合金とは、金属に別の金属や非金属を溶かし合わせたもので、混ぜる元素と量によって強さ・さびにくさ・溶ける温度が純金属から大きく変わります。身の回りで「金属」と呼んでいるものの多くは純金属ではなく合金で、航空機の骨組みも台所のシンクも、財布の中の硬貨もその例です。
代表的な合金は、母材になる金属と加える元素の組み合わせで覚えると整理しやすく、たとえば銅に亜鉛を加えると黄銅、スズを加えると青銅になります。表面だけを別の金属で覆う「めっき」は合金とは別物で、材料の中まで混ざっているかどうかが分かれ目です。
この記事では、7つの合金それぞれの組成・性質・用途と、めっきとの違いを順に見ていきます。続いて、混ぜると強くなる理由(固溶強化・析出硬化)と融点が下がる理由(共晶)、JIS の記号を含む比較表と選び方、工場でのつくり方と鉛・水銀の規制、リサイクルまでを整理します。
母材の金属(左の元素)に何を加えるかで、名前と性質が決まります。
※組成・規格の詳しい値は「代表的な合金の比較」の表にまとめています。
ジュラルミン:アルミニウムに銅とマグネシウムを加えた合金
ジュラルミンは、アルミニウムに銅を約4%、マグネシウムとマンガンを0.5%前後加えた合金で、JIS では2017にあたります。純アルミは鉄の約3分の1の重さでも柔らかいのに対し、銅とマグネシウムを加えて熱処理すると、引張強さ約430 MPa と構造用鋼並みになります。
強くなる鍵は熱処理で、1906年にドイツのヴィルムが、この合金を焼入れしたあと室温に置くと日ごとに硬くなる「時効硬化」を見つけました。1909年にジュラルミンの名で工業化され、最初の大きな用途はツェッペリン飛行船の骨組みでした。
溶け込ませて急冷し、時間をおくと細かい析出物ができて硬くなります。
※構造を簡単にした模式図です。実際の析出物は数ナノメートル程度の原子の集まりで、光学顕微鏡では見えません。
後継の合金も次々に生まれ、マグネシウムを1.5%前後に増やした2024は超ジュラルミンと呼ばれます。さらに亜鉛を加えて強さを一段上げたのが超々ジュラルミンで、1936年に住友の五十嵐勇らが開発し、零戦の主翼の桁に使われました。
7075は、亜鉛5.1〜6.1%、マグネシウム2.1〜2.9%、銅1.2〜2.0%を含み、零戦の超々ジュラルミンが分析されたあとに米国でつくられた合金です。日本ではこれも同じ名で呼ぶため、ジュラルミンは狭い意味では2017、広い意味では高力アルミ合金の呼び名になっています。
7075は戦後の航空機材料の代表になり、機体には今も2000系・7000系の高力アルミ合金が使われ、金属バットやアタッシェケースのような製品にも広がりました。ただし耐食性が劣り、アーク溶接にも向かないため、表面処理や塗装、リベット接合と組み合わせて使います。
番手ごとの強さや調質記号(T4・T6 など)の読み方はアルミ合金の種類と番手の見方で整理しています。機体や部材をつくる企業の顔ぶれは航空宇宙・造船業界とはで紹介しています。
ステンレス:鉄にクロムとニッケルを加えたさびにくい合金
ステンレスは、鉄にクロムを10.5%以上加え、炭素を1.2%以下に抑えた合金鋼です。最もよく使われる SUS304 はクロム18〜20%・ニッケル8〜10.5%を含むため「18-8ステンレス」とも呼ばれ、「鉄・クロム・ニッケルの合金」という覚え方はこの鋼種の組成にあたります。
さびにくさの正体は、クロムが空気や水の中の酸素と結びついて表面にできる、目に見えないほど薄い酸化物の膜(不動態皮膜)です。傷がついても周りの酸素ですぐに再生するため、鉄のように赤さびが内部へ進むことがありません。
クロムの酸化物の膜が表面を覆い、傷がついても酸素で自然に再生します。
※膜の厚さを強調した模式図です。塩化物やもらい錆、すき間など、膜が再生しにくい条件ではステンレスもさびます。
ただし「さびない」わけではなく、海水や塩素系の洗剤のように塩化物が多い環境や、鉄粉が付いたもらい錆、すき間の奥では膜の再生が追いつかず、点状の孔食が起きます。さびの出方と対策はSUS304が錆びる原因は?で詳しく解説しています。
ニッケルは必須ではなく、SUS430 のようにクロムだけを加えたフェライト系は磁石につき、高価なニッケルを使わないぶん安価です。一方、ニッケルを加えたオーステナイト系の SUS304 は加工しやすく溶接にも強く、台所のシンクや食品・化学工場の配管、タンクに広く使われます。
鋼種ごとの成分と選び方はステンレスの種類と違いで比べています。棒材は JIS G 4303、熱間圧延板は G 4304、冷間圧延板は G 4305 と、形状ごとに規格が分かれているのも押さえておきたい点です。
白銅:銅にニッケルを加えた銀白色の合金
白銅は、銅にニッケルを加えた銀白色の合金で、キュプロニッケルとも呼ばれます。銅は赤みのある金属ですが、ニッケルを加えるほど色が白くなり、名前のとおり銀に近い見た目になります。
最も身近な白銅は硬貨で、50円玉と100円玉はどちらも銅75%・ニッケル25%でできています。日本の硬貨は1円玉を除いてすべて銅の合金で、何をどれだけ混ぜるかは政令(通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律施行令)で決められています。
1円玉以外はすべて銅の合金で、加える元素で色が変わります。
※通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律施行令の別表(千分中の品位)を百分率に直したもの。500円は2021年発行の現行硬貨で、財務省の発表では素材がニッケル黄銅・白銅・銅の3種類、品位が銅75%・亜鉛12.5%・ニッケル12.5%とされています(層ごとの内訳は資料で確認できていません)。
工業での白銅の主な舞台は海水です。ニッケル約10%と約30%の系統があり、鉄とマンガンを少し加えて海水の流れによる浸食や孔食に強くしてあるため、船の復水器や給水加熱器、海水から真水をつくる造水装置の管に使われます。
管の中と外で熱を受け渡す装置のしくみは熱交換器とはで解説しています。銅とニッケルに亜鉛も加えた合金は洋白(例 C7521:ニッケル16.5〜19.5%、銅62〜66%、残りが亜鉛)と呼ばれ、白銅とは別に洋食器や管楽器、ばね材として使われます。
黄銅(真ちゅう):銅と亜鉛の合金
黄銅は銅と亜鉛の合金で、真ちゅう(真鍮)とも呼ばれ、英語ではブラスです。金色に近い黄色が名前の由来で、加工しやすく、亜鉛が銅より安いぶん材料費も抑えられることから、身近な銅合金の代表になっています。
性質は銅の割合で大きく変わり、銅70%・亜鉛30%の七三黄銅(C2600)は伸びがよく深く絞れるため、自動車のラジエータや薬きょう、端子に使われます。銅60%・亜鉛40%の六四黄銅(C2801)は強さが増し、熱いうちに鍛造しやすい材料です。
銅を減らす(亜鉛を増やす)ほど強くなり、57%を下回ると硬く脆くなります。
※日本伸銅協会・日本銅センター「伸銅品」の表と説明をもとに作成。成分は JIS の範囲。
5円玉も黄銅で、銅60〜70%・亜鉛30〜40%と決められています。金管楽器を「ブラス」と呼ぶのも黄銅でできているからで、水栓金具やバルブ、ねじ、家具の金具など、光沢と加工のしやすさが求められる部品に幅広く使われています。
ねじやバルブを切削で大量につくるときは、鉛を少し加えて削りくずを細かく切れやすくした快削黄銅(C3604 など)が使われます。ただし水に触れる部品では、亜鉛だけが溶け出してスカスカになる脱亜鉛腐食が起きるため、スズを加えた耐脱亜鉛黄銅も用意されています。
鉛は飲み水にも溶け出すので、2003年に水道水の鉛の基準が 0.01 mg/L 以下に厳しくなり、水栓や給水用の部品の浸出基準も強化されました。これを受けて、鉛の代わりにビスマスやシリコンで削りやすくした鉛レス黄銅への切り替えが進んでいます。
黄銅は銅を6〜7割含むため、部品の価格は銅の地金相場の影響を強く受けます。相場の見方と調達での備えは銅価格の高騰は電線・伸銅品にどう効く?で解説しています。
青銅:銅とスズの合金
青銅は銅とスズの合金で、英語ではブロンズです。紀元前3700年ごろにはスズを10〜14%含む青銅の棒がつくられていたとされ、「青銅器時代」という時代の名前になるほど古くから使われてきました。
名前の「青」は、長い年月で表面にできる緑青(ろくしょう)の青緑色にちなむとされます。つくりたての青銅は赤みがかった金色ですが、屋外の銅像や寺の鐘は緑青に覆われ、この膜が内部の腐食を遅らせる働きをしています。
黄銅と青銅は見た目が似ていますが、加えるのが亜鉛かスズかで使いどころが分かれます。スズは亜鉛より高価な一方で強さや耐摩耗性、耐食性を高めるので、削りやすさと安さを優先するなら黄銅、ばね性や摩耗・腐食への強さを優先するなら青銅が選ばれやすい関係です。
10円玉も青銅ですが、スズは1〜2%とわずかです。工業でよく使われるのは、スズにりんを加えたりん青銅(C5191 はスズ5.5〜7.0%、りん0.03〜0.35%)です。ばね性と耐食性に優れ磁石につかないため、コネクタやスイッチ、リレーのばねに使われます。
鋳物ではバルブやポンプ部品、軸受に青銅鋳物が使われ、加工しやすくするため鉛を数%含む材料もあります。給水用の部品では、黄銅と同じく鉛を減らした材料への置き換えが進んでいます。
はんだ:スズと鉛の合金から鉛フリーへ
はんだは、部品と部品を金属でつなぐための、溶ける温度が低い合金です。長く使われてきたスズ63%・鉛37%のはんだは、この比率で 183 ℃ になるといっきに溶けて固まる「共晶」の組成で、温度の管理がしやすい材料でした。
電子機器から鉛を減らす流れを決定づけたのが、EU の RoHS 指令です。電気・電子機器の均質な材料ごとに、鉛と水銀は0.1%、カドミウムは0.01% を上限とするもので、2006年7月から適用され、輸出する日本の電子機器メーカーも鉛フリー化を急ぎました。
いま国内の標準は、スズに銀3.0%と銅0.5%を加えた Sn-3.0Ag-0.5Cu で、溶ける温度は217〜220 ℃ と鉛入りより30 ℃以上高くなります。そのため部品や基板の耐熱、リフロー炉の温度条件まで見直すことになり、鉛フリー化は実装工程全体の変更になりました。
JIS Z 3282 は鉛入りと鉛フリーの両方のはんだについて成分を定めており、RoHS 指令にも鉛を85%以上含む高温はんだなどの適用除外があります。鉛そのものは今も鉛蓄電池の主な材料として大量に使われ、用途ごとに規制の扱いが分かれています。
含有化学物質への対応は、はんだに限らず部品メーカーの日常業務になっています。対象物質の調べ方や代替の進め方は、PFAS規制の製造業への影響の手順も参考になります。
アマルガム:水銀とほかの金属の合金
アマルガムは、水銀とほかの金属の合金の総称です。水銀は常温で液体の金属で、金・銀・スズ・ナトリウムなど多くの金属を溶かし込み、混ぜる量によって液体からペースト、固体まで状態が変わります。
身近だったのは、虫歯の詰め物に使われた歯科用アマルガムです。主に銀・スズ・銅からなる合金の粉を水銀と練り合わせると、しばらくは軟らかく形を整えられ、歯に詰めたあとで固まるため、長く使われてきました。
報道によると、日本では2016年に保険診療の対象から外れ、現在は国内で製造されていません。環境省は、すでに詰めている人でも虫歯の再発などがなければ取り除く必要はないとしています(いずれも2025年11月の共同通信の報道)。
国際的には水銀に関する水俣条約が規制を進めており、2025年11月の第6回締約国会議で、歯科用アマルガムを規制対象に加え、2034年までに製造と輸出入を廃止することが決まりました(環境省・経済産業省の発表。報道では2034年末までの禁止)。
EU はそれに先立ち、2025年1月から歯科治療でのアマルガムの使用を原則として禁止しています。
工業では、食塩水を電気分解して水酸化ナトリウムをつくる水銀法で、陰極の水銀にナトリウムを溶かし込んだナトリウムアマルガムが使われていました。日本は水俣病を受けて1986年までに水銀法を全廃し、いまはイオン交換膜法に置き換わっています。
合金と似ているけれど違うめっき
合金と似ているけれど違うのが、めっきです。合金は材料の中まで別の元素が混ざっているのに対し、めっきは鉄などの表面だけを別の金属の膜で覆い、中身は元の金属のままです。
代表例が、鋼板に亜鉛をめっきしたトタンと、スズをめっきしたブリキです。亜鉛は鉄より先に溶けて身代わりになり、スズは表面を覆って水と酸素を遮るという守り方の違いは、トタンとブリキの違いで反応式とともに解説しています。
ただし両者の境目ははっきりしたものではなく、溶融亜鉛めっきでは鉄と亜鉛が反応して境目に合金の層ができます。めっき後に加熱して層全体を鉄と亜鉛の合金にした合金化溶融亜鉛めっき鋼板や、アルミニウムと亜鉛の合金そのものをめっきするガルバリウム鋼板もあります。
めっきの膜そのものを亜鉛とニッケルの合金にする合金めっきもあり、目的別の選び方はめっきの種類と違いが参考になります。塗装や化成処理も含めた表面の技術の全体像は、表面処理とはで整理しています。
合金とは:金属を混ぜると性質が変わる理由
金属は、原子が規則正しく並んだ結晶でできています。力がかかると結晶の中の「転位」と呼ばれる並びのずれが動き、原子の面がすべって変形するため、合金で強くするとは、この転位を動きにくくすることを意味します。
加えた元素が合金の中でどんな形で存在するかによって、強くなるのか、溶けやすくなるのかが決まります。主な形は次の3つです。
- 固溶体:母材の結晶にすっかり溶け込む(黄銅、白銅、ステンレスなど)
- 析出物・金属間化合物:母材の中に別の結晶の細かい粒として現れる(ジュラルミンなど)
- 共晶:2つの相が交互に並んだ細かい組織をつくる(はんだなど)
強くなる理由(固溶強化・析出硬化)と、融点が下がる理由(共晶)は分けて考えます。
※原子の並びを平面に描いた模式図です。
固溶強化:大きさの違う原子が並びをゆがめる
母材の原子の一部が別の原子に置き換わったり、すき間に小さな原子が入り込んだりした状態を固溶体と呼びます。原子の大きさが違うと周りの並びがゆがみ、転位が通りにくくなるため、純金属より強く硬くなります。
黄銅や白銅が強さと伸びを両立できるのは、亜鉛やニッケルが銅の結晶に溶け込んだ固溶体だからです。鋼の中の炭素も、小さな原子がすき間に入る固溶の一つで、熱処理でその組織を変えて硬さを調整する方法は鋼の熱処理の基本で解説しています。
析出硬化(時効硬化):細かい粒が転位を止める
ジュラルミンは、高温で銅やマグネシウムを溶け込ませてから水で急冷し、本来は溶けきれない量を閉じ込めた「過飽和」の状態にします。それを室温や低めの温度に置くと、余分な原子が集まってごく小さな集団や微細な粒子になり、転位の通り道をふさぐことで強くなります。
時間とともに硬くなることから時効硬化とも呼ばれ、アルミ合金の2000系・6000系・7000系や、ばね材のベリリウム銅などで使われています。混ぜる量だけでなく、熱処理の温度と時間で強さが決まるのが、この方法の特徴です。
共晶:混ぜると融点が下がる
2つの金属を混ぜると、どちらの純金属よりも低い温度で溶けることがあります。特定の比率では全体が1つの温度でいっきに溶ける共晶点があり、スズと鉛では63対37の比率で 183 ℃ と、スズ単体の 232 ℃、鉛単体の 327 ℃ より低くなります。
はんだが部品を傷めない低い温度で接合できるのも、ビスマスなどを使った低融点合金が防火設備の温度ヒューズに使われるのも、この共晶の性質によるものです。強くするしくみとは逆に、共晶は「溶かしやすくする」ための合金設計といえます。
代表的な合金の比較:組成・性質・用途・JIS 記号
7つの合金を、主成分と性質、主な用途、代表的な材料記号と規格で並べると次のようになります。図1が名前と主成分の早見だったのに対し、この表は材料を指定するときの手がかりとして、記号と規格まで載せています。
| 合金(通称) | 主成分(代表的な材料の値) | 性質 | 主な用途 | 代表的な材料記号と規格 |
|---|---|---|---|---|
| ジュラルミン | Al+Cu 3.5〜4.5%・Mg 0.40〜0.80%・Mn 0.4〜1.0%(2017) | 軽く強い。熱処理で硬化。さびやすく溶接に不向き | 航空機部材、機械部品 | A2017、A2024(JIS H 4000 ほか) |
| ステンレス | Fe+Cr 10.5%以上(SUS304 は Cr 18〜20%・Ni 8〜10.5%) | 不動態皮膜でさびにくい | シンク、配管、タンク、食品機械 | SUS304、SUS430(JIS G 4303〜4305) |
| 白銅 | Cu+Ni 約10〜30%(硬貨は Ni 25%) | 銀白色。海水に強い | 硬貨、復水器・造水装置の管 | C7060、C7150(JIS H 3100、H 3300) |
| 黄銅(真ちゅう) | Cu 約60〜70%+Zn | 加工しやすく安価。金色 | 5円硬貨、水栓金具、バルブ、端子、金管楽器 | C2600、C2801、C3604(JIS H 3100、H 3250) |
| 青銅(ブロンズ) | Cu+Sn(りん青銅 C5191 は Sn 5.5〜7.0%・P 0.03〜0.35%) | 強く、摩耗と腐食に強い。ばね性 | 銅像・鐘、軸受、コネクタのばね | C5191(JIS H 3110)、青銅鋳物 CAC406 など(JIS H 5120) |
| はんだ | Sn 63%+Pb 37% → Sn-3.0Ag-0.5Cu | 融点が低い(183 ℃ → 217〜220 ℃) | 電子部品の接合 | JIS Z 3282 |
| アマルガム | Hg+Ag・Sn・Cu など | 常温で練れて、しばらくすると固まる | かつての歯科充填材、水銀法の食塩電解 | 工業材料としての JIS の記号はない |
ジュラルミン・黄銅・青銅などは通称で、規格の上では「A2017」「C2600」のような材料記号で呼び分けます。図面や発注書には通称ではなく材料記号と質別(熱処理・加工の状態)を書くのが基本で、同じ黄銅でも記号が違えば成分も加工性も変わります。
合金を選ぶときのポイント
材料を選ぶときは、まず何を一番重視するかを決め、次の観点で候補を絞り込みます。
- 強さと重さ:同じ強さなら軽いのは高力アルミ合金、価格と剛性を重視するなら鋼
- さびにくさ:大気や水まわりはステンレス、海水には白銅やアルミ青銅などの耐食銅合金
- 電気と熱の通しやすさ:合金にすると下がる。七三黄銅の熱伝導率は純銅の約3分の1(それでも普通鋼の約2倍)
- 加工のしかた:深絞りは七三黄銅、大量の切削は快削黄銅、ばねはりん青銅、溶接するならステンレスや溶接向きのアルミ合金
- 含有化学物質:鉛・水銀・カドミウムなどの規制と、納入先の要求
一つの性質だけで選ぶと、別の性質で困ることがよくあります。ジュラルミンは強いが溶接と耐食に制約があり、快削黄銅は削りやすいが鉛の規制を受けるように、使う環境とつくり方、規制までを合わせて決めるのが材料選びの基本です。
実際の工場では:合金のつくり方・有害元素の管理・リサイクル
溶解・鋳造から圧延・熱処理まで(つくる)
合金づくりは、地金とスクラップ、成分を合わせるための母合金を炉で溶かし、分析しながら狙いの組成に整えるところから始まります。溶けた合金は板用のスラブや棒・管用のビレットに鋳造され、圧延・押出・引抜きで板・条・棒・管・線に加工されます。

加工の途中と最後には、焼なましで軟らかくしたり、溶体化と時効で強さを出したりする熱処理が入ります。JIS の質別記号(アルミの O・H・T6 など)はどの熱処理と加工を経た状態かを表し、同じ合金番号でも質別で強さが大きく変わるため、発注では合金番号と質別をセットで指定します。
バルブや軸受、銅像のように形が複雑な部品は、溶かした合金を砂型や金型に流し込む鋳物でつくられます。鋳物用の合金は、湯流れのよさや固まるときの割れにくさを優先して成分を決めるので、同じ青銅でも板材(JIS H 3110)と鋳物(JIS H 5120)で規格が分かれています。
鉛・水銀・カドミウムをどう管理するか(管理する)
合金にとって鉛は便利な元素で、黄銅や青銅を削りやすくし、はんだの融点を下げてきました。しかし人体や環境への影響から、水道の基準、RoHS 指令、水俣条約と、用途ごとに規制が重なっています。
工場の実務では、購入する材料の成分証明(ミルシート)で規制物質の含有量を確かめ、納入先から求められる含有化学物質の調査に答えます。鉛レス黄銅に鉛入りの切りくずが混ざると成分が外れてしまうため、スクラップを合金ごとに分けて保管・返却することも品質管理の一部です。
合金のリサイクル(再利用する)
合金は溶かし直せば成分ごと再利用できるため、スクラップは重要な原料です。日本アルミニウム協会の調査(2005年度の圧延工場)では、アルミのスクラップを溶かすエネルギーは新地金の製造に必要なエネルギーの約3%です。これは、電気分解でアルミナから酸素を引きはがす融解塩電解の工程を省けるためです。
黄銅の切りくずも、組成が同じならそのまま溶かして黄銅に戻せます。ただし一度混ざった元素を取り除くのは難しく、いろいろな合金が混ざったくずを純度の高い銅に戻すには、製錬所の炉と銅の電解精錬を通す必要があります。

合金のよくある質問
合金と化合物は何が違いますか?
化合物は元素が決まった割合で化学結合した物質で、性質は元の元素とまったく別物になります。合金は多くの場合、成分の割合に幅があり、電気を通す、光沢がある、たたくと延びるといった金属の性質を保っています。
黄銅と青銅はどう見分けますか?
磨いたばかりの表面なら、黄銅は明るい黄色に近い金色、青銅は赤みの強い金色です。古くなると色が変わって見分けにくくなるため、確実に知るには蛍光X線分析などで成分を調べます。
ステンレスは磁石につきますか?
SUS430 などのフェライト系はつき、SUS304 などのオーステナイト系は基本的につきません。ただし SUS304 でも、曲げや絞りなどの加工を強く受けた部分は組織の一部が変わり、弱く磁石につくことがあります。
超々ジュラルミンと7075は同じものですか?
元祖の超々ジュラルミン(ESD)は1936年に住友が開発した合金で、7075はその後に米国のアルコアがつくった近い成分の合金です。成分の範囲は少し違いますが、日本では7075とその派生合金もまとめて超々ジュラルミンと呼ぶことが多くなっています。
まとめ
- 合金は金属に別の金属や非金属を溶かし合わせたもので、強さ・さびにくさ・融点が純金属から変わる。めっきは表面だけを覆うもので別物
- ジュラルミン=Al+Cu・Mg、ステンレス=Fe+Cr(SUS304 は+Ni)、白銅=Cu+Ni、黄銅=Cu+Zn、青銅=Cu+Sn、はんだ=Sn+Pb(今は Sn+Ag・Cu)、アマルガム=Hg+他の金属
- 強くなるのは固溶強化と析出硬化(時効硬化)で、どちらも転位を動きにくくする。共晶は融点を下げるしくみ
- 硬貨は1円以外すべて銅合金(5円 黄銅、10円 青銅、50円・100円 白銅、500円 ニッケル黄銅・白銅・銅を組み合わせたバイカラー・クラッド)
- はんだは RoHS 指令で鉛フリー(Sn-3.0Ag-0.5Cu、217〜220 ℃)に、歯科用アマルガムは水俣条約で2034年末までに製造・輸出入禁止へ
合金の名前と組み合わせを覚えるときは、「何を良くするために、何を加えたか」とセットにすると、仕事で材料を選ぶ場面でもそのまま使えます。素材の技術の全体像は材料技術とはで、鉄鋼・非鉄金属の需要と市況は鉄鋼・非鉄金属業界の市場規模と動向で整理しています。
出典
出典・参考資料(14件)を開く出典・参考資料を閉じる
- ジュラルミン・超ジュラルミン・超々ジュラルミンの歴史と組成:吉田英雄「ジュラルミンから超々ジュラルミンまで 合金開発の歴史と今後の課題」UACJ Technical Reports Vol.9(2022)
- アルミニウム合金の規格:日本規格協会 JIS H 4000:2022 アルミニウム及びアルミニウム合金の板及び条(プレビュー)
- ステンレスの定義:日本製鉄「ステンレスに関するよくあるご質問」、種類と不動態皮膜:ステンレス協会「種類」、JIS G 4303:2021 ステンレス鋼棒(プレビュー)
- 黄銅・りん青銅・洋白・白銅の成分と用途、銅合金の歴史:日本伸銅協会・日本銅センター「伸銅品」
- 銅合金の規格:JIS H 3100:2018、JIS H 3110:2018、JIS H 3300:2018、JIS H 5120:2016(日本規格協会 プレビュー)
- 硬貨の素材と品位:e-Gov 法令検索「通貨の単位及び貨幣の発行等に関する法律施行令」別表
- 水道の鉛の基準:厚生労働省「給水装置の構造及び材質の基準に関する省令の一部改正について」
- はんだの融点:Lucas Milhaupt「63Sn37Pb」、千住金属工業「Alloy form」(M705:Sn-3.0Ag-0.5Cu)、JIS Z 3282:2017(プレビュー)
- RoHS 指令:Directive 2002/95/EC(2006年7月1日から適用)、Directive 2011/65/EU(EUR-Lex、Annex II・III)
- 歯科用アマルガム:参議院 第153回国会 質問主意書(2001年)、秋田魁新報(共同通信)2025年11月8日「水銀含む銀歯、2034年末禁止」、環境省・経済産業省 水俣条約第6回締約国会議の結果(2025年11月13日)、UNEP プレスリリース(2025年11月)、Regulation (EU) 2024/1849(EUR-Lex)
- 水銀法の廃止:環境省「水銀に関する技術」
- 合金化溶融亜鉛めっき鋼板・ガルバリウム鋼板:日本鉄鋼連盟「亜鉛めっき鋼板 製品の説明」
- アルミの再生地金のエネルギー:日本アルミニウム協会「スクラップ溶解のインベントリ調査報告書」(2007年)
- 合金・固溶体硬化・時効硬化・共晶の用語:コトバンク「合金」、「固溶体硬化」、「時効硬化」、「共晶合金」
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