようにする
部品の入れ忘れ
定数式1台分の部品を小皿やキットに取り分けておき、作業後に残りがあれば気づけるようにする
締め忘れ・本数不足
定数式締付の完了信号を数え、決めた本数に達するまで製品を次の工程へ送れないようにする
工程飛ばし・順序違い
動作ステップ式前の作業の完了信号がないと、次の工程の治具や工具が動かないようにする
部品の取り出し間違い
動作ステップ式取るべき棚だけランプを点け、違う棚に手を入れるとブザーで知らせる

※いずれも仕組みを説明するための想定例です。実際の設計では、ワークの形状や作業姿勢、タクトタイムに合わせて検討します。

小皿に部品を取り分ける方法は、新郷重夫氏が著書で紹介している例です。

押しボタンの組立工程で、作業の最初に必要な数のばねを小皿に取り分け、作業後に小皿にばねが残っていれば入れ忘れと分かるようにした例です。

センサーを使わなくても、「残っていたらおかしい」状態をつくれば、ミスは目に見えるようになります。

向き違いや異品のように、物の形で区別できるミスは接触式が向いています。治具のピンやガイドは電気を使わないため、配線や設定の手間がなく、状態も目で見て確かめられます。

製品側に切り欠きや非対称の穴を設けてもらえるよう、設計部門へ依頼するのも有効な手です。

一方、締め忘れや工程飛ばしのように、形には表れないミスは、回数や順序を数える仕掛けが必要になります。ここから先は、センサーや制御機器の出番です。

センサー・画像・デジタルを使ったポカヨケ

作業台に置かれたコード付きトルクレンチと治具に固定された筐体

形では見分けられないミスや、人の目では追いきれない点数の確認には、センサーや画像、データの照合を使います。検出原理の基礎はセンサー・計測の仕組みを整理した記事に譲り、ここではポカヨケとしての使い方に絞って3つの例を見ます。

締付の回数を数える

ボルトの締め忘れ対策に使われるのが、信号を出すトルクレンチです。東日製作所のポカヨケトルクレンチは、設定トルクに達するとリミットスイッチから接点信号を出します。

同社の製品説明によると、この信号を別売のカウンタと組み合わせればポカヨケシステムになります。PLC(設備を制御する装置)に取り込めば、ラインと連動した締付保証の仕組みも組めます。

決めた本数を締め終えるまで製品が次へ流れないようにすれば、定数式×規制式のポカヨケです。

注意したいのは、回数だけを見る方式では、同じボルトを2回締めても2本と数えてしまうおそれがある点です。

同社は、すでに締めたボルトをもう一度締めるとNGと表示する、二度締め検出機能付きの製品も用意しています。導入時は、数え間違いが起きる条件をあらかじめ洗い出しておきます。

有無や向きを画像で確かめる

複数の部品がそろっているか、向きが正しいかを一度に確かめたいときは、画像センサーが使われます。キーエンスは用途事例として、自動車のハンドル組み付け工程で、複数のねじが正しく組み付けられているかを画像センサーで判別する例を紹介しています。

同社の説明では、光電センサーで同じことをしようとすると、ねじの数だけセンサーが必要になり、わずかな位置ずれでも誤検出の原因になります。画像センサーであれば、1台で複数の箇所を同時に検出できるとしています。

食品などの包装工程でも、カップ麺の小袋抜け、付属ストローの有無、袋製品の表裏、賞味期限の印字の有無といった確認が、画像センサーの用途として挙げられています。傷や汚れのようにあいまいな不良まで見分けたい場合は、AI外観検査の領域になります。

コードで照合する・取る場所を指示する

形が似ていて品番だけが違う部品は、治具でも画像でも区別しにくいことがあります。こうした異品の混入には、バーコードや2次元コードの照合が向いています。作業指示のコードと現品のコードを読み、一致したときだけ次へ進める方法です。

キーエンスは物流現場の改善ポイントとして、入庫時にバーコードや2次元コードで管理して棚への誤投入を防ぐ方法を紹介しています。入出庫・検品の作業でハンディターミナルを使って照合する方法も挙げています。

考え方は、工場内の部品供給や段取り替えにも応用できます。

取り出し間違いには、デジタルピッキングも使われます。アイオイ・システムの説明によると、表示器のランプが光った場所へ行き、表示された数だけ取り出す仕組みです。

リストを読んで探す・数えるという判断を、表示に置き換える点で、5原理でいう代替化や容易化にあたります。

図5:センサー・画像・照合の使い分け

見ているものが違うため、得意なミスも異なります。

見ているもの
向く場面と注意点
スイッチ・光電センサー
決まった位置に物があるか、動作が行われたか
1か所の有無確認に向く。位置ずれがあると誤検出しやすい
信号付きトルクレンチ
設定トルクに達した回数
締め忘れ・本数不足に向く。同じ箇所の二度締めを数えない工夫が要る
画像センサー
複数箇所の有無、向き、表裏、印字の有無
点数の多い確認を1台で行える。品種ごとの設定の管理が要る
コード照合
品番など、形に表れない情報
類似品・異品の混入に向く。読まずに進める抜け道をなくす必要がある
ピッキング表示
取るべき場所と数(人への指示)
多品種の部品取りに向く。表示の元になるデータが正しいことが前提

※注意点は一般的な傾向をまとめたもので、機種や設置条件によって変わります。

カメラで作業者の手元や工具の動きを解析し、作業の抜けや順序違いを知らせるサービスも登場しています。動作ステップ式のポカヨケを、映像の解析で実現しようとするものです。

ただし、機器を入れる前に、治具や置き方の工夫で済まないかを必ず検討してください。センサーや画像は、誤検出への対応と日常の点検という手間を連れてきます。形で防げるミスを、わざわざ電気で検出する必要はありません。

ポカヨケの作り方|5つのステップ

表示ランプが付いた部品棚が並ぶ組立ライン

ポカヨケは、思いつきで治具を足していくと、数ばかり増えて管理しきれなくなります。次の5つのステップで、対象を絞ってから作るのが近道です。

図6:ポカヨケを作る5つのステップ

対象を絞り、安く試してから標準に組み込みます。

狙いを決める
01ミスを1つに絞る不良やヒヤリの記録から、件数と影響の大きいミスを選ぶ
02起きる瞬間を特定するどの動作で間違え、どこで気づけるかを現場で見る
03型を選ぶ排除から順に案を出し、止めるか知らせるかを決める
作って根付かせる
04安く作って試す仮の治具で、わざと間違えて働きを確かめる
05点検と標準に入れる始業点検、作業標準、工程の管理文書に反映する

※大阪市水道局が示すエラープルーフ化の適用フロー(エラーの決定→背景要因の検討→案の検討→評価・選定)を参考に、製造現場向けに整理したものです。

ステップ1:対象のミスを1つに絞る

最初に、どのミスを防ぐのかを1つに決めます。工程内不良の記録、顧客クレーム、ヒヤリハット報告を集め、件数が多いもの、流出したときの影響が大きいものから選びます。

件数の整理には、QC七つ道具のパレート図が使えます。「組立ミス全般」のような広い括りではなく、「ブラケットの左右逆付け」のように、1つの動作まで絞り込むのがコツです。

新製品や新しい工程では、まだ不良の記録がありません。その場合は、工程FMEAで洗い出した故障モードのうち、人の作業に起因するものを候補にします。

ステップ2:ミスが起きる瞬間を特定する

次に、現場で作業を見て、どの動作で間違えるのか、間違えた直後に何が普段と違うのかを確かめます。部品を取るときか、向きを合わせるときか、締めるときかで、仕掛けを置く場所が変わります。

あわせて、間違えた製品と正しい製品の違いを書き出します。形が違う、重さが違う、部品が1個残る、といった「違い」がそのまま検出の手がかりになります。違いが見つからなければ、製品や部品の側に目印を付けてもらう相談が必要です。

ステップ3:型を選ぶ

5つの原理に沿って、排除から順に案を出します。部品を共通化して取り違えをなくせないか、自動化できないか、色や配置で間違えにくくできないか。ここまでで残るものを、検出で受け止めます。

検出する場合は、接触式・定数式・動作ステップ式のどれが合うかを決め、止めるのか知らせるのかを選びます。流出したときの影響が大きいミスは規制式を基本にし、注意式にとどめるなら、知らせを受けた人が何をするかまで決めておきます。

ステップ4:安く作って試す

いきなり本番の治具を発注せず、段ボールや樹脂板、手持ちの部材で仮のものを作り、実際の作業で試します。見るべき点は3つです。

  • わざと間違えたとき、確実に止まる(知らせる)か
  • 正しい作業をしたとき、誤って止まらないか
  • 作業がやりにくくなっていないか、時間が延びていないか

3つめは見落とされがちです。作業者にとって邪魔な仕掛けは、いずれ使われなくなります。試す段階で作業者本人に触ってもらい、意見を反映させてください。

ステップ5:日常点検と標準に組み込む

ポカヨケは、付けたあとに何もしなければ、摩耗や故障で少しずつ効かなくなります。始業時に働きを確かめる点検項目を決め、作業標準書や工程の管理文書(QC工程表、コントロールプランなど)に、どのミスを何で防いでいるかを書き込みます。

数が増えてきたら、設置場所、対象のミス、点検方法、担当者を一覧表にまとめておくと管理しやすくなります。品種の追加や設備の改造のときに、どのポカヨケに影響が出るかをすぐ調べられるようにしておくのが目的です。

ポカヨケが効かなくなる4つの落とし穴

ポカヨケを付けたのに同じ不良が再発した、というとき、原因は仕掛けそのものではなく、付けたあとの扱いにあることが少なくありません。現場で起こりやすい落とし穴を、編集部で4つに整理しました。

図7:ポカヨケが効かなくなる4つの落とし穴

付けたあとの運用で差が出ます。

外されている・使われていない作業の邪魔になる仕掛けは、現場で使われなくなる。やりにくさの原因を先に直す
ポカヨケ自体が壊れているセンサーの故障やピンの摩耗に気づかないまま、検出していると思い込む
誤検出が多い良品でも止まる状態が続くと、止まること自体が軽く扱われる
注意式に慣れてしまうブザーやランプが日常になり、鳴っても誰も見なくなる

※現場で起こりやすい例を編集部で整理したものです。

外されている・使われていない

治具が作業の邪魔になる、照合の手間でタクトに間に合わない、といった理由で、現場がポカヨケを使わなくなることがあります。これを作業者の規律の問題として片づけると、同じことが繰り返されます。

まず、なぜ使いにくいのかを作業者に聞き、仕掛けの側を直します。そのうえで、ポカヨケの取り外しや設定変更は、班長や品質部門の承認を経て行う変更として扱うルールを決めておきます。

なお、作業者の身体を守る安全装置は別の扱いです。取り外しや無効化は法令で制限されており、後の章で説明します。

ポカヨケ自体が壊れている

センサーの断線、ピンの摩耗、画像センサーのレンズの汚れなどで、検出できなくなっていることがあります。厄介なのは、壊れていても普段の生産は問題なく流れるため、気づきにくい点です。

対策は、働きを定期的に確かめることです。わざと不良の状態にした確認用のサンプルを用意し、始業時に流して、きちんと止まるかを見る方法があります。確認用サンプルが製品に紛れ込まないよう、色を付けて保管場所を決めておきます。

誤検出が多い

良品なのに止まる状態が続くと、作業者は止まるたびにリセットして流すようになります。やがて本当の不良で止まったときにも、同じようにリセットされてしまいます。

誤検出は、しきい値の設定やワークの位置ずれなどで起こります。誤検出の回数も記録し、不良と同じように原因を調べて直す対象にしてください。

注意式に慣れてしまう

ブザーやランプで知らせる方式は、鳴る頻度が高いと背景の音や光になってしまいます。流出すると影響の大きいミスは、可能なかぎり規制式に切り替えます。

もう一つ、検出で止めて終わりにしないことも大切です。同じポカヨケが何度も働いているなら、その手前に間違えやすい原因が残っています。働いた回数を見て、発生防止の対策へさかのぼります。

機械安全のインターロックとは目的が違う

ポカヨケの解説では、両手でスイッチを押さないと動かない機械のような例が挙がることがあります。考え方は似ていますが、これらは作業者の身体を守るための安全装置であり、品質のためのポカヨケとは分けて扱うべきものです。

ガードの開閉と連動して機械の危険な動きを防ぐインターロック装置には、設計と選定の原則を定めた規格があります。

国際規格のISO 14119と、その2013年版に対応するJIS B 9710:2019です。装置の種類に加えて、装置の無効化をできるだけ防ぐための方策まで規定されています。

ISO 14119は2024年に改訂版が発行されているため、設計の際は最新の規格を確認してください。

法令上も、労働安全衛生規則の第28条は、事業者に対し、安全装置などが有効な状態で使用されるよう点検と整備を行うことを求めています。第29条は、労働者に対して、安全装置などを取り外したり、その機能を失わせたりしないことを定めています。

したがって、安全にかかわる仕掛けは、リスクアセスメントの結果と機械安全の規格に沿って、設備メーカーや機械安全の専門知識を持つ技術者が設計するものです。

現場の工夫で作るポカヨケで代用するものではありません。安全衛生の全体像は、製造業の安全衛生とリスクアセスメントを扱った記事を参照してください。

言葉の使われ方にも注意が要ります。工具の信号とラインを連動させ、締付が終わるまで先へ進めない仕組みを、メーカーの資料では「インターロック」と表現することがあります。

これは品質のための工程の連動であり、機械安全のインターロック装置とは目的が異なります。

まとめ

この記事のまとめ
  • ポカヨケは、人の注意に頼らず、治具・設備・手順の側で作業ミスを防ぐ仕掛け
  • 種類は、止めるか知らせるか(規制式・注意式)と、何で見つけるか(接触式・定数式・動作ステップ式)で整理できる
  • 検出の前に、排除・代替化・容易化でミスそのものを起こさせない手を検討する
  • 作り方は、ミスを1つに絞る、起きる瞬間を見る、型を選ぶ、安く試す、点検と標準に入れる、の5ステップ
  • 安全のインターロックは目的が別。機械安全の規格と専門家に従い、ポカヨケで代用しない

ポカヨケは、ミスをした人を責める代わりに、間違えにくい作業をつくるための道具です。まずは直近で起きたミスを1つ選び、製品のどこに「違い」が出るかを現場で確かめるところから始めてみてください。

関連する職種は製造・オペレーションや品質保証・品質管理、技術テーマとしてはトヨタ生産方式・カイゼンのページから、関連記事もあわせてご覧ください。

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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