ガス絶縁開閉装置(GIS)とは|仕組みと需要増の背景、国内メーカーの増産

屋内変電所に並ぶガス絶縁開閉装置の円筒形タンク

変電所や工場の受電設備で、電気の通り道を切り替え、事故のときには電流を止めてほかの機器を守る設備が、ガス絶縁開閉装置(GIS)です。遮断器(電流を止める機器)や断路器(電気の通り道を切り離す機器)を、絶縁ガスとともに金属容器に収めています。

空気で絶縁する従来の開閉装置に比べ、設置面積を10分の1程度まで小さくできます。データセンターや半導体工場の建設、送配電網の更新が重なり、国内メーカーが相次いで増産投資を発表しています。

この記事では、GISの役割と構造、気中絶縁やキュービクル形との違いを整理します。そのうえで、需要が増えている理由、国内メーカーの増産計画、SF6ガスをめぐる規制とSF6フリー化の動き、設備担当者が押さえておきたい点という順で見ていきます。

目次

ガス絶縁開閉装置(GIS)とは

ガス絶縁開閉装置は、英語のGas Insulated Switchgearの頭文字をとってGISと呼ばれます。遮断器や断路器と、それらをつなぐ電路を、絶縁ガスを封入した密閉金属容器に収めた設備です。

絶縁ガスには、長くSF6(六フッ化硫黄)が使われてきました。

そもそも開閉装置とは、電気回路を開閉する機器に、操作・制御・測定・保護の装置を組み合わせたものの総称です。

変電所や受電設備では、送電ルートを切り替えたり、落雷や短絡などの事故が起きたときに電流を遮断して、変圧器などほかの機器を守ったりする役割を担います。

電気学会の顕彰資料によると、GISは昭和40年代の初め(1960年代後半)に、電力会社とメーカーの共同開発で72/84kV級から実用化されました。

用地の取得難や地価の高騰、海沿いでの塩害といった日本の立地条件に合う設備として発展した経緯があります。昭和50年代の初めには、母線までガス絶縁にした550kV級も実用化されています。

同じ資料では、従来の気中絶縁の開閉装置に比べて、設置面積を10分の1程度まで縮小できるとされています。限られた敷地に受変電設備を収めたい都市部の変電所や工場で、採用が広がった理由がここにあります。

図1:受変電設備の中でのGISの位置

GISは、外から来た電気を変圧器に渡す手前で、回路の切り替えと保護を受け持ちます。

送電線・配電線電力会社の系統から高い電圧のまま届く
受電
ガス絶縁開閉装置(GIS)回路の切り替え、事故時の電流遮断、電圧・電流の計測、雷からの保護
変圧器へ
変圧器設備で使える電圧まで下げる
配電
構内の配電盤・負荷設備生産設備、空調、サーバーなどに電気を配る

※工場などの受電設備を例にした模式図です。電力会社の変電所では、複数の送電線や変圧器の間をつなぐ位置にも置かれます。

GISの構造|金属容器に収める6つの機器

GISは1台の機械というより、複数の機器を組み合わせたユニットです。接地された金属製の密閉容器の中に、遮断器、断路器、接地開閉器、母線、計器用変成器、避雷器などが収められています。

図2:GISを構成する6つの機器

役割の違う機器を、絶縁ガスを封入した容器にまとめています。

CB遮断器事故時の大きな電流を切る。通常時の電流の入り切りも行う、GISの中心となる機器
DS断路器電流が流れていない状態で回路を切り離す。点検時の区分や系統の切り替えに使う
ES接地開閉器切り離した回路を大地につなぐ。残った電荷を逃がし、点検作業の安全を確保する
BUS母線複数の回線をつなぐ共通の導体。受電回線や変圧器回線がここに接続される
VT・CT計器用変成器高い電圧や大きな電流を、計器や保護継電器で扱える大きさに変換する
LA避雷器雷などによる異常な高電圧を大地に逃がし、機器の絶縁を守る

※構成は回路や電圧によって変わります。計器用変成器には計器用変圧器(VT)と変流器(CT)があります。

この中で最も負担が大きいのが遮断器です。事故時の電流を切る瞬間、接点の間にはアーク(放電による高温の電気の通り道)が発生します。アークを短時間で消す「消弧」の性能が、遮断器の能力を決めます。

SF6ガスが長く使われてきたのは、絶縁と消弧の両方に優れているためです。無色・無臭・無毒で燃えず、化学的に安定しており、同じ圧力で空気の約3倍の耐電圧性能を持ちます。

GISでは0.3〜0.6MPa程度に加圧して封入するのが標準で、そのぶん機器どうしの間隔を詰められます。

断路器と接地開閉器は、人の安全を守るための機器でもあります。回路を切り離し、大地につないでから作業に入るという考え方は、工場の保全作業で行うロックアウト・タグアウトと共通しています。

気中絶縁(AIS)やC-GISとの違い

GISを理解する近道は、似た役割を持つ設備と比べることです。ここでは、屋外の変電所でよく見る気中絶縁開閉装置と、盤の形をしたキュービクル形GISを取り上げます。

気中絶縁開閉装置(AIS)との比較

気中絶縁開閉装置(AIS:Air Insulated Switchgear)は、空気そのものを絶縁に使う方式です。充電部どうしや大地との間に十分な距離をとる必要があるため、がいしで支えた機器が屋外に広く並ぶ形になります。

GISは、空気より絶縁性能の高いガスを密閉容器に封入することで、この距離を大きく縮めています。充電部が外気に触れないため、塩分や粉じんによる汚損の影響を受けにくい点も特徴です。

図3:気中絶縁開閉装置(AIS)とGISの違い

絶縁に空気を使うか、密閉したガスを使うかで、敷地と保守の考え方が変わります。

気中絶縁開閉装置(AIS)
ガス絶縁開閉装置(GIS)
絶縁の方法
空気。充電部の間に大きな距離をとる
密閉容器に封入したガス(主にSF6)
設置面積
広い敷地が必要
気中絶縁の10分の1程度まで縮小できる
外気の影響
充電部が露出し、塩害や汚損への対策が要る
密閉されており、汚損の影響を受けにくい
向いている場所
敷地に余裕のある屋外変電所
地下・屋内変電所、都市部、工場の受電設備
保守の要点
がいしの清掃や外観の点検
点検は省力化できる。ガスの圧力監視と回収の管理が必要

※設置面積の比較は、電気学会「でんきの礎」の記述によります。実際の寸法は電圧や回線数で変わります。向いている場所は、電気学会の用語解説などをもとにした代表的な例です。

キュービクル形GIS(C-GIS)

C-GISは、キュービクル形ガス絶縁開閉装置の略称です。円筒形のタンクを配管のようにつないだ一般的なGISに対し、箱形の盤の中にガス区画を設けた、配電盤に近い形の開閉装置を指します。

三菱電機の説明では、C-GISは大容量の電力を使う施設内の配電系統に用いる高電圧向けの配電盤で、電流を開閉する真空バルブを搭載しています。同社が新工場棟で生産する機種は7.2〜84kVで、変電所、駅、ビルなどに使われてきました。

電圧階級と使われる場所

GISは、扱う電圧によって大きさも用途も変わります。JEMAの資料では、国内の規格(JEC-2300:2020)に沿って、高電圧の開閉機器の定格電圧を4つの区分で整理しています。

72/84kV、120/168/204kV、240/300kV、550kVの4つです。

図4:電圧の区分と主な設置先

電圧が高くなるほど、電力会社の基幹系統に近い設備になります。

需要家の構内に近い側
7.2〜84kVC-GIS工場、ビル、駅、データセンターなど、大容量の電力を使う施設の配電系統
72/84kVGIS配電用の変電所や、工場の受電設備。国内で最初に実用化された電圧
電力会社の送電系統
120〜300kVGIS送電用の変電所や、発電所を系統につなぐ設備
550kVGIS基幹系統の変電所。母線までガス絶縁にした大型の設備

※定格電圧は系統の呼び方より高い値で表します。たとえば500kV系統に使う機器が550kV GISにあたります。設置先は代表的な例です。

メーカーによって得意な電圧は異なります。たとえば日新電機は24kVから168kVまでをそろえています。基幹系統向けの550kV級は、電気学会がGISの開発で顕彰した三菱電機、東芝、日立製作所などが手がけてきました。

GISの需要が増えている4つの理由

GISは、いま国内で需要が供給を上回りやすい状態にあります。日新電機は2025年8月の発表で、メーカー各社が高操業、生産能力の不足、長納期化の状況にあると説明しました。背景として各社が挙げる要因は、大きく4つに整理できます。

図5:GISの需要が増えている4つの理由

電力会社向けと民間向けの需要が、同じ時期に重なっています。

送配電網の更新投資2023年4月に導入されたレベニューキャップ制度のもとで、送配電会社の設備更新が進む
データセンター・半導体工場大容量の電力を使う施設の新増設で、受電設備と構内配電の需要が増える
再生可能エネルギーの連系風力発電所や洋上風力を系統につなぐための開閉設備が必要になる
高度経済成長期の設備の更新電力会社や大規模工場に納めた受変電機器が、更新の時期を迎えている

※日新電機、三菱電機、東芝エネルギーシステムズ、富士電機の発表内容をもとに整理しました。

1つめは送配電網の更新です。レベニューキャップ制度は、送配電会社が一定期間ごとに収入の上限を算定し、国の承認を受ける託送料金の仕組みです。日新電機は、この制度の導入で電力市場向けの需要が増えたと説明しています。

2つめはデータセンターと半導体工場です。

電力広域的運営推進機関(OCCTO)は2026年1月の需要想定で、データセンターと半導体工場の新増設による最大需要電力の増加を見込みました。その規模は2035年度に762万kWです。

受電する電力が大きい施設ほど、高い電圧で受ける設備が必要になります。

こうした施設の建設は、製造業の2026年度の設備投資計画が二桁増となっている流れとも重なります。国内で工場の誘致が続く事情は、半導体製造が注目される背景でも整理しています。

3つめは再生可能エネルギーです。東芝エネルギーシステムズは、再エネは分散して発電されるため、開閉装置や変圧器など送変電機器全般の需要が高まると説明しています。三菱電機は、洋上風力発電に対応したC-GISの生産拡大を進める方針です。

4つめは古い設備の更新です。富士電機は自社サイトの開発記事で、開閉装置の寿命を25〜50年とし、高度経済成長期に設置された装置が更新時期を迎えていると紹介しています。新設と更新が同じ時期に重なっていることが、今回の特徴です。

同じ要因で不足している機器に変圧器があります。需要見通しの数字や制度の詳しい背景は、次の記事で扱っています。

統計で見るGISの国内生産額

日本電機工業会(JEMA)が2026年3月にまとめた見通しでは、2026年度の重電機器の国内生産額は4兆467億円(前年度見込み比108.4%)です。1997年度以来、29年ぶりに4兆円を超える見通しとされています。

このうちGISにあたる「密閉形ガス絶縁開閉装置」は、2024年度の実績が約863億円で、前年度比120.9%と大きく伸びました。

2025年度の見込みは約793億円(同92.0%)といったん下がり、2026年度は約904億円(同114.0%)と2024年度を上回る見通しです。

図6:密閉形ガス絶縁開閉装置の国内生産額

年度ごとの増減はあるものの、2026年度は900億円台に乗る見通しです。

2024年度(実績)
約863億円
2025年度(見込み)
約793億円
2026年度(見通し)
約904億円

※出所:日本電機工業会「2026年度 電気機器の見通し」(2026年3月)。実績は経済産業省の生産動態統計、見込みと見通しはJEMAの策定です。

生産額の統計は、受注した金額ではなく、その年度に生産した分を数えています。受注生産の大型機器は納入時期によって年度の数字が振れやすいため、単年の増減だけで需要の強弱を判断しないほうがよいでしょう。

国内メーカーの増産計画

需要の増加を受けて、国内メーカーは2024年から2025年にかけて相次いで投資を発表しました。ここでは、各社の公式発表で確認できた内容を発表日とあわせて整理します。

日新電機の第二工場は2026年9月に完成しました。ほかの計画の時期は、各社の発表時点の予定です。

図7:開閉装置に関わる国内メーカーの増産計画

新工場の建設、生産拠点の移管、既存工場の増強と、手段は各社で異なります。

投資の内容
時期と目標
日新電機
2025年8月発表
前橋製作所(群馬県前橋市)の構内にGIS第二工場を建設。投資額は約16億円
2026年9月26日に落成式。10月1日から稼働開始(2026年9月28日発表)
三菱電機
2025年8月発表
受配電システム製作所(香川県丸亀市)にC-GISの新工場棟を建設。投資額は約28億円
2026年6月竣工、同年10月稼働開始の計画(2026年8月に竣工式)。2027年度までに年間生産台数を従来比2倍
東芝エネルギーシステムズ
2025年10月発表
浜川崎工場(川崎市)とインド拠点に、2027年度までに総額約550億円。開閉装置、変圧器、避雷器などが対象
両拠点の生産能力を2030年度に2024年度比で2倍以上
富士電機
2025年5月発表
開閉装置の生産を千葉工場から川崎工場へ移管し、両工場で設備投資
川崎工場で2026年度上期から開閉装置を生産。生産能力を現状の1.5倍

※各社のニュースリリースによります。三菱電機の竣工式は電気新聞の報道によります。日新電機以外の時期と目標は、発表時点の計画です。東芝と富士電機の計画は、変圧器などを含む受変電・送変電機器全体が対象です。

日新電機

日新電機は2025年8月28日、前橋製作所の構内にGISの第二工場を建設すると発表しました。投資額は約16億円、鉄骨造の平屋で延床面積は1,275平方メートルです。

当初は2026年10月の竣工予定としていましたが、2026年9月28日の発表によると、9月26日に落成式を行い、10月1日から稼働を始めます。

第一工場でつくっている一部製品の組立・検査工程を第二工場へ移し、既存工場の生産スペースを確保する計画です。

同社は2022年4月にも、延床面積約9,800平方メートルのGIS第一工場を同じ構内に完成させています。それでも生産能力が足りなくなったことが、今回の追加投資の理由です。

2025年8月の発表では、電力会社向けに加えて、半導体工場や風力発電所といった民間向けの需要を挙げています。

三菱電機

三菱電機は2025年8月7日、受配電システム製作所にC-GISの新工場棟を建設すると発表しました。

投資額は約28億円、延床面積は約6,885平方メートルで、2026年6月に竣工し、同年10月から稼働を始める計画としていました。電気新聞の報道によると、竣工式は2026年8月19日に開かれています。

複数のエリアに分かれていた生産ラインと試験ラインを集約し、絶縁ガスの充填作業を自動化して、充填にかかる時間を約40%減らすとしています。データセンターなど大容量の電力を使う施設の増加が、投資の背景です。

同社は2024年10月にも、米国の子会社と国内をあわせてグループで約160億円を投じる計画を発表しました。国内では、系統変電システム製作所(兵庫県尼崎市)で生産エリアを組み替え、開閉器の生産を増やすとしています。

東芝エネルギーシステムズ

東芝エネルギーシステムズは2024年7月、浜川崎工場とインドの拠点に3年間で約200億円を投じ、生産能力を2023年度比で約1.5倍にすると発表しました。浜川崎工場では、開閉装置と変圧器の組み立てラインを増強する内容です。

2025年10月17日には、需要が当初の予測を大きく上回る見通しになったとして、約350億円の追加投資を決めました。総額は約550億円となり、両拠点の生産能力を2030年度に2024年度比で2倍以上に引き上げる計画です。

富士電機

富士電機は2025年5月26日、受変電機器の生産体制の再編を発表しました。これまで千葉工場でつくってきた開閉装置を川崎工場へ移し、千葉工場では変圧器を増産します。生産能力は、開閉装置と変圧器のどちらも現状の1.5倍に高める計画です。

川崎工場は発電機や蒸気タービンの生産拠点で、開閉装置に必要な製缶溶接や機械加工の技術を持っています。海沿いにあり、大型製品を船で運びやすいことも移管の理由に挙げられています。

SF6ガスの環境負荷とSF6フリーへの移行

GISを語るうえで避けて通れないのが、絶縁ガスの問題です。SF6は機器の小型化を支えてきた一方で、強力な温室効果ガスでもあります。増産と並行して、SF6を使わない機器への切り替えが進んでいます。

SF6の地球温暖化係数

地球温暖化係数(GWP)は、二酸化炭素を1としたときに、そのガスが温暖化に与える影響の大きさを表す数字です。SF6のGWP(100年値)は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告書の版によって次のように変わります。

  • 第2次評価報告書:23,900
  • 第4次評価報告書:22,800
  • 第5次評価報告書:23,500
  • 第6次評価報告書:24,300

日本の温室効果ガス排出量の算定・報告・公表制度では、令和6年度の報告からSF6の係数が改められました。22,800(第4次評価報告書の値)から23,500(第5次評価報告書の値)への変更です。

第6次評価報告書の24,300は、第1作業部会報告書の第7章補足資料(Table 7.SM.7)の確定版に載っている値です。編集が確定する前に公開された版の同じ表では、25,200とされていました。

メーカーの資料には23,900や24,300のほか、25,200や約25,000といった数字も見られます。

どの値をとっても、1kgの漏えいが二酸化炭素20トン以上に相当する点は変わりません。日立製作所の発表によると、大気中に残る期間も1,000年以上と長く、少量でも影響が積み上がります。

日本とEUの規制

国内の制度でまず押さえたいのは、SF6はフロン排出抑制法の対象ではないという点です。同法が「フロン類」と呼ぶのはCFC、HCFC、HFCの3種類で、SF6は含まれません。

SF6は、地球温暖化対策推進法にもとづく算定・報告・公表制度の対象ガスです。

変圧器などの電気機械器具について、製造や使用開始時の封入、使用中、点検時と廃棄時の回収が、排出量を算定する活動として定められています。

日立製作所の2026年3月の発表でも、国内には現時点でSF6ガス機器の廃止を定めた規制はないとされます。

なお、SF6は半導体素子の製造でも使われ、同じ制度で算定の対象です。製造工程から出るガスの処理については、半導体の排ガス処理装置の記事で方式を整理しています。

一方、EUはFガス規則(規則2024/573、2024年3月適用開始)で、開閉装置の新たな使用開始を電圧ごとに段階的に禁止します。対象は、フッ素系の温室効果ガスを使う開閉装置です。

図8:EUのFガス規則による開閉装置の禁止開始時期

代替技術がそろっている低い電圧から、順に適用が始まります。

中電圧(Fガスを使わないこと)
2026年1月1日〜24kV以下フッ素系ガスを使う開閉装置の使用開始を禁止
2030年1月1日〜24kV超〜52kV以下同じく、フッ素系ガスを使う機器が対象
高電圧(GWPが1未満のガスに限る)
2028年1月1日〜52kV超〜145kV以下短絡電流が50kA以下の機器が対象
2032年1月1日〜145kV超または短絡電流が50kAを超える機器

※規則第13条9項と、欧州委員会のFAQ(2025年11月版)によります。規則の適用開始日(2024年3月11日)より前の発注、既設設備と互換性のない増設、修理用の部品、入札で適合品の応札がない場合などには適用除外があります。

この規則では、フッ素を含む代替ガスもFガスとして扱われます。高電圧の機器で使えるのは、原則としてGWPが1未満のガスに限られます。

米国でも、カリフォルニア州の大気資源局(CARB)が2021年に規則を改正しました。SF6を使うガス絶縁機器の新規取得を、電圧などの区分ごとに2025年から2033年にかけて段階的に禁止する日程を定めています。

SF6を使わない機器の方式と各社の動き

SF6の代わりに使われる技術は、電圧によって分かれます。72/84kV級では、電流の遮断を真空バルブで行い、絶縁をドライエア(乾燥空気)で行う方式の製品化が先行しています。ドライエアは窒素と酸素の混合ガスで、GWPはゼロです。

  • 東芝エネルギーシステムズは2022年7月、ドライエアを用いた72kVのGISを東京電力パワーグリッドから受注したと発表。真空遮断器は明電舎が供給
  • 三菱電機は2024年7月、84kVドライエア絶縁開閉装置の初号機を関西電力送配電から受注したと発表。納入は2026年3月の予定とされた
  • 東芝は2026年8月、二酸化炭素と酸素の混合ガスを使う300kV用のガス遮断器とガス絶縁母線が、東京電力パワーグリッドに採用されると発表。納入は2029年度と2030年度をめどとする
  • 日立製作所と日立エナジーは2026年3月、SF6を使わない550kVのGISを中部電力パワーグリッドから受注したと発表

課題は大きさです。富士電機の開発記事によると、ドライエアの絶縁性能はSF6の3分の1で、そのまま置き換えると装置は3倍の大きさになります。同社は、導体を支えるスペーサの材料を新しく開発し、1.2倍に抑えたと紹介しています。

利用する側にも変化があります。中部電力パワーグリッドは2024年12月、77kV以下のGISと275kV以上の単体遮断器にSF6を使わない機器を採用する方針を公表しました。

JEMAも、変電用開閉機器メーカー7社による代替技術への移行ロードマップを公開し、電圧区分ごとの製品化の時期を示しています。

受変電設備の担当者が押さえておきたいこと

ここまでの内容を、工場や施設で受変電設備を預かる立場から見直すと、実務で意識したい点は3つあります。

更新の計画は納期を前提に立てる

メーカー自身が長納期化を認めており、開閉装置の更新を故障してから検討するのでは間に合わないおそれがあります。

各社の発表では、新工場の稼働や生産能力の目標時期が2026年度から2030年度にかけて並んでいます。

増産の効果が出そろうまでには時間がかかるとみられるため、当面は納期に余裕を見て計画を立てるのが無難でしょう。

設置から年数がたった設備は、更新の候補時期と予算を早めに整理し、メーカーや工事会社に納期の目安を確認しておくと計画が立てやすくなります。

機器の状態を見ながら更新時期を判断する考え方は、時間基準保全と状態基準保全の使い分けを参考にしてください。

SF6ガスの管理を点検と廃棄の手順に入れる

既設のGISやC-GISを使い続ける場合、ガスを漏らさない管理が基本になります。

環境省は平成21年の資料で、SF6を内蔵する電気設備について次の対応を求めています。日常点検・定期点検で漏えいを最小限に抑えることと、廃棄するときにガスを確実に回収し、破壊または再利用の処理を行うことです。

古いC-GISやガス遮断器を撤去するときは、ガスの回収を工事の仕様に明記しておくことが大切です。排出量の報告義務がある事業者は、封入量や回収量の記録が算定の根拠になります。

SF6フリー機種は寸法と電圧を確認する

更新で新しい機種を選ぶときは、SF6を使わない機種が候補に入るかどうかを確認しておきたいところです。

三菱電機は、ドライエア絶縁の機種の利点として、ガスの記録・報告や廃棄時の回収作業が不要になること、寒冷地でのガスの液化対策が要らないことを挙げています。

一方で、機種によっては従来品より寸法が大きくなる場合があり、既設の電気室に収まるかどうかの確認が欠かせません。製品化の進み具合は電圧によって差があるため、自社の受電電圧で選べる機種をメーカーに問い合わせるのが確実です。

受変電設備の保安を担う電気主任技術者など、この分野で求められる資格については設備保全に必要なスキルと資格の記事でも紹介しています。

まとめ

この記事のまとめ
  • GISは、遮断器や断路器などを絶縁ガス入りの金属容器に収めた開閉装置で、気中絶縁より大幅に小さくできる
  • 送配電網の更新、データセンター・半導体工場、再エネ、古い設備の更新が重なり、需要が増えている
  • 日新電機のGIS第二工場(約16億円、2026年9月完成)など、国内メーカーの増産投資が続いている
  • SF6は温暖化係数が2万を超える温室効果ガスで、EUは2026年から新設の開閉装置での使用を段階的に禁止する
  • 設備担当者は、納期を見込んだ更新計画、ガスの回収管理、SF6フリー機種の寸法確認を意識したい

GISは目立たない設備ですが、電気を大量に使う施設が増えるほど必要になる機器です。関連する職種は設備保全や電気・電子設計、技術テーマとしては脱炭素・カーボンニュートラルが深く関わります。

重電メーカーを含む業界の全体像は、電機・精密機器の業種ページから関連記事もあわせてご覧ください。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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