導電率は溶液の電気の流れやすさを表す量で、水中のイオンの種類や量、温度によって変わり、ボイラー水や製造工程の水質管理などに使われます。値を比べるときは、単位と温度条件をそろえることが基本です。
測定方式には電極式と電磁誘導式があり、測定範囲、液の性質、据付条件に合わせて選びます。この記事では、コンダクタンスと導電率の違いから、原理、温度補償、異常の切り分けと校正までを整理します。
導電率とは
導電率は電気伝導率とも呼ばれ、SI単位はS/mです。Sはジーメンスで、抵抗の単位Ωの逆数に当たります。ただし、導電率そのものは単に抵抗の逆数ではなく、電極間の距離や面積などの幾何条件を補って表す量です。
抵抗の逆数に当たるコンダクタンスGの単位はSで、同じ液でもセルの形状によって値が変わります。導電率κを求めるには、測定したGにセル定数Kを掛けます。理想的な平行板ではKは電極間距離を面積で割った形ですが、実際のセルは校正された定数を用います。
図1 Gとκの間には、セルの幾何条件がある
同じ液の性質を比べるため、セルで測るコンダクタンスにセル定数を掛けて導電率にします。
灰:電極と容器・寸法線 薄青:試料液。実用セルの電極形状や電場は、この平行板モデルと異なる場合があります。
1mS/cmは1000μS/cmで、S/mでは0.1です。cmとmの換算も入るため、接頭語だけを見て数値を合わせないようにします。記録する単位が違うと、同じ液でも千倍などの差があるように見えてしまいます。
溶液中では陽イオンと陰イオンが移動して電荷を運び、塩化ナトリウムならNa+とCl−、硬水ではカルシウムなどのイオンも関わります。金属の中を流れる電子を、そのままイオンが運搬するという説明ではありません。
同じ組成・温度の希薄な溶液では、イオンが増えると導電率が上がる傾向があります。一方、イオンの種類や濃度によって関係は変わるので、導電率一つから成分別の濃度を求めることはできません。例えば水酸化ナトリウムの濃度管理にも、その液に合う関係が必要です。
導電率は水の汚れ全体を測る値ではなく、濁度で見る粒子や、イオンになりにくい成分は別の指標で評価します。ボイラー水の管理でも、導電率だけでなく目的に合う水質項目を組み合わせます。
導電率が同じ二つの液でも、含まれるイオンの組合せが同じとは限りません。工程内で濃度との関係を利用する場合は、液の組成や温度、使用する関係式の範囲をそろえます。違う液の値を同じ濃度の目盛へ換算しないことが要点です。
導電率計の原理
電極式は液に接する電極を使い、電磁誘導式は液中に誘導される電流をコイルで検出するため、低い値の測定や汚れへの耐性、必要な試料量などが異なります。方式名だけでなく機種の仕様を見て選びます。[1][2]
| 方式 | 測定の考え方 | 選ぶときの確認 |
|---|---|---|
| 2電極式 | 交流を加え、液を通る電流などから求める | 低導電率の範囲、セル定数、分極・付着の影響 |
| 4電極式 | 通電と電位差検出の役割を分ける | 測定範囲、電極構造、浸せき・洗浄条件 |
| 電磁誘導式 | 一次コイルから液中へ誘導した電流を二次側で検出 | 測定下限、必要な液量、周囲壁と材質・据付条件 |
電極式
2電極式では試料に浸した一対の電極へ交流電圧を加え、イオンの移動によって生じる電流などの電気的な応答から導電率を求めます。直流で生じやすい電極界面の分極の影響を抑えるため、交流を使います。[1]
図2 液中ではイオンが電荷を運ぶ
交流の、ある半周期だけを描いています。次の半周期では電極の極性とイオンの移動方向が反転します。
イオンの大きさ・速度・個数は模式表現です。測定中の化学反応や周波数特性をそのまま再現する図ではありません。
高い導電率では分極などの影響が問題になりますが、すべての電極式が高い値を測れないわけではありません。交流周波数を切り替える機種や、通電用と電位差検出用を分ける4電極式もあります。使用可能な範囲はセルと変換器の組合せで確認します。
液中で電荷へ力を与える電界と、コイルを使う磁界の働きを分けたい場合は、電界と磁界の違いも参考になります。電極式で測る電流と、計器が外部へ送る出力信号は、さらに別のものです。
電磁式
電磁誘導式は、励磁用コイルが作る交流磁界によって液中に電流を誘導し、その電流が作る磁界を検出用コイルで捉えます。測定液は閉じた電流経路の一部となり、電極で直接通電する構造とは異なります。[2]
図3 二つのコイルは、液中の電流ループで結ばれる
青は液中の電流の経路で、水の流れる方向ではありません。交流なので、矢印はある瞬間の向きです。
灰:輪状コイルと電気的接続 青:誘導される液中電流 薄青:測定液。コイル部分で隠れる線は、金属内へ電流が流れる意味ではありません。
液に接する通電電極がなく分極の影響を受けないため、汚れのある液や高い導電率の領域で使われますが、低い導電率や少量の試料には制約があります。表面への付着や据付条件まで、影響が全くなくなるわけではありません。
センサの被覆材や接液材には、製品ごとに耐薬品性・温度・圧力の条件があります。「被覆されているから腐食性の液にすべて使える」とはせず、液の種類と濃度を仕様へ照合します。周囲の壁や浸せき状態の条件も確認します。
名前が似た電磁流量計は、流速に伴う起電力などから流量を求める計器で、導電率計とは測定対象が異なります。電磁流量計と静電容量式の関係も合わせて見ると、方式名だけで機能を判断する混同を避けられます。
次の動画はEndress+Hauserが公開する測定原理の解説です。電極での測定と、二つのコイルを用いた誘導式の違いを、立体的な構造と合わせて確認できます。
導電率計の注意点
測定値が変わったら液、温度・補償設定、センサの状態を分けて調べます。数値を合わせるために、すぐセル定数を変更すると、実際の液の変化を隠すことがあります。まず測定条件と記録をそろえます。
現場表示と監視画面が違う場合は、4-20mAの出力範囲や受信側の換算も確認対象です。センサの測定値、温度補償後の値、外部への信号という三つの段階を分けると、どこで差が生じたかを追いやすくなります。
例えば、0〜2mS/cmを4〜20mAへ直線的に割り当てた計器なら、1mS/cmの出力は12mAです。同じ値を1000μS/cmと表示しても、受信側の範囲が0〜2000μS/cmで対応していれば結果は変わりません。単位と範囲を一組で照合します。
温度が一定か
一般に同じ液でも温度が上がると導電率が大きくなりますが、変化の度合いはイオンの種類や濃度によって異なります。温度が違うまま二つの値を比べると、成分が変わったのか、温度の影響なのかを区別できません。[3]
比較には実際の液温をそろえる方法と、測定した温度から基準温度へ換算する方法があり、自動温度補償は液を冷却する操作ではなく計器の演算です。実温度での測定値と基準温度換算値を区別し、記録からも読み取れるようにします。
図4 温度補償は、同じ基準で比べるための換算
同じ液に線形の係数2%/℃を仮定した計算例です。この係数を、すべての液へ使うという意味ではありません。
薄青と淡橙は温度条件の区別です。温度補償前の値と、基準温度に換算した値を混ぜて比較しません。
横河電機は、一般的なNaCl希釈液の係数と実際の液の特性が大きく違う場合、液に合う係数の設定を説明しています。補償をONにしただけで、どんな液でも正しい基準値になるわけではありません。温度センサの状態と設定した液種・係数を合わせて見ます。[3]
デジタル通信で複数の値を取り込める機器では、導電率と温度などの対応も確認できます。HART通信のような方式を使う場合も、どの変数が補償後の値かを機器の設定と受信側の定義でそろえます。
電極に異常がないか
電極式では、電極表面への付着や、セル内・表面に残った気泡が測定へ影響します。浸せきが不足している場合も、所定の測定状態になりません。導電率セルの形に合わせ、液と接する部分や流路を確認します。
図5 気泡・付着と、温度・設定を切り分ける
電極表面に泡や付着がある例です。ガラス棒内部の気泡を一律に探すという意味ではありません。
灰:電極・容器 橙:付着物の例 白い丸:液中の気泡。影響の方向や洗浄方法はセル・液・付着物によって異なります。
温度値が不自然なら温度測定部や接続を切り分け、電磁式でもセンサ表面への付着や、必要な液中経路の状態を確認します。洗浄剤や取外し方法は、材質と機器の取扱説明書に合わせます。
指示が不安定な場合は、実際の液の変動か、採水後の変化かも記録します。測定場所、採水時刻、液温、測定までの条件をそろえると、現場計と別の計器を比べる際の違いを整理しやすくなります。

校正しているか
導電率セルの校正は、既知の導電率を持つ標準液などを用い、セル定数を確かめる方法で行います。HORIBAはKCl標準液によるセル定数の校正を説明する一方、pH計のように毎回行う必要はないとも説明しています。全機種へ同じ周期を当てはめないことが要点です。[4]
別の温度の値を使ったり、標準液が汚染・蒸発したりすると基準そのものが変わるため、容器に記された値と温度、期限や保管条件を確認します。基準の値が正しいか、セルの状態が適切かを分けて考えます。
既知の標準へ照合して差を確認することと、差をなくすために調整することも別です。標準液との不一致を見つけても、温度補償や気泡、セルの汚れを確かめず定数だけを変更しないようにします。必要な操作は製品の校正手順に従います。
セル定数の関係を数値で見ると、所定温度で1000μS/cmとする標準液を、Gが2mSになるセルで測った例では、Kは0.5cm−1です。これは計算を示す仮定例で、現場の校正値や推奨標準液を指定するものではありません。
校正や点検の頻度は、取扱説明書、用途、品質管理上の要求、過去の照合結果から決めます。計測器の校正周期と記録の考え方を使い、実施日、標準液、温度、照合値、変更した設定を残すと、次回の判断材料になります。
導電率が低いから、すべての不純物が少ないとも判断できません。例えばシリカ測定のように、管理したい成分へ対応する方法が必要な場合があります。導電率計の正しさと、水質全体の適否は別に評価します。
よくある質問
導電率は、水の汚れの量を直接表しますか?
主にイオンによる電気の流れやすさを表す値で、すべての汚染物質を合計した値ではありません。粒子や非イオン性の成分には別の評価項目が必要なので、何を管理するかを決め、目的に合う水質指標と組み合わせます。
mS/cmとμS/cmは、どのくらい違いますか?
1mS/cmは1000μS/cmで、S/mへ換算すると0.1S/mになります。表示単位と記録単位を合わせ、セル定数の長さの単位も確認します。
純水など、低い導電率にも電磁式を使えますか?
一般に低い導電率には電極式が使われ、電磁誘導式には測定下限や試料量の制約があります。方式名だけでなく、目的の値を測れるセルと変換器の組合せを確認します。純水という名称だけで数値範囲を決めません。
温度補償があれば、温度は記録しなくてよいですか?
補償の条件や温度測定部の状態も結果に関わるため、温度と基準温度、補償方式を一緒に記録します。温度補償は基準へ換算する演算で、液そのものを同じ温度にする機能ではありません。
導電率計は測定するたびに校正が必要ですか?
校正は一律に毎回行うものではなく、製品の取扱説明書や用途の要求、セルの状態、過去の照合結果を基に決めます。点検・標準液との照合・定数の調整を分け、実施内容を記録しましょう。
まとめ
導電率は液中のイオンが担う電気の流れやすさを表し、温度と組成に影響されます。単位、セル定数、電極式と電磁誘導式の適用条件を分けて読むと、数値の意味を整理しやすくなります。
測定値が変わったときは、液、温度・設定、センサの状態、標準との照合を順に切り分けます。一律の温度係数や校正周期で処理せず、測定対象と製品の条件をそろえて比較・管理してください。
出典・参考資料
- [1]東亜ディーケーケー「電気伝導率のはなし:測定方式」交流2電極・4電極・電磁誘導方式と適用の特徴。
- [2]Endress+Hauser「Conductivity sensors and transmitters」「Indumax CLS50D/CLS50 Technical Information」2電極・4電極・誘導式の原理。仕様値は機種ごとに異なります。
- [3]横河電機「測定液の温度補償(基準温度換算)について」液の温度特性と係数の設定。
- [4]HORIBA「導電率セルの校正について」、横河電機「導電率計の校正について」セル定数・標準液と校正の考え方。
確認日:2026年10月28日。計算例・図は学習用の仮定と模式表現です。
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