ポリアクリル酸ナトリウムが高吸水性ポリマーと呼ばれるのは、架橋でつないだ網目の中にイオンを抱え、網目の内と外のイオン濃度の差を浸透圧に変えて水を引き込むからです。日本触媒の汎用品では、脱イオン水を自重の300〜1,000倍、0.9%の食塩水を30〜60倍吸うとされています。
水を吸った網目では –COO− どうしが反発して広がり、架橋があるので溶け出さずにゲルとして水を抱えます。原料はプロピレンからつくるアクリル酸で、紙おむつを中心に、ケーブルの止水材や保冷剤、植栽の保水剤まで工業製品として量産されています。
高吸水性ポリマーのモノマーは何か?アクリル酸ナトリウム
高吸水性ポリマーのモノマー(重合して高分子になる前の小さな分子)は、アクリル酸のカルボキシ基をナトリウム塩にしたアクリル酸ナトリウムです。アクリル酸は、炭素どうしの二重結合(C=C)にカルボキシ基(–COOH)が1つ付いた、最も簡単な不飽和カルボン酸です。
C=C の部分は付加重合でつながる「手」になり、–COONa の部分が水を吸う役を担います。ただし工業では全部を中和せず、一部を –COOH のまま残した「部分中和」のアクリル酸を使うのが普通で、その割合は後の工場の章で扱います。
中和しないまま架橋したポリアクリル酸は、湿る程度にしか水を吸いません。水酸化ナトリウムで中和して初めて高い吸水性が出るため、原料の水酸化ナトリウムも欠かせない材料で、これはイオン交換膜法による食塩電解でつくられています。
高吸水性ポリマーの構造とは?架橋した網目が水を抱える仕組み
アクリル酸ナトリウムが付加重合すると、ポリアクリル酸ナトリウムという長い鎖状の高分子になります。主鎖は炭素の並びで、炭素1つおきに –COONa がぶら下がった形です。
鎖のままのポリアクリル酸ナトリウムは水に溶け、粘りのある液になるだけで水を閉じ込めません。そこで重合のときに、二重結合を2つ以上もつ架橋剤を少量混ぜ、鎖どうしをところどころで橋かけ(架橋)して立体的な網目にします。
乾いた粒の中では –COONa は電荷を打ち消し合った状態ですが、水に触れると –COO− と Na+ に電離します。–COO− は鎖に固定されているので、Na+ も電気的に引き寄せられて網目の中にとどまり、網目の内側だけイオン濃度が高くなります。
乾いた粒が水に触れると電離し、網目の内外のイオン濃度差と –COO− どうしの反発で、網目が大きく広がります。
※●は架橋点です。実際の網目は三次元で、架橋点の間隔ははるかに長く、乾いた製品は直径0.15〜0.85 mm 程度(特許の例)の粉です。
網目の内側はイオン濃度が高く、外側の水は濃度が低いので、濃度をならそうとして水が網目の中へ入り込みます。これが浸透圧で、日本触媒は高吸水性ポリマーの吸水はおもにこの浸透圧によると説明しています。そこへ –COO− どうしの電気的な反発が加わり、網目はさらに押し広げられます。
一方、網目は架橋でつながっているため、伸びるほどゴムのように縮もうとする力が強くなります。吸水は、水を引き込む力と網目が縮もうとする力が釣り合ったところで止まり、そのとき抱えている水の量が吸水倍率になります。
水を引き込む3つの力と、網目が縮もうとする力の釣り合いで吸水量が決まります。架橋の量はこのバランスを決めるつまみです。
※吸水の原理は日本触媒の製品資料と東亞合成研究年報(2002年)による。④は高分子ゲルの膨潤の一般的な考え方です。
架橋が少なすぎると、よく吸う代わりにゲルが柔らかく崩れやすくなり、溶け出す成分(可溶分)も増えます。架橋を増やせばゲルは丈夫になりますが吸水倍率は下がるので、メーカーは用途に合わせて架橋の量で吸水力を設計しています。
吸水の原動力が「イオン濃度の差」なので、吸わせる液に塩が溶けていると濃度差が小さくなり、吸水量は大きく落ちます。カルシウムイオンのような2価の陽イオンは、2つの –COO− をつなぐイオン架橋をつくって膨らみを抑えるため、さらに吸わなくなります。
| 吸わせる液 | 汎用タイプ(g/g) | 耐塩・土木用タイプ(g/g) | 吸水量が変わる理由 |
|---|---|---|---|
| 脱イオン水 | 300〜1,000 | 100〜200 | 外にイオンがなく、内外の濃度差が最大になる |
| 生理食塩水(NaCl 0.9%) | 30〜60 | 30〜40 | 外のNa+・Cl−で濃度差が縮む。尿や血液に近い条件 |
| 人工海水 | 10〜20 | 20〜30 | 塩の濃度がさらに高く、Mg2+などの2価イオンも含む |
| 塩化カルシウム水溶液 | 1〜5 | 10〜15 | Ca2+が –COO− 2つをつなぎ、網目が広がれない |
表の倍率は、乾いたポリマー1 g が吸って保持できる液のグラム数です。紙おむつで実際に受け止めるのは塩を含む尿なので、製品の目安になるのは脱イオン水ではなく生理食塩水の値で、脱イオン水の値の10分の1から20分の1ほどまで下がります。
「1 g で約1 L」という言い方は、脱イオン水での最大級の値にあたります。酸性の液でも –COO− が水素イオンと結び付いて –COOH に戻り、反発が弱まって吸水量が下がるので、吸わせる液の塩分とpHを見て製品を選ぶのが実務の基本です。
高吸水性ポリマーの用途とは?紙おむつから止水材・保冷剤まで
いちばん大きな用途は、紙おむつ・生理用ナプキン・失禁パッドなどの衛生材料です。東亞合成の研究年報によると、高吸水性ポリマーは1978年に生理用品へ初めて使われ、1981年に世界で初めて高吸水性ポリマー入りの子供用紙おむつが日本で発売されました。
紙おむつでは、パルプが尿をすばやく広げ、その間に散らした高吸水性ポリマーの粒が尿を抱え込みます。ユニ・チャームが環境省の検討会で示した代表値では、子供用のパンツ型で素材の30%、テープ型で25%を高吸水性ポリマーが占めます。
素材の重さのおよそ3割が高吸水性ポリマーで、パルプとほぼ同じ量が使われています。
10のうち3が高吸水性ポリマー(代表値30%。パルプ30%、残りはフィルム・不織布などのプラスチック)
※ユニ・チャーム「ユニ・チャームの進める使用済紙おむつのリサイクルについて」(2020年12月、環境省の検討会資料)の素材構成比の代表値。大人用パッドでは高吸水性ポリマー20%・パルプ52%です。
紙おむつ以外では、液の塩分や求められる性能に合わせて種類を使い分けます。海水や地下水にさらされる土木の止水には、吸水倍率を抑えて塩に強くした耐塩タイプが使われ、用途ごとに「何をどれだけ吸い、どこまで保つか」が設計の出発点になります。
同じポリアクリル酸ナトリウム系でも、吸う液と使われ方で重視する性能が変わります。
※用途は日本触媒・住友精化の製品資料による。このほか廃液の固化剤、ペットシート、食品のドリップシート、結露防止材などにも使われます。
保冷剤やカイロでは、水を流れないゲルに変える性質そのものが使われます。植栽の保水剤は、雨や散水で吸った水を土の中にためておくもので、日本触媒は緑化樹木の植栽や芝生の造成、園芸用の保水剤を用途に挙げています。
実際の工場では:アクリル酸から粉末になるまで
高吸水性ポリマーの工場は、モノマーをつくる石油化学の工程と、それを重合して粉にする高分子の工程が一続きになっています。原料のアクリル酸から一貫して生産できるかどうかが、品質と原価の両面でメーカーの強みを左右します。
プロピレンを酸化してアクリル酸にし、中和・重合・架橋でゲルをつくって、乾燥・粉砕・表面架橋で粉の製品に仕上げます。
※STEP 1は触媒懇談会ニュース No.73(2014年)、STEP 2〜6は米国特許 US5837789 の記載による一般的な工程の例です。条件はメーカー・品種で異なります。
原料のアクリル酸:プロピレンの二段酸化
アクリル酸の原料のプロピレンは、原油の分留で得たナフサを分解するナフサクラッカーなどから出てきます。世界のほとんどのアクリル酸工場は、プロピレンをアクロレイン(CH2=CH–CHO)経由で2段階に気相酸化する方法を使っています。
触媒懇談会ニュースの解説によると、反応器は熱を逃がしやすい固定床の多管式で、発熱を抑え、爆発範囲を避けるために反応ガスへ水蒸気を加えています。触媒の改良で2段を通した収率は90%を超え、工業化された化学反応の中でも効率の高い部類に入ります。
プロピレンはエチレンと同じ装置から出る基礎化学品なので、国内のエチレン設備の集約は、アクリル酸や高吸水性ポリマーの原料調達にも関わってきます。日本触媒の製品資料は、同社が原料のアクリル酸から一貫して生産していると説明しています。
中和・重合・架橋:水溶液重合と逆相懸濁重合
アクリル酸はまず水酸化ナトリウムで部分中和します。米国特許 US5837789 では中和の割合を好ましくは50〜80 mol%とし、例の一つは70 mol%で、中和の割合はゲルのpHと吸水性の両方を左右する重要な条件です。
重合には大きく2つの方法があります。水溶液重合は、部分中和したアクリル酸の水溶液に架橋剤(モノマーに対して0.05〜0.6 wt%程度)と開始剤を加え、ベルトの上や混練機の中で重合して大きな含水ゲルをつくる方法です。
逆相懸濁重合は、同じ水溶液を保護コロイドや乳化剤で油(疎水性の有機溶媒)の中に細かい滴として分散させ、滴の中で重合させる方法です。重合後は水を共沸で抜いてろ過します。滴の中で固まるため、特許の例では球状の粒が得られ、大きなゲルを刻む工程が少なくて済みます。
乾燥・粉砕・表面架橋で仕上げる

水溶液重合でできたゲルは、細かく刻んでから熱風で乾かし、粉砕してふるいで粒の大きさをそろえます。粒が細かいと粉が舞いやすく、液の通り道をふさぐ「ゲルブロッキング」の原因にもなります。一方、粒が大きいほど吸う速さは遅くなる傾向があるので、粒度の分布も吸水倍率と並ぶ品質項目です。
最後に、粒の表面に架橋剤の液を吹き付けて加熱し、表面だけ架橋を増やす「表面架橋」で仕上げます。特許の例では120〜250℃に加熱し、炭酸エチレンを使って180℃で25分処理しています。
表面だけ架橋を増やすと、圧力がかかった状態でも吸水を保ちやすくなります。加圧下で吸える量と、吸った液を保つ量のバランスを表面架橋で調整しているのが、紙おむつ向けの製品の特徴です。
アクリル酸を扱う安全:重合の発熱と2012年の事故
原料のアクリル酸は、引火点54℃の引火性液体で、皮膚を強く腐食する物質です。厚生労働省のモデルSDS(安全データシート)は、加熱や光、過酸化物で容易に重合して火災・爆発の危険があること、酸素が少ないと重合禁止剤が効きにくくなることを示しています。
2012年9月29日、日本触媒姫路製造所のアクリル酸製造プラントでタンクの爆発災害が起き、死亡1名・負傷36名が出ました。
兵庫労働局の発表によると、姫路労働基準監督署は2014年3月18日に同社と当時の管理者2名を、労働安全衛生法違反の疑いで書類送検しました。容疑は、バルブや攪拌装置の操作に関する規程を、爆発・火災の防止に必要なものとして定めずに作業を行わせたことです。
労働安全衛生規則第274条は、化学設備を使う事業者に、爆発・火災を防ぐための作業規程(バルブの操作、冷却・加熱・攪拌装置の操作など)を定めて作業させることを求めています。アクリル酸は引火点54℃で、同条の対象になる危険物です。危険性を洗い出す考え方はリスクアセスメントの記事で扱っています。
日本メーカーの存在感と世界の需要
高吸水性ポリマーは、日本の化学メーカーが世界で大きなシェアを持つ素材の1つです。日本触媒は2024年8月の発表で高吸水性樹脂の世界シェア1位(2022年、同社調べ)とし、製品資料では世界の紙おむつの約4分の1に同社の製品が使われていると説明しています。
同社は日本・中国・インドネシア・アメリカ・ベルギーの5拠点で生産し、インドネシアでは年産5万トンを増設して14万トンにする計画です。完工は2027年1月末、商業運転は2027年7月の予定で、人口が増える地域ほど需要の伸びが大きいと見込んでいます。
| 会社 | 製品名 | 特徴・生産地域 | 最近の動き |
|---|---|---|---|
| 日本触媒 | アクアリック | アクリル酸から一貫生産。日本・中国・インドネシア・アメリカ・ベルギーの5拠点。世界シェア1位(2022年、同社調べ) | インドネシアで年産5万トン増設し14万トンへ(2027年7月 商業運転予定)。ベルギー品でバイオマス認証 |
| 住友精化 | アクアキープ | 自重の1,000倍もの水を吸う樹脂。日本・シンガポール・フランス・韓国の4か国で生産 | 衛生材料に加え、ケーブル止水テープ・水膨張性ゴムなど工業用途も展開 |
| 三洋化成工業 | (子会社 SDPグローバル) | かつての国内SAPメーカーの1社 | 2024年に高吸水性樹脂事業から撤退。統合報告書2025で撤退が売上減の要因と説明 |
需要が伸びる一方で、増設を続ける会社と事業から退く会社に分かれているのが、いまの高吸水性ポリマーの市場です。原料のアクリル酸を自社で持つかどうか、衛生材料以外の用途をどれだけ持つかで各社の立ち位置が違い、化学メーカー各社の勢力図を読むときの手がかりにもなります。
紙おむつという最終製品は日用品ですが、その性能を決める素材では日本企業が上流を押さえています。この点で高吸水性ポリマーは、世界シェア上位の日本の部材と同じ構図にあり、日用品業界の市場とも結び付いています。
使い終わった後:紙おむつのリサイクルと扱いの安全
紙おむつのリサイクル
使用済み紙おむつは、高齢化で量が増え続けているごみです。環境省によると、紙おむつが一般廃棄物に占める割合は2023年度の約5.5%から、2030年度ごろには約7%、2050年には約8〜13%まで高まる見込みです。
環境省は2020年3月に「使用済紙おむつの再生利用等に関するガイドライン」を公表し、2025年度には改定に向けた検討会を開いています。紙おむつはパルプ・プラスチック・高吸水性ポリマーの複合品で、尿を吸って大きく膨らんだゲルが素材の分離を難しくするのが、リサイクルの化学的な壁です。
専用の袋で集めた紙おむつを砕いて洗い、パルプ・高吸水性ポリマー・プラスチックに分けて、それぞれ原料や燃料に戻します。
※ユニ・チャームの環境省検討会資料(2020年12月)と、リブドゥコーポレーション・日本触媒・トータルケア・システムの発表(2020年11月)をもとに作成。工程や再生品の用途は事業者で異なります。
ユニ・チャームは2015年に「RefFプロジェクト」を始め、回収した紙おむつを洗浄・分離した後にオゾンで処理し、殺菌・漂白・脱臭したパルプを再び紙おむつの原料に使っています。2023年からは、再生パルプを一部に使った介護用紙パンツを病院や介護施設に届けています。
高吸水性ポリマーそのものの再生では、リブドゥコーポレーション・日本触媒・トータルケア・システムの3社が2020年11月に新技術を発表しました。膨らんだゲルに処理を施してパルプと分けやすくし、性能の低下を抑えて回収する技術で、世界で流通する他社の製品にも使えるとしています。
素材ごとに分けて同じ製品の原料に戻す取り組みは、プラスチックのケミカルリサイクルと同じく、回収量と分離の手間をどう採算に乗せるかが実用化の鍵です。3社の発表は実用化に向けた開発段階の技術として示されています。
水で膨らむボールの誤飲と使い方の注意
高吸水性ポリマーは、膨らむ性質が思わぬ事故につながることもあります。NITE(製品評価技術基盤機構)によると、2021年には水で膨らむボール状の玩具を乳幼児が飲み込む事故が4件報告され、体内で膨らんで腸閉塞を生じるおそれがあり、外科的手術が必要になった例もありました。
これを受けて水で膨らむボール(吸水性合成樹脂製玩具)は消費生活用製品安全法の特定製品に指定され、2023年12月19日以降は、技術基準を満たしPSCマークを付けた製品しか販売できません。
消費者庁によると3歳児の口の大きさは約4 cm で、これより小さい物は口に入ってしまいます。NITE も、対象年齢に満たない子どもには触れさせず、子どもが持ち出せない場所に保管するよう呼びかけています。
高吸水性ポリマーは液体の水を抱え込んでゲルにする材料で、気体の中の水分を取るシリカゲルや生石灰などの乾燥剤とは使いどころが違います。湿気取りの袋と保冷剤の中身を混同せず、それぞれの表示に従って捨てることが大切です。
高吸水性ポリマーのよくある質問
高吸水性ポリマーとポリアクリル酸ナトリウムは同じものですか?
高吸水性ポリマーは水を大量に吸う性質で呼んだ総称で、いま主流なのはアクリル酸を部分中和して架橋したポリアクリル酸ナトリウム系です。架橋していないポリアクリル酸ナトリウムは水に溶けてしまうので、高吸水性ポリマーとしては働きません。
純水での吸水倍率は、実際に使うときの目安になりますか?
そのままの目安にはなりません。尿や海水のように塩を含む液では倍率が10分の1以下から数百分の1に下がるため、使う液に近い生理食塩水などで、加圧の有無もそろえて比べるのが確実です。
膨らんだゲルに塩をかけると縮むのはなぜですか?
外側の液のイオン濃度が上がり、網目の内外の濃度差が小さくなって、水を引き込む浸透圧が弱まるからです。網目が縮もうとする力が勝つので、抱えていた水の一部を外へ出して小さくなります。
吸った水は押しても出てきませんか?
水は網目の中にゲルとして保たれるので、スポンジやパルプに比べて押しても出にくい性質があります。ただし強い圧力をかけたり、塩を含む液に触れたりすると、保てる量を超えた分は外へ出てきます。
紙おむつにはどのくらい高吸水性ポリマーが入っていますか?
ユニ・チャームが環境省の検討会で示した代表値では、素材の重さに占める割合は子供用のパンツ型で30%、テープ型で25%、大人用では16〜20%です。
まとめ
- モノマーはアクリル酸ナトリウム。工業では水酸化ナトリウムで50〜80 mol%程度を部分中和したアクリル酸を使う
- 架橋した網目にNa+が残り、内外のイオン濃度差(浸透圧)と –COO− どうしの反発で水を引き込み、網目の縮む力と釣り合うまで膨らむ
- 汎用品は脱イオン水で300〜1,000倍、生理食塩水で30〜60倍。塩・カルシウム・酸で吸水量は大きく下がる
- 工場ではプロピレンの二段酸化でアクリル酸をつくり、中和・重合・乾燥・粉砕・表面架橋で粉に仕上げる。原料のアクリル酸は重合の発熱に注意が要る
- 日本触媒が世界シェア1位(2022年、同社調べ)。使用済み紙おむつのパルプとSAPを原料に戻すリサイクルが進んでいる
ポリアクリル酸ナトリウムが水を吸う理由は、電離・浸透圧・架橋という高校化学の言葉で説明できますが、その先には原料のプロピレンから紙おむつのリサイクルまで続く長いサプライチェーンがあります。化学の基礎が製品の性能設計に直結する、素材産業らしい題材です。
高吸水性ポリマーをつくる化学メーカーの位置づけは、化学業界のサプライチェーンと化学業界の市場規模と需要先をあわせて読むと、素材がどの産業を支えているかまで見えてきます。

出典
出典・参考資料(19件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 吸水の仕組み・吸水倍率・用途・生産拠点:日本触媒「高吸水性樹脂(SAP)」
- 世界シェア・インドネシアの増設:日本触媒 ニュースリリース:インドネシア子会社での高吸水性樹脂の増設(2024年8月2日)
- 住友精化の吸水性樹脂:住友精化「吸水性樹脂」
- 三洋化成工業のSAP事業撤退:三洋化成グループ統合報告書2025「セグメント別概況」
- 吸水原理・電解質とカルシウムの影響・紙おむつの歴史:野村幸司「高吸水性樹脂『アロンザップ』の高機能化」東亞合成研究年報 TREND 2002 第5号
- 中和の割合・架橋剤・可溶分・重合・乾燥・粉砕・表面架橋:米国特許 US5837789「Fluid-absorbing polymers, processes used in their production and their application」
- 逆相懸濁重合で得られる球状の粒:特公平6-29299「ビーズ状高吸水性ポリマーの製造方法」
- 粒の大きさと吸う速さ:Omidian ほか「Modified acrylic-based superabsorbent polymers (dependence on particle size and salinity)」Polymer 40 (1999) 1753–1761
- 膨潤の釣り合い(浸透圧と網目の弾性):P. J. Flory『Principles of Polymer Chemistry』(Cornell University Press、1953)
- 化学設備の作業規程:労働安全衛生規則 第274条(兵庫労働局 報道発表の別紙に条文を掲載)
- アクリル酸の製法と触媒:萬ヶ谷康弘「アクリル酸製造触媒の開発史」触媒懇談会ニュース No.73(触媒学会シニア懇談会、2014年)
- アクリル酸の危険性:厚生労働省 職場のあんぜんサイト「アクリル酸」GHSモデルSDS
- 2012年の爆発災害と書類送検:兵庫労働局 報道発表(2014年3月18日)
- 紙おむつの排出量の見込み・ガイドライン:環境省 使用済紙おむつの再生利用等(ガイドライン関連ページ)
- 紙おむつの素材構成とリサイクル工程:ユニ・チャーム「ユニ・チャームの進める使用済紙おむつのリサイクルについて」(2020年12月16日、環境省の検討会資料)
- RefFプロジェクト:ユニ・チャーム「水平リサイクル『RefF(リーフ)』ブランドサイトを公開」(2024年4月11日)
- SAPの新規リサイクル技術:リブドゥコーポレーション・日本触媒・トータルケア・システム「使用済紙おむつリサイクルシステムの普及を目指して」(2020年11月5日)
- 水で膨らむボールの事故と規制:NITE「飲んだのは、小さな“時限爆弾”」(2023年5月16日)
- 子どもの誤飲の注意:消費者庁 注意喚起:磁石・吸水樹脂ボールの誤飲
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