工場のKPI一覧|QCDSE別の指標・計算式と目標設定の考え方

工場の通路で生産管理板を確認する作業者の後ろ姿

工場の管理指標は、どう選べば判断に使える1枚の表に収まるのか。不良率、稼働率、納期遵守率、度数率(労働災害の起きる頻度)と、指標は部署ごとに増え、月次の報告書が数十項目になる工場も少なくありません。

手掛かりになるのが、品質・原価・納期・安全・環境(QCDSE)の5領域です。

KPI(目標の達成度を測る重要な指標)を領域ごとに分け、「結果を表す指標」と「結果より先に動く指標」を組にすると、全体は1枚の表に収まります。

手間がかかるのは指標を並べることより、定義をそろえて目標を決めるところです。

この記事では、工場のKPIをQCDSE別の一覧で示したうえで、各指標の定義と計算式、目標設定の考え方、日次・週次・月次での見方の順に整理します。文中の計算例は、説明のための想定例です。

目次

工場のKPI一覧|QCDSE別の早見表

まず全体像です。工場でよく使われる指標を5領域に分け、結果を表す指標と、結果より先に動く指標に並べると、次の表になります。

図1:工場のKPI一覧(QCDSE別の早見表)

5つの領域ごとに、結果指標と先行指標を組にして持ちます。

結果を表す指標
先に動く指標(現場で日々見る)
Q 品質
クレーム件数、流出不良率(ppm)、工程内不良率
直行率、手直し率、工程能力指数、検査での指摘件数
C 原価・生産性
製造原価、原価差異、労働生産性
設備総合効率、稼働率、歩留り、材料・エネルギーの原単位
D 納期・在庫
納期遵守率、製造リードタイム、在庫回転率
生産計画達成率、仕掛り量、納期遅れの件数
S 安全
休業災害件数、度数率、強度率
ヒヤリハット報告件数、リスクアセスメントの実施件数、指摘事項の是正率
E 環境
エネルギー消費原単位、CO2排出量、廃棄物排出量
設備別の電力・蒸気使用量、廃棄物の分別状況

※結果指標と先行指標の分け方は目安です。使う指標は、製品と生産方式に合わせて選びます。

KPI(重要業績評価指標)は、重要な目標がどこまで達成できているかを数値で表したものです。

製造現場の運用管理を対象にした国際規格ISO 22400は、KPIを重要な目標の達成度を定量化したものと定義しています。第2部(ISO 22400-2:2014)は、現場で使われている指標を選び、式とともに示したものです。

規格の編集者による解説では、その数は34個とされています。

これらの指標は、すべてを使うよう求めるものではありません。同じ解説では、現場でよく使われている指標の例であり、自社の目的に合うものを選ぶための候補と位置づけられています。

なお、第2部には2017年にエネルギー管理の指標を加える追補が発行されており、ISOのサイトでは改訂版の作成が進められていると案内されています。

QCDに安全と環境を加える理由

生産管理の基本は品質(Q)・原価(C)・納期(D)です。JIS Z 8141(生産管理用語)も、生産管理を所定の品質・原価・数量および納期で生産するための活動と説明しています。QCDSEは、これに安全(S)と環境(E)を加えた枠組みです。

QCDだけで指標を組むと、増産や原価低減の数字が良く見える裏で、安全や環境への負荷が増えていても気づきにくくなります。5領域を並べておくのは、どこかを犠牲にして別の数字を作っていないかを確かめるためです。

なお、日本プラントメンテナンス協会は、生産性(P)とモラール(M)を加えたPQCDSMEの7つの視点で成果指標を整理しています。呼び方は違っても、領域に分けて漏れを防ぐという考え方は共通です。

この記事では、生産性の指標をC(原価)の章でまとめて扱います。

結果指標と先行指標を分ける

結果指標は、月が締まってから分かる数字です。クレーム件数、製造原価、度数率などがこれにあたり、起きたことの大きさは分かりますが、その数字を見てから動いても当月の結果は変えられません。

先行指標は、結果より先に動き、現場の行動で変えられる数字です。直行率や設備総合効率、ヒヤリハットの報告件数などが該当します。工場長が月次で見るのは結果指標、現場が毎日見るのは先行指標と役割を分けると、報告書の項目は大きく減らせます。

Q(品質)の指標と計算式

検査室で加工部品を測定する検査員の手元

品質の指標は、社内で見つけた不良と、社外へ出てしまった不良に分けて持ちます。代表的な指標と式は次のとおりです。

  • 工程内不良率=不良数÷検査数(または生産数)
  • 直行率=手直しなしで一度で合格した数÷投入数
  • 手直し率=手直しした数÷投入数
  • 流出不良率(ppm)=客先で見つかった不良数÷出荷数×1,000,000
  • 歩留り=産出された製品の量÷投入した主原材料の量

このうち歩留りは、JIS Z 8141で「投入された主原材料の量に対する、実際に産出された製品の量の比率」と定義されています。

一方、直行率や不良率はJISの生産管理用語には見当たらず、分母と分子の取り方が会社によって異なります。

規格の編集者による解説では、ISO 22400の指標として次のものが挙げられています。直行率(First pass yield)、廃棄率(Scrap ratio)、手直し率(Rework ratio)にあたるものです。

図2:投入1,000個の内訳で見る品質指標(想定例)

同じ1,000個でも、どこまでを「良品」と数えるかで数字が変わります。

投入 1,000個ある工程に1か月で投入した数(想定)
検査の結果
一度で合格 940個手直しなしで次工程へ
手直しして合格 40個修正や再加工のあとに合格
廃棄 20個手直しできず不良として処理
直行率=940÷1,000=94.0% / 手直し率=40÷1,000=4.0% / 廃棄率=20÷1,000=2.0%
手直し後の合格を含めた良品率=(940+40)÷1,000=98.0%

※数値は説明のための想定例です。手直し品を良品に含めるかどうかは、社内で定義を決めておきます。

図2の例では、良品率は98.0%でも直行率は94.0%です。差の4ポイントは手直しで救った分で、その作業にかかった工数は原価に乗っています。

出荷できたかどうかを見る良品率と、一度で作れたかを見る直行率は、目的が違う指標として両方持っておくと原因を追いやすくなります。

社外へ出た不良は、件数と率の両方で見ます。たとえば1年間に500,000個を出荷し、客先で15個の不良が見つかった場合、流出不良率は15÷500,000×1,000,000=30ppmです(想定例)。

出荷数が大きく変わる製品では、件数だけを追うと良くなったのか悪くなったのかを読み違えます。

寸法や特性のばらつきを先に捉えたい場合は、不良が出る前に動く指標として工程能力指数(Cp・Cpk)を使います。規格の幅に対して工程のばらつきがどれだけ余裕を持っているかを表す数字で、不良率が小さくなって差が見えにくい工程で役に立ちます。

C(原価)と生産性の指標と計算式

原価は、月次決算が締まるまで正確な数字が出ません。そこで現場では、原価を左右する物量の指標に置き換えて日々の管理をします。原価そのものの指標と、生産性・設備の指標を並べると次のようになります。

図3:原価と生産性の主な指標

金額の指標は月次で、物量の指標は日次・週次で見ます。

製造原価
原価材料費+労務費+経費。製品1個あたりに直して、予算や前年と比べる
原価差異
原価標準原価と実際発生額の差。材料・労務・経費のどこでずれたかに分けて見る
原単位
原価材料やエネルギーの使用量÷生産量。製品1単位をつくるのに使った量
労働生産性
生産性生産量÷延べ作業時間(物的)。付加価値額÷延べ作業時間(付加価値)
稼働率
設備・人有効稼働時間÷利用可能時間(機械)、または就業時間(人)
設備総合効率
設備・人時間稼働率×性能稼働率×良品率。停止・速度・不良のロスをまとめて表す

※原価の区分や配賦の方法は、会社の原価計算のルールによって異なります。

製造原価と原価差異

製造原価の内訳は、国内の原価計算の拠りどころである原価計算基準の形態別分類に沿って、材料費・労務費・経費の3つに分けるのが基本です。

原価差異は、あらかじめ決めた標準原価と、実際にかかった金額との差です。原価計算基準は、標準原価計算制度における原価差異を「標準原価と実際発生額との間に生ずる差額」と定めています。

工場長が見るべきなのは差の合計よりも内訳です。材料の単価が上がったのか、使用量が増えたのか、作業時間が延びたのかで打ち手がまったく変わるため、価格の要因と数量の要因に分けて報告させる形にしておきます。

差異の符号(有利をプラスにするかマイナスにするか)も社内でそろえておくと、読み違いを防げます。

労働生産性

生産性は、投入量に対する産出量の比率です。日本生産性本部は、産出を生産量で測る物的労働生産性と、付加価値額で測る付加価値労働生産性を区別して示しています。

たとえば月産12,000個、延べ作業時間2,400時間の職場なら、物的労働生産性は12,000÷2,400=5.0個/人時です。

同じ月の付加価値額が3,600万円なら、付加価値労働生産性は3,600万円÷2,400時間=15,000円/人時になります(いずれも想定例)。

品種構成が月ごとに変わる工場では、個数よりも標準時間や付加価値に換算した数字のほうが比較しやすくなります。

稼働率と設備総合効率

JIS Z 8141は、稼働率を「就業時間に対する人の、または利用可能時間に対する機械の、有効稼働時間の比率」と定義しています。設備総合効率は同じJISで、時間稼働率×性能稼働率×良品率の式で示されています。

時間稼働率85%、性能稼働率90%、良品率98%の設備なら、0.85×0.90×0.98=0.7497で、設備総合効率は75.0%です(想定例)。3つの率の測り方やロスとの対応は設備総合効率(OEE)と7大ロスの記事で詳しく扱っています。

注意したいのは、稼働率や設備総合効率を単独の目標にしないことです。売れる数以上に作れば数字は上がりますが、その分は在庫になります。設備の指標は、在庫や納期の指標と並べて見るのが前提です。

D(納期・在庫)の指標と計算式

納期の指標は、顧客との約束を守れたかを見る指標と、守るための余力を見る指標に分かれます。

  • 納期遵守率=約束した納期どおりに納めた件数÷納入件数
  • 生産計画達成率=計画どおりに完成した数÷計画数
  • 製造リードタイム=素材が準備されてから完成品になるまでの時間
  • 在庫回転率=一定期間の所要量÷平均在庫量
  • 在庫回転期間=対象期間÷在庫回転率

納期遵守率は、月の納入400件のうち388件が約束どおりなら388÷400=97.0%です(想定例)。

ただしこの指標はJISの生産管理用語に定義が見当たらず、「約束した納期」を顧客の希望日とするか、自社の回答日とするかで数字が変わります。

件数で数えるか数量で数えるか、分納をどう扱うかも含めて、定義を文書にしておく必要があります。

生産計画達成率は、品目ごとに見るのが基本です。ある品目の作りすぎで別の品目の不足を埋めて合計100%にしても、不足した品目の納期は守れません。合計の数字と、計画どおりだった品目の割合を並べておくと実態が見えます。

リードタイムはJIS Z 8141で「発注してから納入されるまでの時間、又は素材が準備されてから完成品になるまでの時間」と定義されています。

どこからどこまでを測るかで打ち手が変わるため、内訳の見方は製造リードタイム短縮の全体像を参照してください。

在庫回転率は、JIS Z 8141で「一定期間における在庫の回転回数」とされ、一定期間の所要量÷平均在庫量で求めます。年間の所要量が2億4,000万円、平均在庫が3,000万円なら8回転です。

同じJISは在庫回転率を在庫回転期間の逆数としているので、在庫回転期間は12か月÷8=1.5か月分になります(想定例)。原材料・仕掛品・製品に分けて出すと、どこに滞留があるかが分かります。

S(安全)の指標と計算式

安全柵で囲われたプレス機と通路に立つ作業者

安全の指標のうち度数率と強度率は、厚生労働省の労働災害動向調査で定義と算出方法が示されており、5領域のなかで最も定義がそろっています。

  • 度数率=労働災害による死傷者数÷延べ実労働時間数×1,000,000
  • 強度率=延べ労働損失日数÷延べ実労働時間数×1,000
  • 年千人率=1年間の死傷者数÷1年間の平均労働者数×1,000

度数率は100万延べ実労働時間あたりの死傷者数で、災害の起きる頻度を表します。強度率は1,000延べ実労働時間あたりの延べ労働損失日数で、災害の重さを表します。

労働損失日数は、死亡と永久全労働不能が7,500日、後遺障害が残る場合は等級に応じて50〜5,500日です。休業で済んだ場合は、暦日の休業日数に300/365を掛けた日数と決められています。

年千人率は、1年間の労働者1,000人あたりの死傷者数を表す指標で、労働時間の集計がなくても出せます。

従業員300人、年間の延べ実労働時間が600,000時間の工場で、休業30日の災害が1件起きたとします(想定例)。度数率は1÷600,000×1,000,000=1.67です。

労働損失日数は30×300÷365=24.66日なので、強度率は24.66÷600,000×1,000=0.04になります。

図4:度数率・強度率の統計値(令和7年、事業所規模100人以上)

自社の数字と比べるときは、業種と規模の条件をそろえます。

区分
度数率
強度率
製造業
1.33(前年1.30)
0.07(前年0.06)
調査産業計
2.01(前年2.10)
0.09(前年0.09)
1,000人以上
0.63
0.02
500〜999人
1.43
0.07
300〜499人
1.97
0.08
100〜299人
2.69
0.12

※出典:厚生労働省「令和7年労働災害動向調査」。規模別の数値は調査産業計。休業1日以上または身体の一部・機能を失う災害による死傷者が対象で、不休災害は含みません。

令和7年の調査では、製造業の度数率は1.33、強度率は0.07でした。規模別(調査産業計)では、1,000人以上の事業所が度数率0.63、100〜299人が2.69で、規模が小さいほど高くなる傾向が示されています。

比べるときの注意点は2つあります。1つは対象のそろえ方で、この統計は常用労働者100人以上の事業所の、休業1日以上の災害を数えています。自社で不休災害まで含めて度数率を出している場合は、そのまま比べられません。

もう1つは規模です。先ほどの想定例のように、300人の工場では休業災害が1件起きただけで度数率が1.67となり、製造業の1.33を上回ります。

人数の少ない職場では率が1件で大きく振れるため、件数や無災害の継続日数とあわせて見るほうが実態に合います。

災害の件数は、少ないほど良い反面、ゼロが続くと数字から何も読み取れなくなります。そこで先行指標として、リスクアセスメントの実施件数や指摘事項の是正率、ヒヤリハット報告の件数と対策完了率を持ちます。

E(環境)の指標と計算式

環境の指標で中心になるのは、エネルギー消費原単位です。製品1単位をつくるのに使ったエネルギーの量を表します。

  • エネルギー消費原単位=原油換算エネルギー使用量÷生産数量など(エネルギー使用量と密接な関係をもつ値)
  • 廃棄物の再資源化率=再資源化した量÷廃棄物の排出量(一般的な計算方法の一例)

省エネ法は、原油換算で年間1,500kL以上のエネルギーを使う事業者に使用状況の定期報告を求めています。対象の事業者には、中長期的にみて年平均1%以上のエネルギー消費原単位の低減に努めることが求められています。

達成が義務づけられた値ではなく努力目標ですが、法令にもとづく数少ない目標値です。制度の仕組みは工場の省エネとエネルギー管理の記事で整理しています。

前年度に原油換算1,200kLを使って8,000tを生産し、今年度は1,180kLで8,100tを生産したとします(想定例)。原単位は0.1500kL/tから0.1457kL/tになり、対前年度比は97.1%、つまり2.9%の低減です。

原単位は、生産量が減ると悪化しやすい指標でもあります。空調や照明、待機中の設備など、生産量に関係なく使うエネルギーがあるためです。

分母には、生産量のほか、エネルギー使用量と関係の深い値を事業者が選べます。自社の実態に合う分母を決め、固定的に使う分と生産に比例する分を分けて見ておくと、増減の理由を説明しやすくなります。

CO2排出量は、温対法の算定・報告・公表制度の対象になります。

エネルギー起源CO2では、全事業所のエネルギー使用量の合計が原油換算で年間1,500kL以上の事業者が対象で、排出量の報告には省エネ法の定期報告書を使えます。

このほか、廃棄物の排出量や水の使用量を、製品や地域の事情に応じて加えます。廃棄物の再資源化率は、熱回収を再資源化に含めるかどうかなどで数字が変わるため、分母・分子の範囲を社内で決めておきます。

KPIの目標設定の考え方

指標が決まると、次に出てくるのが「目標は何%にすればよいか」という問いです。先に答えを書くと、どの工場にも当てはまる共通の正解値はありません。製品、設備、生産方式、そして指標の定義が工場ごとに違うためです。目標は次の順で決めていきます。

図5:KPIの目標を決める6つのステップ

数字を決める前に、目的と定義と現状をそろえます。

01上位の目標を確かめる会社・工場の方針から、今期に達成すべきことを絞る
02指標の定義を決める分母・分子、対象範囲、データの出どころを文書にする
03現状値を測る決めた定義で数か月分の実績を出し、ばらつきも見る
04目標値と期日を決めるいつまでに、どの状態にするかを数値で書く
05方策と先行指標を決める目標に届くための手段と、その進み具合を測る指標を選ぶ
06定期的に見直す実績との差を確認し、方策や目標そのものを修正する

上位の目標から分解する

JIS Q 9023(方針管理の指針)は、目標を「目的を達成するための取組みにおいて、追求し、目指す到達点」と定義しています。方策は「目標を達成するために、選ばれる手段」です。

目標の達成を管理するために評価尺度として選んだ項目が管理項目で、KPIはこれにあたります。

つまりKPIは、上位の目標と現場の方策をつなぐ位置にあります。工場の目標を領域ごとに分け、さらに現場が動かせる指標へ分解していくと、次のような形になります。

図6:目標を現場の指標へ分解する例(製造原価)

下の段ほど、現場の行動で日々動かせる指標になります。

工場の目標製品1個あたりの製造原価を、年度末までに前年度より下げる
費目に分ける
材料費使用量と単価
労務費作業時間と人員
経費エネルギー、修繕、外注など
現場の指標に置き換える
歩留り・直行率材料のロスと手直しを減らす
労働生産性1人時あたりの出来高を上げる
設備総合効率・原単位停止のロスとエネルギーを減らす
現場の指標それぞれに、担当部署・目標値・期日・方策をひもづけて1枚の表にします。

※分解の仕方は一例です。材料費の比率が高い工場、労務費の比率が高い工場で、重みを置く枝が変わります。

定義と現状値をそろえてから決める

同じ「不良率」でも、分母が検査数か生産数か、手直し品を含むかどうかで数字は変わります。目標値を議論する前に、指標ごとの定義書を1枚つくり、分母・分子、対象範囲、データの出どころ、集計する担当を書いておきます。

そのうえで、決めた定義で現状値を測ります。現状が分からないまま置いた目標は、届かないか、簡単すぎるかのどちらかになりがちです。月ごとのばらつきも見ておくと、1か月の上下に振り回されずに済みます。

期日と到達点を数値で書く

JIS Q 9023は、目標について達成すべき状態と達成期日を明確にするのがよいとし、達成できたかどうかを客観的に判断できることが大切だとしています。「不良を減らす」では、年度末に達成できたかどうかを誰も判定できません。

たとえば「Aラインの直行率を、現状の94.0%から年度末までに96.0%にする」と書けば、対象、現状、到達点、期日がそろいます(想定例)。

上位の管理者や関係部門とすり合わせを行い、必要なら目標を見直すことも同じ規格で示されています。他部門の目標と矛盾していないかは、この場で確かめます。

指標どうしのぶつかり合いを確かめる

工場の指標は、片方を上げるともう片方が下がる関係になっていることがあります。稼働率を上げようと作りだめをすれば在庫回転率が下がり、在庫を絞りすぎれば納期遵守率が下がります。検査を厳しくすれば流出不良は減りますが、直行率は下がって見えます。

このため、目標は1つずつ決めるのではなく、ぶつかりやすい指標を対にして決めます。設備総合効率と在庫回転率、在庫回転率と納期遵守率、生産性と度数率といった組み合わせです。片方だけが良くなっている月は、もう片方で何が起きたかを確認します。

外部の数値は条件を確かめて使う

他社や業界の数値と比べたくなる場面は多いものの、使えるのは調査した主体と年、対象、算出方法が分かる数値だけです。

この記事で挙げた度数率・強度率は厚生労働省の統計で、対象と式が公開されているため、条件をそろえれば比較に使えます。エネルギー消費原単位の年平均1%以上の低減は、省エネ法にもとづく努力目標です。

一方、不良率や設備総合効率、在庫回転率は、定義も製品も工場ごとに違います。出どころの分からない「目安は何%」という数字をそのまま目標にするよりも、自社の過去の実績と、同じ定義で測れる社内の他ラインを比較の軸にするほうが確かです。

KPIを運用に乗せる|日次・週次・月次の見方

グラフの資料を広げて打ち合わせをする工場の会議机

目標を決めても、見る場と頻度が決まっていなければ数字は動きません。指標は、手を打てる速さに合わせて見る頻度を分けます。

図7:頻度ごとに見る指標と判断

日次は異常への対応、週次は傾向、月次は目標との差を見ます。

主に見る指標
見る場と判断すること
日次
生産数と計画達成率、直行率・不良件数、設備の停止、災害とヒヤリハット
朝会や現場の管理板。前日の異常に、その日のうちに手を打つ
週次
設備総合効率、不良の内訳、納期遅れの件数、仕掛り量
週次の生産会議。傾向を見て、翌週の計画・人員・保全の予定を調整する
月次
製造原価と原価差異、納期遵守率、在庫回転率、度数率、エネルギー消費原単位
月次のレビュー。目標との差の原因と対策、投資や体制の判断をする

※割り当ては一例です。ロットの大きさや生産のサイクルに合わせて決めます。

日々の管理では、目標値とは別に「この範囲なら通常どおり」という幅を決めておきます。JIS Q 9023では、安定した、または計画どおりのプロセスの状態を表す値や範囲を管理水準と呼びます。

範囲を外れたときに誰が何をするかまで決めておくと、数字を見る会議が対応を決める場に変わります。

月次のレビューは、結果指標と目標の差を確認し、原因と対策を決める場です。年度計画からレビュー、評価までのつながりは工場長・マネジメントの仕事の流れでも整理しています。

指標を増やしすぎない

指標は、増やすのは簡単で減らすのが難しいものです。集計に時間がかかり、会議で読み上げるだけになっている数字があれば、判断に使っているかどうかを基準に棚卸しします。

工場全体で追う指標は図1の5領域から絞り込み、細かい指標は担当部署の日常管理に任せる形が扱いやすくなります。

数字を責める材料にしない

不良件数やヒヤリハットのように、現場の申告に頼る指標は、悪い数字を出した人が責められると報告そのものが減ります。数字は良くなったように見えても、実態が見えなくなっただけという状態です。

指標は原因を探して手を打つために使い、評価と直結させる項目は慎重に選びます。

まとめ

この記事のまとめ
  • 工場のKPIは、品質・原価・納期・安全・環境(QCDSE)の5領域で、結果指標と先行指標を組にして整理する
  • 直行率や納期遵守率は会社によって定義が違うため、分母・分子と対象範囲を定義書に残す
  • 度数率・強度率は厚生労働省の統計で式と数値が公開されており、業種と規模の条件をそろえれば比較に使える
  • 目標は、上位の目標から分解し、現状値を測ったうえで、期日と到達点を数値で決める
  • ぶつかりやすい指標は対にして見て、日次・週次・月次で見る場と判断を分ける

KPIは、並べること自体が目的ではなく、工場の目標と現場の行動をつなぐための道具です。まずは図1の表に自工場の指標を当てはめ、定義が曖昧なものと、誰も判断に使っていないものを洗い出すところから始めると、整理が進みます。

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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