P&IDとPFDの違いとは?記載内容の比較と図面ができる順番

加熱設備のタンクとポンプと熱交換器

P&IDは配管と計器・弁のつながりを示す配管計装図で、PFDは主要機器と工程の流れを示すプロセスフロー図です。PFDで生産の仕組みを整理し、P&IDで配管と制御を具体化します。

同じ加熱工程でも、PFDでは処理量や温度条件が読みどころになります。P&IDでは温度を測る位置や蒸気を調節する弁など、運転に必要な接続関係を追います。

両者の正式名称と記載内容を確認し、図面ができる順番を比較します。工程を理解する場面と、操作・保守を検討する場面で、どの図面を開けばよいかが分かります。

目次

P&IDとは

P&IDはPiping and Instrumentation Diagramの略で、日本語では配管計装図と呼びます。機器をつなぐ配管に、流れを監視・調節する計器や弁を加えた図面です。

設計担当者は、工程を成立させる配管や制御の構成をこの図面で検討します。運転・保全担当者も、流体がどこへ進み、どの弁や計器が関係するかを同じ図面で把握します。

図1:加熱器のP&IDで流体と制御信号を追う

出口温度を測り、蒸気入口の弁を調節する例です。配管と信号は別の線で描きます。

液入口 →液出口 →E-101 加熱器蒸気ドレンTV-101TIC-101温度調節計TT101 実線:流体配管破線:信号経路(簡略)低温時に蒸気を増やすという制御の想定例

※機器・タグ・線種は説明用の模式例です。実設備の凡例、計装詳細、安全設計を示す施工図ではありません。

図1の液は左から加熱器を通り、右へ出る間に蒸気から熱を受け取ります。出口温度の測定信号を調節計が受け、蒸気入口の調節弁へ操作信号を返す構成です。

液の配管だけを追うと、蒸気を増減する仕組みを読み落とします。流体の道筋と制御信号の道筋を分けて読むと、どの測定値がどの弁に作用するかが分かります。

温度が低いときに蒸気を増やすという関係は、この加熱例の設計上の想定です。実際の正逆動作や信号喪失時の弁位置は、図の矢印だけで決めず制御仕様と照合します。

P&IDに記載する情報

P&IDには、主要機器だけでなく運転や保護に関わる付属系統も描き込みます。具体的な記載範囲は案件の作図基準で定めますが、代表的な項目は次のとおりです。

  • 機器の名称・番号と、機器を結ぶ配管の流れ方向
  • ライン番号、配管口径、材質や圧力クラスなどの仕様
  • 手動弁・自動弁の種類とタグ番号、バイパスの接続
  • 計器番号、測定位置、制御ループと信号の接続
  • 安全保護系統、ドレン・ベント、必要なユーティリティ

ライン番号は配管を識別する符号で、図面と配管リストを結ぶ手掛かりになります。口径や材質の情報は番号の一部に含める場合と、別の欄やリストで管理する場合があります。

例えば50Aという呼び径と配管の肉厚は、同じ情報ではありません。配管の仕様を読むときは、Sch(スケジュール番号)と肉厚の関係も合わせて押さえると、ラインの記載を分解できます。

安全弁の記号があれば、その機器がどの出口へ圧力を逃がすのかを追います。弁の構造や容量の考え方は、安全弁の揚程式と全量式の違いで別に整理しています。

凡例と番号を確かめてから上流から読む

読み始めるときは、図面番号・改訂番号・対象範囲を見てから凡例を開きます。線の意味が分かれば、入口から出口へ進み、途中の分岐や別図への接続もたどれます。

図2:配管・信号・タグを凡例と照合する

線の形と計器の機能を別々に読み、最後に同じループ番号を結びます。

配管:流体の行き先を読む信号:測定値・操作のつながりを読むTT101TIC101T:温度I:指示C:調節TT:温度発信器

※本図の線種は本稿の凡例です。実図面で電気・空気圧などを表す線種は、その案件の凡例を使います。

P&IDには規格があり、ISO 10628は図面の分類や内容、図記号を扱っています。ISA-5.1は計装の記号と識別方法を定め、企業や案件の作図基準を整える際の土台になります。

一方で企業や案件ごとに、採用する記号や補足情報の書き方には違いがあります。見慣れた破線でも意味を決めつけず、適用規格とその図面の凡例を組み合わせて読むのが基本です。

図2のTTは温度発信器、TICは温度指示調節計を表す例で、101が対応する番号です。計器記号や円の線の詳しい見分け方は、P&IDの読み方と計器記号を参照すると理解が進みます。

信号線は測定・操作の関係を表し、端子番号やケーブル芯数までは通常読み取れません。接続を実装する段階では、DI/DO・AI/AOなどの信号種別をI/Oリストや結線図と照合します。

P&IDの機器配置や流れは、DCS(分散制御システム)の監視画面を考える土台にもなります。ただし操作画面は、警報や操作性を考慮して構成するため、図面の単純な写しとは区別します。

作図ソフトには、Microsoft VisioやAutoCAD Plant 3Dツールセットの機能があります。記号を置くだけでなく、タグや配管データを管理する機能を使えば、関連するリストの作成にもつながります。

PFDとは

PFDはProcess Flow Diagramの略で、原料から製品に至る主要な工程を表す図面です。主要機器を流れで結び、何をどれだけ処理する設備なのかを整理します。

個々の手動弁や細かな計装を描き込む前に、混合・加熱・分離などの処理の順番を検討します。プロセス設計の初期に使い、P&IDを具体化するときの土台になります。

流れの一つ一つをストリームと呼び、番号を付けて流量・温度・圧力・組成を対応させます。図面に直接書く場合も、ストリーム表や物質収支・熱収支の資料を添える場合もあります。

図3:混合工程のPFDとストリーム表

説明用に水溶液と水を混合します。番号は配管仕様ではなく、流れと数値を対応させる印です。

① 水溶液1,000 kg/h溶質10質量%② 水 500 kg/h③ 混合液1,500 kg/hM-101 混合槽
ストリーム① 水溶液② 水③ 混合液
質量流量1,000 kg/h500 kg/h1,500 kg/h
溶質の質量分率10%0%約6.67%

※定常・反応なし・損失なしの仮定例です。実際のPFDでは温度・圧力など必要な条件も追記します。

図3では、水溶液と水を混ぜる工程を主要機器と流れだけで表しました。細かな弁が描かれていなくても、入口が二つ、出口が一つの工程であることは読み取れます。

流れ番号と質量流量があれば、出入りする量のつじつまを確認できます。一定運転で槽内への蓄積がなく、反応も損失もないと仮定すると、出口の質量流量は入口の合計です。

全質量と溶質の収支(図3の仮定例)
ṁ3 = ṁ1 + ṁ2
= 1,000 + 500 = 1,500 kg/h
x3 = ṁ1x1 + ṁ2x2ṁ3
= 1,000 × 0.10 + 500 × 01,500 ≒ 0.0667 = 6.67質量%
ṁ:質量流量[kg/h] x:溶質の質量分率[kg/kg] 添字1・2・3:ストリーム番号

この例では溶質が毎時100kg入り、そのまま混合液に含まれて出ていきます。出口濃度だけを見るより、質量の収支と成分の収支を分けると数値の意味がはっきりします。

温度条件まで検討する工程では、これに熱の出入りを加えます。加熱器の負荷を読むための熱交換器の熱収支は、流量と温度が機器能力に結び付く例です。

ストリーム表があるだけで、あらゆる運転条件の収支が完成するわけではありません。設計ケース、流量の基準、温度・圧力条件をそろえ、対応する計算書と一組で扱います。

例えば通常生産と最大生産で流量が変われば、必要な加熱量やポンプ能力も変わります。PFDの値を仕様へ渡す際には、どの運転ケースを採用したかを明記すると手戻りを減らせます。

収支を比較するときは、質量流量と体積流量の取り違えにも気を付けます。液の密度が異なれば、体積流量をそのまま足して質量保存を確かめることはできず、同じ基準への換算が必要です。

配管口径も流量だけで一意には決まらず、流速や圧力損失などの検討を加えて選びます。PFDはその入力条件を与え、P&IDや配管仕様へ詳細を展開する役割を担います。

PFDは、運転者への工程教育や発注者への設備説明にも役立ちます。最初に全体の処理順をつかんでからP&IDへ進むと、細かな弁や計器の役割を工程の中に位置付けられます。

作図の操作を見たい場合は、ConceptDrawを開発するCS Odessaの公式動画が参考になります。主要機器を配置して流れを結ぶ過程を、PFDの読み方と対応させて確認できます。

PFDとP&IDの違いを表で比較

図4:記載内容と使い道を比較する

同じ設備を、プロセスの成立条件と配管・計装の構成という違う詳しさで表します。

項目PFDP&ID
正式名称Process Flow DiagramPiping and Instrumentation Diagram
作成の段階基本設計で工程を整理PFDを基に詳細化し設計中も更新
機器と配管主要機器・主要な流れ運転に関わる配管・弁・計器など
数値・識別流量・温度・圧力・組成、流れ番号口径・仕様・ライン番号・計器番号
主な用途工程検討、収支、主要機器の能力検討配管計装設計、操作・保守の検討
別途必要な資料物質収支・熱収支計算書、機器仕様配置図・アイソメ図・結線図・制御仕様

※一般的な役割の比較です。記載範囲と情報の置き場所は案件の基準に従います。表は横へスクロールできます。

大きな違いは、図面が答える問いにあります。PFDでは原料がどの工程を通り何になるかを読み、P&IDではその工程をどの配管や計器で実現するかを読みます。

PFDを大きな縮尺で描いても、それだけではP&IDになりません。手動操作、計測、制御、保護の構成という別の設計情報を加えることが、詳細化の中身です。

P&IDに制御ループが描かれていても、制御プログラムの全内容を表したものではありません。PLCでどの順番に処理するかは、PLCとシーケンス制御の仕組みや個別の制御仕様へ展開します。

図面ができる順番

一般的にはBFD、PFD、P&IDの順で情報を具体化し、配置や施工の図面につなげます。BFDはBlock Flow Diagramの略で、工程のまとまりを四角と矢印で示すブロックフロー図です。

図5:同じ工程を四つの成果物へ展開する

工程の順番から流量条件、配管計装、実際の寸法へと、決める情報が増えていきます。

BFD:混合 → 加熱 → 製品単位操作を四角と矢印で整理。まず処理順と検討範囲を共有する。
PFD:M-101 → E-101混合槽と加熱器を機器記号で結び、流量・温度・圧力などを対応させる。
P&ID:TT-101 → TIC-101 → 弁温度の測定点と操作対象を加える。配管仕様・弁・付属系統も具体化する。
配管図・アイソメ図:実寸法と位置機器の配置、配管ルート、長さや高さを定め、製作・施工情報へ展開する。

※設計は一方向で終わらず、配置や機器仕様の変更を前段の図面にも反映します。

BFDで工程のまとまりを共有した後、PFDで主要機器と処理条件を検討します。次にP&IDへ弁や計器を加え、どこを測り、何を操作して運転を成立させるかを詰めます。

さらに配置図で機器の位置を決め、配管図やアイソメ図で実際のルートと寸法を示します。アイソメ図は配管を立体的に表し、長さや継手などの製作・施工情報を読み取る図面です。

P&IDの線が横に長く描かれていても、現場の配管がその長さとは限りません。つながりを示す図と寸法を示す図を使い分けることで、部品の位置や施工範囲の誤読を防げます。

機器選定や配置検討で仕様が変われば、PFDやP&IDへ戻って修正する場面もあります。作図順は設計情報が詳しくなる順番であり、各図面が一度で確定するという意味ではありません。

同じ機器番号で図面同士を照合する

配管に設置された手動弁と空気式調節弁
手動弁と調節弁の接続を読むための生成イメージ。図1の実設備ではありません。

図面を比較するときは、ページの見た目よりも機器番号を手掛かりにします。PFDのE-101がP&IDでも同じ加熱器を指すかを確かめ、入口・出口の接続をたどります。

次に、流量や温度の条件が機器仕様書へ正しく渡っているかを見ます。例えば加熱器の液流量が増えたのに能力が変わっていなければ、温度条件を満たせるか再検討が必要になります。

図面間の不一致を見つけたら、機器番号・該当ライン・改訂番号を一緒に記録します。単に図が違うと伝えるより、どの流れのどの情報が食い違うかを示すと、設計担当者が原因を追いやすくなります。

例えばPFDでは出口が製品タンクへ向かうのに、P&IDでは別系統へ接続されていれば、行き先の照合が先です。機器名の表記ゆれと実際の接続変更を分け、承認された仕様を基準に判断します。

計装側では、測定点のタグと操作する弁のタグを組にして追います。アナログ伝送の仕様は4-20mA信号の意味と配線、弁側の動作はポジショナの役割へ分けて確認できます。

ドレン、ベント、バイパスなどの細い枝線は、通常の製品流れから外れるため見落としやすい部分です。始動・停止や点検時にどう使うかを考えると、主要ライン以外も読む理由が分かります。

ただし、P&IDに遮断弁が描かれているだけで、作業時の隔離が成立したとは判断できません。設備のエネルギーや残圧を含む隔離条件は、承認された作業手順と作業許可で管理します。

発注品の範囲を照合するときは、接続口とメーカー側・工事側の境界も見ます。納入仕様書と承認図の確認ポイントを併せて読むと、図面の接続と契約上の分担を結び付けられます。

よくある質問

PFDにはバルブや制御を書かないのですか?

PFDは主要な工程を把握する図なので、細かな手動弁まで網羅するのが目的ではありません。工程の成立に重要な制御などを示す場合もあり、記載範囲は案件の作図基準で決めます。

PID制御とP&IDは同じものですか?

PID制御は比例・積分・微分の働きを使う制御方法で、P&IDは配管計装図の名称です。制御ループをP&IDに描くことはありますが、制御の計算方法と図面の種類は別の概念です。

P&IDだけで配管工事はできますか?

P&IDで配管の接続や仕様を読み、施工に必要な位置と寸法は配置図や配管図から読み取ります。長さや高さを図面上の線の見た目から推定せず、それぞれの役割に合う図面を使います。

初心者はPFDとP&IDのどちらから読めばよいですか?

工程全体を知りたいときはPFDで原料から製品までを追い、その後にP&IDへ進むと理解しやすくなります。特定の計器や弁を調べるときは、機器番号を手掛かりに対象のP&IDを開きます。

改訂番号が違う図面を比較してもよいですか?

改訂番号が違えば、同じ機器でも変更前後の内容を比べている可能性があります。発行目的と改訂履歴を確認し、検討中・施工用・完成時など、何の状態を示す図面かをそろえて使います。

まとめ

この記事のまとめ
  • P&IDは機器・配管・弁・計器と制御のつながりを示す配管計装図
  • PFDは主要機器と流れ、流量・温度・圧力・組成を整理する図面
  • BFDからPFD、P&IDへ具体化し、配置図やアイソメ図につなげる
  • 適用規格と凡例を確かめ、流体と信号の経路を分けて読む
  • 同じ機器番号と整合する改訂状態を手掛かりに、図面と仕様を照合する

PFDは全体をつかむ図、P&IDは運転を成立させる構成を読む図として使い分けます。新しく描く場合も読む場合も、図面の目的を先に定めると、必要な情報の抜けや取り違えを減らせます。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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