ボイラー水の水処理とは?軟水化・脱酸素・アルカリ化と管理の要点

軟水装置と給水タンクが並ぶ工場の水処理設備

ボイラー水の水処理とは、水に含まれる硬度成分や酸素、pH、濃縮の程度を管理し、スケールと腐食を抑える作業です。蒸気を安定してつくるには、燃焼の調整と同じように水側の管理が欠かせません。

代表的な処理は軟水化、脱酸素、アルカリ化ですが、それぞれ防ぐトラブルが異なります。軟水器が動いていても酸素は残り、薬剤を入れていても濃縮しすぎた水は入れ替える必要があります。

給水とボイラー水では管理するpHが異なり、形式や運転条件でも適切な範囲が変わります。動画と合わせて読む際も、数値を一律の設定値にせず、本文の条件付きの例と実機の管理標準を区別してください。

目次

ボイラーの水処理とは?

工業用水や水道水には、目に見えない溶解成分や気体が含まれています。飲用に使える透明な水でも、加熱と蒸発を繰り返すボイラーには、そのまま適した水とはいえません。

蒸気になって出ていくのは主に水で、蒸発しにくい成分はボイラー内に残ります。供給する水の質と、残った水の濃さの両方を管理することが、水処理の基本です。

図1:処理する水は循環のどこにあるか

軟水器の出口だけでなく、給水・ボイラー水・回収ドレンを分けて見ます。

軟水器給水タンクボイラー蒸気の使用先補給水給水蒸気回収ドレンブロー

概念図です。脱気・薬注設備の位置は、採用する水処理方式や機種で変わります。

外から補う水を補給水、ボイラーへ入る水を給水、内部で加熱されている水をボイラー水と呼びます。蒸気が熱を渡して水へ戻ったものはドレンで、回収すれば給水の一部として再利用できます。

水処理を省くと、伝熱面に固形物が付着する障害と、金属が腐食する障害が進みます。前者は燃料増加や局部過熱、後者は減肉や漏えいにつながり、生産設備の停止原因となります。

水を加熱して蒸気を送る仕組みは、ボイラーの構造と種類を押さえると理解しやすくなります。水処理設備は本体の付属品として置くだけでなく、運転中も性能を見続ける設備です。

軟水化

軟水化は、水中のカルシウムやマグネシウムを減らし、硬度の低い水をつくる処理です。これらの成分は、加熱や濃縮に伴って析出し、伝熱面に付くスケールの原因になります。

一般的な軟水器では、ナトリウム形のイオン交換樹脂へ水を通します。樹脂がカルシウムやマグネシウムを受け取り、代わりにナトリウムを水へ渡すのが、軟水化の仕組みです。

図2:軟水器は硬度成分を交換し、塩水で再生する

通水中と再生中では、水の行き先と樹脂の役割が変わります。

通水中再生中原水軟水塩水排水Ca・Mgを樹脂へCa・Mgを外へ

実際の再生には洗浄やすすぎの工程もあります。再生排水を給水として送る構成ではありません。

樹脂が交換できる量には限りがあり、使い続けると出口へ硬度成分が漏れ始めます。塩水を通して樹脂をナトリウム形へ戻す工程が再生で、塩の補給はこの能力を回復させるために必要です。

軟水化は、溶けている塩類をすべて除く純水化とは異なります。ナトリウムへの交換後も溶解成分は残るため、導電率が低いかどうかだけでは、軟水器の良否を判定できません。

出口の管理には硬度試験を使い、原水と処理水を区別して記録します。塩が残っているという外観だけで安心せず、再生の動作や通水量も合わせて見ることで、硬度漏れを早く捉えられます。

硬度が検出されたら、採水場所や試薬の状態を見直したうえで、軟水器側の履歴を追います。再生用の塩不足、再生動作の不良、処理能力を超える通水、バイパスからの原水混入などを切り分けます。

スケールは水側の熱抵抗となり、金属から水への熱移動を妨げます。同じ蒸気量を保とうと燃料を増やすだけでは金属側の負担が増え、局部的な過熱から管の損傷につながります。

図3:薄い付着物でも金属と水の間の熱を妨げる

熱が伝わりにくい層ができると、金属側が高温になりやすくなります。

燃焼側金属壁スケール水側熱移動が妨げられる

層の厚さや温度差は説明用で、実機の縮尺や温度分布を示すものではありません。

水中に沈殿しているスラッジと、面に固着したスケールでは、取り除き方も異なります。発生原因と違いはボイラーのスケールとスラッジで詳しく整理しています。

水側の汚れは、排ガス側で給水を温めるエコノマイザにも関係します。本体の効率だけを追うのではなく、給水経路にある伝熱面まで一続きで管理することが大切です。

脱酸素

脱酸素は、水に溶けた酸素を減らし、給水配管やボイラー内部の腐食を抑える処理です。軟水器は酸素を取り除く装置ではないため、硬度の低い水にも脱酸素の検討が必要になります。

加熱式の脱気では、水を温めて溶けていた気体を放出し、系外へ排出します。水を温めるだけでなく、気体が抜ける構造や排気の管理も、処理の働きを左右する要素です。

図4:酸素を減らす方法と、確認する場所

機械的に取り除く方法と、薬剤で反応させる方法を区別します。

加熱脱気温度・圧力と排気の状態を管理し、放出したガスを外へ逃がす。
膜式脱酸素膜を介して気体を取り除く。装置の運転条件と処理後の酸素を確認する。
薬剤処理残った酸素と反応させる。使用薬剤に応じた残留成分と注入状態を管理する。

ほかに膜式脱酸素装置や、酸素と反応する薬剤を使う方法があります。設備の大きさだけで加熱式と薬剤式を決めず、必要な水質、給水条件、運転方法に合う組み合わせを選びます。

薬注ポンプが動いていても、薬液切れや吸込み不良があれば、所定の量は入っていません。薬液の消費量と運転時間を照合し、使用する方式に応じた水質の測定結果とつなげて判断します。

脱気後の水が空気と接触する箇所では、酸素が再び溶け込むことにも注意が必要です。設備の配置と採水点を把握すると、処理の不足と、処理後の再混入を区別しやすくなります。

加熱して気体を除く装置の構造は、脱気器の仕組みと役割で説明しています。装置出口の値だけでなく、ボイラーへ届くまでの経路も管理範囲に含めます。

アルカリ化

アルカリ化は、薬剤でpHなどを調整し、金属が腐食しにくい水質を保つ処理です。pHは酸性・アルカリ性を表す指標ですが、数値を高くするほど保護効果が増すわけではありません。

ボイラー水が酸性側へ傾くと腐食の原因となる一方、局所的にアルカリが濃縮しても障害が起きます。目標は強いアルカリ性ではなく、その機種と処理方式に合った管理範囲です。

給水、ボイラー水、回収ドレンには、それぞれ別の管理値を設定します。「ボイラー用の水だからpHをすべて同じにする」という考え方では、測った場所と対策が合わなくなります。

図5:同じ設備でも給水とボイラー水のpHは別に管理

環境省資料に載る、多管式特殊循環ボイラーの一条件を比べた例です。

採水する水25℃のpHの例読み取ること
給水5.8〜9.0ボイラーに入る前の水の基準
ボイラー水11.0〜11.8内部で処理・濃縮された水の基準

常用使用圧力1MPa以下、補給水が軟化水、アルカリ処理の例。全形式に使える設定値ではありません。出典:環境省「ボイラー給水の水質の適切な管理」。

pHの測定温度は、運転中の水温とは区別します。高温の採水試料をそのまま測った値を25℃の基準と比べず、所定の冷却条件で測定することが、判断の前提になります。

この違いは、給水とボイラー水を同じ基準で扱えないことを示しています。実機では取扱説明書と水処理仕様をもとに管理標準を定め、測定温度や採水場所も含めて記録に残します。

ドレンの腐食では、二酸化炭素が水に溶けて酸性化する問題もあります。ボイラー水のpHを水酸化ナトリウムで上げることと、蒸気が凝縮した後の水を保護することは、別に考える必要があります。

水酸化ナトリウムは蒸気と一緒に移りにくいため、缶水の調整だけでドレン側まで保護したとは判断できません。復水側の水質や使用先を調べ、必要に応じて適合する復水処理を選定します。

食品などで蒸気を製品へ直接触れさせる場合は、薬剤が使用先に適合するかも重要です。薬剤の種類や注入量は、水質だけでなく、蒸気の用途とメーカーの処理仕様に合わせます。

水処理設備の監視と自動管理の例として、栗田工業の公式動画も参考になります。装置の紹介動画なので、自分の設備に必要な分析項目や管理値は、個別の水処理仕様と照合して使います。

ボイラー水を日常管理するときの要点

採水冷却器の横に置かれたボイラー水の試料
水処理設備での採水を表したイメージです。

日常管理では、測定結果を水処理設備の動作と対応させることが役立ちます。硬度は軟水器、溶存酸素や薬剤の残留成分は脱酸素、pHは薬注と濃縮の状態を調べる手掛かりになります。

導電率は水に溶けたイオンの影響を受けるため、濃縮の監視に使われます。ただし硬度そのものを表す値ではなく、温度や薬剤成分にも左右されるので、指標を取り違えないことが大切です。

採水点が違う水を比較すると、正常な処理による差を異常と見誤ることがあります。どの水を、どの温度条件で、どの方法で測ったかをそろえ、前回値からの変化を読み取ります。

試薬の有効期限や採水容器の汚れも、測定結果に影響します。現場の管理表には測定値だけでなく、採水点、試薬の交換、再生や薬剤補給の履歴を同じ時系列で残すと、原因を追いやすくなります。

熱水や圧力のある水を直接容器へ取り出すと、やけどや噴出の危険があります。採水は設備に定められた冷却・減圧の手順と保護具を守り、配管や弁を自己判断で変更してはいけません。

ブローで濃縮を調整する

水処理をしていても、ボイラー内の溶解成分は蒸発に伴って濃くなります。その水の一部を外へ出し、給水で補う作業がボイラーのブローで、薬剤処理とは違う役割を担います。

ブローが少なすぎれば濃縮が進み、多すぎれば温めた水と熱を余分に捨てます。水質の管理範囲を守ったうえで必要量に調整することが、給水量と燃料の両方を抑える基本になります。

図6:蒸発しても残る成分からブロー量を求める

定常状態で水位一定、蒸気への溶解固形分の移行を無視する説明用の計算です。

水と成分の収支
F = S + B
FCf = BCb
N = CbCf
2つの収支を合わせると
B = SN − 1
蒸気900kg/h、濃縮倍率10と仮定
B = 90010 − 1 = 100kg/h
F = 900 + 100 = 1,000kg/h
F:給水量、S:蒸気量、B:ブロー量[kg/h]。Cf・Cb:給水・ボイラー水の成分濃度(同じ質量基準)、N:濃縮倍率。この10倍は計算上の仮定で、推奨値ではありません。

この例のブロー量は、給水量に対して10%、蒸気量に対して約11.1%となります。同じ量でも分母によって割合が変わるため、記録や見積もりでは「何に対する割合か」を明記します。

濃縮倍率の計算には、処理中に増減しにくい適切な成分を用います。導電率の比を使う場合も薬剤や温度の影響を評価し、単純な比だけでブローの設定を変えないようにします。

過度な濃縮や泡立ちは、水滴が蒸気と一緒に運び出される問題にもつながります。蒸気の汚れや水位の変動が見られるときは、プライミングとフォーミングの観点も合わせて調べます。

消耗品と点検を運転実績に合わせる

塩や薬剤は使った分だけ減るため、定期補給に加えて、運転量が変わったときの見直しが必要です。生産増で補給水量が増えれば、同じ日数でも樹脂の負荷や薬液の消費量は増加します。

ドレン回収率が下がったときも、外から入れる水が増えるため、水処理設備への負担が変わります。薬剤の購入量だけで評価せず、補給水量と蒸気量を併記すると、変化の理由が見えてきます。

保守契約を利用する場合は、薬剤や塩の補給だけでなく、分析と装置点検の担当範囲を明確にします。現場が毎日見る項目と、専門業者が点検する項目を分けておけば、異常時の連絡も具体的になります。

点検周期を決める考え方は、時間基準保全と状態基準保全にも通じます。水質の推移を残すことが、周期だけでは見つけにくい変化を補う手段になります。

水質が変化した日には、原水の変更や装置の再生、薬剤の交換、ドレン回収の状況を合わせて調べます。単独の数値に合わせて薬剤を足すより、変化が起きた工程を特定することが先になります。

水処理の費用には、薬剤だけでなく塩、水、排水、分析、保守の負担も含まれます。これらと突発故障による補修費や停止損失を比べ、安定して運転できる管理体制として評価します。

ボイラーの水処理のよくある質問

水道水でも水処理が必要ですか?

水道水にも硬度成分や溶存酸素があるため、飲用できることだけではボイラーへの適否は決まりません。原水の分析結果と機種の水質条件を照合し、必要な軟水化や脱酸素などを選びます。

軟水器があれば薬剤やブローは不要ですか?

軟水器は硬度成分を交換する装置で、酸素やすべての塩類を除く装置ではありません。薬剤とブローの必要性は、残る成分や濃縮、ボイラーの処理方式に応じて別に判断します。

pHが正常なら水質は問題ありませんか?

pHだけでは、硬度漏れや溶存酸素、濃縮の程度までは判定できません。処理仕様に定めた複数の項目を採水点ごとに測り、装置の運転履歴と組み合わせて管理します。

軟水と純水は同じですか?

軟水は主に硬度を下げた水で、純水はイオンなどの不純物をより広く除いた水です。必要な処理は圧力や蒸気の用途で異なり、名称だけで給水に適するかを決めることはできません。

停止中も水処理を考える必要がありますか?

停止中も、水や空気との接触によって腐食が進むため、停止期間に合った保管管理が必要です。再起動時の扱いまで含め、メーカーが定めた湿式・乾式などの保管手順に従います。

まとめ

この記事のまとめ
  • 軟水化は硬度成分を減らし、スケールの原因を抑える
  • 脱酸素は溶けた酸素を減らし、金属の腐食を抑える
  • アルカリ化では機種と処理方式に適した水質を保つ
  • 給水・ボイラー水・ドレンを別の採水点として管理する
  • 塩・薬剤の補給とブロー、測定履歴を一体で管理する

水処理は消耗品を補給して終わる作業ではなく、装置の働きを水質で確かめ続ける仕事です。燃料使用量も合わせて見れば、ボイラー効率の変化を調べる手掛かりになります。

原水からドレンまでの管理範囲を定め、異常値が出たときに誰が判断するかまで決めておきます。こうした日常管理は、工場の省エネとエネルギー管理を安定させる土台にもなります。

出典

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MONOSCOPEの運営者

プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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