SCREENホールディングスは、印刷業を祖業とし、今は半導体製造装置を主力とする京都の会社です。中でもウェーハの洗浄装置に強く、2025年の世界シェアは枚葉式34%、バッチ式43%、スピンスクラバー56%といずれも首位に立っています(Gartnerのデータをもとに同社が作成)。
2026年10月30日には京都府長岡京市に約250億円を投じる新拠点を発表し、2028年1月の操業を目指しています。一方で同社は統合報告書の中で、製品構成が洗浄に偏っている点を自ら弱みに挙げており、強みと課題は表裏の関係にあります。
この記事では、事業の柱、洗浄装置の強み、業績、新拠点の意味を決算資料と統合報告書で読み解き、最後に就職先と取引先として見るときの確認点を整理します。
SCREENホールディングスはどんな会社か
一言でいえば、半導体の製造工程でウェーハを洗う装置の世界最大手です。本体は持株会社で、実際の事業は半導体、印刷、ディスプレー、プリント基板を担う4つの事業会社が動かしており、連結子会社は52社にのぼります。
創業は1868年で、京都の印刷業から始まりました。写真製版用のガラススクリーンの製造を土台に1943年に会社を設立し、印刷で磨いたエッチング技術を半導体へ広げて、1975年にウェーハ洗浄へ本格参入した経緯を持ちます。
150年を超える歴史を持ちながら、売上の規模を伸ばしたのは半導体事業です。
※同社アニュアルレポート2026より。特許は持株・事業・機能会社の合計です。
売上の8割は半導体、4事業の役割

2026年3月期の売上高6,057億円のうち、半導体製造装置事業(SPE)は4,859億円で80.2%を占めます。SPEの営業利益1,227億円は全社の営業利益1,225億円とほぼ同じ額で、利益の面でも会社を支えているのは半導体です。
SPEが8割を占め、残りの3事業とその他を合わせても2割ほどです。
※同社アニュアルレポート2026より。2026年4月に先端パッケージ事業をFTへ移したため、以後の決算資料ではFTの数字が組み替えられています。
祖業の流れをくむグラフィックアーツ機器事業(GA)は、必要な部数だけ刷るデジタル印刷機で連帳インクジェット方式の世界首位を掲げます。インクと保守の売上がGA全体の52%を占めており、装置を売った後も継続して稼ぐ形を整えてきました。
ディスプレー製造装置および成膜装置事業(FT)の主力は、ガラス基板に薄い膜を塗るコーターデベロッパーで、大型のTFTアレイ用では世界首位です。塗るレジスト(感光材料)は半導体用では東京応化工業などが知られ、2026年4月には先端パッケージ事業もFTへ集約しました。
プリント基板関連機器事業(PE)は、回路パターンを基板に直接描く描画装置と検査装置を扱い、ソルダーレジスト向けの直接描画装置は世界トップクラスです。AIサーバー向けの投資を背景に受注は堅調で、高精度な半導体パッケージ基板の市場成長を追い風と位置づけています。
同社はコア技術に、表面で起きる物理現象や化学反応を制御する界面制御技術と、画像を処理して描く画像技術を挙げています。薬液でウェーハを扱う洗浄と、光で描く印刷や基板の装置は、ばらばらの事業に見えて同じ根から伸びた枝だと読めます。
半導体洗浄装置の強み

なぜ洗浄がそんなに重要なのか
半導体は、ウェーハ(シリコンの薄い円盤)の上に膜をつくり、回路を焼き付けて削る作業を何度も繰り返してつくります。半導体の前工程は同社によると千以上のプロセスからなり、その約3割を洗浄が占めています。
回路が細かくなるほど、ごく小さな粒子や薬液の残りが不良の原因になるため、洗浄はデバイスの性能と歩留まり(良品の割合)を左右します。最近はEUV露光に伴う裏面の洗浄や、チップレット(小さなチップを組み合わせる技術)の貼り合わせ面の洗浄といった新しい需要も生まれました。
膜をつくる、回路を形づくるといった工程の前後でウェーハを洗い、次の工程へ送ります。
※流れを簡略にした模式図です。実際の工程の順番や洗浄の回数は、デバイスの種類によって変わります。
枚葉式・バッチ式・スピンスクラバーの違い
洗浄装置は洗い方によって3つに分かれ、同社はそのすべてを持っています。回路の微細化が進むほど1枚ずつ条件を変えられる枚葉式の出番が増え、SPE売上の製品別でも枚葉式洗浄が約75%、バッチ式洗浄が約15%を占めます(2027年3月期上期)。
1枚ずつ丁寧に洗うか、まとめて洗うか、ブラシで落とすかで使い分けます。
※方式の説明はSemiconductorXと同社製品ページ、シェアは同社アニュアルレポート2026(2025年、Gartnerのデータをもとに同社作成)より。
主力の枚葉式では、SU-3400が毎時最大1,200枚の処理能力を掲げています。従来機と同じ24チャンバを積みながら設置面積を30%減らした点は、クリーンルームの床面積を1台あたりの生産性で評価する半導体工場にとって、分かりやすい買う理由になります。
シェアが強みになる理由
売上ベースのシェアを、10台に置き換えて絵で示しました。
枚葉式 34%(10台中およそ3台)
バッチ式 43%(10台中およそ4台)
スピンスクラバー 56%(10台中およそ6台)
※同社アニュアルレポート2026の市場シェア(Gartner「Market Share: Semiconductor Wafer Fab Equipment, Worldwide, 2025」をもとに同社作成、ベンダーの出荷売上ベース)。売上ベースの数字を台数にたとえた図で、四捨五入しています。同報告書の「世界シェアNo.1 5分野」は機種群総数に基づく算出で一部同社調べのため、算定の定義が異なります。
シェアの高さが効いてくるのは、半導体工場の装置選びが一度決まると動きにくいからです。同社が獲得を掲げるPoR(Process of Record、生産プロセスの標準装置)に入ると、同じ工程を持つラインの増設でも同じ装置が選ばれやすく、納入実績がそのまま次の受注の土台になります。
同社は強みとして、設計・製造・プロセスのノウハウの蓄積と、世界トップメーカーとの長年の関係を挙げています。TSMCから装置の生産支援で表彰を受けたほか、研究機関や顧客とのコンソーシアムにも参画しており、次世代の洗浄条件を早い段階でつかめる立場にあります。
売った後も稼ぐポストセールス
装置を納めた後の立ち上げ、保守、部品販売、改造をまとめたポストセールスは、SPE売上の2割ほどを占めます。売上は2023年3月期の738億円から2026年3月期の997億円へ伸び、2027年3月期は1,257億円を見込んでいます。
顧客の工場がよく動くほど部品や保守の需要が増えるため、新規装置の売上が景気で振れる時期にも収益を支えます。2026年7〜9月期の339億円は四半期で過去最高で、納入台数が増えるほど積み上がる性質を持つ事業です。
業績の推移と売上を左右するもの
利益率はこの数年で大きく上がった
2020年3月期に3.9%だった営業利益率は、2025年3月期に21.7%まで上がりました。
※棒は売上高、右の数字は売上高/営業利益率。同社の2027年3月期第2四半期決算説明会資料(2026年10月30日)より。2027年3月期は同日時点の会社予想です。
営業利益は2020年3月期の125億円から2025年3月期の1,356億円へ約11倍に増えました。2026年3月期は前期の駆け込み需要の反動で売上高が3.1%減、営業利益が9.7%減の1,225億円となりましたが、営業利益率は20%台を保っています。
2026年4〜9月期は売上高3,084億円(前年同期比12.5%増)、営業利益545億円(同17.4%増)で、受注も過去最高を更新しました。通期予想は売上高7,430億円、営業利益1,565億円で、下期に4,346億円を積む計画のため、出荷の進み具合が今期の焦点です。
中期経営計画「Value Up Further 2026」は3年累計の売上高1.8兆円以上を目標にしており、今期が予想どおりなら累計は約1兆9,739億円で目標を超えます。さらに先の目標として、2033年3月期に売上高1兆円以上、営業利益率20%以上を掲げています。
用途・地域・顧客の偏りをどう読むか
新規装置の用途別では、ファウンドリー(受託製造)が2026年3月期の59%から今期予想52%へ下がり、DRAMが15%から24%へ上がる見通しです。AIサーバー向けのHBMやDRAMへの投資が伸びたためで、キオクシアなどが手がけるNANDの投資も動き出したと同社は見ています。
地域別の売上高は、2026年3月期で中国が38.4%、台湾が22.4%、日本が14.1%でした。TSMC向けの販売は売上高の14.6%を占めており、特定の地域や大手顧客の投資計画が業績に直接響く構造なので、輸出規制や顧客の投資動向とあわせて数字を見る必要があります。
長岡京市の新工場の意味

新拠点の狙いは、半導体投資の拡大に合わせて生産能力を先に確保することです。同社はWFE(半導体前工程の製造装置)市場を2025年の1,240億ドルから2026年は1,550億ドル、2027年は2,000億ドル規模と想定し、市場の伸びを上回る能力を持つ方針を示しました。
拠点は京都府長岡京市にあり、投資額は約250億円、延床面積は約25,500平方メートルの地上4階建てです。更地に新築するのではなく、2024年3月に取得した土地と建物を改修してクリーンルームなどを整え、半導体洗浄装置の生産工程の一部を担います。
この投資は彦根事業所(滋賀県彦根市)とセットで読むと意味が分かります。洗浄装置の主力生産拠点である彦根は5つの工場を持つものの、ニュースイッチは新棟を建てる余地が限られると伝えており、効率化の次の増強先として長岡京を用意した形と読めます。
彦根の効率化で約1.3倍、長岡京の活用などでさらに約1.3倍を目指します。
※同社の決算説明会資料(2026年10月30日)の増強イメージより。日本経済新聞は、彦根と合わせた生産能力が2028年に現状比で約7割増える見通しと報じています。
資金面では、今期の設備投資予想が7月時点の430億円から580億円へ増えました。前期の277億円の2倍を超える規模で、今期の営業利益の増減でも成長投資に伴う固定費の増加が約320億円のマイナス要因として織り込まれています。
操業開始は2028年1月なので、売上への効果が出るのはそれ以降です。後藤正人社長は日本経済新聞に「市場は27年、28年にかけて伸びていく」と語っていますが、半導体の設備投資には波があり、先に積んだ固定費を売上で吸収できるかが、今後の決算で確かめたい点です。
洗浄への集中とその先の柱づくり
同社は統合報告書のSWOT分析で、洗浄に偏った製品構成と、用途の偏った顧客構成を弱みに挙げています。脅威としては、競合の技術力向上と価格戦略によるシェア低下、ウエット洗浄やエッチングがドライ方式へ置き換わる動き、地政学リスクの3つを示しました。
洗浄装置は、東京エレクトロン、Lam Research、韓国のSEMES、ACM Researchなども手がけています(各社サイトで確認、同社が競合として公表した名前ではありません)。
とくに東京エレクトロンは成膜、エッチング、テストまで製品を持つため、工程全体で提案できる相手との競争が、洗浄に集中する同社の課題と読めます。

この偏りを補う動きとして、公開資料からは次の4つが読み取れます。どれも洗浄の外や周辺へ技術を広げる取り組みで、その他・新規事業の売上はまだ29億円(2026年3月期)にとどまるため、柱に育つかはこれからです。
- ATCA:2025年12月に米国ニューヨーク州に開いた初の海外研究開発拠点で、洗浄以外の工程も含めてプロセス全体を見られる体制をつくる
- ニコンのウエハー接合技術の研究開発事業を譲受:チップレット時代の貼り合わせ工程へ入る足がかり
- 直接描画露光装置DW-3100:2025年12月に発売し、拡大する半導体の後工程のパッケージ市場を狙う
- Yaqumoとの共同研究:直接描画で培った光学技術を量子コンピュータ向けのモジュール開発に展開する(2026年8月発表)
就職・転職先として見るSCREEN
企業研究でまず押さえたいのは、働く場の中心が持株会社ではなく事業会社だという点です。連結6,884名のうちSPEが3,932名を占める一方で、持株会社の従業員は653名なので、応募先がどの会社でどの事業に属するのかを求人票で確かめる必要があります。
有価証券報告書の平均年間給与は1,080.2万円、平均年齢は42.0歳、平均勤続年数は13.9年です(2026年3月期)。ただしこれは持株会社653名の数字で、事業会社の水準をそのまま示すものではないため、職種別の条件は別に確かめる必要があります。
開発と製造は京都・滋賀に集まり、サービス職は顧客の工場の近くに広がります。
※同社アニュアルレポート2026、インターンシップガイド、リクナビの掲載情報より(2026年11月確認)。募集内容は年度で変わります。
勤務地は国内の生産拠点が京滋地区に集中しており、彦根、洛西、久御山、野洲、多賀などが中心です。生産技術や設計を志望するなら関西での勤務を前提に考え、新拠点ができる長岡京の配属については説明会で聞くのが確実です。
フィールドサービスエンジニアはTSMC熊本工場のある熊本県も勤務候補地に入り、27卒の大学卒の初任給は月給26.2万円と掲載されています。女性社員比率は11.4%、女性管理職比率は5.1%(持株・事業・機能会社)で、社内の育成制度とあわせて確認したい数字です。
半導体製造装置のメーカーへの転職も考えたい方へ、求人の探し方と相談先を転職・キャリアガイドにまとめています。

取引先として見るSCREEN
部材や設備を売り込む側から見ると、増産の局面は入り口が広がる時期です。ただし公開資料に発注先や窓口の情報はないため、次の4点を手がかりに提案の切り口を考え、具体的な条件は個別に確かめることになります。
- 増産の進め方:ニュースイッチによれば、工場内の部材の流れの見直し、組み立ての自動化、部材のユニット化による調達を能力増強策に挙げている
- 調達の方針:統合報告書で、多様な調達手法の確立と在庫戦略の再構築を進めると説明している
- サプライヤーへの要求:取引額上位240社を把握し、行動規範への対応調査を240社以上に実施している
- 環境対応:長岡京に省エネ型の空調を入れ、SU-3400でも排気・窒素・薬液の環境負荷を20%減らしており、省エネにつながる部品は提案の材料になる
SCREENホールディングスのよくある質問
SCREENホールディングスの旧社名は?
旧社名は大日本スクリーン製造です。2014年10月に持株会社体制へ移った際に現在の社名へ変わり、写真製版用のガラススクリーンから出発した歴史を今も名前に残しています。
東京エレクトロンとの違いは?
東京エレクトロンは成膜、リソグラフィ、エッチング、洗浄、テスト、接合と幅広い工程の装置を扱う会社です。一方のSCREENは半導体事業の売上の約9割を洗浄装置が占めており(2027年3月期上期)、洗浄の3方式で世界首位という集中型の構成が違いです。
株式の証券コードと、最近の株式分割は?
証券コードは7735で、上場先は東証プライムです。2026年4月1日付で1株を2株に分割したため、過去の配当やEPSを比べるときは分割を反映した数字を使ってください。2027年3月期の配当予想は183円です。
水素事業は今どうなっている?
中期経営計画では水素関連の黒字化を掲げていましたが、外部環境の停滞を受けて要素開発の段階へ位置づけを改めました。受託製造は続けており、すぐに売上の柱になる事業としては見ないほうが実態に近いです。
まとめ
- 印刷業を祖業とし、売上の80.2%を半導体製造装置で稼ぐ京都の会社(2026年3月期)
- 洗浄装置の世界シェアは枚葉式34%、バッチ式43%、スピンスクラバー56%で首位(2025年)
- 今期予想は売上高7,430億円、営業利益1,565億円で、下期の出荷が焦点
- 長岡京の新拠点は約250億円の既存建物改修で、2028年1月に操業し、彦根とあわせて能力を増やす
- 洗浄への偏りは同社自身が挙げる弱みで、応募先や取引先としては事業会社単位で確かめる
SCREENの強みは、洗浄という工程を半世紀かけて磨き、顧客の製造ラインの標準に入り込んできた点にあります。工程全体を知りたい方は半導体製造のテーマページ、他社と比べたい方は電子部品・半導体の業種ページ、仕事の中身は生産技術の職種ページもあわせてご覧ください。
出典
出典・参考資料(13件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 業績・セグメント・生産能力・配当:SCREENホールディングス 2027年3月期 第2四半期決算説明会資料(2026年10月30日)
- 事業・シェア・SWOT・人員:SCREENホールディングス アニュアルレポート2026
- 新拠点の概要:SCREENホールディングス「半導体製造装置の生産能力強化に向けて、長岡京市に新拠点を開設」(2026年10月30日)
- 中期経営計画:SCREENホールディングス 中期経営計画「Value Up Further 2026」
- 洗浄装置の製品情報:SU-3400、FC-3100、SCREEN SPE 製品一覧
- 従業員・給与・沿革・TSMC比率:SCREENホールディングス 有価証券報告書 2026年3月期(EDINET DBに転載された本文)。連結従業員数はアニュアルレポート2026と一致
- 生産能力の報道:日本経済新聞「SCREENHD、半導体製造装置の新工場 京都府長岡京市で250億円投資」(2026年10月)
- 上期決算の報道:日本経済新聞「決算:SCREENHDの純利益18%増 4〜9月、AI需要でDRAM向け装置が好調」(2026年10月)
- 新工場の報道:京都新聞「京都府長岡京市にSCREEN新工場建設へ」(2026年10月)
- 彦根事業所の増強策:ニュースイッチ(SCREEN HD 彦根事業所の生産能力増強の報道)
- 洗浄装置の方式と主要メーカー:SemiconductorX「WFE Cleaning Equipment」、SEMES、ACM Research
- 東京エレクトロンの製品領域:東京エレクトロン 製品情報
- 採用情報:リクナビ SCREEN SPEサービス、インターンシップガイド SCREENホールディングス
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