ポンプの騒音値とは?85dBの基準と測定方法・対策

工場のユーティリティ室に設置されたポンプとモーター

ポンプの騒音値とは、運転中に受音点へ届く音を、デシベル(dB)で表した値です。機器の比較には測定条件を、作業者の健康管理には音の大きさと浴びる時間をそろえて読みます。

よく出てくる85dBは、騒音障害を防ぐための管理で重要になる数値です。ポンプ単体の許容値や、工場の敷地境界で守る数値とは、評価する対象が異なります。

騒音値の意味、適正な値の考え方、測定方法の順に整理します。後半では複数台の音の合成と、異音の原因に合った対策も具体例で示します。

動画ではポンプ騒音の基本を紹介しています。作業環境測定の高さは現行資料の1.2〜1.5mとし、製品の機側値と作業場の評価を分けて読み進めてください。

目次

騒音値とは

ポンプでは、羽根車が液体に力を与え、軸受が回転軸を支える過程で振動が生じます。その振動が周囲の空気へ伝わり、耳に届く音になるため、正常運転でも音が出ます。

一方、急に加わった打撃音や、流量と一緒に変わる不規則な音は、異常を探す手がかりです。気泡に関係する音は、キャビテーションとエア噛みの違いを押さえると、吸込条件から切り分けやすくなります。

図1:ポンプから耳へ届く二つの経路

本体から直接出る空気音と、配管・床・壁を経由する固体伝搬音を分けます。

羽根車・軸受・モーター空気へ直接放射配管・床から壁へ壁から音模式図

点線は構造物を伝わる振動の経路です。配管支持や壁の条件も、受音点の音を変えます。

dBとA特性の読み方

dBは、ある量と基準量の比を対数で表す単位です。音圧レベルなら基準音圧に対する比で表し、数値が10増えることを、音圧が10倍になる意味には使いません。

音圧レベルの定義
Lp = 20 log10 pp0
Lp:音圧レベル[dB] p:音圧の実効値[Pa] p0:基準音圧20μPa。A特性補正前の定義です。

騒音管理で使うA特性は、人の耳の感度に近づける周波数の重み付けです。dB(A)やA特性音圧レベルと書かれた値は、その補正を加えたもので、無補正の値と区別します。

音響パワーレベルは、音源が単位時間に放射する音のエネルギーを、基準値との比で表す量です。受音点の音圧レベルとは定義が異なるため、仕様書では記号と測定方法まで読み合わせます。

振動値は軸受やケーシングの揺れを測り、騒音値は空気中の音を測ります。両方を同じ日に記録すると、機器の変化か、壁や周辺設備の影響かを整理しやすくなります。

軸動力から騒音を推算する経験式も、対象機種と条件が決まった式です。ポンプの軸動力が同じでも、回転数や羽根車、据付け条件が違えば、受音点の値は変わります。

騒音値の適正な値は?

ポンプに一律の騒音上限を当てはめる前に、何を判定するかを決めます。製品の受入検査、作業者の聴力保護、近隣への騒音では、測定位置も判定の根拠も変わります。

図2:同じdBでも、判定する場所と目的が違う

カタログ値だけで、作業場や敷地境界の適合を決めることはできません。

評価対象測る場所・条件照合するもの
ポンプ単体機側の指定距離・運転点製品仕様・契約の保証条件
作業者の騒音ばく露作業場や本人の耳に近い位置労働衛生の測定・評価方法
工場から近隣への音敷地境界など制度上の評価点区域・時間帯別の規制と条例

85dBは職業性騒音の管理で扱う数値です。工場境界の全国共通上限という意味ではありません。

機械の正常・異常をみる値

機械としての適否は、メーカーの仕様と正常時の記録を基準に判断します。全体のdBが大きく変わらなくても、新しい周期音や金属音が加われば、点検すべき変化です。

比較時は運転点をそろえることが重要です。ポンプの性能曲線と運転点を使い、同じ流量・揚程付近で測れば、負荷変化と経年変化を混同しにくくなります。

回転数や台数が日によって違う設備では、音だけの折れ線では原因を追えません。流量、吸込・吐出圧力、液温、運転台数を測定記録に添え、変更があった日を残します。

85dBと作業者の健康管理

厚生労働省の騒音障害防止ガイドラインは、法令上の義務を含め、事業者が講ずる対策を示す指針です。85dBと90dBで評価の段階を分けますが、全項目が一律の法的義務という意味ではありません。

健康への影響は、音のレベルとばく露時間の両方で考えます。「一瞬85dBを示したら必ず難聴になる」「84dBなら長時間でも安心」という線引きには使いません。

作業環境測定では、A測定平均値とB測定値の組合せで管理区分を決めます。両方85dB未満なら第Ⅰ、いずれか90dB以上なら第Ⅲ、それ以外は第Ⅱです。A測定のみの場合は、評価表のB測定85dB未満の欄を使います。

第Ⅱ管理区分では区分を標識等で明示し、必要な改善と、必要に応じた聴覚保護具の使用を進めます。第Ⅲでも区分を明示し、改善後の再測定、保護具の使用、管理者による使用確認、着用の掲示を行います。

手持動力工具の業務では、継続して第Ⅰ管理区分、または等価騒音レベル85dB未満の場合を除き、保護具を使わせます。健診で前駆期の症状や軽度の聴力低下がある人も、第Ⅱの場所で保護具を使用します。

中等度以上の聴力低下がある人には、保護具の使用に加え、騒音作業時間の短縮や配置転換などの措置を講じます。一般の着用ルールだけで判断せず、健診結果に応じた医師の評価を反映します。

耳栓やイヤーマフは、必要な遮音性能と正しい装着を組み合わせて使います。警報音や会話を聞く必要も考慮し、現場の管理者が定めた着用ルールに従って運用します。

敷地境界の騒音は別に評価する

騒音規制法は、指定地域にある特定施設を設置する工場・事業場などを対象にします。区域や時間帯ごとに定められた規制基準があり、自治体の条例による規制も重なります。

新設では、機器選定の段階から設置場所と近隣住宅の方向を図面に入れます。夜間も動くポンプなら、その時間帯の条件で境界への影響を評価することが、手戻り防止につながります。

モーターの出力だけで、特定施設に当たるかを決めるのは避けます。施設の種類、地域指定、自治体の扱いを照合し、労働衛生の85dBと境界の規制値を別欄に記録します。

騒音値の測定方法は?

ポンプの横に設置した騒音測定用マイク
騒音測定のイメージ(生成画像)。実際の測定点は目的と基準に沿って設定します。

測定は「製品の値を比べる」「作業場を評価する」「異音の変化を追う」のどれかを先に決めます。目的が決まれば、受音点や運転条件、測定時間を必要な形で記録できます。

カタログの機側1m値を読む

荏原のポンプハンドブックには、無響室の機側1mで測った騒音値の説明があります。これは記載された試験条件の値であり、すべてのポンプに共通する測定条件と決めつけません。

仕様書を比べる際は、ポンプだけかモーターを含むか、距離、測定方向、回転数をそろえます。流量と揚程も併記し、最大値なのか代表値なのか、保証の範囲を明確にします。

実際のポンプ室には、壁の反射や隣の機器の音が加わります。無響室の数値をそのまま現地の保証に使うと、設備が正常でも受入検査で食い違いが生じます。

複数台運転なら、並列運転の配管条件と台数をそろえて比較します。メーカーへは単機の仕様と室内全体の目標を分けて伝え、建屋や配管の担当者とも条件を共有します。

A測定・B測定で作業場を評価する

屋内作業場のA測定は、作業場の空間的な騒音分布をとらえる方法です。原則として縦横6m以下の格子の交点に5点以上の測定点を設け、高さ1.2〜1.5mで測ります。

測定は作業が定常的に行われている時間帯に実施し、1測定点で10分間以上続けます。B測定は音源に近接する作業位置で、その作業中に騒音が最も大きくなると思われる時間に行います。

図3:A測定の格子と、音源近くのB測定

格子点を巡るA測定と、近接作業の場所で測るB測定には異なる役割があります。

ポンプB点≤6m平面:●A測定点、○B測定点マイク床高さ1.2〜1.5m立面:測定高さ

配置は説明用です。実際の単位作業場所と近接作業を反映して測定点を決めます。

各点ではA特性の等価騒音レベルを測り、A測定平均値は80dB未満の点を除いた算術平均で求めます。80dBちょうどは含める集計で、各点の等価騒音レベル自体を求めるエネルギー平均とは別の処理です。

例えばA測定平均値が84dB、B測定が88dBなら第Ⅱ管理区分です。部屋の平均だけを見て良好と判定すると、ポンプに近づいて作業する人の条件を見落とします。

個人ばく露測定と等価騒音レベル

個人ばく露測定は、ばく露計のマイクを作業者の頭・首・肩の近くへ装着し、移動中の音も記録します。同種の業務を行うグループごとに1台以上を使い、原則として終日または半日測定します。

2023年改訂では、別表第二の屋内・坑内で騒音源が移動する場合等に、個人測定への代替が認められました。別表第二の屋外は定点測定か個人測定を選べますが、別表第一の法定測定を自由に置き換える扱いではありません。

等価騒音レベルは、変動する音を同じ時間のエネルギーが等しい一定の音に置き換えた値です。大きい音の時間が結果を強く左右するため、表示dBを単純平均する方法とは異なります。

測定器が作業服で覆われた時間や、本人が機器を外した時間も記録します。作業日誌の巡回・清掃・待機の時刻と重ねると、どの作業でばく露を減らすかが見えてきます。

現場で残す測定条件

現場の再測定では、位置を写真や平面図で残すと比較の精度が上がります。マイクの高さと向き、壁やカバーの状態も記録し、測定者が替わっても同じ条件を再現できるようにします。

  • 測定日時、測定点、測定時間、騒音計と設定
  • 運転台数、回転数、流量、吸込・吐出圧力、液温
  • 扉や防音カバーの開閉、隣接設備の運転状態
  • 測定結果、評価した人、実施した対策と再測定結果

目的のポンプ以外から来る音を暗騒音と呼びます。安全に停止できる条件なら停止時の音も記録し、対象音と周辺音がどの程度重なっているかを調べます。

暗騒音と運転時の差が小さい場合、ポンプ単体の音を精度よく分離するのが難しくなります。差のdBをそのまま引いて製品騒音とせず、測定規格に沿った補正や測定環境の改善を選びます。

騒音と同時にポンプの電流値を残すと、負荷変化を追えます。吐出圧力も低下していれば、圧力が上がらない原因と合わせて、吸込・回転・内部摩耗を調べます。

ポンプの騒音を下げるには

複数台の音はdBを足さずに合成する

独立した二つの音源が同じ受音点へ届くときは、音のエネルギーを足してからdBへ戻します。80dBのポンプ二台が、その場所でそれぞれ80dBをつくる例なら、合計は約83dBです。

互いに相関のない音のレベル合成
L = 10 log10 (10L₁/10 + 10L₂/10)
80dB + 80dB → 10 log10 (108 + 108)
L ≒ 83.0dB
L:合成レベル[dB] L₁、L₂:同じ受音点での各音源単独のレベル[dB]。同じ周波数補正・評価条件で計算します。

90dBと80dBなら合成は約90.4dBで、大きい側の影響が支配的です。その90dB側を80dBへ下げると合成は約83.0dBになり、全体では約7.4dB下がります。

図4:大きい音源を下げたときの合成値

同じ受音点での説明用計算。二台とも80dBなら約83dBになります。

90+80dB90.4dB
80+80dB83.0dB

横棒はdB数値の比較で、音のエネルギー比や主観的な大きさの比を表しません。低減量は約7.4dBです。

全台へ同じ対策を配る前に、支配的な音源を探すと、低減効果の大きい箇所へ費用をかけられます。現場では周波数ごとの分析も使い、モーター、ポンプ、配管のどこを対策するかを決めます。

発生源・伝わる経路・作業者の順に考える

異音が急に増えた場合は、まず設備の運転状態を調べます。吸込側の閉塞や液位低下、空気混入などが原因なら、防音カバーを付けても、ポンプ内部の問題は残ります。

吸込配管では、ストレーナーの目開きと閉塞や弁の状態を点検対象にします。液温が高い場合は、NPSHと蒸気圧の関係も含めて、実際の運転条件をメーカーへ伝えます。

図5:カバーと防振支持で担当する経路を分ける

空気音を囲う対策と、床・配管へ伝わる振動を抑える対策を組み合わせます。

防音カバー断面給気→内部→排気換気消音経路配管支持貫通部の処理防振支持軸ガード

設計概念図です。必要風量・放熱・支持荷重・変位を満たす部材を個別に選び、回転部のガードと点検空間も確保します。

防音カバーは空気音の経路を抑える手段ですが、モーターの冷却と点検空間も必要です。開口部や配管貫通部から音が漏れるため、換気を含むカバー全体の設計で効果を見ます。

防振支持は、架台から床へ渡る振動を減らすための対策です。配管が別経路で振動を伝えていると効果が限定されるので、支持や接続部も一緒に評価します。

改造や分解を伴う点検は、停止、電源の隔離、残圧の処理など、設備の手順に従って実施します。運転中の回転部へ近づいたり、騒音を確かめるために保護具を外したりする方法は使いません。

改善後は、同じ運転条件と測定位置で効果を確かめます。以後の点検を時間基準と状態基準の保全へ組み込み、音の変化を設備記録として蓄積します。

ポンプ騒音のよくある質問

ポンプの騒音は何dBなら正常ですか?

型式・回転数・運転点・測定位置に応じたメーカー仕様と、正常時の記録で判断します。音が小さくても新しい金属音などがあれば、数値と音の変化を合わせて点検します。

機側1mで85dB未満なら耳栓は不要ですか?

その数値だけでは決まりません。作業場の評価や個人ばく露、健康診断の結果、現場のルールで必要な保護を決めるため、単機のカタログ値から着用を外す判断はしません。

スマートフォンの騒音計アプリで評価できますか?

気になる位置を探す予備調査と、正式な評価測定は分けます。正式測定には必要な精度と測定機能を満たす機器を使い、アプリの表示だけで管理区分や法令適合を決定しません。

ポンプから離れると必ず静かになりますか?

直接届く音は距離で減衰しますが、屋内では壁や天井の反射音も耳へ届きます。配管を通じて別室へ伝わる場合もあるため、距離だけの計算で室内の音を決めません。

耳栓を付ければ設備の防音対策は不要ですか?

耳栓は作業者を守る対策で、発生源の異常や近隣へ出る音までは解決しません。設備改善と保護具を組み合わせ、同じ方法で再測定して対策の効果を確かめます。

まとめ

この記事のまとめ
  • ポンプは正常時も音を出し、異音は運転条件と合わせて調べる
  • 機器仕様・作業者のばく露・敷地境界は別に評価する
  • 85dBと90dBは騒音障害防止の管理で重要になる値
  • A測定は6m以下の格子、高さ1.2〜1.5mで測り、近接作業はB測定も加える
  • 発生源と伝搬経路の対策、聴覚保護を組み合わせ、改善後に再測定する

騒音を管理するときは、数値と一緒に測定位置と運転状態を残すことが出発点です。製品の受入条件、作業者の健康管理、近隣への配慮を分ければ、必要な測定と対策を選びやすくなります。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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