2026年度上期の倒産5,362件|物価高・人手不足と製造業の取引先リスク

夕方の小さな機械加工工場で旋盤を操作する作業者の後ろ姿

5,362件。帝国データバンクが2026年10月8日に発表した、2026年度上期(4〜9月)の企業倒産件数です。同じ日に東京商工リサーチも5,373件と発表し、どちらも5年連続で前年同期を上回りました。

製造業の倒産件数は前年より少し減りましたが、原材料や電気代の値上がりで行き詰まる「物価高倒産」では、製造業は業種別で3番目に多い業種です。件数の増減だけでは、自社の取引先が安全かどうかは分かりません。

取引先リスクの備えで最初に手をつけるのは、重要な取引先の代替のしやすさ・納期・支払条件の確認です。

目次

2026年度上期の倒産は5,362件、5年連続の増加

帝国データバンク(以下TDB)の集計では、2026年度上期の倒産は5,362件で、前年同期の5,146件から216件、4.2%の増加です。

半期ごとに見ると、2021年度下期から10半期続けて増えており、2000年度以降で最も長い連続増加です。東京商工リサーチ(以下TSR)の集計でも5,373件(3.8%増)で、年度上期としては2013年度の5,505件に次ぐ水準でした。

負債総額はTDBが8,304億円(23.8%増)、TSRが8,561億円(23.5%増)です。最も大きかったのは、クレジットカードの売上代金を早く支払う決済代行の全東信で、負債は1,151億円でした。

図1:2026年度上期(4〜9月)の倒産集計(TDB・TSR)

2社とも5年連続で前年同期を上回りました。数字は出典ごとに並べています。

帝国データバンク
東京商工リサーチ
倒産件数
5,362件(前年同期比4.2%増)
5,373件(同3.8%増)
負債総額
8,304億700万円(23.8%増)
8,561億6,900万円(23.5%増)
製造業の件数
545件(1.3%減)
547件(3.1%減)
物価高倒産
628件(過去最多)
436件(円安下で最多)
人手不足倒産
225件(上期で過去最多)
240件(過去最多)
連続増加
半期ベースで10半期連続
年度上期で5年連続

※2社は業種の分け方や「物価高倒産」「人手不足倒産」の数え方が違うため、同じ行の数字を単純に比べたり合算したりはできません。出典:帝国データバンク、東京商工リサーチ(いずれも2026年10月8日発表)

TDBは2026年度下期も5,000件を超えるペースが続くとみており、2025年度の倒産は1万425件で、2年連続で1万件を超えていました。このペースなら、年度で3年連続の1万件超えになります。

倒産の中心は小さな会社

TDBの集計では、負債5,000万円未満の倒産が3,360件で、2000年度以降で最多でした。TSRでも負債1億円未満が全体の77.0%を占め、年度上期として30年で最も高い割合です。

従業員の数で見るとさらにはっきりして、TSRの集計では倒産した会社の90.6%は従業員10人未満で、上場企業の倒産は1件だけです。

図2:倒産した会社の規模

倒産した会社を10社とすると、9社は従業員10人未満の会社です。

倒産した会社の90.6%が従業員10人未満(東京商工リサーチ、2026年度上期)

※人の絵は会社1社を表します。90.6%を10社中9社に四捨五入しています。

製造業の取引でいえば、部品加工やめっき、熱処理などを担う小さな協力会社がこの層に重なります。取引額は小さくても、その会社にしかできない工程を任せていることが多い点に注意が要ります。

倒産統計に表れた主因と、企業を圧迫する要因

倒産の原因を読むときは、2種類の数字を分けて見て、1つは倒産1件ごとに1つ付ける「主因」の構成比で、もう1つは「物価高」「人手不足」など特定の背景を持つ倒産を別に数えた件数です。

TDBの主因別では、売上が落ちて立ち行かなくなる「販売不振」が4,305件で、全体の80.3%を占めました。物価高や人手不足は、この販売不振の裏で利益を削る要因として表れることが多い数字です。

図3:上期の倒産に表れた4つの数字(TDB)

販売不振は主因の構成比、ほかの3つは背景別に数えた件数です。

販売不振主因の80.3%(4,305件)
物価高倒産628件、過去最多(28.7%増)
人手不足倒産225件、上期で過去最多
後継者難倒産296件、上期で過去最多

※1件の倒産が物価高と人手不足の両方に数えられることもあります。出典:帝国データバンク「倒産集計 2026年度上半期報」

物価高倒産:上がったコストを価格に乗せきれない

物価高倒産は、原材料やエネルギー、人件費の値上がりを販売価格に反映できずに行き詰まる倒産で、TDBの集計では628件と過去最多となり、前年同期の488件から3割近く増えました。

背景にあるのが、価格転嫁(コストの上昇分を取引先への販売価格に上乗せすること)の遅れで、TDBの2026年7月の調査では、コストが100円上がったときに価格へ乗せられたのは39.9円でした。

図4:コストの種類別に見た価格転嫁率(TDB、2026年7月)

原材料費に比べ、人件費やエネルギーの上昇分は価格に乗せにくい状態です。

原材料費47.3%
物流費34.5%
人件費32.0%
エネルギー29.6%
全体39.9%

※価格転嫁率は、コスト上昇分のうち販売価格に反映できた割合。調査期間2026年7月17〜31日、有効回答1万518社。出典:帝国データバンク「価格転嫁に関する実態調査(2026年7月)」

中小企業庁の2026年3月の調査では、価格転嫁率は54.2%で、こちらは受注側の中小企業に聞いた調査のため、TDBとは対象も計算の仕方も違います。どちらの調査でも、人件費やエネルギー費は原材料費より転嫁しにくいという傾向は同じです。

鋼材や銅のように相場で値上がりが見える材料と違い、人件費は取引先に説明しにくいコストです。交渉の進め方は取適法を使った価格転嫁の進め方で整理しています。

人手不足倒産:人件費の高騰と従業員の退職

人手不足倒産は、TDBで225件(上期として過去最多)、TSRで240件(過去最多)でした。TSRの内訳では、人件費の高騰による倒産が130件、従業員の退職による倒産が67件で、いずれも過去最多です。

人を集めるために賃金を上げると価格に乗せきれない分が利益を削り、上げなければ人が辞めて、受けた仕事をこなせなくなります。10月からは各地で2026年度の最低賃金が順次上がっており、小さな会社ほどこの板挟みが続きます。

後継者難と、経営者の病気・死亡

後継者がいないことが原因の倒産は、TDBで296件と上期で過去最多でした。主因別でも「経営者の病気・死亡」が204件と、2000年度以降で初めて200件を超えています。

業歴で見ると、創業30年以上の会社の倒産が1,687件、100年以上の老舗が88件でした。長く付き合ってきた取引先ほど、社長の年齢と次の担い手を確かめておく必要があります。

製造業の倒産は微減、それでも物価高倒産では3番目

工場の部品棚に並ぶ加工部品入りの部品箱

製造業の倒産は、TDBで545件(前年同期552件、1.3%減)、TSRで547件(3.1%減)でした。サービス業や建設業、卸売業が増えるなかで、製造業はわずかに減っています。

ところが背景別の数字を見ると印象が変わり、TDBの物価高倒産628件のうち、製造業は101件で、建設業・小売業に次ぐ3番目でした。

図5:製造業の倒産を4つの数字で見る(2026年度上期)

件数は微減でも、物価高と後継者難の倒産では製造業の件数が目立ちます。

製造業の倒産 545件前年同期比1.3%減(TDB)。TSRの集計では547件、3.1%減
物価高倒産 101件628件のうち、建設業176件・小売業140件に次ぐ3番目(TDB)
後継者難倒産 47件296件のうち、建設業・サービス業・小売業に次ぐ件数(TDB)
人手不足倒産 25件225件のうち、建設業70件・サービス業63件に次ぐ3番目(TDB)

※出典:帝国データバンク「倒産集計 2026年度上半期報」、東京商工リサーチ「2026年度上半期の全国企業倒産」

製造業は、材料を仕入れて加工し、納めるまでに時間がかかり、その間に材料費や電気代が上がっても、受注時に決めた単価のまま納めることになりやすい業種です。

2026年10月の商談分からは、鋼材の値上げも加わり、材料の多くを仕入れる小さな加工会社ほど、値上げ分を吸収する余力が小さくなります。

ただし、製造業の倒産が減っても、自社の取引先の状況は別に確かめる必要があります。公開されている数字だけで、特定の会社が危ないと決めつけることもできません。

取引先の倒産が自社に及ぼす影響

取引先の倒産は、相手が仕入先か販売先かで影響の出方が違い、仕入先なら「モノが止まる」、販売先なら「お金が戻らない」というのが基本の形です。

図6:取引先が倒産したときに起きること

仕入先の倒産は、代替先の確保と認定に時間がかかるほど影響が長引きます。

仕入先が倒産代替先を探す試作・認定供給を再開販売先が倒産売掛金が回収困難資金繰りが悪化 この間、部品が届かずラインが止まるおそれ回収できない額が大きいほど連鎖のおそれ

※代替先の有無、切り替えに必要な試作・顧客の承認、金型や治具がどこにあるかで、供給再開までの期間は大きく変わります。

仕入先が倒産した場合

汎用品なら、別の商社やメーカーから数日で買い直せることが多いでしょうが、困るのは、その仕入先にしか作れない部品や、特定の工程を任せている場合です。

製造業では、仕入先を切り替えるだけで済まないことがあり、影響の大きさを左右するのは、次の4点です。

  • 代わりに作れる会社があるか
  • 切り替えに試作や顧客の承認(認定)が必要か
  • 金型や治具が誰の持ち物で、どこにあるか
  • 在庫で何週間しのげるか

自動車や医療機器の部品では、仕入先を変えると顧客の承認を取り直すのが一般的です。代替先が見つかっても、承認が下りるまで量産品を納められないことがあります。

金型が倒産した会社の工場に残っている場合、引き取りの手続きも必要になるため、普段から所有と保管の取り決めを確かめておくと、いざというときに慌てずに済みます。保管の扱いは金型の無償保管と取適法でも触れています。

販売先が倒産した場合

販売先が倒産すると、納めた製品の代金(売掛金)が回収できなくなるおそれがあります。倒産の9割は破産で、TDBでは92.6%を占めており、破産では、売掛金の多くが戻らないと考えておくのが無難です。

月末締め・翌々月払いなどの条件では、2〜3か月分の売上が常に未回収の状態にあります。売掛金の残高が大きい販売先ほど、倒産したときの資金繰りへの影響も大きくなります。

取引先の変化をどう確かめるか

倒産の前には、取引の現場で小さな変化が出ることがありますが、1つの変化だけで「危ない」と判断するのは早計です。いつから、どのくらいの頻度で起きているかを記録し、社内で共有することが大切です。

図7:取引の現場で気づける変化と確かめ方

どれも単独では判断材料になりません。重なったときに、詳しく確かめるきっかけにします。

仕入先(購買が気づく)
販売先(営業が気づく)
取引条件
前払いや支払サイトの短縮を求められる
支払日の延期、手形払いや分割払いの相談
納期・品質
納期遅れや欠品が増える、不良が増える
発注量が急に減る、または急に増える
人・体制
担当者や熟練者の退職が続く
経理や購買の担当者が頻繁に替わる
経営
短い間隔での値上げ要請、社長の交代や病気
主要な取引先を失った、取引銀行が変わった
確かめ方
訪問時の工場の稼働、決算書、信用調査会社の評点
与信の見直し、決算書、信用調査会社の評点

※値上げ要請そのものは、コスト上昇を受けた正当な交渉であることがほとんどです。変化を経営悪化と決めつけず、事実を記録して確かめる材料にします。

気づいた変化は、担当者のメモにとどめず、購買・営業・品質・経理で共有します。たとえば「月1回の取引先会議で、重要取引先の変化を報告する」と決めておくと、ばらばらの情報がつながります。

確かめる手段は、公開情報、決算書、信用調査会社の3つです。上場企業なら決算短信や有価証券報告書で、売上や利益、手元資金の推移が分かり、非上場の小さな会社は、決算書をもらえるかどうかが取引の力関係で決まります。

重要な仕入先とは、品質監査や定期訪問の場で、設備の稼働や人の状況を直接見るのが現実的です。仕入先の評価のしかたは購買・調達の仕事の流れの「仕入先評価」の工程が参考になります。

購買・営業・経営、担当別の備え

購買担当の机に並ぶ図面と表、電卓、加工部品

購買は「モノが止まらないか」、営業は「お金が戻るか」、経営は「万一のときに会社がもつか」を受け持ちます。

図8:取引先リスクへの備えを担当別に分ける

同じ取引先でも、購買・営業・経営で確かめることが違います。

購買モノを止めない代替先の有無と切り替えにかかる期間を部品ごとに確かめる。重要品は2社購買や在庫の積み増し、金型の所在を確認
営業代金を回収する販売先ごとの売掛残高と与信枠を見比べる。残高が大きい先は支払条件や取引量を見直す
経営会社を守る取引先の倒産に備えた共済や保険を検討する。取引先への支援方針と、見直しの基準を決める
共通:重要な取引先を一覧にし、変化を記録して月1回など決まった頻度で共有する

購買:代替のしやすさで仕入先を分ける

まず、仕入先を「すぐ買い直せるもの」と「切り替えに時間がかかるもの」に分けます。対策が要るのは後者で、すべての仕入先に同じ手間をかける必要はありません。

たとえばボルトや汎用の電子部品は、商社を通じて別のメーカー品に切り替えられることが多いでしょう。一方、特殊なめっきや、顧客の承認を受けた加工品は、代替先の確保に数か月かかることもあり、こうした品目は、2社からの購買や、数か月分の在庫を持つかを検討します。

仕入先を守る視点も欠かせず、価格転嫁の協議に応じず単価を据え置けば、仕入先の利益が細り、自社の供給網が弱くなります。

2026年1月に施行された取適法(中小受託取引適正化法)は、対象となる委託取引で協議に応じない一方的な代金の決定や、手形での支払いを禁じています。供給網を何次先までたどって確かめるかは、購買・調達の仕事の中でもリスク管理にあたる部分です。

営業:売掛残高と与信枠を見比べる

営業は、販売先ごとに「いくらまでなら売掛金を抱えてよいか」という与信枠を持ち、実際の売掛残高と見比べます。与信枠を超えそうな販売先は、上司や経理と相談して条件を見直します。

見直しの手段には、次のようなものがあります。

  • 支払サイト(締めから支払いまでの期間)を短くする
  • 一部を前払いにする
  • 1回あたりの出荷量を分ける

販売先との関係を壊さないよう、相手の事情を聞いたうえで、根拠のある条件を示すことが大切です。売掛残高が小さい販売先まで一律に締めつける必要はありません。

経営:経営セーフティ共済などの備え

中小企業には、取引先の倒産に備える「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)」があります。中小企業基盤整備機構が運営する制度で、毎月の掛金を積み立てておく仕組みです。

掛金は月5,000円〜20万円で、積み立ての上限は800万円です。取引先が倒産して売掛金が回収できなくなったとき、掛金の10倍まで(最高8,000万円)を無担保・無保証人で借りられます。

借りられるのは加入から6か月が過ぎてからで、返済期間は借入額に応じて5〜7年(据置6か月を含む)です。条件は改正されることがあるため、加入前に中小企業基盤整備機構の最新の案内を確かめてください。

売掛金の回収を保証する民間の取引信用保険もあり、どちらを使うかは、売掛残高の大きさや取引先の数で判断します。

まとめ

この記事のまとめ
  • 2026年度上期の倒産はTDBで5,362件、TSRで5,373件。どちらも5年連続の増加
  • 倒産の中心は従業員10人未満の小さな会社。物価高倒産は過去最多、人手不足・後継者難の倒産も上期で過去最多
  • 製造業の倒産は微減だが、物価高倒産ではTDBの業種別で3番目(101件)
  • 仕入先の倒産は代替先の確保と認定に時間がかかるほど影響が長引き、販売先の倒産は売掛金の焦げ付きにつながる
  • 購買は代替のしやすさ、営業は売掛残高と与信枠、経営は共済や保険で備える

倒産の数字は、取引先との付き合い方を見直すきっかけになります。人件費の上昇が取引先にどう効くかは製造業の人手不足と採用難で、景気の先行きを読む指標は製造業PMIの読み方で整理しています。

製造業全体の課題は、日本の製造業の今後と課題もあわせてご覧ください。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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