過熱器(スーパーヒーター)とは?ボイラー内の位置・過熱度と用途

工場内の検査台に載せた蛇行管式の管パネル

過熱器(スーパーヒーター)とは、蒸気をさらに加熱し、その圧力の飽和温度より高い過熱蒸気にする熱交換器です。発電用ボイラーでは燃焼ガスの通り道に組み込み、工場では独立した装置としても使います。

蒸気の圧力を上げる機器ではなく、蒸気へ熱を加えて温度を上げる機器という点が基本になります。蒸発させる部分と過熱する部分を分けると、ボイラー内の位置と役割が見えてきます。

目次

過熱器とは

水を沸騰させて蒸気をつくる部分と、できた蒸気をさらに加熱する部分は、役割が異なります。過熱器は後者を担い、管を流れる蒸気へ外側の熱源から熱を伝えます。

管を曲げて並べた構造では、蒸気と熱源の間に広い伝熱面積を確保できます。燃焼ガスや電気加熱体から管壁を介して熱が入り、蒸気の比エンタルピーと温度が上がります。

図1:過熱器は管の中を流れる蒸気へ熱を加える

蛇行管の外側から加熱する構造の模式図です。蒸気は入口から出口へ流れながら温度を上げます。

図は横にスクロールできます。

管外の燃焼ガス・電気加熱体などから熱が入る蒸気入口過熱蒸気管壁を介して熱を受け取る

管形状は一例です。熱源・流量・圧力に応じて伝熱面と管材を設計します。

工場の蒸気加熱には飽和蒸気を使う場面が多く、過熱が必要な用途ではその後に熱を加えます。蒸気がその圧力の飽和温度より何℃高いかという意味は、過熱蒸気の過熱度でも整理しています。

圧力を上げずに温度を上げられる理由

飽和状態では、圧力と飽和温度が一組に決まります。一方、過熱域では同じ圧力でも複数の温度を取り得るため、蒸気へ熱を加えて飽和温度以上へ上げることができます。

過熱器は、蒸気が出入りする流通系として使う機器です。密閉した容器へ蒸気を閉じ込めて加熱する状態とは異なり、圧力は供給側と使用側の条件に支配され、管の流れには圧力損失も生じます。

したがって、過熱器の仕様には温度だけでなく、入口圧力、出口圧力、蒸気量も必要です。蒸気をつくる部分との関係は、ボイラーの仕組みと種類を合わせて見ると分かりやすくなります。

低圧で高温化する考え方は、メーカーの解説動画でも確認できます。次の動画は、過熱蒸気発生装置を製造するトクデンによる、圧力と高温化の関係の補足説明です。

ボイラーの過熱器(スーパーヒーター)の位置と過熱度

発電用などの水管ボイラーでは、燃焼ガスの通り道に過熱器の管群を配置します。ドラムで気水分離した蒸気を過熱器へ送り、タービンが必要とする温度まで加熱する構成が代表例です。

火炉の近くでは炎や高温ガスからの放射伝熱が大きく、その下流の煙道ではガスの流れによる対流伝熱を利用します。放射形と対流形という区分は、主にどの伝熱の作用を利用するかに着目したものです。

図2:過熱器は火炉上部や、その先の燃焼ガス通路に置く

ドラム形ボイラーの主な配置を示します。実際の伝熱では放射と対流がともに作用します。

図は横にスクロールできます。

蒸気ドラム放射形の配置例対流形の配置例エコノマイザ火炉煙道・燃焼ガスの流れ →蒸発管(水冷壁)

管同士の接続は省略した配置図です。蒸気の通る順序は本文の系統例で確認できます。

この構成では、給水の予熱、蒸発、過熱を別の伝熱面で行います。エコノマイザが水を予熱するのに対し、過熱器はすでに蒸気になった流体へ熱を加える部分です。

蒸気の流れを2段過熱の例で並べると、次の順になります。放射形と対流形の配置、過熱器の段数、ドラムの有無はボイラー方式によって変わるため、系統図の役割を先に追います。

  1. 給水をエコノマイザで予熱する
  2. 蒸気ドラム・蒸発管で蒸発と気水分離を行う
  3. 一次過熱器で蒸気を加熱する
  4. 過熱低減器のスプレーで蒸気温度を調整する
  5. 二次過熱器で目標温度へ加熱する
  6. 過熱蒸気をタービンなどの使用先へ送る

燃焼用の空気を温める空気予熱器も燃焼ガスの熱を使いますが、加熱する対象は空気です。過熱器との違いは、どの流体へ何の目的で熱を渡すかで整理できます。

過熱度は蒸気温度と同じ圧力の飽和温度の差

過熱度は、蒸気温度がその圧力の飽和温度をどれだけ上回るかを表します。温度だけで求める値ではなく、蒸気温度と圧力を同じ状態のデータとして使うことが必要です。

過熱度の定義
ΔTsh = T − Tsat(p)
ΔTsh:過熱度[K] T:蒸気温度[℃] Tsat(p):圧力pに対応する飽和温度[℃]。温度差はKと℃で同じ数値です。蒸気表の圧力は絶対圧で扱います。

絶対圧1.0MPaの飽和温度は、IAPWS-IF97によると約179.9℃です。同じ圧力で250℃の蒸気なら、250−179.9=70.1なので、過熱度は約70℃となります。

図3:絶対圧1.0MPa・250℃なら過熱度は約70℃

温度尺は同じ圧力の二つの温度を比較しています。250℃そのものが過熱度ではありません。

図は横にスクロールできます。

250℃179.9℃150℃蒸気温度 T飽和温度 Tsat過熱度70.1K圧力は1.0MPaAで共通

物性値はIAPWS-IF97に基づく丸め値。MPaAは絶対圧で、MPaGの同じ数値とは別の条件です。

過熱度の計算例
ΔTsh = 250 − 179.9
ΔTsh ≒ 70.1K(約70℃の温度差)
p=1.0MPaA、蒸気温度250℃の説明例です。

圧力計がゲージ圧を示している場合は、絶対圧へ直してから対応する蒸気表を使います。1.0MPaGを1.0MPaAの表へそのまま入れると、飽和温度と過熱度の両方がずれます。

冷凍・空調で使うスーパーヒートも、冷媒蒸気温度と同圧の飽和温度の差という考え方です。水蒸気の場合は水の蒸気表、冷媒の場合はその冷媒の物性を使って計算します。

過熱低減器は出口温度を調整する

負荷や燃焼条件が変わると、過熱器が吸収する熱量と蒸気の流量の関係も変わります。蒸気温度を目標へ合わせるため、過熱器の段の間へ過熱低減器を設ける構成があります。

スプレー式では、水を蒸気中へ吹き込み、その水を加熱・蒸発させるための熱を蒸気から受け取らせます。過熱器が熱を加える役割なのに対し、過熱低減器は過熱蒸気の温度を下げる役割です。

温度を下げる仕組みと質量・熱収支は、減温注水の制御と計算につながります。蒸気温度と管壁温度には差があり、温度の上限や保護条件は機器の設計に沿って管理します。

過熱器の熱源

過熱には、目的の蒸気温度より高い温度の熱源が必要です。ボイラーの中では燃焼ガスの熱を使い、独立した装置ではガス燃焼や電気ヒーター、誘導加熱などを利用します。

燃焼式では燃料供給や燃焼ガスの排出、電気式では受電容量や電源設備が設置条件になります。必要な蒸気量と出口温度、負荷の変化、工場で使えるエネルギーを合わせて方式を選びます。

電気とガスを併用して負荷を分担する方式もあり、単に小型か大型かだけで熱源は決まりません。加熱の仕組みと入力エネルギーを分けると、温度制御と供給能力の条件を整理できます。

図4:過熱器と一体形の過熱蒸気発生装置を区別する

装置へ入れる流体が蒸気か水かで、担う加熱の範囲が変わります。

構成受け取る流体担当する役割と熱源
ボイラー内の過熱器蒸発・分離した蒸気燃焼ガスの熱で蒸気を過熱する
外置きの蒸気過熱装置別ボイラーなどからの蒸気燃焼・電気等で追加加熱する。蒸気供給設備と組み合わせる
水から発生する一体装置水水の昇温・蒸発・蒸気の過熱までを装置内で行う

商品名に「発生装置」とあっても、必要な入口流体と設備の範囲を仕様で読み分けます。

蒸気を加熱する過熱器単体には、入口となる蒸気の供給が必要です。一方、水から蒸発と過熱まで行う一体形の電気装置なら、別置きの蒸気ボイラーを使わない構成にできます。

一体形でも、電源容量、水質、排熱、設置場所などの条件は機器ごとに定まります。ボイラー設備との境界は、水管ボイラーの構造と合わせて整理できます。

蒸気1t/hを過熱する加熱量の計算例

入口を絶対圧1.0MPaの乾き飽和蒸気、出口を同じ圧力の250℃とする例を考えます。蒸気量は1,000kg/hとし、圧力損失、外部への放熱、運動エネルギーの変化を省いて計算します。

IAPWS-IF97の物性値では、入口の比エンタルピーは約2,777.1kJ/kg、出口は約2,943.2kJ/kgです。差の166.1kJ/kgを蒸気へ加えるため、1時間当たりの加熱量は次のように求まります。

蒸気が受け取る加熱量
Q = ṁ(hout − hin)
Q ≒ 1,000 × (2,943.2 − 2,777.1)
Q ≒ 166,100kJ/h
Q ≒ 166,1003,600 = 46.1kW
ṁ:質量流量[kg/h] h:比エンタルピー[kJ/kg] Q:伝熱速度[kJ/h、換算後はkW]。入口は乾き飽和、出口250℃、圧力1.0MPaA。物性を丸めた説明例です。

この46.1kWは蒸気が受け取る熱で、燃料や電気の実際の入力とは区別します。入口に湿り分があれば蒸発させる熱も必要なので、温度と圧力に加えて入口の状態をそろえます。

比エンタルピーの差で熱量を求める方法は、エンタルピーの意味とヒートバランスに共通します。設備全体では、蒸気への伝熱と外部損失を分けて集計します。

過熱器で過熱蒸気をつくる理由

過熱蒸気は、高い温度や過熱状態を利用したい用途へ供給します。蒸気を再び加熱する手間を掛ける理由は、タービンで取り出す仕事、膨張中の湿り、直接加熱の温度条件などにあります。

飽和蒸気より高いエネルギーを持つ

同じ圧力で比較すると、過熱蒸気は乾き飽和蒸気より高い比エンタルピーを持ちます。タービンへ入る蒸気の状態を高めることで、膨張によって取り出す仕事やサイクルの熱効率を改善する設計につながります。

タービンが使うのは、入口にある熱量そのものではなく、膨張に伴うエンタルピーの低下です。どれだけ仕事へ変わるかは、タービンの熱落差と効率を合わせて考えます。

発電設備全体では、蒸気条件、復水圧力、再熱や再生の構成も関係します。過熱器の位置づけは、ランキンサイクルの中で熱を受け取る過程として捉えられます。

水滴が含まれない

過熱状態の水蒸気は、平衡状態では液体の水滴と共存しません。ただし、水滴を含まない蒸気には乾き飽和蒸気もあり、「飽和蒸気だから必ず水滴を含む」という区分にはなりません。

図5:湿り蒸気、乾き飽和蒸気、過熱蒸気を分ける

同じ圧力で状態を比べた模式図です。水滴の有無と、飽和温度を超えているかは別の情報です。

図は横にスクロールできます。

湿り蒸気乾き飽和蒸気過熱蒸気T=TsatT=TsatT>Tsat蒸気+水滴水滴なし水滴なし

粒は状態を区別する記号で、分子数や乾き度を定量表示していません。過熱度と湿り蒸気の乾き度は別の指標です。

タービン内部で液滴が高速の翼へ当たると、表面の侵食に関係します。入口を過熱しておくことは膨張中の湿りを抑える設計に役立ち、動翼と静翼の状態管理にも関わります。

過熱蒸気も冷却やタービンでの膨張によって飽和状態へ達し、さらに湿り域へ入ると凝縮します。冷たい製品や壁へ接したときの局所的な凝縮も含め、入口が過熱していることだけで全区間の水滴の有無は決まりません。

加熱や乾燥に優位点がある

過熱蒸気は、飽和温度を上げるために圧力を高める方法とは別に、高温の蒸気を得られます。製品へ直接接触させる加熱や乾燥では、高温の気体としての温度条件を利用します。

蒸気で処理空間を満たし、空気の混入を抑える構成では、低酸素の雰囲気をつくれます。酸化を抑えたい加熱に役立ちますが、実際の酸素濃度は装置の気密や置換、外気の侵入で変わります。

熱風との乾燥時間や効率の差は、蒸気温度、対象物、含水率、流速、排気条件などで評価します。過熱という状態だけから一定の短縮率を決めるのではなく、処理条件をそろえた試験で使い方を決めます。

過熱蒸気の用途

蒸気配管と電線管を備えた独立形加熱ユニット
独立形の蒸気加熱設備を表す生成イメージ

代表的な用途は、蒸気タービンの駆動と、製品への高温の直接加熱です。工場では食品の加熱・乾燥、金属部品の乾燥や脱脂、ガラス製品などの洗浄といった処理へ利用されます。

  • 発電:高温高圧蒸気をタービンへ送り、膨張の仕事を取り出す
  • 洗浄・脱脂:蒸気の温度と対象物への接触条件を使う
  • 食品の加熱:焼成などの高温処理と雰囲気を利用する
  • 乾燥:金属部品や食品などの水分を除く処理へ利用する

装置を選ぶときは、処理温度だけでなく、必要な蒸気量、入口蒸気の状態、接触時間、製品の品質を合わせます。蒸気供給と処理槽のどこまでが装置に含まれるかも、設備を比較するための条件です。

一般的な間接加熱では飽和蒸気の特性を使う

製品と蒸気を壁で隔てた一般的な間接加熱では、蒸気の凝縮潜熱を利用します。飽和蒸気は凝縮時に大きな熱を渡し、圧力に対応した温度で加熱しやすいという特性を持ちます。

過熱蒸気のまま熱を渡す区間は、温度が下がりながら顕熱を放出し、凝縮域とは熱伝達の条件が異なります。熱交換器の伝熱面積を計算するときも、過熱冷却と凝縮の区間を分けて扱います。

医療器具のオートクレーブなどの蒸気滅菌では、加圧飽和蒸気を用いる方式が一般的です。工業の過熱蒸気による高温処理と分け、温度が高いという理由だけで滅菌方式を置き換えないことが重要です。

蒸気の清浄性と過熱度は別に管理する

水滴を含まないことと、蒸気が製品へ直接触れてよい品質であることは別の条件です。給水、ボイラー水、配管からの持込みなども関係するため、直接接触する工程では用途に合う蒸気品質を管理します。

過熱器の入口へ液水が流入する状態や、蒸気が少ない状態で強く加熱される条件も、設計上の確認対象です。運転では入口・出口の温度と圧力、流量、保護装置を機器の手順に沿って管理します。

過熱器のよくある質問

過熱器とボイラーは同じものですか?

過熱器は蒸気をさらに加熱する部分で、ボイラーの内部に組み込む構成と、外付けする構成があります。水から蒸発と過熱まで行う一体装置もあるので、入口流体と装置の担当範囲で読み分けます。

過熱度70℃なら蒸気温度も70℃ですか?

過熱度は、その圧力の飽和温度から上乗せされた温度差です。絶対圧1.0MPaでは飽和温度が約179.9℃なので、蒸気温度250℃の過熱度が約70℃となります。

過熱器と過熱低減器の違いは何ですか?

過熱器は蒸気へ熱を加え、過熱低減器は過熱蒸気の温度を下げます。段階的に加熱するボイラーでは、過熱器の段の間へスプレー式の低減器を置き、最終出口温度を調整する構成があります。

再熱器も同じ役割ですか?

再熱器は、タービンで一度膨張した蒸気を受け取り、再び加熱して次のタービン段へ送る機器です。最初に発生した蒸気を加熱する過熱器とは、サイクル内の入口状態と位置が異なります。

水と電気だけで動く過熱器もありますか?

水の昇温・蒸発・過熱までを一体で行う電気式の発生装置があります。蒸気だけを受けて過熱する装置とは範囲が違うため、必要な電源、水質、排熱などの設備条件も合わせて選びます。

まとめ

過熱器は、蒸気をその圧力の飽和温度以上へ加熱する熱交換器です。ボイラー内の燃焼ガス通路に置く構成から、工場で使う独立した電気式・燃焼式の装置まで、用途に応じた方式があります。

  • 過熱度は蒸気温度と同じ圧力の飽和温度の差で求める
  • ドラム形の一例では、蒸発・分離した蒸気を過熱器へ送り、段間の過熱低減器で温度を調整する
  • タービンでは熱落差や湿り、直接加熱では高温・雰囲気の条件を利用する
  • 乾き飽和蒸気も水滴を含まないため、乾き度と過熱度を分ける
  • 過熱器単体と、水から蒸発まで行う一体形装置を区別する

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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