千代田化工建設とは|LNGに強いEPCの実績と経営再建の歩み

夕暮れの海沿いに広がるLNG液化プラントと貯蔵タンク

千代田化工建設は、LNG(液化天然ガス)などのプラント(大型の生産設備)を、設計から建設まで一括で請け負う会社です。この請け負い方はEPCと呼ばれます。完成工事高(一般の会社の売上高にあたる)の約6割は、LNG・その他ガスの案件です。

2026年3月期は過去最高益でした。ただし、米国の大型LNG案件で以前に計上した損失の一部が、決算上の利益として戻った分も含まれます。2019年の経営危機で受けた支援の返済にあたる、優先株の償還(買い戻し)も、まだ途中の段階です。

この記事では、どんな会社か、事業構成、LNGの強み、日揮・東洋エンジニアリングとの違いを整理します。続いて、経営危機と再建の歩み、これからの事業、働く場・取引先として見た特徴を順に見ていきます。

もとにしたのは、2026年10月時点の公開情報(決算資料・中期経営計画・適時開示・ニュースリリース)です。

この記事の内容は、動画でも解説しています。

目次

千代田化工建設はどんな会社か

プラントの配管図面を広げて確認するエンジニアの後ろ姿

一言でいうと千代田化工建設は、LNG(液化天然ガス)や石油・化学のプラントを、設計から建設まで一括で請け負うエンジニアリング会社です。

この請け負い方はEPC(設計・調達・建設を一括で請け負う)と呼ばれ、発注者は窓口を一本化したうえで、約束した性能が出る状態で設備を受け取れます。

EPCの役割はプラント業界の企業の種類と仕事の流れでも整理しています。

本社は横浜市のみなとみらいにあり、従業員数は連結3,489名、単体1,661名(2026年3月31日現在)です。

日揮のように素材メーカーの事業会社を持つグループではなく、エンジニアリングそのものが事業の中心という点が特徴です。プロジェクトの実績は世界およそ60の国と地域に広がっています。

戦後の製油所づくりから始まった

設立は1948年1月20日です。創業の理念は「技術による社会への奉仕」で、最初は戦後の復興期に国内の製油所や石油化学プラントの復旧・新設を手がけました。

1960年には三菱石油から、同社グループ初となる更地からの新設製油所(水島製油所)の建設を一括で受注しています。

1970年代以降は海外へ進み、1984年にはサウジアラビアで原油処理能力日量25万バレルの大型製油所を完成させました。

1990年代からはLNGが主役になり、2004年にはカタール向けに年産780万トンの大型LNGプラント2系列を受注します。

製油所で培った技術を土台に、LNGで世界の大型案件を担う会社へ育ってきた流れです。

図1:千代田化工建設のあゆみ

製油所から始まり、LNGで大きくなり、経営危機を経て事業の幅を広げています。

1948年設立
3,489名連結従業員(2026年3月末)
約60実績のある国・地域
71%海外売上比率(2026年3月期)
  • 1948設立戦後復興期、国内の製油所・石油化学プラントの復旧と新設から出発
  • 1960水島製油所を一括受注三菱石油向け。グループ初の更地からの新設製油所
  • 1984サウジアラビアの大型製油所が完成原油処理能力 日量25万バレル。海外の石油・石化へ本格進出
  • 2004カタールで大型LNGを受注年産780万トンのLNGプラント2系列。LNGが事業の主役に
  • 2019経営危機と再生計画米国・インドネシアのLNG案件で巨額損失。三菱商事などの支援で再建へ
  • 2026過去最高益・優先株の償還開始2026年3月期に純利益847億円。6月に優先株の約6割を取得・消却

※出典:千代田化工建設「会社概要」「私たちのあゆみ」「すぐわかる千代田化工建設」、2026年3月期決算概要、2026年6月30日適時開示。

事業構成と売上の柱(2026年3月期)

2026年3月期の連結完成工事高(一般の会社の売上高にあたる)は4,939億円、営業利益は821億円でした。分野で見ると、LNG・その他ガス関係が2,965億円と全体の60%を占めます。

石油・石油化学(658億円)、医薬・生化学・一般化学(640億円)、環境・新エネルギー・インフラなど(676億円)がそれぞれ1割強です。

同社は事業を「エネルギー」と「地球環境」の二つの分野に分けて開示しています。エネルギーはLNGと石油・石化、地球環境は医薬・化学や環境・新エネルギーなどです。

2026年3月期の完成工事総利益1,005億円のうち858億円がエネルギー分野で、利益の面でもLNGの比重が大きい年でした。

図2:完成工事高の内訳(2026年3月期)

売上の6割がLNG・その他ガス、7割が海外です。受注高で見ると、日本の比率が高くなっています。

分野別(合計4,939億円)

LNG・その他ガス2,965億円 60%
環境・新エネ・インフラ等676億円 14%
石油・石油化学658億円 13%
医薬・生化学・一般化学640億円 13%

地域別(合計4,939億円)

中近東・アフリカ1,772億円 36%
日本1,429億円 29%
北中南米1,325億円 27%
アジア・オセアニア394億円 8%
同じ期の受注高2,980億円では日本が1,520億円(51%)、受注残高6,131億円では日本が1,990億円(32%)。売上・受注・受注残で地域の比率は異なる。

※その他海外(20億円)は省略。出典:千代田化工建設 2026年3月期決算概要(2026年5月11日)。

売上の7割は海外、最大は中東

地域別の完成工事高は、中近東・アフリカが1,772億円で最大、北中南米が1,325億円と続きます。日本は1,429億円で29%です。

中東ではカタールのLNG案件、北米では米国のLNG案件が進んでおり、海外の大型LNG案件の進み具合が売上を大きく左右する構図になっています。

2027年3月期の会社予想は、完成工事高3,400億円、営業利益100億円と大きく下がります。大型案件が完成に近づくと売上が減り、次の大型案件がすぐに埋まるとは限らないためです。

こうした受注産業の利益の出方は、プラント業界の商流と利益構造で詳しく解説しています。

受注高では国内が約半分に

一方、2026年3月期の受注高2,980億円を地域別に見ると、日本が1,520億円と51%を占めました。国内LNG受入設備の増強や化学設備、全固体電池材料の製造装置など、比較的規模の小さい国内案件を積み上げた結果です。

ただし受注高は「その年に契約した金額」で、売上になるのは数年かけてです。2026年3月末の受注残高6,131億円のうち、日本は32%で、中近東・アフリカが58%を占めます。

受注の中身は国内へ動き始めているものの、売上の構成が変わるのはこれからと読むのが妥当です。

強み:LNGプラントで積み上げた建設実績

霜がついたLNGプラントの極低温配管とバルブの接写

千代田化工建設の強みとして最もよく挙がるのがLNGプラントです。

同社の開示によると、LNGプラントのEPC実績は26プロジェクト・47系列、生産能力の合計は年2億2,000万トン(2024年3月末現在)にのぼります。

系列とは、ガスを冷やして液化する設備の一単位のことで、大きなLNG基地は複数の系列を並べてつくられます。

LNGプラントは天然ガスを極低温まで冷やして液体にする巨大な設備で、1件の投資額が大きく、砂漠や寒冷地など厳しい場所に建てられます。

発注者は失敗が許されないため、同じ規模の設備を完成させた実績を持つ会社に任せたがる傾向があり、実績の多さそのものが次の受注の武器になります。

初めての案件は1976年のUAE向けで、以来およそ50年にわたって積み上げてきました。

図3:国別のLNGプラント建設実績

生産能力の合計は年2億2,000万トン。そのうち約46%がカタール向けです。

カタール(8件・16系列)101.9百万t
米国(4件・9系列)43.0百万t
ロシア(2件・5系列)26.1百万t
インドネシア(5件・6系列)14.2百万t
オマーン(2件・3系列)9.9百万t
オーストラリア(1件・2系列)8.9百万t
パプアニューギニア(1件・2系列)6.9百万t
UAE・アルジェリア(3件・4系列)9.4百万t

※生産能力は年産。2024年3月末現在のEPC実績。UAE(4.7)とアルジェリア(4.7)は合算して表示。出典:千代田化工建設「LNGプラント」事業紹介ページ。

カタールとともに伸びた実績

実績の中心はカタールで、16系列・年1億190万トン分を手がけてきました。現地グループ会社の千代田アルマナ・エンジニアリングとの協業を含め、カタールの顧客向けに100件以上の案件を実施しています。

一つの産ガス国と長く付き合い、拡張のたびに声がかかる関係が、実績の厚みを生んでいます。

いま遂行中の大型案件も、カタール・エナジー向けのNFE LNG(2021年受注、年産800万トン×4系列、仏テクニップと共同)です。

2026年1月には、その次の拡張にあたるノース・フィールド・ウエスト(NFW)LNGの基本設計(FEED、建設前の詳細な設計と見積の土台づくり)も受注しました。

完工すればカタールのLNG生産能力は年1億4,200万トンに達するとされています。

米国の大型案件と、CO2を減らすLNG

米国では、テキサス州のゴールデンパスLNG(2019年受注、年産520万トン×3系列)を米マクダーモットとの共同事業体で進めています。

2026年4月には第1系列の建設と試運転を終え、最初のLNG生産を達成しました。第2・第3系列の工事は続いています。

技術面では、LNGをつくる過程のCO2排出を減らす取り組みにも実績があります。

米国の案件では、冷媒の圧縮機をガスタービンではなく電動モーターで動かす方式を導入し、CO2排出量を48%削減したと同社は説明しています。

中東のカタールNFE LNGでは、原料ガスから分離したCO2を地下に貯留する大規模なCCS設備を併設しています。

日揮・東洋エンジニアリングとの違い

千代田化工建設、日揮ホールディングス、東洋エンジニアリングの3社は、いずれもプラント建設を本業とするエンジニアリング会社です。同じ2026年3月期の決算資料で並べると、規模、事業の柱、財務の厚みに違いがあります。

図4:専業エンジニアリング3社の比較(2026年3月期)

千代田はLNGへの集中度が高く、利益は最も大きい一方、財務の厚みは日揮に及びません。

千代田化工建設
日揮HD
東洋エンジニアリング
売上高
4,939億円(完成工事高)
7,452億円
1,829億円
営業利益
821億円(過去最高)
353億円
190億円の損失
自己資本比率
22.2%
51.2%
16.7%
事業の柱
EPCが中心。売上の60%がLNG・その他ガス
EPCと、触媒・セラミックスの機能材製造の二本柱
石油化学、化学・肥料、石油・ガス、発電
LNGの実績
47系列・年2.2億トン(2024年3月末、同社開示)
通算48系列(同社開示)
―
利益の特徴
米LNG案件の損失戻入れで大幅増益
2期連続の営業損失から回復
ブラジルの発電案件で収支悪化

※各社の2026年3月期決算資料による連結の数字。自己資本比率は2026年3月末。LNG実績は各社の開示で集計の基準日・定義が異なるため、単純な比較はできません。千代田の自己資本比率は優先株償還後の2026年6月末に15.2%。

日揮との最大の違いは、エンジニアリング以外の稼ぎ頭を持つかどうかです。日揮は触媒やセラミックスをつくる機能材製造事業を持ち、EPCの業績が振れても素材の利益が下支えします。

千代田は売上・利益ともEPCが中心で、大型LNG案件の採算がそのまま業績に出やすい構造です。

LNGの系列数はどちらも40系列台後半で、両社ともLNGを得意とする点は共通しています。規模では日揮が売上で約1.5倍、従業員で2倍強です。

東洋エンジニアリングは売上の約6割を石油化学と化学・肥料が占め、得意分野が千代田・日揮とはやや異なります。業界全体の顔ぶれは次の記事にまとめています。

2019年の経営危機と再建の歩み

千代田化工建設を調べると必ず出てくるのが、2019年の経営危機です。ここでは、何が起きたのか、どう立て直したのか、いまどこまで戻ったのかを、決算と適時開示の数字で順に追います。

図5:営業利益の推移

大型案件の採算次第で、赤字と黒字を大きく行き来してきました。

2018年3月期△123
2019年3月期△1,998
2020年3月期268
2021年3月期70
2022年3月期105
2023年3月期181
2024年3月期△150
2025年3月期244
2026年3月期821
2027年3月期予100

※単位は億円。左(橙)が営業損失、右(青)が営業利益。斜線は会社予想。2024年3月期はゴールデンパスLNGの追加費用約370億円を含む。出典:千代田化工建設 2026年3月期決算概要「主要財務データの推移」。

何が起きたのか

2019年3月期、千代田化工建設は営業損失1,998億円、純損失2,149億円を計上し、2019年3月末には純資産がマイナス592億円の債務超過に陥りました。

主な原因は、米国のキャメロンLNGとインドネシアのタングーLNGという二つの大型案件です。

同社の説明では、キャメロンでは米国の現地作業員の生産性が想定より低く、工事の最終盤にも想定外の追加コストが発生しました。タングーでは複数の要因が重なって工事の進捗に大きな影響が出ています。

総額を固定して請け負う契約では、こうしたコスト増を原則として受注側が負担するため、損失が一気に膨らみました。

三菱商事の支援とリスク管理の見直し

再建のため、同社は総額1,800億円の資金を調達しました。内訳は、大株主の三菱商事による優先株式700億円と長期融資900億円、三菱UFJ銀行の劣後ローン200億円です。

優先株式は議決権がない代わりに配当を優先して受け取れる株で、資本を厚くしつつ既存株主の議決権が薄まるのを抑える狙いがありました。

あわせて、外部の人材を入れた「戦略・リスク統合本部」で、受注時のリスク審査を厳しくしました。

経営計画2025では、再生計画を立てた後に受注した案件では損失が出ていないと総括しており、三菱商事も2026年1月のリリースで同じ評価を示しています。

一方で、2019〜2024年度の純利益は平均56億円にとどまり、利益目標は未達でした。

ゴールデンパスの契約改定と優先株の償還

再生計画の前に受注したゴールデンパスLNGでは、2024年3月期に完成までの追加負担として約370億円を計上し、再び営業損失となりました。

その後、顧客との交渉で2025年11月に第2・第3系列の改定EPC契約を結び、費用の分担を見直しています。

これにより以前に計上した約370億円を戻し入れられたことが、2026年3月期の過去最高益の大きな要因です。

利益の回復を受けて、2026年1月には三菱商事と優先株の償還条件を変える合意をしました。

株価に連動していた償還額を763億円に固定し、未払いの配当を含む約900億円を2028年6月末までに返していく方針です。

6月30日には優先株の63.1%にあたる1億1,040万株を約551億円で取得・消却し、三菱UFJ銀行の劣後ローン200億円も期限前に返済しました。

図6:経営危機から財務的自立までの道のり

ここまでに終えたことと、これから目指すことを分けて示します。

実施済み
2019.03債務超過米国・インドネシアのLNG案件で純損失2,149億円。純資産△592億円
2019.051,800億円の財務強化策三菱商事の優先株700億円・融資900億円、三菱UFJ銀行の劣後ローン200億円
2019〜受注時のリスク管理を厳格化再生計画策定以降に受注した案件では損失なし(同社・三菱商事の評価)
2024.03期ゴールデンパスで再び損失完成までの追加負担約370億円を計上し、営業損失150億円
2025.11改定EPC契約を締結第2・第3系列の費用分担を見直し。追加負担を戻し入れ、過去最高益へ
2026.06優先株の6割強を消却約551億円で取得・消却。劣後ローンも返済。自己資本比率は15.2%に
目標(2026年10月時点)
〜2028.06優先株の全株償還年度ごとの分配可能額をすべて償還に充てる計画
償還後プライム市場への変更現在は東証スタンダード市場。市場区分の変更を目指す
償還後普通株主への復配2026年3月期の普通配当は無配

※出典:2019年3月期本決算概要、経営計画2025、2026年1月28日・6月30日の適時開示、三菱商事ニュースリリース(2026年1月28日)。

注意したいのは、利益が戻ったことと財務が自立したことは同じではない点です。償還で自己資本は減り、2026年6月末の自己資本比率は15.2%と、3月末の22.2%から下がりました。

2028年6月までに償還を終えられなければ、7月以降は優先配当の利率が年3%から12%に上がる条件です。そのため、今後数年の利益の積み上げが再建の仕上げを左右します。

経営計画2025と広がる事業領域

試験棟に設置された小型パイロット装置を真上から見た様子

2025年5月に公表した「経営計画2025」(2025〜2027年度)のテーマは「自己変革」です。2024年3月期の損失で、大型案件しだいで業績が大きく振れる収益構造を改めて認識したことが出発点だと同社は説明しています。

図7:経営計画2025の目標と5つの重点取組

3年間は収益の安定化と多様化を最優先にし、2028年以降の成長につなげる計画です。

150億円純利益(3年平均)
10%以上粗利率(3年平均)
9,500億円受注高(3年累計)
10億円Non-EPC純利益(2027年度)
① 海外の既存大型案件を完遂カタールNFE LNGと米国ゴールデンパスLNGを確実に完成させる
② 海外案件の取り組み方を変える大型への依存を下げ、1件あたりのリスクを抑える。リスク分担型の契約やプロセス設計に絞った提案
③ 国内案件の収益を広げる国内の目標受注高を再生期間の平均1,200億円から2027年度2,000億円へ
④ 事業共創を広げる構想・技術開発の段階から顧客に伴走し、EPCの前後(企画・操業支援)でも稼ぐ
⑤ 中核人財の層を厚くするEPCと新事業の両方を担える人材を、ローテーションや外部登用で育てる
10年後の姿連結純利益300億円、そのうちEPC以外(Non-EPC)の比率を20%に

※Non-EPCは触媒・ライセンス・受託研究開発・デジタルサービス・事業投資など。純利益目標は2026年1月の開示で年平均150億円と確認。出典:千代田化工建設「経営計画2025」「新たな資本政策と今後の戦略」。

大型LNG一本足からの分散

海外では、これまでの「総額固定で一括請負」の超大型案件だけでなく、パートナーとリスクを分け合う契約や、かかった費用に報酬を上乗せする契約も選ぶ方針です。LNGでも、得意なプロセス設計を切り出した提案など、関わり方を変えるとしています。

国内は、前述の受注の国内シフトが示すとおり、すでに動き始めています。2025年8月には西部ガスのひびきLNG基地でタンク1基の増設に伴うプラント設備のEPCを受注しました(2029年度上期完工予定)。

規模は小さくても採算を読みやすい国内案件を厚くすることで、業績の振れを抑える狙いです。

水素・CCS・電池材料・ライフサイエンス

新しい分野の取り組みは数多く発表されていますが、受注して建設中のものと、設計や実証の段階のものが混ざっています。次の図では、2026年10月時点の公表内容を段階別に分けました。

図8:新しい分野の取り組みを段階別に整理

将来性を先取りしすぎないよう、案件の段階で見分けます。

受注・建設中
  • 出光興産の硫化リチウム大型製造装置(全固体電池材料の中間原料。コベルコE&Mと共同、2027年6月完工予定)
  • 出光興産の固体電解質大型パイロット装置(年数百トン規模、2027年中完工予定)
  • ENEOSのDirect MCH大規模実証プラント(水素の運び方の実証)
  • 西部ガス ひびきLNG基地の能力増強
基本設計・実証
  • Jパワー・九州電力の松浦地点CCSのCO2液化設備の基本設計(2030年代初頭の事業化を目指す計画)
  • カタールNFW LNGの基本設計
  • シンガポールでのSPERA水素の脱水素実証(2024年6月〜2025年9月に運転完了)
  • NTT東日本とIOWNを使った遠隔運転・保全の実証(2026年7月〜2027年2月予定)
提携・開発
  • トヨタと共同開発の水電解装置(豊田通商など3社が愛知製鋼知多工場で行う低炭素水素の製造供給事業へ納入を計画)
  • 日本郵船グループとのCCS分野の協業合意
  • シェルとのエンジニアリング・調達サービスの包括契約
  • 筑波大学・京都大学などとのiPS細胞由来免疫細胞の製造工程に関する共同研究(再生医療分野)

※出典:千代田化工建設のニュースリリース(2025年3月〜2026年9月)。段階は各リリース時点の内容による。

特に事業化に近いのが、全固体電池の材料です。出光興産向けでは、小型実証設備の能力増強を2025年に終え、中間原料の硫化リチウムと固体電解質の大型装置を建設中です。

2026年1月には固体電解質の量産に向けた戦略的パートナーシップも結びました。全固体電池とリチウムイオン電池の製造工程の違いをあわせて読むと、なぜ化学プラントの技術が生きるのかが見えてきます。

水素では、水素をトルエンと結びつけてMCH(メチルシクロヘキサン)という常温・常圧で運べる液体にする「SPERA水素」が同社独自の技術です。

CO2を回収して地下に貯めるCCSや水素は、LNGで培ったガス処理・液化の技術を横に広げやすい分野といえます。

建てた後の運転・保全へ

もう一つの柱が、完成後のプラントの運転・保全(O&M)です。

2026年9月には、設計から保全、デジタルツイン、AIによる最適化までのサービスを一つにまとめた「plantOS ver.3」を発表しました。

国内では2023年4月に工事子会社3社を合併した千代田エクスワンエンジニアリングが、現場の保全工事を担っています。

国内の製油所や化学プラントは稼働年数の長い設備が多く、建て替えや保守の需要は底堅いというのが同社の見方です。

設備を止めて点検・補修するプラントの定期修理(定修)のような仕事は、大型の新設案件とは違い、毎年の需要が積み上がる性質を持っています。

働く場・取引先として見た千代田化工建設

プラント建設現場でクレーンが配管モジュールを据え付ける様子

最後に、就職・転職を考える人と、取引を検討している企業それぞれの目線で、公開情報から読み取れる特徴を整理します。働き方は職種や担当案件によって大きく異なるため、会社として公表している施策と、事業の性質から言えることに絞ります。

就職・転職で確認したいポイント

同社は人材を職種ごとに分けて育成しています。新事業を育てるビジネスインキュベーション職や、設計などのエンジニアリングプロフェッショナル職があります。ほかに、プロジェクトマネジメント職、管理部門のコーポレートプロフェッショナル職などです。

プラントエンジニアの仕事のうち、千代田が担うのは主に「建てる」側のEPCですが、O&Mや新事業の比重も増えつつあります。

  • 担当する分野:海外の大型LNG、国内のLNG受入・化学・電池材料、医薬、O&Mのどれか
  • 職種:プロセス・機械・電気計装などの設計、調達、建設・試運転、プロジェクト管理、新事業開発
  • 案件の波:大型案件の完成が近づく2027年3月期は売上が減る見通しで、部署ごとの忙しさや海外赴任の機会は受注状況で変わる
  • 待遇の動き:2026年度はベースアップと定期昇給を合わせて平均5.9%の賃上げを実施

経営計画では、EPCと新事業の両方を担える中核人材を、国内外のローテーションや他社・異業種での経験、外部人材の登用で厚くするとしています。

大型LNGの経験と、国内の新分野の両方に関われる可能性があるのは、事業を広げている今の時期ならではの特徴です。

取引先として確認したいポイント

機器メーカーや商社、工事会社にとって、千代田化工建設は国内外で機器と資材を調達する大口の顧客です。一方で、総額を固定した契約を経験してきた会社だけに、納期とコストに対する要求は厳しくなりやすいと考えておくべきでしょう。

  • 案件の段階:基本設計(FEED)の段階か、EPC契約が結ばれた後か。FEEDは仕様が固まる前で、機器メーカーにとっては提案の入口になりやすい
  • 国内の案件:LNG受入設備の増強、一般化学設備、全固体電池材料の製造装置など、受注残に国内の設備が並ぶ
  • 海外の案件:カタールや米国の大型LNGは、現地の規制や輸送経路の制約も含めた対応が求められる
  • 運転・保全:plantOSや遠隔O&Mの実証など、センサー・通信・制御機器メーカーとの連携の余地がある

特に国内の新分野は、実証から量産設備へ進む途中の案件が多く、早い段階で仕様の相談に乗れる取引先が重宝される領域です。業界の主要企業との位置関係は、次の記事でも確認できます。

まとめ

この記事のまとめ
  • 千代田化工建設は1948年設立の総合エンジニアリング会社で、完成工事高の60%がLNG・その他ガス、71%が海外(2026年3月期)
  • LNGのEPC実績は47系列・年2.2億トン(2024年3月末)で、約46%がカタール向け。実績の厚さが受注の武器になっている
  • 2019年に大型LNG案件の損失で債務超過となり、三菱商事などから1,800億円の支援を受けて再建を進めてきた
  • 2026年3月期の過去最高益にはゴールデンパスLNGの損失戻入れが効いている。優先株は2028年6月までの全償還が目標
  • 経営計画2025で大型LNG依存からの分散を進め、受注高の半分が国内に。電池材料・水素・CCS・O&Mへ広げている

千代田化工建設を知ることは、プラントの受注産業がどのように利益を出し、どこでつまずくのかを知ることにもつながります。関連する職種としては購買・調達、技術テーマとしては脱炭素・カーボンニュートラルがこの会社と深く関わります。

プラント業界のほかの企業や市場の動きは、プラントエンジニアリングの業種ページから関連記事もあわせてご覧ください。

出典

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MONOSCOPEの運営者

プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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