人材開発支援助成金でリスキリング|製造業の申請手順を5ステップで

空圧・制御の実習盤を囲んで研修を受ける工場の社員たち

社員を外部の研修に出すと、受講料は会社の負担になります。厚生労働省の人材開発支援助成金を使えば、電気保全や自動制御、品質管理といった製造現場の訓練でも、受講料の一部が国から助成されます。

リスキリング(新しい仕事に必要な技能の学び直し)向けのコースでは、中小企業なら受講料の75%に加え、訓練中の賃金も1人1時間1,000円が助成されます。

ただし、訓練を始める前に計画届を出していないと1円も出ないなど、順番と期限を外すと受け取れない仕組みです。

この記事では、リスキリングに使えるコースの違い、助成額の計算、製造業で対象になる訓練とならない訓練を整理します。

あわせて申請の5つのステップ、2026年に加わった設備投資加算と8月の改正点を、2026年9月時点の厚生労働省の資料をもとに順に見ていきます。

目次

人材開発支援助成金とは

研修用の制御盤でリレーと端子台の配線を行う手元

人材開発支援助成金は、事業主が雇用する労働者に職務に関連した訓練を計画的に受けさせた場合に、訓練経費と訓練期間中の賃金の一部を国が助成する制度です。対象は雇用保険の適用事業所の事業主で、訓練を受けるのは雇用保険の被保険者です。

設備投資の補助金と比べると、性格はかなり違います。

公募と採択の仕組みではなく、要件を満たした訓練に予算の範囲内で支給される制度です。受講料はいったん会社が全額を払い、訓練が終わってから申請して後払いで受け取ります。

助成の中心はOFF-JT(通常の業務から離れて行う研修)で、1回の訓練が10時間以上あることが基本の条件です。

製造業で使う意味が大きいのは、社内だけでは教えられない分野が増えているからです。

厚生労働省が2026年7月に公表した令和7年度「能力開発基本調査」では、能力開発や人材育成に何らかの問題があるとする事業所は80.1%にのぼりました。

OFF-JTに使った費用は、労働者1人当たり平均2.0万円(2024年度実績)にとどまっています。

ベテランの技能を若手に引き継ぐOJTは、社内の仕組みで回す部分です。

これに対し、PLCの新しい制御方式やデータ分析、生成AIの業務活用のように社内に教えられる人がいない分野を外部研修で補うとき、この助成金が効いてきます。

社内で教える側の整え方は製造業の技能伝承と人材育成で詳しく扱っています。

リスキリングに使える3つのコースの違い

人材開発支援助成金には7つのコースがあります。このうち建設業向けと障害者向け、休暇制度の導入を助成するコースを除くと、製造業の社員研修で主に候補になるのは次の3つです。

図1:リスキリングに使える3コースの比較

新しい分野の訓練なら、助成率の高い事業展開等リスキリング支援コースが第一候補になります。

人材育成支援コース
人への投資促進コース
事業展開等リスキリング支援コース
対象の訓練
人材育成支援職務に関連する10時間以上のOFF-JTなど、幅広い訓練
人への投資促進高度デジタル人材の育成、大学院、定額制(サブスク型)研修など
事業展開等リスキリング支援新事業、DX・GX化、人事計画に基づく配置転換に必要な訓練
経費助成率(中小)
人材育成支援45%(賃上げ等の要件で60%)
人への投資促進高度デジタル75%、定額制60%(要件で75%)など
事業展開等リスキリング支援75%
賃金助成(中小・1人1時間)
人材育成支援800円(要件で1,000円)
人への投資促進高度デジタル1,000円。定額制はなし
事業展開等リスキリング支援1,000円
向いている場面
人材育成支援今の職務の技能を伸ばす研修、資格取得の講座
人への投資促進情報処理・データサイエンスなど高度IT分野、動画見放題型の研修
事業展開等リスキリング支援新製品・新工程の立ち上げ、IoT・生成AI導入、脱炭素の設備転換

※「要件」は訓練後の賃金5%以上の引き上げ、または資格等手当の支払いによる3%以上の引き上げ。eラーニングや通信制の訓練は、どのコースでも賃金助成の対象外です。

3つのうち、最も幅広く使えるのは人材育成支援コースです。職務に関連する訓練ならテーマをあまり選ばない代わりに、経費の助成率は45%にとどまります。

人への投資促進コースは、高度なデジタル人材の育成や大学院での学び直し、定額制の研修サービスを使う場合の受け皿です。

迷ったら事業展開等リスキリング支援コースから検討する

新しい工程の立ち上げ、工場のIoT化、生成AIの業務への組み込み、燃料転換のような脱炭素の取り組みに伴う研修を行う場合を考えます。その場合は、まず事業展開等リスキリング支援コースに当てはまるかを確かめるのが近道です。

中小企業なら経費75%と賃金1,000円の組み合わせで、3コースの中でも条件が良い部類に入ります。

ただし、このコースは令和4年度から令和8年度までの期間限定で設けられた制度です。2026年度が最終年度にあたるため、使うなら今年度の計画に組み込む必要があります。期限の注意点は最後の章でまとめます。

事業展開等リスキリング支援コースの助成額

助成は「経費助成」と「賃金助成」の2本立てで、2026年4月からは設備投資加算も加わりました。中小企業の場合の主な数字は次のとおりです。製造業の中小企業は、資本金3億円以下または常時雇用する労働者300人以下が目安です。

図2:事業展開等リスキリング支援コースの主な助成額(中小企業)

受講料と訓練中の賃金の両方に助成があるのが特徴です。

経費助成75%受講料など訓練経費の助成率(大企業は60%)
賃金助成1,000円訓練中の賃金、1人1時間あたり(大企業は500円)
設備投資加算50%訓練で使った機器と同種の設備の導入費用(中小のみ)
年間上限1億円1事業所が1年度に受け取れる助成額の上限

※経費助成は1人1訓練あたりの限度額があります(中小企業は10〜100時間未満30万円、100〜200時間未満40万円、200時間以上50万円。eラーニング・通信制は15万円)。

経費助成には、受講者1人・1訓練あたりの限度額があります。中小企業なら、訓練時間が10時間以上100時間未満で30万円、100時間以上200時間未満で40万円、200時間以上で50万円です。

eラーニングと通信制の訓練は、時間にかかわらず15万円が上限になります。

賃金助成は、所定労働時間内に行った訓練の時間だけが対象です。休日や終業後に受講させた時間は賃金助成に数えられないため、研修は勤務時間内に組むのが基本になります。

eラーニング、通信制、定額制サービスによる訓練は経費助成のみで、賃金助成はありません。

製造業での試算例

たとえば、従業員80人の部品メーカーが、組立ラインにセンサーとデータ収集の仕組みを入れるケースを考えます。それに合わせて、保全担当3人に外部のPLC・IoT研修を受けさせます。研修は勤務時間内の30時間で、受講料は1人20万円とします。

図3:PLC・IoT研修を3人が受講した場合の試算(中小企業)

受講料60万円に対し、経費と賃金を合わせて54万円が助成される計算です。

経費助成受講料20万円 × 75% × 3人(1人15万円で、限度額30万円の範囲内)
45万円
賃金助成30時間 × 1,000円 × 3人(所定労働時間内の受講に限る)
9万円
助成額の合計会社が先に全額を払い、訓練後の支給申請で受け取る
54万円

※試算は制度の仕組みを示すための例です。実際の支給額は審査で確定し、受講率が実訓練時間の8割に満たない受講者は対象外になります。

受講料の総額60万円に対して54万円が戻る計算ですが、訓練中の3人分の賃金は会社が通常どおり支払っています。助成は訓練にかかった費用の一部を埋めるもので、助成金で利益が出る仕組みではない点は押さえておきたいところです。

製造業で対象になる訓練・ならない訓練

訓練施設でマシニングセンタの説明を聞く受講者

事業展開等リスキリング支援コースの対象は、次の3つのどれかに当てはまる10時間以上のOFF-JTです。

  • 1つ目:新事業への進出などの事業展開に必要な訓練
  • 2つ目:社内のDX化やカーボンニュートラル化に関わる業務のための訓練
  • 3つ目:人事・人材育成の計画に基づいて、今後就く予定の別の職務に必要な訓練

「事業展開」には、新製品の製造や新分野への進出だけでなく、既存事業の中で製造方法を変える場合も含まれます。事業展開は、訓練開始日から3年以内に行う予定のもの、または6か月以内に行ったものが対象です。

設備更新や工法の切り替えに合わせた研修も対象になり得るため、製造業にとっては使える場面が広い制度です。

厚生労働省のパンフレットでは、製造業の事例として、半導体工場の建設を見据えて自動制御・電気保全・空圧制御の訓練を受けさせる例が紹介されています。コークスを熱源とする溶解炉から電気炉への切り替えに伴う訓練の例も載っています。

機械加工の担当者を品質管理部門へ配置転換するため、品質管理や検査の訓練を受けさせる例もあります。

図4:製造業の研修で対象になりやすいもの・ならないもの

職務に直接関係し、専門的な知識を学ぶ外部研修かどうかが分かれ目です。

対象になりやすい
  • 電気炉や新しい加工設備への切り替えに伴う操作・保全の講座
  • 工場のIoT化に向けたPLC、センサー、データ収集の講座
  • 生成AIやデータ分析を設計・品質保証の業務に使うための専門講座
  • 品質管理部門への配置転換に向けた品質管理・検査手法の講座
  • CO2排出量の算定を担当する社員が、自社データでの算定手順を学ぶ講座
対象にならない
  • ビジネスマナーや接遇など、職種を問わない基礎研修
  • 購入したシステムやアプリの操作方法の説明、コンサルタントの指導
  • 自社製品の説明会、QCサークル活動、品質マニュアルの作成
  • 安衛法の特別教育など、法令で事業主に実施が義務づけられた講習
  • 生産ライン上での実習、年次有給休暇を使わせての受講

※同じ講座でも、受講者の職務との関係によって判断が変わります。カリキュラムの一部が対象外の内容なら、その時間は実訓練時間から除きます。

DX研修で対象外になりやすいパターン

DX関連の研修で特に注意したいのが、「汎用的な内容」の扱いです。表計算ソフトの入力や書式変更程度の初歩的な操作だけの研修は、もともと対象になりません。

さらに2026年8月3日以降に出す計画では、DX・GX化の訓練でも職業人として共通に必要な内容や職務に間接的な内容は対象外と明記されました。

誰にでも当てはまる内容より、職務と結びついた講座のほうが通りやすいと考えるとよいでしょう。前者の例は「全社員向けのAIリテラシー研修」、後者の例は「設計部門が生成AIで仕様書のレビューを効率化する」です。

生成AIの基本的な仕組みは生成AIとは何かで整理しています。

また、自社で講師を立てる「事業内訓練」も対象になりますが、講師に要件があります。社内の講師なら、その分野で10年以上の実務経験がある人や、1級技能検定の合格者などです。

eラーニングや定額制サービスは、社外の教育訓練機関が一般向けに提供しているものに限られます。

申請の流れ|5つのステップ

手続きは、社内の準備、訓練の選定、計画届の提出、訓練の実施、支給申請の5段階で進みます。提出先は事業所の所在地を管轄する都道府県労働局で、窓口、郵送、電子申請(雇用関係助成金ポータル。GビズIDが必要)のいずれかで出せます。

図5:事業展開等リスキリング支援コースの申請5ステップ

計画届は訓練の前、支給申請は訓練の後。この順番と期限がすべての土台です。

訓練の前
STEP 01社内の準備職業能力開発推進者の選任と、事業内職業能力開発計画の策定・周知
STEP 02訓練の選定と計画づくり対象になる講座を選び、事業展開等実施計画に取り組みを具体的に書く
STEP 03計画届の提出訓練開始日の6か月前から1か月前までに労働局へ
訓練中・訓練の後
STEP 04訓練の実施と支払い計画どおりに実施し、支給申請までに経費を全額支払う
STEP 05支給申請訓練終了日の翌日から2か月以内に、出勤簿や賃金台帳を添えて申請

※日程などを変える場合は、変更前と変更後のいずれか早い日の前日までに変更届が必要です。

STEP1 職業能力開発推進者の選任と事業内計画

最初に、社内で人材育成を進める責任者として「職業能力開発推進者」を選びます。人事や教育の担当課長など、訓練の企画に権限がある人が想定されています。あわせて、自社の育成方針をまとめた「事業内職業能力開発計画」をつくり、従業員に周知します。

どちらも届け出る必要はありませんが、計画届を出す日までに選任・策定・周知が済んでいることが支給の条件です。厚生労働省のパンフレットやサイトに記載例があり、労働局でも作成の相談を受け付けています。

職種ごとに必要な技能を一覧にしたものがあれば、どの研修が職務に関連するかを説明する材料にもなります。

STEP2 訓練の選定と事業展開等実施計画

次に、受講させる講座を決めます。ポリテクセンターなどの公的施設、大学、専修学校、民間の研修会社のいずれも使えますが、民間の場合は教育訓練事業を事業目的に掲げる国内法人であることなどが条件です。

カリキュラムに実施日時、内容、時間数、受講料が明記されているかも確認します。

このコースでは、職業訓練実施計画届とあわせて「事業展開等実施計画」を出します。何の事業展開やDX・GX化に取り組み、そのために誰にどんな知識が必要なのかを書く書類です。

「電気炉の導入に伴い、保全担当2人に新しい制御系の保全技術を習得させる」のように、設備や工程の変化と研修内容のつながりを具体的に書くことが大切です。

配置転換を前提にした3つ目の型を使う場合、中小企業は人事・人材育成の計画について、事前に認定経営革新等支援機関の確認を受ける必要があります。訓練終了後に実際にその職務に就かせ、実施状況を報告するところまでが条件です。

STEP3 計画届の提出(6か月前から1か月前まで)

計画届は、訓練開始日の6か月前から1か月前までの間に労働局へ出します。郵送の場合は消印ではなく労働局に届いた日が提出日です。1か月前を1日でも過ぎると対象外になるため、社内の決裁に時間がかかる会社ほど余裕を持って動く必要があります。

図6:訓練開始日から逆算した手続きの期限(例:2027年1月15日開始)

計画届の受付は訓練開始日の6か月前から始まり、1か月前に締め切られます。

2026年7月15日〜計画届の受付開始訓練開始日の6か月前から提出できる
2026年12月15日計画届の提出期限訓練開始日の1か月前。労働局への到達日で判断
2027年1月15日〜29日訓練の実施計画どおりの日時・内容で受講。経費を全額支払う
訓練終了の翌日から2か月支給申請の期限この例では2027年3月下旬まで

※期限日が土日・祝日の場合は翌開庁日が期限です。年度末に近い日程で組む場合は、事前に管轄の労働局へ確認してください。

STEP4 訓練の実施と経費の支払い

訓練は、計画届に書いた日時・場所・内容どおりに実施します。通学制やオンラインのライブ講座では、受講者ごとに実訓練時間の8割以上を受講していることが条件です。日程が変わるときは、変更前か変更後の早いほうの日の前日までに変更届を出します。

変更届を出さずに日程をずらすと、計画上の日程に受講していないものとして扱われ、受講率0%で不支給になる例がパンフレットに載っています。

講師の都合で日程が動きやすい研修ほど、研修会社との連絡を密にしておく必要があります。受講料は支給申請までに会社が全額を支払い、振込の控えを残します。

STEP5 支給申請(訓練終了日の翌日から2か月以内)

訓練が終わったら、終了日の翌日から2か月以内に支給申請書を出します。この期限を過ぎた場合も支給されません。添付するのは、主に次の書類です。

  • 訓練の実施状況報告書
  • 訓練期間中の出勤簿やタイムカード
  • 賃金台帳
  • 受講料の振込通知書
  • 教育訓練機関の支給申請承諾書

2025年度以降、支給の可否の審査は支給申請の後にまとめて行う形になりました。計画届が受理されたことで支給が約束されるわけではなく、確認項目が多いため、支給決定までには時間がかかります。書類は支給決定後5年間の保存が必要です。

設備投資加算を上乗せする条件

加工機の横に導入された協働ロボットと作業者

2026年4月から、事業展開等リスキリング支援コースに「設備投資加算」が加わりました。

訓練で学んだ内容を生かすための機器・設備を新たに導入し、あわせて受講者の賃金を引き上げた中小企業に、導入費用の50%を通常の助成とは別に上乗せする仕組みです。

上限は支給対象の労働者1人につき15万円で、10人以上なら人数にかかわらず150万円です。たとえば受講者が2人で100万円の機器を導入した場合、加算は30万円までになります。

人数に応じて上限が決まるため、高額な設備ほど満額には届きにくい点に注意が必要です。

図7:設備投資加算を受けるための主な条件

訓練・賃金・設備の3つがそろって初めて加算の対象になります。

中小企業であること大企業は対象外。事業展開・DX・GXの訓練が対象で、人事計画型の訓練は除く
実機を使う通学制・ライブ型の訓練実技で機器・設備を実際に使う訓練であること。eラーニングのみは不可
賃金5%以上、または資格手当で3%以上の増額訓練終了の翌日から1年以内に、受講者全員の毎月の賃金を引き上げる
訓練で使った機器と同種で10万円以上購入・リースなどで新規導入または高性能品へ更新。計画届で見積書2社分が必要
対象外の機器パソコン・タブレット・スマートフォン、汎用の事務機器、空調や照明の更新など
他の補助金との重複他の助成金・補助金を申請中または受給した設備は対象外。導入後1年は処分も制限

※設備投資加算の計画(設備投資実施計画)は、最初の計画届の時点で出しておく必要があり、後から変更届で追加することはできません。

製造業で考えやすいのは、協働ロボットの操作・安全講習を受けたあとに同種のロボットを導入する組み合わせです。三次元測定機の講座を受けたあとに測定機を更新する、といった組み合わせもあります。

一方、同じ設備で省力化投資補助金などを使う場合は加算の対象になりません。どちらが有利かは、補助率と上限を並べて比べる必要があります。

設備側の補助金の選び方は省力化投資補助金の対象設備と申請の流れや製造業で使える補助金のまとめを参考にしてください。賃上げの要件は、2026年度の最低賃金の引き上げで予定している昇給と重ねて計画すると、無理のない水準を見積もりやすくなります。

よくある失敗と2026年8月改正の注意点

この助成金で受け取れなくなる原因の多くは、研修の中身ではなく手続きの順番と期限です。2026年8月3日の改正でeラーニングの受講回数の制限なども加わったため、主な失敗と対策を整理します。

図8:不支給につながりやすい失敗と対策

ほとんどが「出す順番」と「出す日」を外したことによるものです。

よくある失敗
対策
計画届の遅れ
研修の申込後に助成金を知り、開始1か月前を過ぎてから出す
研修を決める段階で開始日から逆算し、2か月前には書類を固める
日程の変更
講師の都合で日程が変わり、変更届を出さずに受講させる
変更が決まった時点で、変更前・変更後の早いほうの日の前日までに変更届を出す
時間外の受講
終業後や休日に受講させ、賃金助成の対象時間が減る
所定労働時間内に組む。休日に行うなら事前に振替休日を設定する
経費の一部返金
研修会社からのキャッシュバックや協力金で実質負担を減らす
返金・協力金を受けると経費助成は不支給。定価で全額を自社負担する
回数の超過
同じ社員に年度内で何本も受講させる
1人1年度3回まで、eラーニングは1回までを前提に年間計画を組む

※eラーニングの1回までの制限は、2026年8月3日以降に提出した計画届に基づく訓練から適用されます(経過措置あり)。

受講回数の上限を前提に年間計画を組む

助成の対象になる訓練は、以前から1人の労働者につき1年度3回までです。このうち2026年8月3日以降に出した計画届によるeラーニングは、1人1年度1回までに絞られました。

eラーニングの講座を小分けにして何本も申請するやり方は使えなくなったため、誰にどの講座を年何回受けさせるかを年度の初めに決めておくことが重要になります。

受講者の選び方は、職種ごとに必要な資格や技能を棚卸しするところから始めると迷いにくくなります。職種別に役立つ資格は製造業で役立つ資格一覧にまとめています。

「実質無料」をうたう勧誘に注意する

厚生労働省は、「助成金を使えば研修が実質無料」「支払った額以上に利益が出る」とうたう研修会社やコンサルティング会社に注意を呼びかけています。

受講後のアンケートや営業協力の対価として協力金を受け取る形は、実質的な値引きとみなされ、経費助成が受けられません。

AI研修とAIツールの導入をセットにして、ツールの費用まで研修費として申請する提案も対象外とされています。

不正受給と判断されると、返還額に加えて年3%の延滞金と20%の違約金が課され、社名が公表されることもあります。

2026年8月3日からは、自主申告がなければ支給決定前でも原則公表する特例が設けられました。申請手続きを報酬を得て代行できるのは社会保険労務士だけである点も押さえておきましょう。

令和8年度末までの時限措置であることを意識する

事業展開等リスキリング支援コースは、令和8年度末までの時限措置と明記されています。2027年度以降に同じ条件の枠が続くかは、2026年9月時点で厚生労働省から公表されていません。

今から計画届を出す場合、訓練を始められるのは早くても1か月後です。年度内に使うなら、秋から冬に実施する研修を今のうちに選び、書類の準備に入るのが現実的な進め方です。

年度末に近い日程で組む場合や改正の経過措置に当たるか迷う場合は、管轄の労働局に計画段階で相談しておくのが確実です。

まとめ

この記事のまとめ
  • 人材開発支援助成金は、社員研修の経費と訓練中の賃金の一部を国が後払いで助成する制度
  • 新事業・DX・GXに伴う研修なら、事業展開等リスキリング支援コースが中小企業で経費75%・賃金1時間1,000円
  • 製造方法の変更や設備転換に伴う研修も対象になり得るが、汎用的な内容やツールの操作説明は対象外
  • 計画届は訓練開始日の6か月前から1か月前まで、支給申請は訓練終了の翌日から2か月以内
  • 2026年4月に設備投資加算、8月にeラーニングの受講回数の制限が加わり、コース自体は令和8年度末までの時限措置

助成金はあくまで、会社が計画した人材育成を後押しする道具です。どの職種にどんなスキルが必要かを先に決めておけば、研修の選定も書類の作成もぶれにくくなります。

学ぶべきスキルの考え方は製造業のリスキリングとDX人材、採用・定着を含めた打ち手は製造業の人手不足と採用難もあわせてご覧ください。

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MONOSCOPEの運営者

プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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