キャビテーションとエア噛みの違い|ポンプの症状・原因と見分け方

工業用渦巻ポンプとモーター

キャビテーションは液体が低圧部で蒸気になる現象で、エア噛みは空気が混入して揚水を妨げる状態です。どちらもポンプの振動や流量低下を招きますが、気泡の生まれる場所と対策が異なります。

現場では音の違いだけで決めず、液温と吸込圧力、水槽の液位を組み合わせて調べます。空気の侵入経路を探す調査と、蒸発しやすさを計算する調査を並行して進めるのが基本です。

対象は一般的な渦巻ポンプで、キャビテーションは主に蒸気によるものとして扱います。エア噛みは外から入る空気によるものとし、気泡の発生条件と点検する箇所を比較します。

目次

キャビテーションとは

キャビテーションとは、流れの中で圧力が下がり、液体の一部が気化して気泡が生じる現象です。気泡が下流の高い圧力を受けて急激につぶれると、周囲に衝撃や騒音が生まれます。

重要なのは、液体全体を沸点まで加熱しなくても起きるという点です。羽根車の入口などで局所的に圧力が低くなると、常温の水でも蒸発して気泡になります。

図1:羽根入口で生まれた蒸気泡が壁の近くで崩壊する

発泡は低圧部、壊食は気泡の崩壊が壁に作用する場所で起きます。

液体の流れ羽根入口:低圧下流:圧力回復蒸気泡が成長崩壊して壁へ衝撃

模式図です。気泡の数や崩壊位置は実機の流量・回転速度・羽根形状で変わります。

羽根車の表面近くでこの崩壊が繰り返されると、金属が削られる壊食につながります。振動が大きくなるだけでなく、羽根の損傷や揚程低下を招くため、異常を放置できません。

発生を抑える基本は、吸込側に十分な圧力の余裕を持たせることです。液面を高くする対策に加え、吸込管の抵抗を減らし、運転流量を適切な範囲に収めます。

吸込ストレーナーが詰まると、その下流の圧力が下がって発生しやすくなります。網の細かさだけでなく、ストレーナーの選定と差圧管理も吸込条件を保つうえで重要です。

似た振動を起こす現象に、流量や圧力が周期的に変動するサージングがあります。サージングの発生条件は異なるため、振動という症状だけで同じ対策を選べません。

キャビテーションの初期には、まだ吐出流量を維持できることもあります。水が出ているから正常とせず、同じ流量での騒音や吸込圧力の変化を記録すると兆候をつかめます。

エア噛みとは

点検台に置いたポンプの羽根車
ポンプの羽根車を示す生成イメージ。実機の壊食を撮影した写真ではありません。

エア噛みは、空気が液体と一緒に入り込み、ポンプが安定して水を送れなくなる状態です。吸込配管の空気や水槽表面から巻き込まれた空気が、羽根車へ運ばれて発生します。

渦巻ポンプは液体に速度を与えて圧力を上げるため、内部に気体がたまると揚水能力が落ちます。少量の混入による不安定な運転から、空気だまりで水を送れない状態まで症状は広がります。

図2:水面と吸込継手から入る空気の経路

水槽の空気吸込渦と、負圧になった配管のすき間を分けて探します。

水面から巻込み空気が継手へ侵入羽根車へ混入吸込水槽

継手の侵入は内圧が外気より低い区間で問題になります。水漏れが見えない場合もあります。

吸込側が大気圧より低いと、継手や軸封のすき間から空気を吸い込む場合があります。停止中に水が漏れない継手でも、運転中の負圧による空気の侵入を調べる必要があります。

水槽では低い液位や偏った流れが原因となり、吸込口まで空気を引き込む渦が発生します。荏原の水槽解析資料も、形状と流入条件を整えて有害な渦を抑える重要性を示しています。

起動直後だけ水が出ないときは、呼び水不足や配管の高い位置に残った空気も調査対象です。呼び水でポンプ内部を満たし、設計された空気抜き箇所から残留空気を除く手順を守ります。

エア噛みを起こすと、電流が必ず上がるわけではありません。液を送る負荷が小さくなり電流が低下する場合もあるため、通常時の流量と電流を一緒に比べます。

負荷と電流の関係は、ポンプの電流値が上がる・下がる原因で整理しています。電流が小さくても、液で冷却される軸封などが傷む危険は残ります。

空運転による損傷を、すべてモーターの過負荷と結び付けると原因を取り違えます。湿式ポンプの潤滑不良と、一般のポンプの軸封冷却不良では、損傷する部位も保護の方法も異なります。

再発防止は空気抜きだけで終えず、空気が入る経路を修理するところまで進めます。水位管理の改善と配管の気密回復では工事内容が違うため、発生条件の記録が役立ちます。

点検時には、タンクからポンプまでの配管を図面と照らし、高い位置に空気だまりがないか追います。配管改造の後から症状が出た場合は、勾配や空気抜きの位置の変更も調査の手掛かりです。

空気抜きは、機種指定の停止・冷却・減圧手順と、液体の性質に合う回収方法に従います。運転中の継手は緩めず、取扱説明書で運転中の開放を禁じる空気抜き弁も操作しません。

キャビテーションとエア噛みの見分け方

両者を見分ける入口は、運転前後で変化した条件をそろえて調べることです。発生した時刻の液位と液温、流量と回転速度を、正常時の記録と同じ項目で比較します。

たとえばタンク残量が減った後だけ発生するなら、液面低下が共通のきっかけになり得ます。液面低下はNPSHaを減らすと同時に空気吸込渦も生じやすくするため、両方の原因を追います。

起動直後から発生したのか、安定運転の途中で突然始まったのかも重要な情報です。前者では充水と空気抜き、後者では液位や温度の変動、吸込抵抗の増加を優先して調べます。

激しい振動や揚水不能が続く場合は、設備の停止手順に従って運転を止めます。原因を探すための繰り返し起動や空運転は避け、分解前には電源の隔離と残圧の除去を徹底します。

飽和状態かどうか

飽和状態を見るときは、液温だけでなく、その液温での飽和蒸気圧を使います。ポンプ内部の圧力がそこまで下がるかという視点で、温度と圧力を組み合わせて判断します。

高温の水は低温の水より蒸気圧が高く、同じ吸込圧力でも蒸発する余裕が小さくなります。常温水でも吸上げ高さや配管損失が大きければ、羽根入口の低圧部で発泡します。

図3:流れに沿った局所圧力と、その液温での蒸気圧

吸込圧力計の位置で蒸気圧より高くても、羽根入口ではさらに圧力が下がります。

圧力飽和蒸気圧吸込計測点羽根入口下流で回復局所静圧流れ方向 →

液温を一定とした概念図であり、圧力値や位置の縮尺は示していません。発生部の局所圧力と計測点の圧力を区別します。

溶剤など水以外の液体では、扱う成分と温度に応じた物性値を使います。大気圧での沸点だけを比べるより、運転温度における蒸気圧を見るほうが吸込条件を評価できます。

圧力計の指示は、多くの場合、大気圧との差であるゲージ圧です。蒸気圧との比較には絶対圧が必要なので、連成計の目盛と絶対圧の関係を押さえて換算します。

液温が上がった日に限って異常が出るなら、蒸気圧上昇の影響を調べる手掛かりになります。一方、補給直後や水槽の低液位で出る異常は、空気の巻込みも同時に調べる対象です。

水中に溶けた気体が、減圧によって分離して気泡になる現象もあります。実機では蒸気と気体の影響が重なるため、目に見える泡があるだけで外からの空気と断定しません。

NPSHが確保できているかどうか

NPSHは、液体が蒸発する圧力に対し、吸込側にどれだけ余裕があるかを水頭で扱う指標です。単位はメートルですが、配管の長さを表す数字ではなく圧力の余裕を高さに換算しています。

設備側が確保できる値をNPSHa、ポンプが必要とする値をNPSHrと呼びます。流量と回転速度をそろえ、設備の計算値をメーカーの必要値と比較するのが基本です。

NPSHrは運転点によって変わるため、定格流量の一点だけで判定すると不足を見落とします。実流量をポンプの性能曲線と運転点に照らして読むことが重要です。

計算に使う液位は、普段の平均液位ではなく、異常が出たときの実際の液位を採ります。設計の照合では、想定する最低液位と最も厳しい温度条件も加え、通常運転との差を明らかにします。

吸込損失には直管だけでなく、曲がりや弁、ストレーナーなどの抵抗も含めます。清掃直後の値と詰まりが進んだ値を分けると、保全の基準が吸込条件に与える影響まで見通せます。

図4:開放水槽から吸い上げるときの水頭収支

大気圧と蒸気圧の差から、吸上げ高さと吸込管の損失を引きます。

大気に開放101.3 kPa蒸気圧 2.3 kPa吸上げ2 m吸込損失1.5 mポンプ基準面

説明用の仮定値です。水槽表面の速度を無視し、液密度1000 kg/m³、重力加速度9.81 m/s²で概算します。

開放水槽・表面速度を無視した場合
NPSHa = p0 − pvρg + z − hL
p0:液面の絶対圧[Pa]、pv:液温での飽和蒸気圧[Pa]、ρ:密度[kg/m³]、g:重力加速度[m/s²]、z:基準面から液面への高さ[m]、hL:吸込配管の損失水頭[m]。液面が下ならzは負。
図4の数値を代入
NPSHa = 101,300 − 2,3001,000 × 9.81 − 2 − 1.5
≒ 10.09 − 3.5 = 6.59 m
仮にこの運転点のNPSHrが4.0 mなら差は約2.59 m。必要な設計余裕はメーカー指定と運転条件で別途判断します。

この例では、液面がさらに下がるとNPSHaが小さくなり、配管損失が増えても同じ方向に変わります。式の各項を見ると、異常が出た日の変化を設備条件へ結び付けられます。

同じ仮定のまま液面が1m下がれば、NPSHaは6.59mから5.59mへ減少します。吸込損失も1m増えたとすると4.59mになり、必要値4mに対する余裕は大きく縮みます。

液位低下と汚れが同時に進む設備では、その組合せを点検計画に入れます。たとえば清掃の前後で最低液位時の吸込圧力を比べると、ストレーナーの抵抗が回復したかを追えます。

逆に、ポンプを低い位置に置くと、液面から押し込む高さを増やせます。詳しい計算手順は流入水頭の計算方法にまとめています。

吸込口で運転中の圧力を測る方法では、速度水頭と計測点の高さの扱いも必要です。水槽基準の式と吸込口基準の式を混ぜると、高さや損失を二重に差し引く原因になります。

カタログでNPSH3と示す値は、キャビテーションにより揚程が3%低下する基準です。気泡が初めて生じる値とは異なるため、NPSHaがその値を上回るだけで無発生を保証するものではありません。

NPSHが十分でも、外から空気が入る経路は別に残るので、エア噛みの調査は続けます。最低液位と最高液温、最大流量を含む条件で計算を見直し、気密と巻込みの両方を点検します。

弁の調整で症状が変わるときも、変化した流量と吸込圧力を一緒に残します。吸込弁を絞ると吸込条件を悪化させるため、診断目的の安易な操作は避け、機種の運転範囲を守ります。

図5:症状を、調べる量と是正策につなぐ

音の呼び名ではなく、変化した条件を根拠に対策を決めます。

見る項目
キャビテーション側
エア噛み側
主な手掛かり
液温上昇、吸込圧力低下、流量増加
低液位、補給時の泡、呼び水後の再発
調べる量・場所
実流量でのNPSHaとNPSHr、吸込損失
吸込継手の気密、水槽の渦、配管内の残留空気
対策の方向
液面・設置高さ・温度・吸込抵抗を改善
侵入経路の補修、巻込み防止、所定の空気抜き
共通する注意
激しい異常では停止し、運転条件を記録
空運転を繰り返さず、原因除去後に再起動

両者は同時発生します。機械的な振動や配管支持の問題も含め、二者択一で断定しません。

点検後は、単に音が静かになったかだけでなく、流量と吐出圧力が戻ったかを照合します。電力の変化も調べると、揚水を回復した結果と、負荷だけを減らした結果を区別しやすくなります。

電力と流量を評価する土台は、ポンプの軸動力と水動力の関係です。締切状態で流量がなくても内部の発熱は続くため、締め切り運転による液温上昇も別の異常として管理します。

再発する条件が分かれば、液位の警報設定やストレーナー清掃の基準を見直せます。状態を見て決める設備保全に記録を生かし、同じ条件での再発を防ぎます。

記録をメーカーに渡すときは、ポンプ型式と羽根車径、回転速度も添えて条件を特定します。同じ型式でも速度や羽根の仕様が違うと性能曲線が変わるため、現物の銘板と資料を照合します。

異常が解消しない場合は、軸受や芯出し、配管支持など機械側の原因へ調査を広げます。泡に関係する二現象だけで説明を完結させず、運転データと点検所見が一致する原因を探します。

よくある質問

音だけでキャビテーションとエア噛みを見分けられますか?

音だけで確定するのは難しく、どちらも騒音と振動、揚水能力の低下につながります。音が出る流量や液位を記録し、吸込圧力と液温からNPSHを評価して原因を絞ります。

エア抜きで直ったらエア噛みが原因ですか?

残留空気が影響した手掛かりですが、再びたまるなら侵入元を除く必要があります。起動時の充水不足と運転中の空気吸込みを分け、空気抜き後に安定する時間も記録します。

冷たい水でもキャビテーションは起こりますか?

冷たい水でも、局所圧力がその温度の飽和蒸気圧まで下がれば発生します。温度だけで除外せず、吸上げ高さと配管抵抗、実際の運転流量から吸込条件を評価します。

空気抜き弁を付ければ再発を防げますか?

空気を排出する設備だけでなく、空気が混入する原因を取り除く対策が必要です。負圧の箇所では外気の侵入も考慮し、弁の設置位置と仕様は配管条件に合わせて設計します。

まとめ

この記事のまとめ
  • キャビテーションは低圧部での液体の気化と、その後の気泡崩壊が問題になる
  • エア噛みは外来空気の混入で揚水が不安定になり、空運転の損傷につながる
  • 液温と絶対圧を組み合わせ、NPSHaを実運転点のNPSHrと比較する
  • 空気の侵入と水面の巻込みは、NPSHとは別に点検する
  • 電流や音だけで断定せず、記録と原因除去後の運転確認で再発を防ぐ

異常の切り分けでは、測った値と運転条件をセットにして残すことが役立ちます。次の担当者も同じ条件を追えるように、計測点と液位の基準面を記録へ添えておきましょう。

出典

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MONOSCOPEの運営者

プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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