電子部品・半導体業界とは?企業の種類・仕事の流れ・向いている人を実務目線で解説

クリーンルームで半導体ウェハを扱う様子

「電子部品・半導体業界」と聞くと、多くの方は半導体チップをつくる大手メーカーや、ニュースで話題の大型工場を思い浮かべるのではないでしょうか。

実際には、コンデンサやコネクタをつくる部品メーカー、半導体を設計・製造する会社、その工場に装置や材料を納める会社、組立を請け負う会社や商社まで、多くの企業が役割を分け合って成り立っている業界です。

この記事では、電子部品・半導体業界とは何かを、企業の分類、開発から量産までの仕事の流れ、業界特有の働き方、役立つ資格、向いている人という順で整理します。

目次

電子部品・半導体業界とは

基板の上に並ぶ半導体チップと電子部品

電子部品・半導体業界とは、電子機器の中に組み込まれる部品や半導体、そしてそれらをつくるための装置・材料に関わる企業の総称です。スマートフォンや自動車、サーバー、産業機器など、電気で動く製品のほとんどがこの業界の製品に支えられています。

電子情報技術産業協会(JEITA)の見通しでは、2025年の電子情報産業の世界生産額は4兆1,184億ドルと前年から11%増え、初めて4兆ドルを超える見込みです。日系企業の世界生産額も41兆8,134億円と見込まれています。

JEITAの統計では、日系メーカーによる電子部品のグローバル出荷額は2025年度に4兆6,198億円でした。そのうち半分強(2兆4,376億円)をコンデンサなどの受動部品が占めています。

完成品をつくる業界と大きく違うのは、顧客のほとんどが他のメーカーであり、ミクロン・ナノ単位の精度で膨大な数を量産する点です。一般の消費者の目に触れにくい一方で、あらゆる製品の性能を根本で左右しています。

図1:完成品の業界と電子部品・半導体業界の違い

同じエレクトロニクスでも、働く環境や求められる条件が異なります。

完成品メーカー中心の業界
電子部品・半導体業界
主な顧客
一般の消費者や企業
自動車・スマホ・機器のメーカー
製品の大きさ
手に取れるサイズの製品
ミリ以下の部品やナノ単位の回路
生産の単位
製品を1台ずつ組み立てる
極小の部品を膨大な数で量産する
製造環境
一般的な組立工場
クリーンルームなど清浄な環境
景気の波
比較的ゆるやか
需要の増減が大きく、波が激しい

※生産数量や規模は、製品や企業によって大きく異なります。目安として捉えてください。

電子部品・半導体業界の企業

電子部品や半導体、ウェハ、製造装置が並ぶイメージ

電子部品・半導体業界の企業は、担う役割によって大きく次のように分けられます。

  • 電子部品メーカー(コンデンサ・コネクタ・センサーなどをつくる)
  • 半導体メーカー(ICやメモリ、パワー半導体を設計・製造する)
  • 半導体製造装置メーカー(半導体をつくるための装置を納める)
  • 半導体材料メーカー(ウェハや薬品、ガスなどの材料を供給する)
  • EMS(電子機器の組立を受託する)
  • エレクトロニクス商社(部品の販売と技術支援を担う)

図2:電子部品・半導体業界の企業の関係

最終製品のメーカーを起点に、役割の異なる企業が層をなしています。

最終製品メーカー自動車・スマホ・サーバー・産業機器などを企画し、販売する
部品・半導体を発注
電子部品メーカー受動部品・接続部品・センサーなど
半導体メーカーIDM・ファブレス・ファウンドリ
EMS基板実装や製品組立を受託
装置・材料を発注
製造装置・材料メーカー露光・成膜・検査などの装置と、ウェハや薬品などの材料を納める

※エレクトロニクス商社が各層の間に入り、部品の流通や技術サポートを担うことも多くあります。

電子部品メーカー

電子部品メーカーは、電子回路を構成する部品をつくる企業です。電気をためるコンデンサ、回路どうしをつなぐコネクタ、温度や動きを検知するセンサーなど、1台の機器に数多く使われる小さな部品を量産しています。

日本企業が世界的に強い分野で、特に積層セラミックコンデンサや水晶デバイスなどで高いシェアを持つ企業が多くあります。自動車の電動化により、1台あたりに使われる部品の数が増えていることも追い風です。

半導体メーカー

半導体メーカーは、演算を行うロジック、データを記憶するメモリ、電力を制御するパワー半導体、光を電気に変えるイメージセンサーなどをつくる企業です。設計から前工程、後工程まで、どこを自社で担うかによって業態が分かれるのが特徴です。

図3:半導体ができるまでの3つの領域

半導体の製造は、大きく3つの領域に分かれます。

DDesign/設計回路を設計し、チップの機能と性能を決める
FFront-end/前工程ウェハ上に微細な回路を何層も形成する
BBack-end/後工程チップを切り出し、パッケージに組み立てて検査する
前工程だけでも膨大な数の工程を経るため、1つの半導体が完成するまでに長い期間がかかることも珍しくない。

3つの領域をすべて自社で担う企業をIDM(垂直統合型)と呼びます。これに対し、設計に特化して製造を外部に委託するファブレス、他社から製造を請け負うファウンドリという分業型の業態もあります。

図4:半導体メーカーの3つの業態

どこまでを自社で担うかによって、強みや働き方が変わります。

担う範囲
主な特徴
IDM
設計から製造まで一貫して担う
メモリやパワー半導体など、製造技術が差になる分野に多い
ファブレス
設計に特化し、工場を持たない
高性能なロジック半導体に多い。開発投資に集中できる
ファウンドリ
他社の設計に基づき製造を受託
巨額の設備投資と、微細化の製造技術が強み

※後工程の組立・検査を専門に請け負うOSATと呼ばれる企業もあります。

代表的な企業を挙げると、電子部品では村田製作所、TDK、京セラ、半導体ではルネサスエレクトロニクスやキオクシア、ロームなどが知られています。製造装置では東京エレクトロンやアドバンテスト、材料では信越化学工業やSUMCOが世界的な存在です。

半導体製造装置メーカー

半導体をつくるには、露光、成膜、エッチング、洗浄、検査など、工程ごとに専用の装置が必要です。これらの装置を開発・製造し、半導体メーカーの工場に納めて立ち上げるのが半導体製造装置メーカーです。

装置は1台が非常に高額なものも多く、納入後の据付や保守、改造対応まで長く顧客と付き合います。日本半導体製造装置協会(SEAJ)によると、日本製半導体製造装置の販売高は2025年度に5兆1,986億円で、前年度から9.0%増えました。

半導体材料メーカー

シリコンウェハ、フォトレジスト、高純度の薬品やガス、研磨材など、半導体の製造に使う材料を供給する企業です。日本企業が世界的に高いシェアを持つ品目が多い分野として知られています。

材料のわずかな不純物が、半導体の歩留まりを大きく左右します。そのため材料メーカーの技術者は、顧客の工場の条件に合わせて品質を細かく調整する役割も担います。

EMS

EMS(電子機器受託製造サービス)は、他社ブランドの電子機器について、基板への部品実装や製品の組立を専門に請け負う企業です。自社で工場を持たない、または生産の一部を外に出したいメーカーから受注します。

多品種の製品を短い期間で立ち上げるため、生産技術や生産管理の力が問われます。海外に大規模な工場を持つ企業が多い一方、国内にも特定分野に強い中堅企業があります。

エレクトロニクス商社

エレクトロニクス商社は、電子部品や半導体を仕入れて、機器メーカーに販売する企業です。単に物を流すだけでなく、顧客の設計に合った部品を提案し、技術的な支援まで行う点に特徴があります。

扱う製品の種類が増え、半導体の使いこなしも難しくなるなかで、商社のFAEが顧客の回路設計やソフトウェア開発を支える場面も増えています。仕入先の選び方や在庫の持ち方で、顧客の生産を支える役割も担います。

なお、これらの分類はあくまで役割の目安です。部品と半導体の両方を手がける企業や、装置と材料の両方を扱う企業もあり、境目は固定ではありません。大小さまざまな企業が関わる、裾野の広い業界といえます。

電子部品・半導体業界の仕事の流れ

クリーンルームで製造装置を確認する技術者

電子部品や半導体の仕事は、次のような流れで進みます。

企画 → 設計 → 試作・評価 → デザインイン → 顧客認定 → 量産立ち上げ → 製造 → 検査・出荷

図5:電子部品・半導体の開発から量産までの流れ

開発、採用、量産の3つの段階に分かれます。

開発
01企画市場と顧客の需要から、つくる製品の仕様を決める
02設計回路や構造、材料を設計し、図面に落とし込む
03試作・評価試作品で特性と信頼性を確かめ、設計を詰める
採用
04デザインイン顧客の製品設計に自社品を採用してもらう
05顧客認定顧客の試験や工場監査を経て、正式に採用される
06量産立ち上げ製造条件を固め、狙った歩留まりで量産を始める
量産
07製造クリーンルームなどで、大量の製品を安定してつくる
08検査・出荷全数検査や抜き取り検査を経て、顧客へ納める

※製造装置・材料メーカーの場合は、顧客である半導体工場への納入と立ち上げが中心になります。

部品か半導体か、装置か材料かによって細かな違いはありますが、顧客に採用されてはじめて量産に進むという流れは共通です。順に見ていきます。

企画

最も上流にくるのが企画です。スマートフォンや自動車などの市場動向と、顧客の開発計画を読み、数年後に求められる性能と価格を見定めます。

部品や半導体は顧客の製品に組み込まれて使われるため、顧客自身がまだ決めていない将来の仕様を先読みする力が求められます。

設計

企画で決めた仕様をもとに、回路や構造、材料を設計する工程です。半導体では回路設計やレイアウト設計、電子部品では材料の配合や構造の設計が中心で、シミュレーションで性能を事前に予測することが欠かせません。

小型化と高性能化の要求が年々厳しくなるなかで、限られたサイズに機能をどう収めるかが設計者の腕の見せどころです。

試作・評価

設計ができたら試作品をつくり、電気特性や温度変化への強さ、寿命などを評価します。車載向けでは長期間の信頼性試験が求められることも多く、評価に時間がかかります。

目標に届かなければ設計に戻り、試作と評価を繰り返します。ここで得たデータが、後の顧客への提案材料にもなります。

デザインイン

デザインインとは、顧客が新製品を設計する段階で、自社の部品や半導体を採用してもらう活動です。技術営業やFAEがサンプルを提供し、顧客の設計者と一緒に課題を解決しながら採用を勝ち取ります

いったん採用されると、その製品が売れ続けるかぎり供給が続きます。逆に、ここで選ばれなければ数年間は取引の機会がないこともあります。

顧客認定

採用が決まっても、すぐに量産に入れるわけではありません。顧客による評価試験や工場の監査を受け、品質と供給体制の両方が基準を満たすと認められてはじめて正式な取引になります。

特に自動車向けは基準が厳しく、認定までに長い期間がかかる場合もあります。

量産立ち上げ

試作と同じ品質を、量産の規模で安定して再現できるように製造条件を固める工程です。主に生産技術やプロセスエンジニアが担当し、歩留まり(良品の割合)をいかに早く上げるかが勝負になります。

装置メーカーや材料メーカーの技術者が顧客の工場に入り、立ち上げを支援するのもこの段階です。

製造

量産が始まると、クリーンルームなど管理された環境で、昼夜を問わず製品をつくり続けます。半導体工場では24時間稼働の交替勤務が一般的です。

現場では装置の状態や製造データを常に監視し、わずかな変化から不良の兆しをつかみます。自動化が進んだ工場では、データ分析の力も求められます。

検査・出荷

完成した製品は、電気特性や外観の検査を経て出荷されます。部品1個の不良が顧客の製品全体の不具合につながるため、不良品を外に出さない仕組みが重視されます。

市場で不具合が見つかった場合は、原因を解析して再発防止策を講じ、顧客に報告します。

電子部品・半導体業界の特徴

クリーンルーム内に並ぶ半導体製造装置

電子部品・半導体業界には、同じものづくりでも他の業界とは異なる働き方の特徴があります。就職や転職を検討するなら、次の4点は入る前に知っておきたいところです。

図6:電子部品・半導体業界の4つの特徴

働き方を判断するうえで、押さえておきたい点です。

景気の波が大きい需要が増減する「シリコンサイクル」がある
微細さと清浄さが求められるナノ単位の精度とクリーンルームでの作業
給与水準は比較的高い半導体・電子部品ともに製造業の中で高め
AI需要と国内投資で拡大期生成AIや新工場建設で、人材需要が増えている

景気の波が大きい

半導体には、需要の拡大と縮小がおよそ数年ごとに繰り返される「シリコンサイクル」があるといわれます。好況期と不況期で仕事量や業績が大きく変わる点は、この業界の特徴です。

スマートフォンやパソコン、自動車などの販売動向がそのまま受注に跳ね返ります。どの用途の顧客が多い会社かによって、影響の受け方は変わります。

微細さと清浄さが求められる

半導体の回路はナノメートル単位で、目に見えない微粒子1つが不良の原因になります。そのため工場の多くは空気中のちりを厳しく管理したクリーンルームで、専用の作業着を着て仕事をします。

電子部品も小型化が進み、ごくわずかな寸法や材料のばらつきが性能に影響します。細かな管理を積み重ねる働き方が基本です。

給与水準は比較的高い

業界動向サーチの集計では、半導体業界の平均年収は821万円、電子部品業界は775万円(いずれも2022〜2023年)とされています。製造業の中でも高い水準と言えます。

ただし、これは主要な上場企業の数値です。企業の規模や職種、業態によって差が大きい点は押さえておきたいところです。

AI需要と国内投資で拡大期

生成AI向けのデータセンター投資をきっかけに、先端半導体やメモリの需要が伸びています。SEAJは、日本製半導体製造装置の販売高が2026年度に6兆5,502億円と、前年度から26.0%増えると予測しています。

国内でも大型の工場建設が相次ぎ、技術者や製造現場の人材が不足している状況です。他業界の経験者にとっても、活躍の場が広がっている業界と言えます。

電子部品・半導体業界で役立つ資格

電子回路の資料と参考書で学習する様子

電子部品・半導体業界は、資格がないと業務に就けないという場面は多くありません。ただし、専門知識の証明になり、転職では有利に働くことがあります。

  • 半導体技術者検定
  • 電気主任技術者
  • 技術士・技術士補(電気電子部門など)
  • QC検定(品質管理検定)
  • 危険物取扱者
  • 高圧ガス製造保安責任者
  • 特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者
  • TOEICなどの語学資格 など

図7:電子部品・半導体業界で役立つ資格の特徴

関わる仕事ごとに、評価される資格が異なります。

半導体技術者検定
設計・技術半導体の製造プロセスや設計の知識を測る民間の検定
電気主任技術者
運転・保安受変電設備など自家用電気工作物の保安を監督。第一種〜第三種がある
技術士・技術士補(電気電子部門など)
設計・技術技術系で最上位の国家資格。一次試験の合格で技術士補の登録ができる
QC検定(品質管理検定)
品質・検査品質管理の知識を1級〜4級で認定。現場から管理職まで受験者が多い
危険物取扱者
運転・保安燃料や溶剤など消防法の危険物を扱う。甲種・乙種・丙種の3種類
高圧ガス製造保安責任者
運転・保安高圧ガスを製造する設備の保安を担う。化学・機械・冷凍などの区分
特定化学物質及び四アルキル鉛等作業主任者
運転・保安特定化学物質を扱う作業で選任が必要な作業主任者。技能講習で取得
TOEICなどの語学資格
語学・実務海外拠点や海外顧客とのやり取りで、英語力を示す目安になる

※資格の区分や必要となる条件は、職種や扱う設備によって変わります。

設計・開発では半導体技術者検定や技術士、製造現場では薬品やガスを扱うための危険物や高圧ガスの資格が評価されやすく、海外の顧客や拠点とのやり取りが多いため語学力も重視されます。

電子部品・半導体業界に向いている人

顕微鏡で電子部品を観察するエンジニア

ここまで見てきた業界の性質から、向いているのは次のような人です。裏を返せば、この3点に抵抗がある場合は、入ってからのギャップが大きくなりやすいと言えます。

目に見えないものを突き詰めるのが好き

半導体の回路や材料の微細な構造は、肉眼では確認できません。測定データやシミュレーションの結果から現象を推し量り、原因を論理的に突き止めていく粘り強さが求められます。

理屈で説明できるまで考え抜くことを楽しめる方には、やりがいの大きい環境です。

裏方としての仕事に誇りを持てる

電子部品や半導体は、最終製品の中に組み込まれて消費者の目には触れません。自社の名前が表に出ない仕事にも、社会を根本から支えている実感を持てる人に向いています。

自分が関わった部品が、スマートフォンや自動車、データセンターの中で動いていると考えると、この業界ならではの手応えがあります。

変化の速さを楽しめる

微細化や新しい材料、AI向けの製品など、技術は数年単位で大きく入れ替わります。景気の波も大きく、変化に合わせて学び続ける姿勢が欠かせません。

その変化を不安ではなく機会と捉えられる方にとっては、成長の余地が大きい業界です。

まとめ

この記事のまとめ
  • 電子部品・半導体業界とは、電子部品や半導体と、その装置・材料に関わる企業全般を指す
  • 部品、半導体、製造装置、材料、EMS、商社など業態は幅広い
  • 仕事は企画から設計、デザインイン、量産、検査・出荷までが一連の流れになっている
  • 景気の波が大きく、AI需要や国内投資を背景に拡大期にある
  • 目に見えないものを突き詰め、変化を楽しめる人に向いている

ひとくちに電子部品・半導体業界といっても、部品か半導体か、装置か材料かによって働き方は大きく異なります。関連する職種は電気・電子設計生産技術技術営業・FAE品質保証・品質管理がこの業界と深く関わります。半導体の工程について詳しく知りたい方は、半導体製造の解説もご覧ください。

業界の市場規模や主要企業については、電子部品・半導体の業種ページから関連記事もあわせてご覧ください。

出典

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この記事を書いた人

BtoB製造業特化のWebマーケター。プラント業界にてエンジニアを10年経験した後、マーケティングの分野へ。工業技術ブログ「エネ管.com」を2017年から運営し、月間20万PVを達成。保有資格はエネルギー管理士、第三種電気主任技術者。

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