地中送電とは?メリット・デメリットと3つの方式、ケーブルの種類

地下のコンクリート洞道で支持金具へ固定した電力ケーブル

地中送電とは、絶縁した電力ケーブルを地中の管路や洞道などへ収め、電気を送る方式です。都市部では鉄塔を設ける土地が限られるため、景観と供給力を両立する手段として使われています。

地中に収めることで風雪や飛来物の影響を減らせる一方、建設、放熱、事故時の復旧には地下設備特有の課題があります。敷設する構造とケーブルの種類を分けて見ると、長所と制約を整理できます。

目次

地中送電とは?

電力系統では、発電所から変電所へ、また変電所同士をつないで大きな電力を送る役割を送電と呼びます。需要地に近い変電所から、家庭や事業所へ電気を届ける役割が配電です。

送電にも配電にも、電線を空中に張る架空方式と、地中へケーブルを収める方式があります。街路から電柱をなくす無電柱化の話題には、地中配電や通信線の整備も含まれます。

図1:地中を通っていても、送電と配電の役割は異なる

電気をどこからどこへ運ぶかで区分し、地上・地下の布設方法とは分けて考える。

発電所変電所需要家送電の例配電の例

系統の役割を簡略化した模式図。変電所間の送電や途中の変電段階は省略。

地中送電線路はケーブルだけでなく、管路や洞道、接続部、終端部、監視や冷却の設備などで構成されます。線路を安全に使い続けるには、電気と土木の両面から設備を計画します。

都市部の変電設備も合わせて見ると、ケーブルの終端がどこへ接続されるかを追いやすくなります。電路の開閉や区分を担うガス絶縁開閉装置の役割も、その理解につながります。

電力線と通信線をまとめる電線共同溝と、水道やガスなども収めるトンネル状の共同溝は、収容対象が異なります。全ての地中送電用洞道へ水道管やガス管が一緒に入っている、という意味ではありません。

また、送電端と受電端は、どちらの端で電力や電圧を捉えるかを表す言葉です。発電端・送電端の区別と同様に、設備の境界を定めると、効率や電圧の話を混同しにくくなります。

地中送電のメリット、デメリット

架空送電は鉄塔などで電線を支え、地上から距離を取って電気を運ぶ方式です。地中送電との比較では、景観だけでなく、用地、災害の種類、放熱、点検と復旧まで含めて考えます。

図2:地中化で減る課題と、地下で管理する課題

地上の設備が減っても、電気と土木の保全は引き続き必要。

観点地中化による利点合わせて見る条件
空間・景観鉄塔や架空電線の占める空間を減らす地下埋設物、終端設備、工事用地を確保
外的な影響風雪・飛来物・倒木の影響を受けにくい地盤変位、浸水、掘削による損傷へ対策
保全・復旧設備を地下へ集約して管理できる事故点の特定、接続作業、土木復旧が必要
熱・電気絶縁ケーブルで都市へ大電力を送る許容電流、冷却、充電電流、電圧を評価

地中送電のメリット

地上へ鉄塔や送電線を設ける空間を減らせるため、建物が密集する場所や景観を重視する地域に適しています。道路の無電柱化では、電柱による通行の妨げや、倒壊して道路を塞ぐリスクも減らせます。

ケーブルを地中へ収めることで、架空線が受ける強風、着雪、倒木や飛来物の影響を避けやすくなります。一般の通行人が電線に近づく機会も減るため、露出した設備との接触リスクの低減につながります。

ただし、地下設備の掘削や人孔内の作業は専門的な管理が必要であり、地中なら触れて安全という説明にはできません。設備の位置確認や立入り、工事は、設備管理者の手続きに従って扱います。

三相の導体を近接して配置すると、平衡電流がつくる外部磁界を相互に打ち消す効果があります。三相交流の位相差と配置に関係する性質で、通信設備への影響が常にゼロになるという意味ではありません。

実際の誘導影響は、並走する距離、回線配置、遮へい、接地、事故時の電流なども含めて評価します。測温抵抗体の2線式・3線式の補償は別の回路原理であり、三相送電の説明とは分けて理解します。

地中送電のデメリット

地中では掘削や管路・洞道の建設に加え、既存の埋設物や交通との調整が必要になります。工事費を比べる際は、線路の長さと容量、地盤、道路条件、将来の増設まで含めて対象をそろえます。

事故点が地上から見えにくく、場所の特定から接続部の補修、場合によっては掘削や路面復旧まで必要になります。事故を受けにくくする設計と、発生した後に早く復旧する計画は、それぞれ検討すべき課題です。

地震時の地盤変位や液状化、浸水、第三者による掘削損傷などは、地下にある設備にも影響します。洞道や接続部の火災、排水や換気の機能も含め、地中線路に合う対策を組み込みます。

ケーブル内部で生じる熱を逃がせる量も、送れる電流の制約になります。土壌や管路、隣接ケーブルの発熱、洞道の温度を考慮し、必要な場合には換気や冷却設備を設けます。

電気的には、架空線に比べてケーブルの静電容量が大きくなり、充電電流が無視しにくくなります。これは導体と遮へい等の配置、絶縁体の誘電率や厚みに関係し、コンデンサと電界の考え方で捉えられます。

線路が無負荷または軽負荷のとき、静電容量と線路のインダクタンスの作用で、受電端の電圧が送電端より上がる場合があります。これがフェランチ効果であり、負荷がかかった全ての運転状態で起こる現象ではありません。

図3:負荷が小さくても、容量へ充電電流が流れる

π型で表す1相分の概念回路。線路の直列成分と対地容量を合わせて考える。

送電端受電端RLC/2C/2容量は線路の全長に分布無負荷の例

集中定数による概念モデル。Cは1相分の全容量で、実設計では分布定数・系統条件を含めて解析する。

容量性電流は電圧より位相が進むので、有効電力を運ぶ電流とは働きが異なります。進み電流と遅れ電流を区別すると、電圧や無効電力との関係が読みやすくなります。

充電電流を数値で確かめる

計算例として、50Hz、20km、1相・1km当たりの静電容量0.20µF、線間電圧66kVを仮定します。線路内の電圧を一様と近似し、正弦波の実効値で、1相分の充電電流を求めます。

全容量と相電圧をそろえる
Ctotal = c′ℓ
C = 0.20 × 20 = 4.0 µF = 4.0 × 10−6 F
Vph = VLL√3 = 66000√3 ≒ 38105 V
C=Ctotal:1相分の全静電容量[F] c′:1相・単位長さ当たりの静電容量[F/km] ℓ:線路長[km]。VLL:線間実効電圧[V] Vph:相電圧の実効値[V]。数値は計算法を示す仮定で、標準ケーブル値ではない。
1相分の充電電流と3相分の容量性無効電力
Ic = 2πfCVph ≒ 2π × 50 × 4.0 × 10−6 × 38105 ≒ 47.88 A
Qc = 3ωCVph2 = ωCVLL2
Qc = 2π × 50 × 4.0 × 10−6 × 660002 ≒ 5.47 Mvar
f:周波数[Hz] ω=2πf:角周波数[rad/s] Ic:1相分の容量性充電電流[A] Qc:3相分の容量性無効電力の大きさ[var]。1Mvar=10⁶var。

この5.47Mvarは充電に伴う無効電力であり、5.47MWの熱損失を意味しません。線間と相の電圧をそろえる手順は、線間電圧と相電圧の関係から確認できます。

また、この計算だけではフェランチ効果の電圧上昇率は決まりません。電圧の解析には直列の抵抗とインダクタンス、電圧分布、負荷、接続する系統や補償設備を合わせて扱います。

過電圧への対策には、系統条件に合わせて分路リアクトルなどを検討します。容量性無効電力を供給する進相コンデンサとは作用を区別し、設備を一律に追加する対策にはしません。

地中送電の方式

地中の線路を収める代表的な構造に、直接埋設式、管路式、暗渠式があります。ケーブルをどのように保護し、更新や増設のときにどう取り扱うかという違いで整理できます。

工事費と工期は、収容する回線数や土木規模、地盤、施工できる時間、既設設備との関係で変わります。構造の名前だけで一律に安い順や短い順を決めず、同じ供給条件と工事範囲で比較します。

図4:地表の下に何を設けるかが異なる

トラフで保護する直接埋設、管を通す管路、人が点検できる洞道。

直接埋設式管路式暗渠・洞道式トラフなどで防護管内へケーブル通路と支持設備

各構造の概念断面で、埋設深さ・寸法・離隔・収容本数を指定する図ではない。右の人形は点検通路の位置を示す。

直接埋設式

直接埋設式は、ケーブルを地中へ収め、必要な防護を施す方式です。トラフなどの防護材を用いる例があり、管路や人が通る洞道を設ける方式と構造が異なります。

構造を比較的簡素にできる一方、点検や取り替えで掘削が必要になる場合があります。土壌の熱的な性質や地中の状況も電流容量へ影響するため、周囲の地盤条件と合わせて計画します。

静電容量はケーブル内部の電極配置や絶縁構造から評価する量で、土へ近いことだけを理由にはできません。直接埋設か管路かという土木構造と、ケーブルそのものの静電容量を分けて扱います。

管路式

管路式は地中へ管を設け、その中にケーブルを引き入れる方式です。管は樹脂製なども用いられ、コンクリートに穴を開ける構造だけに限られるものではありません。

途中に設けるマンホールなどは、引込みや接続、保守のための拠点になります。予備の管を用意すれば後の増設に対応しやすくなりますが、配置や条数は需要計画と工事条件に合わせて決めます。

管へ通せるかという機械的条件と、通電後に熱を逃がせるかという熱的条件は別に検討します。曲がりや長さ、ケーブル外径や接続の位置をそろえ、施工と運転の両方が成立する構成を選びます。

暗渠(あんきょ)式

暗渠式は、人が点検できるトンネル状の空間へケーブルを収容する方式です。電力分野では洞道とも呼ばれ、内部の支持設備にケーブルを固定し、点検や増設に対応します。

複数回線をまとめて収容でき、ケーブルや接続部へ近づいて点検しやすいことが利点です。一方で、土木構造物に加えて換気、排水、照明や防災設備を維持する計画も必要になります。

電力専用の洞道と、通信や水道、ガスなどを収める共同溝は、対象の設備と管理区分が異なります。地下空間を共有する場合も、各設備の管理者、区画、保全や事故時の対応を整理して整備します。

地中送電ケーブルの種類

地中設備内で支持台へ固定した電力ケーブル接続部の外観
地中電力ケーブルの接続部を示す生成イメージ。内部構造は以下の図で整理します。

ケーブルは導体を絶縁体や保護層で覆い、地中の環境で電気を送れる構造にしたものです。線路には本体に加えて接続部や終端部も必要で、絶縁を一続きに保つことが重要になります。

OFとCVは絶縁方式の違いを、CVTは単心ケーブルをより合わせた構成を表します。3つは同じ軸の排他的な分類ではなく、CVの単心を3条組み合わせたものがCVTです。

図5:油浸紙で絶縁するOFと、架橋ポリエチレンのCV

自作の簡略断面で、導体の外側にある絶縁と保護の役割を比較。

油通路・導体・油浸紙・金属シースを示す単心OFの自作簡略断面単心OFの構造例
導体・架橋ポリエチレン・銅遮へい・シースを示すCVの自作簡略断面遮へいを備えたCVの構造例

半導電層などを省略した模式図。電圧階級・製品仕様により、遮へい・金属シース・防水構造は異なる。

OFケーブル

OFはOil Filledを意味し、油を含ませた絶縁紙を使うケーブルです。内部に油の通路を設け、給油設備から適切な油圧を加えることで、温度変化による気泡や空隙の発生を抑えます。

単心OFの一例では、導体の周囲に絶縁紙を巻き、金属シースで内部の油を封じ込めます。アルミシースなどの外側には防食のための層を設け、地中環境で内部構造を保護します。

運用では、ケーブルの絶縁状態に加え、油圧や漏油、給油設備を含めた維持管理が必要になります。既設OFを更新する場合は、ケーブルの交換だけでなく、接続や土木設備の条件まで合わせて検討します。

CVケーブル

CVは架橋ポリエチレン絶縁ビニルシースケーブルを表し、絶縁体に架橋ポリエチレンを使います。OFのように絶縁油を供給する設備が不要なため、給油に関わる施工や管理を減らせます。

高い電圧を扱うケーブルでは、電界を整える半導電層や金属遮へい、必要な防水構造も重要になります。各層は絶縁体にかかる電界を整え、水分の侵入や事故電流に対応する役割を持ちます。

架橋ポリエチレンを使う送電ケーブルには、アルミシースを備えるCAZVなどもあります。絶縁材料の呼び方と、金属シースや防水構造の違いを区別すると、同じCV系でも仕様が異なることを理解できます。

給油設備がないことと、保守が不要なことは同じではありません。接続部、外被の損傷、水分の侵入や絶縁劣化などを考慮し、線路として点検・診断・更新を計画します。

CVTケーブル

CVTは、それぞれに絶縁とシースを持つ単心CVケーブルを3条より合わせたトリプレックス形です。3本の導体を共通の外被でまとめた3心形とは、ケーブルの構成が異なります。

図6:CVTは3条の単心を組み合わせる

各条に絶縁とシースがあり、3条をより合わせた構成になる。

3条の単心ケーブル導体絶縁体各条のシースより合わせ構成の断面概念(層は簡略化)

電圧階級に応じた遮へいや半導電層等は省略。導体色や各層の厚みは仕様・実寸を示さない。

3心共通シース形と比べる際は、取り回しや放熱のしやすさだけでなく、仕上外径と必要な管路も見ます。許容電流は導体サイズ、周囲温度、布設方式や並列する回路の条件をそろえて評価します。

CVTには低圧や配電設備向けの製品もあり、地中送電だけに使う名称ではありません。600V製品の仕様をそのまま高電圧の送電線へ使わず、適用電圧、接続材料、布設条件に合うものを選びます。

地中送電のよくある質問

地中送電と無電柱化は同じ意味ですか?

地中送電は電気を送る線路の方式で、無電柱化は道路の電柱や電線をなくす取組みです。無電柱化には地中配電・通信線の整備や裏配線などもあり、地中送電だけを指す言葉ではありません。

地下にある電線は地震や浸水でも壊れませんか?

地下設備も地盤変位、浸水、接続部の損傷などの影響を受けます。風雪や飛来物にさらされにくい利点と、地盤・防水・排水・防災や復旧計画を必要とすることを合わせて捉えます。

直接埋設式は静電容量が必ず大きくなりますか?

静電容量はケーブルの導体・遮へい配置、絶縁体の誘電率や寸法、線路の長さなどで評価します。土への近さだけで他方式より大きいとは決められず、布設方式による放熱条件の違いとも区別します。

CVTはOFやCVとは別の絶縁材料ですか?

CVTは架橋ポリエチレンで絶縁する単心CVを3条より合わせた構成で、OFと別の絶縁材料を並べる分類ではありません。絶縁方式、単心か多心か、より合わせの有無を分けて整理すると、記号を読みやすくなります。

電験三種では、どの違いから整理すると理解できますか?

まず送電と配電、次に3つの布設構造、最後に絶縁方式とケーブル構成を分けて整理します。電験三種の学習の進め方に加え、静電容量が充電電流と電圧へどう関わるかを図と式で確認するとつながります。

まとめ

この記事のまとめ
  • 地中送電は管路や洞道等へ絶縁ケーブルを収めて送電する方式
  • 景観・用地・風雪への利点と、建設・地盤・浸水・放熱・復旧の課題を合わせて考える
  • 直接埋設、管路、暗渠はケーブルを保護し収容する土木構造の区分
  • OFとCVは絶縁方式、CVTは単心CV3条をより合わせた構成
  • 静電容量による充電電流と軽負荷時の電圧上昇を区別し、系統条件で評価する

都市の地下にある設備は、ケーブルと土木構造、接続や監視を一組にして電気を支えています。地上の電柱の有無だけでなく、線路の役割と収容する構造まで見ることで、方式を選ぶ理由が分かります。

出典

出典・参考資料(10件)を開く出典・参考資料を閉じる

NEWSLETTER

設備保全・プラントエンジニアリングの記事を、週1回まとめてメールで受け取る

週刊MONOSCOPEは、登録時に選んだ職種・業種に合わせた記事を週1回お届けする無料のメルマガです。

実際に届くメールの例を見る

件名:今週のあなた向け記事|週刊MONOSCOPE 10/9号
登録内容:生産技術 × 自動車・輸送機器

週刊MONOSCOPEの見本(生産技術 × 自動車・輸送機器)

職種3本・業種3本・製造業で働くすべての方へ2本・今週よく読まれた記事3本が届きます。記事は毎週入れ替わります。ほかの見本を見る

設備保全を選んだ状態で登録へ ›

無料・週1回。登録後に届く確認メールのリンクを押すと登録が完了します。配信はメール内のリンクからいつでも停止できます。

WEEKLY NEWS

今週の製造業ニュース10選

メルマガは職種・業種に合わせた記事。LINEとnoteでは、全員共通の10本を毎週土曜の朝にお届けします。

LINEでニュース10選を受け取るnote今週のニュース10選をnoteで読む ›
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

MONOSCOPEの運営者

プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

▶ お仕事のご依頼はこちら

目次