グリコシド結合とは?できる仕組みと加水分解、デンプン糖化での使われ方

でん粉糖工場に並ぶステンレスの充塡塔と配管

グリコシド結合は、糖のヘミアセタールの炭素(C1)に付いたOHと、別の糖やアルコールのOHから水が1分子抜けてできる結合です。結合した部分は、1つの炭素に酸素が2つ付いたアセタールの形になり、ショ糖・デンプン・セルロースはどれもこの結合で単糖がつながっています。

同じグルコースどうしでも、結合の向き(α・β)と位置(1,4・1,6)が違うだけで、水に溶けて消化されるデンプンと、木や綿をつくる丈夫なセルロースほど性質が変わります。工場ではこの結合を酵素で選んで切り、ブドウ糖や異性化糖、燃料用のエタノールの原料をつくっています。

この記事では、グリコシド結合の定義とα・β、1,4・1,6の読み方を整理し、結合ができる仕組みと加水分解で切れる位置を反応式で説明します。後半では、デンプンの糖化と異性化糖、セルロースからのバイオエタノール、還元糖の分析や配糖体まで、工業で使われている場面を取り上げます。

目次

グリコシド結合とは?糖どうしをつなぐアセタール

グリコシド結合は、糖のC1(アノマー炭素)と、相手の分子の酸素との間の結合です。C1はもともとヘミアセタールで、そこに−O−R(相手)が付くとアセタールになるので、グリコシド結合は「糖がつくるアセタール」と言い換えられます。

グルコース2分子からマルトースができる(α-1,4-グリコシド結合)
2C6H12O6 → C12H22O11 + H2O
一方のグルコースのC1のOHと、もう一方のC4のOHのHから水が1分子抜けます。検算:Cは12=12、Hは24=22+2、Oは12=11+1。分子量でも2×180.16=360.31が342.30+18.02と一致します。

図1:2つのグルコースからマルトースができる

左のグルコースのC1(ヘミアセタール)のOHと、右のグルコースのC4のOHのHが水として抜け、C1−O−C4の橋ができます。

OOOOC1C4OC1C4OHHH₂O が抜けるグルコース①グルコース②マルトースC1がヘミアセタールC4のOHを使うC1−O−C4(α-1,4結合)

※環は六角形で簡単に描き、C2〜C6のOHや−CH₂OHは省いています。酸素が環の右上にある向きで描いています。

ヘミアセタールとアセタールの違いそのものや、グルコースが水の中で環をつくる仕組みは、アセタールとヘミアセタールの構造の違いで詳しく整理しています。この記事では、糖どうしが「どの炭素で」「どちら向きに」つながるかを中心に見ていきます。

結合の名前は、向きと位置の2つで決まります。「1,4」は一方の糖のC1と相手のC4を結ぶこと、「1,6」は相手のC6を結ぶことで、数字の1つ目は結合に使われたC1、2つ目は相手側の炭素の番号です。

αとβは、結合に使われたC1の酸素の向きで、環を平らに描いたハース式で下向きならα、上向きならβと呼びます。マルトースは2つのグルコースをα-1,4で、セロビオース(セルロースを細かく切った二糖)は同じ炭素どうしをβ-1,4で結んだもので、違いはC1の向きだけです。

スクロース(ショ糖)は、グルコースのC1とフルクトースのC2というアノマー炭素どうしを結んだ二糖です。両方のヘミアセタールを結合に使うため環が開かず、主な二糖・多糖の結合をまとめると表1のようになります。

糖つながる単糖グリコシド結合特徴・身近な例
マルトース(麦芽糖)グルコース2つα-1,4デンプンをアミラーゼで切るとできる二糖
セロビオースグルコース2つβ-1,4セルロースを切る途中でできる二糖
ラクトース(乳糖)ガラクトース+グルコースβ-1,4牛乳に含まれる二糖
スクロース(ショ糖)グルコース+フルクトースグルコースC1−フルクトースC2砂糖。アノマー炭素どうしの結合
アミロースグルコース数百個α-1,4(直鎖)デンプンの約20%
アミロペクチングルコース多数α-1,4+約25個に1か所α-1,6の枝デンプンの約80%
グリコーゲングルコース最大10万個α-1,4+α-1,6(枝が多い)動物がたくわえる多糖
セルロースグルコース数千個β-1,4(直鎖)木材・綿・紙の主成分
表1:主な二糖・多糖のグリコシド結合(OpenStax Organic Chemistry 2e 25.8・25.9、農畜産業振興機構「でん粉から作られる糖化製品の現状と将来」2023年をもとに作成)

表のデンプンとセルロースは、どちらもグルコースだけでできた多糖です。α-1,4の鎖はらせん状に曲がり、β-1,4の鎖はまっすぐ伸びて隣の鎖と水素結合で束になるため、デンプンは熱い水に溶けて酵素で分解されやすく、セルロースは水にも溶けない繊維になります。

図2:同じグルコースでも結合で別物になる

デンプン(アミロース・アミロペクチン)とグリコーゲンはα結合、セルロースはβ結合です。結合の向きと枝の数が、溶けやすさや分解のされやすさを分けます。

アミロースα-1,4で数百個が直鎖につながる。らせん状に巻き、デンプンの約20%を占めるα-1,4
アミロペクチンα-1,4の鎖に、約25個に1か所α-1,6の枝が付く。デンプンの約80%α-1,4+α-1,6
グリコーゲン動物の肝臓や筋肉にたくわえる多糖。アミロペクチンより枝が多いα-1,4+α-1,6
セルロースβ-1,4で数千個がまっすぐつながり、鎖どうしが水素結合で束になるβ-1,4

※OpenStax Organic Chemistry 2e 25.9、農畜産業振興機構(2023年)による。

相手がグルコースのものを「グルコシド」、糖の種類を問わない総称を「グリコシド」と呼び分けます。糖どうしに限らず、糖のC1にアルコールや色素、薬の成分が付いたものもグリコシドで、日本語では配糖体とも呼ばれます。

グリコシド結合ができる様子:酸を触媒にした脱水縮合

グリコシド結合は、2つのOHから水が抜けてつながる脱水縮合でできます。アルコール2分子から水が抜けてエーテルができる反応や、カルボン酸とアルコールのエステル化と同じ型で、酸(H+)を触媒にして加熱すると進み、逆向きにも進む可逆反応です。

図3:グリコシド結合ができる4つの段階

H+が付く→水が抜ける→相手の酸素が攻撃する→H+が外れる、の順に進みます。最後にH+が戻るので、酸は触媒として働きます。

01H+が付くC1のOHの酸素に、酸のH+が非共有電子対で付く
02水が抜ける−OH2+が水として外れ、C1が正の電荷を帯びる
03相手が攻撃する別の糖やアルコールのOHの酸素が、非共有電子対でC1に結合する
04H+が外れる相手の酸素に残った+がH+として外れ、グリコシド結合が完成する

※2段目で抜けるのがC1のOHである理由は、次の小見出しで説明します。

実験室では、糖をメタノールと酸の触媒で加熱すると、C1にメチル基が付いたメチルグルコシドができます。ただしαとβの両方が混ざってでき、向きを1つに決めるには別の方法が要ります。

グルコースとメタノールからメチルグルコシドができる
C6H12O6 + CH3OH ⇄ C7H14O6 + H2O
酸(H+)が触媒です。αとβのメチルグルコシドの混合物になります。検算:左はC7・H16・O7、右はC7H14O6+H2OでC7・H16・O7と一致します。

糖どうしを酸でつなごうとすると、相手の糖にはOHが4〜5本あるため、どのOHと結合するかを選べません。そこで生物の体や工場では、結合の位置と向きを決めてつなぐ酵素を使い、C1にリン酸やUDPなどを付けて外れやすい形にしてから結合をつくります。

2つの分子が水を出してつながる形は、アミノ酸どうしのペプチド結合とも共通です。タンパク質を見分けるアミノ酸・タンパク質の検出反応と並べてみると、糖とタンパク質が同じ脱水縮合で長い鎖になっていることが分かります。

必ずヘミアセタールのOHが脱離する

グルコースにはC1・C2・C3・C4・C6の5か所にOHがありますが、グリコシド結合で水として抜けるのは必ずC1、つまりヘミアセタールのOHです。C1のすぐ隣には環の酸素があり、OHが抜けたあとのC1の+を、その酸素が非共有電子対で分け合って支えられるからです。

OHを引き抜くのはもともと難しい反応で、抜けたあとの陽イオンが不安定なほど、越えなければならないエネルギーの山(活性化エネルギー)が高くなります。C1では環の酸素が電荷を分け合うので山が低く、隣に酸素がないC2〜C6のOHは抜けにくいため、反応はC1に集中します。

C1を結合に使うと、その糖は環を開いてアルデヒド基を出せなくなります。マルトースは片方のC1が残るのでフェーリング液や銀鏡反応で還元性を示し、両方のアノマー炭素を使ったスクロースは示さないという違いは、この1か所の使い方で決まります。

グリコシド結合の加水分解:切れるのはC1側

加水分解は、できるときの反応を逆にたどる反応です。グリコシド結合の酸素にH+が付き、C1とその酸素の間が切れてC1が+になり、そこへ水が付くので、切れる位置は必ずC1側になります。

マルトースの加水分解
C12H22O11 + H2O → 2C6H12O6(グルコース)
デンプン・セルロースの加水分解(どちらもグルコースになる)
(C6H10O5)n + nH2O → nC6H12O6
重さの増え方 = 180.16(C6H12O6)162.14(C6H10O5) = 1.111倍
C6H10O5は、多糖の中のグルコース1単位(水1分子分が抜けた形)です。結合1本を切るたびに水が1分子入るので、完全に分解するとできるグルコースはもとの多糖の約1.11倍の重さになります。

切れる位置がC1側に決まる理由は、結合ができるときと同じです。C1の隣の環の酸素が+を支えるので、C1と橋の酸素の間が切れやすく、橋の酸素は相手の糖のC4などにOHとして残ります。

図4:グリコシド結合はどこで、何で切るか

切れるのはC1と橋の酸素の間です。酸は向きや位置を選ばずに切り進め、酵素は決まった向き・位置の結合だけを切ります。

OOC1C4OH⁺ここで切れるC1に水のOHが付く橋の酸素は相手のOHに戻る
酸で切る塩酸や硫酸などのH+で切る。α・β、1,4・1,6を選ばずに切り進め、条件が強いと分解しすぎや戻り反応が起きる選ばない
酵素で切るα-アミラーゼはα-1,4、枝切り酵素はα-1,6、セルラーゼはβ-1,4というように、決まった結合だけを穏やかな温度で切る向き・位置を選ぶ

※酸でも結合の種類によって切れる速さに差はあります。酵素の例は農畜産業振興機構(2023年)、生物工学会誌91巻10号(2013年)による。

グリコシド結合は、中性や塩基性の水の中では安定で、酸か酵素がないとほとんど切れません。酵素はαとβを見分けるため、αの結合を切る消化酵素しか持たない人は、デンプンは分解できても、同じグルコースでできたセルロースを消化できません。

微生物の酵素がエステル結合やグリコシド結合を切ってプラスチックを分解する仕組みは、生分解性ポリマーの分解のしくみでも同じ考え方で説明できます。切れる結合が主鎖にあるかどうかが、分解されるかどうかの分かれ目です。

実際の工場では:デンプンを酵素で切る糖化と異性化糖

糖液の試料を試験管に注ぐ品質管理の手元とでん粉

デンプンのグリコシド結合を切ってブドウ糖や水あめをつくる工程を糖化と呼び、製品はまとめて「でん粉糖」と呼ばれます。農畜産業振興機構(2023年)によると、国内のでん粉約247万トン(令和4でん粉年度)のうち約167万トンがでん粉糖に使われ、86%は輸入トウモロコシ由来です。

かつてはシュウ酸や塩酸でデンプンを分解する酸糖化法が使われていましたが、いまはでん粉糖の大部分が酵素法でつくられています。酸は結合を選ばず、糖が濃いと、できたブドウ糖どうしが再びグリコシド結合でつながる戻り反応が起き、苦みのあるイソマルトースなどの二糖が残りやすいのが難点です。

図5:でん粉から異性化糖まで

液化でデンプンを短く切り、糖化でブドウ糖まで分解し、精製してから異性化酵素で一部を果糖に変えます。工程ごとに働く酵素と、切る・変える相手が違います。

液化・糖化(グリコシド結合を切る)
01でん粉乳液固形分30〜35%、水酸化カルシウムでpH6.0に調整
02液化耐熱性α-アミラーゼを加え、ジェットクッカーで105±2℃・10分。粒をこわし、α-1,4を内側から切る
03糖化約50〜55℃に冷まし、糖化酵素で約50時間。枝切り酵素でα-1,6も切る
精製
04ろ過・脱色加熱で酵素を止め、ろ過のあと活性炭で色を除く
05脱イオン・濃縮イオン交換樹脂と膜で不純物を除き、液状ブドウ糖にする
異性化・分離
06異性化固定化グルコースイソメラーゼの管型反応器に通し、果糖約42%に
07分離・混合クロマト分離で果糖約90%の液をつくり、42%の液と混ぜて55%に

※温度・時間などの条件は、農畜産業振興機構「でん粉から作られる糖化製品の現状と将来」(2023年)に示された一例です。

液化で働くα-アミラーゼは、鎖の内側のα-1,4結合をあちこちで切り、ねばりのある糊を流れやすい液に変えます。糖化ではグルコアミラーゼが鎖の端からグルコースを1つずつ切り出し、アミロペクチンの枝のα-1,6はプルラナーゼなどの枝切り酵素が切って純度を上げます。

液化を105℃前後の高温で行うのは、デンプンの粒をこわして酵素が届くようにするためで、そのため液化には熱に強いα-アミラーゼを使います。糖化酵素はその温度では働けないので、液を50〜55℃まで冷ましてpHを合わせてから加え、約50時間かけて分解を進めます。

異性化糖(ぶどう糖果糖液糖)ができるまで

糖化でできたブドウ糖は、砂糖に比べて甘さが6〜7割しかありません。そこで、グルコースイソメラーゼという酵素でブドウ糖の一部を、より甘い果糖に変えた液糖が異性化糖で、清涼飲料などに広く使われています。

異性化の反応はブドウ糖と果糖の釣り合いで止まり、果糖は最大でも約50%にしかならないため、経済性から果糖約42%で運転します。工場では、ブドウ糖約95〜96%の液を40〜45%に濃縮し、pH7.5〜8.2・55〜60℃で、酵素を樹脂などに固定した管型反応器に連続して流します。

果糖を55%や90%以上に高めるには、カチオン交換樹脂を詰めたクロマトグラフィーの塔で果糖とブドウ糖を分け、果糖約90%の液をつくります。それを42%の液と混ぜると、砂糖とほぼ同じ甘さの果糖55%品になり、混ぜる割合は次の計算で決まります。

計算例:果糖55%にするための混合割合(固形分の重さで)
90x + 42(1 − x) = 55
x = 55 − 4290 − 42 = 1348 = 0.271
果糖90%の液 約27% + 果糖42%の液 約73%
x:果糖90%の液の割合(固形分あたり)。オリゴ糖などほかの成分を除き、果糖の割合だけで考えた説明用の計算です。

日本農林規格(JAS)では、果糖の割合で3種類に分けます。果糖50%未満は「ぶどう糖果糖液糖」、50%以上90%未満は「果糖ぶどう糖液糖」、90%以上は「高果糖液糖」で、3つをまとめて異性化液糖と呼びます。

農林水産省によると、異性化酵素を使った製造技術は1960年代に発酵研究所(現・産業技術総合研究所)で開発され、国有特許の輸出第1号になりました。いま国内の異性化糖は11社14工場でつくられ、うち9社11工場が輸入トウモロコシから一貫して生産しています。

図6:異性化糖の半分は清涼飲料へ

液体のまま運べて溶かす手間がなく、冷やすと甘く感じやすい性質から、異性化糖の販売量の半分あまりが清涼飲料向けです。

10人中5人分が清涼飲料:販売数量776千トン(乾物換算)のうち422千トン(54.4%)

※農林水産省「異性化糖をめぐる状況について」(令和8年9月)の令和6砂糖年度の用途別販売数量。ほかは調味料12.1%、酒類11.1%など。

異性化糖は水分を約25%含む液体で、タンクローリーで運んでタンクにためる点も、粉の砂糖とは扱いが違います。結晶になりにくく保水性が高い一方で、果糖とブドウ糖は熱で褐変しやすいので、加熱の多い菓子やパンでは砂糖が中心です。

実際の工場では:セルロースを糖に戻すバイオエタノール

セルロースもデンプンと同じくグルコースの鎖なので、グリコシド結合を切ればブドウ糖になり、酵母で発酵させるとエタノールができます。食料と競合しない木材や稲わらからエタノールをつくる研究が続いているのはこのためで、難しさはβ-1,4結合の切りにくさにあります。

産業技術総合研究所の解説では、木材の40〜50%を占めるセルロースは幅3〜5 nmの結晶(ミクロフィブリル)をつくり、水にも一般の有機溶媒にも溶けません。まわりをヘミセルロースとリグニンが接着剤のように固めているため、木材はそのままではほとんど酵素と反応しません。

そこで糖化の前に、粉砕・蒸煮・爆砕・加圧熱水などの前処理で繊維をほぐし、酵素が届くようにします。セルロースを溶かして繊維に戻すレーヨン(再生繊維)は、同じ結晶を切らずにほどいて使う技術で、糖化は結晶をほどいたうえで結合まで切る点が違います。

糖化の方法は、酸糖化と酵素糖化に大きく分かれます。硫酸による酸糖化は安い薬品で短時間に進みますが、設備を硫酸に耐える材料にする必要があり、できた糖が硫酸でさらにフルフラールなどに分解する「過分解」が起きやすく、数%の分解物でも酵母の発酵を妨げます。

酵素糖化は50℃ほどの穏やかな条件で副反応がなく、収率を高めやすい方法です。ただし反応に長い時間がかかり、酵素の値段が高いことが実用化の課題とされ、使われるセルラーゼは1種類ではなく、役割の違う酵素の組み合わせです。

図7:セルロースを切るセルラーゼの分担

前処理でほぐしたセルロースを、3種類の酵素が分担してブドウ糖まで切ります。どれか1つが足りないと途中の糖がたまります。

前処理粉砕・蒸煮・爆砕などで繊維をほぐし、リグニンなどを除く
CBHセロビオヒドロラーゼ。結晶の部分を鎖の端から二糖ずつ切る
EGエンドグルカナーゼ。結晶でない部分の鎖を内側から切る
BGLβ-グルコシダーゼ。セロビオースなどをブドウ糖にする

※森川康「セルラーゼによる糖化のブレークスルー」生物工学会誌91巻10号(2013年)による。世界的には糸状菌トリコデルマ・リーセイのセルラーゼが広く使われています。

セルロース1トンから、理論上どれだけのエタノールができるかを計算すると、次のようになります。加水分解で重さが1.111倍になり、発酵でブドウ糖の約51%がエタノールになるという2つの数字を掛け合わせます。

エタノール発酵の式
C6H12O6 → 2C2H5OH + 2CO2
エタノールになる割合 = 2 × 46.07180.16 = 0.511
計算例:セルロース1 tからの理論量
ブドウ糖 = 1,000 kg × 1.111 = 1,111 kg
エタノール = 1,111 kg × 0.511 = 568 kg
体積 = 568 kg0.789 kg/L = 約720 L
検算:180.16=2×46.07+2×44.01。セルロースは水分を含まない純分1 tとし、加水分解も発酵も100%進んだ場合の理論値です。0.789 kg/Lは20℃のエタノールの密度。実際の設備では、原料の水分やヘミセルロース・リグニンの分、前処理・糖化・発酵・蒸留でのロスを差し引くため、これより少なくなります。

発酵液のエタノールは濃度が低いので、蒸留で濃縮し、さらに水を除いて燃料に使える純度にします。こうしてつくるバイオエタノールは自動車の燃料などに使う液体燃料の1つで、原料をどこから得るかが、脱炭素の効果を左右します。

実際の工場では:還元糖の分析と配糖体

グリコシド結合の知識は、糖をつくる工程だけでなく、品質を測る場面や、糖が付いた有効成分を扱う食品・医薬品の現場でも使われます。ここでは分析と配糖体の2つを取り上げます。

切れた結合の数を還元糖で量る

グリコシド結合が1本切れるたびに、新しいC1のヘミアセタール、つまり還元性をもつ端が1つ増えます。還元糖の量を測れば、デンプンがどこまで分解したかが分かるので、でん粉糖の世界ではこれを「DE(ブドウ糖当量)」という数字で表します。

DE(Dextrose Equivalent、ブドウ糖当量)
DE = 還元糖の量(ブドウ糖として表した値)固形分の量 × 100
デンプンはほぼ0、すべてブドウ糖まで分解すると100に近づきます。米国の規格(21 CFR 168.120)は還元糖量をD-グルコースとして乾物あたりで表す考え方で定めています。

水あめにはDE10〜60の幅広い製品があり、DEが大きいほど甘く、粘りが小さくなります。米国ではDE20未満のものをマルトデキストリンと呼び、粉あめはDE20〜40の水あめを噴霧乾燥してつくるなど、DEは製品を区別し、工程の進み具合を確かめる共通の物差しになっています。

還元糖はフェーリング液の滴定などで測ることができ、はちみつの糖の量を測る税関の方法もこの性質を使っています。糖を1種類ずつ分けて測りたいときは高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を使い、目的に合わせて品質管理の方法を選びます。

セルラーゼの強さを比べるときも、ろ紙を一定時間分解させ、できた還元糖をブドウ糖として測る「ろ紙分解活性(FPU)」が標準的な方法です。切った結合の数を還元性で数えるという考え方は、デンプンでもセルロースでも同じです。

糖が付いた有効成分「配糖体」

糖のC1が、糖以外の分子のOHとグリコシド結合でつながったものを配糖体と呼び、植物の甘味や薬の成分に数多くあります。糖以外の部分(アグリコン)は同じでも、付いた糖の数や種類で甘さ・苦さ・溶けやすさが変わるため、食品添加物では糖を酵素で足した製品もつくられています。

代表例が甘味料のステビアで、葉から取り出すステビオール配糖体が主成分です。既存添加物名簿には、ステビア抽出物から得た「α-グルコシルトランスフェラーゼ処理ステビア」も載っており、これは酵素でグルコースを付け足して新しくグリコシド結合をつくった配糖体です。

ステビオール配糖体は胃や小腸の消化酵素では切れず、大腸で腸内細菌がグリコシド結合を切ってステビオールにします。欧州食品安全機関(EFSA)は2010年に、1日摂取許容量をステビオール換算で体重1 kgあたり4 mgと定めています。

医薬品では、心臓の薬として知られるジギトキシンが、ステロイドの骨格に三糖が付いた配糖体です。DNAやRNAの部品であるヌクレオシドも、糖のアノマー炭素が塩基の窒素とつながった形で、酸素ではなく窒素で結ぶものはN-グリコシドと呼ばれます。

グリコシド結合のよくある質問

グリコシド結合は塩基で切れますか?

ほとんど切れません。グリコシド結合はアセタールなので、中性や塩基性の水の中では安定で、切るには酸か酵素が必要です。スクロースが塩基性のフェーリング液で反応しないのも、この性質によります。

N-グリコシド結合とは何ですか?

糖のアノマー炭素が、酸素ではなく窒素原子と結合したものです。核酸のヌクレオシドでは、リボースやデオキシリボースのアノマー炭素が塩基の窒素とつながっており、酸素でつながる通常のものはO-グリコシド結合と呼び分けます。

グルコシド結合とグリコシド結合は違いますか?

グリコシド結合が総称で、そのうち結合に使われた糖がグルコースのものをグルコシド結合と呼びます。デンプンやセルロースはグルコースだけでできているので、α-1,4-グルコシド結合のように書かれることもあります。

グリコシド結合を切る酵素は何と呼びますか?

まとめてグリコシダーゼ(グリコシド加水分解酵素)と呼びます。デンプンのα結合を切るアミラーゼ類、セルロースのβ結合を切るセルラーゼ類、ショ糖を切るインベルターゼなどがあり、それぞれ切れる結合の向きと位置が決まっています。

まとめ

この記事のまとめ
  • グリコシド結合は、糖のC1(ヘミアセタール)のOHと相手のOHから水が抜けてできるアセタール型の結合
  • 名前は向き(C1の酸素が下ならα、上ならβ)と位置(1,4・1,6)で決まり、デンプンはα、セルロースはβでつながる
  • 酸を触媒にした脱水縮合で、抜けるのは必ずC1のOH。隣の環の酸素が+を支えるため活性化エネルギーが小さい
  • 加水分解でも切れるのはC1側。酸は結合を選ばず、酵素は向きと位置を選んで切る
  • 工場では酵素でデンプンを糖化して異性化糖をつくり、セルロースの糖化はバイオエタノール、還元糖の量はDEとして品質管理に使われる

グリコシド結合は、エステル化やエステルの加水分解、アルコールの分子間脱水と同じ「水が抜けてつながり、水が入って切れる」反応で理解できます。その1本の向きと位置の違いが、デンプンとセルロース、砂糖と異性化糖、薬の効き方まで分けています。

糖や樹脂をつくる会社の顔ぶれや仕事の流れは、化学業界とはの解説で全体像をつかめます。食品工場で新しい設備への投資が続く背景は、食品業界の設備投資のデータとあわせて読むと分かりやすくなります。

出典

出典・参考資料(15件)を開く出典・参考資料を閉じる

TOOLS & SERVICES

製造業で働く人の、仕事の道具・サービス紹介

これからの働き方、資格の勉強、打合せの記録。MONOSCOPE で紹介している3つです。

仕事の道具・サービス紹介をすべて見る ›

NEWSLETTER

品質保証・品質管理・化学・樹脂・ゴムの記事を、週1回まとめてメールで受け取る

週刊MONOSCOPEは、登録時に選んだ職種・業種に合わせた記事を週1回お届けする無料のメルマガです。

実際に届くメールの例を見る

件名:今週のあなた向け記事|週刊MONOSCOPE 10/9号
登録内容:品質保証・品質管理 × 食品・医薬・日用品

週刊MONOSCOPEの見本(品質保証・品質管理 × 食品・医薬・日用品)

職種3本・業種3本・製造業で働くすべての方へ2本・今週よく読まれた記事3本が届きます。記事は毎週入れ替わります。ほかの見本を見る

品質保証・品質管理を選んだ状態で登録へ ›

無料・週1回。登録後に届く確認メールのリンクを押すと登録が完了します。配信はメール内のリンクからいつでも停止できます。

WEEKLY NEWS

今週の製造業ニュース10選

メルマガは職種・業種に合わせた記事。LINEとnoteでは、全員共通の10本を毎週土曜の朝にお届けします。

LINEでニュース10選を受け取るnote今週のニュース10選をnoteで読む ›
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

MONOSCOPEの運営者

プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

▶ お仕事のご依頼はこちら

目次