積算熱量計とは?流量と温度差から求める原理・計算例・使い道

冷温水の受入設備に設置したプレート熱交換器と保温配管

積算熱量計とは、配管を流れる水の量と往き・還りの温度から、設備が受け渡した熱量を積み上げる計器です。冷温水の使用量を、体積ではなくMJやkWhなどの熱量で表します。

同じ量の水が流れても、温度差が違えば運べる熱は変わります。流量計に温度計を2本組み合わせるのは、この違いを測って熱の使用量を求めるためです。

目次

積算熱量計とは

積算熱量計は、流体が設備を通る前後で、どれだけの熱を渡したか、または受け取ったかを求めます。主に冷暖房用の冷水・温水で使われ、熱量計やヒートメーターとも呼ばれます。

構成は、流量を測る体積計量部、往還の温度を測る感温部、信号を処理する演算部の3つです。一体にまとめた形と、配管上の検出部と表示・演算部を離す分離形があります。

流量計だけで分かるのは、通過した水量やその速さです。そこへ温度差と水の性質を加えることで、水量を熱の使用量へ換算できるようになります。

図1:冷温水の往還配管と熱量演算の3入力

温水で熱を渡す例。実線は水、破線は測定信号の流れです。

熱源側熱を使う設備往温度 T₁還温度 T₂流量 qᵥ演算部 → 積算表示往き:熱源 → 使用先還り:使用先 → 熱源

流量検出器を還側に置く模式図です。測温2点の間で設備に渡した熱を数え、3信号の矢印は演算部へ向けています。往側用の機種もあり、実際の設置位置は機器の仕様に合わせます。

流量・比熱・温度差から熱を求める原理

物体の温度を変えるのに必要な熱量は、質量、比熱、温度変化を掛けて求められます。冷温水も同じで、一定の時間に通った水の質量と、その間の温度差を使います。

比熱は、物質1kgの温度を1K上げるのに必要な熱量です。物体全体の温まりにくさを表す熱容量とは区別し、その関係は熱容量とは何かで説明しています。

配管を流れる水では、定圧比熱を用いた近似式が基本になります。気体で重要になる定容比熱との区別は、定圧比熱と定容比熱の違いを参照してください。

短い時間に受け渡した熱量(水の性質を一定とする近似)
ΔE = Δm × cp × ΔT
ΔE:熱量[kJ] Δm:通過した質量[kg] cp:定圧比熱[kJ/(kg·K)] ΔT:往還の温度差[K]

体積式の流量計では、測った体積に密度を掛けて質量へ直します。一方、質量流量を直接測る方式もあるので、流量計がすべて体積を測るわけではありません。

このうち、一定量ずつ区切って体積を数える仕組みは、容積式流量計で扱っています。積算熱量計の体積計量部には別の方式も使われ、適合する流量範囲も機種で変わります。

瞬時熱量と積算熱量の違い

質量流量に比熱と温度差を掛けた値は、単位時間あたりの熱の大きさです。計器で「瞬時熱量」と表示されることがありますが、物理量としては熱流率、つまり熱の流れる速さです。

熱流率の単位にはkWやMJ/hを使います。積算熱量はこれを時間について足し合わせた量で、kWh、MJ、GJなどで表すため、kWとkWhを読み替えてはいけません。

体積流量がm³/h、比熱がkJ/(kg·K)のとき
P = ρ × qv × cp × ΔT3,600
E = ∫ P dt
P:熱流率[kW] ρ:密度[kg/m³] qv:体積流量[m³/h] E:積算熱量[kWh] t:時間[h]。流量や温度差が一定ならE=P×t。

たとえば、同じ熱流率で1時間使う場合と2時間使う場合では、積算熱量は2倍になります。瞬時値が大きくても運転時間が短ければ、月間の使用熱量は小さくなることがあります。

図2:熱流率のグラフの面積が積算熱量になる

説明用に50kWで2時間運転。高さではなく、時間を含めた面積を数えます。

P[kW]50012時間[h]50 × 2 = 100 kWh面積 = 360 MJ運転終了積算値は残る

流量・温度差が変わる運転では、変化に合わせた小さな熱量を順次加算します。

計器の積算表示は、一般に設置やリセットからの累計です。ある月の使用量を知りたいときは、月末の値から月初の値を引き、同じ単位・同じ積算項目で比較します。

停止中は熱流率がゼロになっても、積算値までゼロに戻るわけではありません。交換やリセットが期間の途中にあった場合は、前後の記録をつないで集計します。

流量10m³/h・温度差5Kの計算例

冷水が7℃で入り、12℃で戻る設備を考えます。流量10m³/hで2時間運転し、密度を1,000kg/m³、定圧比熱を4.186kJ/(kg·K)で一定とする近似で計算します。

冷水は設備から熱を受け取るため、還り温度のほうが高くなります。ここでは冷却した熱量を正の値で表し、温度差は12−7=5Kとして使います。

① 質量流量に換算する
qm = ρqv = 1,000 × 10 = 10,000 kg/h
② 熱流率を求める
P = 10,000 × 4.186 × (12 − 7)3,600 = 約58.14 kW
③ 2時間の積算熱量を求める
E = P × t = 58.138888… × 2 = 約116.28 kWh
E = 116.277777… × 3.6 = 418.6 MJ
qm:質量流量[kg/h]。1kWh=3.6MJ、1GJ=1,000MJ。途中の計算は丸めず、答えで丸めています。

図3:計算で混ぜない「流量・熱流率・積算熱量」

同じ2時間でも、水量と熱量は別の積算値です。

水を数える10 m³/h × 2 h積算流量20 m³。温度差を含まない。
温度差で換算密度 × 比熱 × 5 K流量と掛け、3,600で割ると58.14 kW。1秒あたりの熱。
時間を積み上げる58.14 kW × 2 h積算熱量116.28 kWh。MJなら418.6。

図の数値は近似条件の計算例です。実機の演算係数や表示の丸めにより、手計算とは差が出ます。

この運転で通過した水は20m³です。温度差だけを10Kにすれば熱量は2倍ですが、水量は変わらず、流量だけから熱の使用量を決められないことが分かります。

実際の水の密度や比熱は、温度によって変わります。市販機器では規定の熱量換算係数や物性値を用いるので、この近似式の係数をそのまま設定値に使わないでください。

密度と比熱を一定にする近似の誤差は、採用した値と運転温度での値の差に左右されます。温度差が小さいほど必ず増幅されるわけではなく、後述する温度センサーの差の誤差とは分けて考えます。

運転中に流量や温度差が動くと、始めと終わりの2点だけでは熱量を再現できません。温度差の平均と流量の平均を別々に掛けても、各時刻の積を積算した値には一般に一致しません。

たとえば、流量が大きい時間だけ温度差が小さくなる運転では、単純平均による計算がずれます。運転比較には、演算器の積算値か、時間をそろえて記録した流量・往還温度を使います。

積算熱量計の使い道

代表的な用途は、地域冷暖房などの熱供給で使用熱量を計ることです。熱源設備から届いた冷温水を建物で使い、往還の温度差と流量から、受け取った熱や取り除いた熱を求めます。

熱源をまとめる方式では、建物ごとにボイラーや冷凍機を置く場合とは設備構成が変わります。受入側は熱を利用し、熱源側は複数の需要家へ熱を供給する役割を担います。

供給水を直接空調機へ流す方式のほか、建物の熱交換器を介して二次側へ熱を渡す方式もあります。熱交換器の基本構造と伝熱量の式は、熱交換器の種類と仕組みで整理しています。

冷温水配管の流量検出部と温度検出ヘッドの近景
冷温水配管の計測設備のイメージ。生成画像。

熱の料金と燃料使用量は測る場所が違う

受入設備の熱量計が測るのは、その測定点で受け渡した熱です。ボイラーに投入した燃料の熱量や、冷凍機が消費した電力量を、直接測っているわけではありません。

燃料から温水や蒸気をつくる流れは、ボイラーの仕組みで確認できます。燃料の熱がすべて需要家まで届くわけではなく、熱源や配管での損失もあります。

図4:燃料投入量と受渡熱量の測定境界

暖房用温水の例。熱量計は受入境界で渡した熱を測り、燃料投入量とは区別します。

熱源ボイラー燃料の熱排ガスなどの損失配管放熱演算部流量検出需要家の受入境界

往還の質量流量が等しい閉回路の模式図です。往きは右向き、還りは左向き。受入境界付近の測温2点と還側流量の信号を演算部へ送り、その2点間の受渡熱を数えます。熱源の燃料評価には、別に燃料計量と効率の確認が必要です。

燃料使用量へ換算するには、燃料の発熱量、ボイラー効率、配管の損失などの条件が要ります。設備の入口と出口で熱をそろえる考え方は、ヒートバランスの計算方法が基本です。

たとえば受渡熱量が同じでも、ボイラー効率が違えば必要な燃料は変わります。効率を使った燃料計算はボイラー効率の求め方を参照し、熱量計の表示と測定範囲をそろえて比較します。

熱供給の料金には、使用熱量に応じた従量料金に加え、契約容量に基づく基本料金などが含まれます。積算熱量が減った割合だけ、請求総額もそのまま減るとは限りません。

季節による料金の大小も、暖房・冷房の需要や契約単価で変わります。「冬は高く、夏は安い」と一律には決めず、検針熱量と料金表を分けて読むことが必要です。

熱源を比較するときは、燃料1kgや電気1kWhの価格だけでは条件がそろいません。取り出せる熱の単価に直す考え方は、熱量単価とエネルギー単価の計算で扱っています。

設備の能力確認と省エネ管理にも使える

工場では、熱交換器や空調系統が実際に受け持った負荷の確認にも使えます。熱流率を時間帯別に見ると、稼働時の負荷と、夜間や休日に残る負荷を分けられます。

熱量が多いだけで、設備の効率が悪いとは判断できません。生産量、外気条件、運転時間が違えば必要な熱も変わるため、同じ条件や原単位で比べます。

改善前後の使用量をそろえて評価する流れは、工場の省エネとエネルギー管理の基本です。熱量計では積算値だけでなく、流量と温度差の記録も残すと原因を追いやすくなります。

同じ熱を運ぶのに温度差が小さくなれば、必要な流量は大きくなります。熱量だけでは見えない過剰な循環や温度条件の変化を、流量・温度差の組合せから探せます。

熱交換器の伝熱面積を求める場面では、この測定熱量を伝熱量の式と結び付けます。面積や出口温度を計算する具体例は、熱交換器の伝熱面積の計算方法で解説しています。

小さな温度差と取付条件が誤差を左右する

往還の温度は、2つの測定値の差として使います。そのため、各温度の誤差が小さくても、温度差そのものが小さいと、熱量に対する割合は大きくなります。

仮に2本がそれぞれ±0.1Kの誤差を持つと、差の誤差は最悪で±0.2Kです。温度差5Kなら4%相当ですが、1Kなら20%相当となり、これは温度差だけの誤差です。

図5:測温部の位置と、差を取るときの誤差

検出部は管内の水温を捉える位置へ。右は仮定した誤差の比較です。

配管断面の概念図保護管検出部差し込み深さ・位置は取扱説明書で確認温度差に対する±0.2Kの割合5 K → 4%相当1 K → 20%相当橙:差の誤差(機器の精度規格ではない)

取付断面は原理の模式図です。誤差は説明用の仮定で、実際の総合精度には流量計や演算部の誤差も加わります。

アズビルの積算熱量計の仕様書では、温度差・流量の範囲を定めて検定公差を保証しています。表示が動くことだけで精度を判断せず、使用する機種の保証範囲と運転条件を照合します。

流量検出器を往側と還側のどちらに置くかも確認します。水温で密度が変わるため、設置側を前提とした換算係数や設定があり、配管上の空いた場所へ自由に移せるとは限りません。

値が不自然なときは、冷暖房の演算方向、流量信号の単位、パルス1個あたりの体積、温度計の往還を順に照合します。次に、流量範囲と温度差範囲、検出部の位置や配管内の状態を確認します。

料金の取引・証明に用いる場合は、計量法上の対象かどうかを先に確認します。口径40mm以下の積算熱量計は特定計量器に該当し、対象機器には検定証印か基準適合証印と有効期限の確認が必要です。

その検定等の有効期間は8年です。機器の管理用表示が出ることと、取引に使えることは別なので、交換や組合せ変更は型式・口径・用途をそろえて判断します。

積算熱量計は水以外にも使える?

水以外でも、媒体に対応した流量計・温度計・演算器を組み合わせれば熱量を測れます。水用の積算熱量計を、設定や適合性を確かめずに転用できるという意味ではありません。

たとえば、凍結防止に使うグリコール水溶液や熱媒体油に対応した熱量演算器があります。これらの液体を、単に水ではないからという理由で、すべて圧縮性の気体として扱うのは誤りです。

液体では密度・比熱・濃度を合わせる

グリコール水溶液は、水と同じ温度差でも密度や比熱が違います。同じ体積が流れた場合の熱量も変わるため、液種と濃度に合った物性値や演算機能が必要です。

熱媒体油でも、使用温度に合う物性と計器の耐熱性・材質を確認します。既設の流量信号を演算器へ入れれば終わりではなく、信号の単位と実際の媒体が一致していることが前提です。

PLCなどで独自に演算する方法もありますが、物性の扱い、積算周期、停電時の保存まで設計が要ります。専用演算器が必要かどうかは、必要精度、記録方法、取引用途を含めて決めます。

蒸気は温度差だけで計算しない

蒸気では、圧力や温度によって密度と比エンタルピーが変わります。熱交換器で凝縮する場合は、温度変化だけでなく、蒸気が水へ変わるときに放出する潜熱も含めます。

したがって、水の比熱に往還温度差を掛ける式を、そのまま蒸気へ使うことはできません。質量流量と蒸気・復水の比エンタルピー差を使い、どこまでの熱を数えるかを決めます。

次の式は、定常運転で設備内の蓄熱が変わらず、軸仕事と運動・位置エネルギーの変化を無視する場合の近似です。蒸気と復水の状態は、同じ測定境界の入口・出口でそろえます。

蒸気が復水になる系統の熱流率(同じ質量が出入りする場合)
P = qm × (hs − hc)3,600
qm:蒸気の質量流量[kg/h] hs:供給蒸気の比エンタルピー[kJ/kg] hc:対象とする戻り復水の比エンタルピー[kJ/kg] P:熱流率[kW]

比エンタルピーは、流体が運ぶエネルギーを質量あたりで表す量です。温度だけでは表せない相変化も扱え、その考え方はエンタルピーとは何かで説明しています。

蒸気用の演算器には、圧力・温度と流量から状態を求める機能があります。飽和・過熱・湿りのどこにあるか、復水をどの状態まで数えるかによって、必要な入力や計算条件は変わります。

積算熱量計のよくある質問

積算流量計と積算熱量計の違いは?

積算流量計は、通過した体積や質量を数える計器です。積算熱量計は、流量に往還の温度差と媒体の性質を組み合わせ、受け渡したエネルギーを積算するため、同じ水量でも表示熱量は変わります。

温度差の℃とKはどう使い分ける?

温度そのものの0℃と0Kは異なりますが、温度差では1℃の差と1Kの差は同じ大きさです。12℃と7℃の差は5Kなので、比熱の単位がkJ/(kg·K)でもそのまま5を使えます。

冷房と暖房では計算の向きが逆になる?

暖房では往きの温水が設備に熱を渡して冷え、冷房では往きの冷水が設備から熱を受け取って温まります。どちらも使用熱量を正で積算するには、機器の冷暖房設定と温度差の取り方を合わせます。

今月の熱量は表示値をそのまま使えばよい?

累積表示なら、今月末と先月末の差を使います。たとえば1,290.4kWhから1,174.1kWhを引けば116.3kWhとなり、冷房・暖房の別カウンターや途中のリセットも確認して集計します。

流量はあるのに熱量が増えないのはなぜ?

温度差がほぼゼロなら、流れていても受け渡す熱は小さくなります。ほかに低温度差の演算カット、冷暖房の逆設定、信号不良も考えられるため、流量・2つの温度・機器の演算条件を並べて確認します。

まとめ

この記事のまとめ
  • 積算熱量計は、流量と往還温度から受け渡した熱を計算し、時間について積み上げる。
  • 瞬時の熱流率はkWやMJ/h、積算した熱量はkWhやMJで表す。
  • 受渡熱量と燃料投入量は測定範囲が違い、熱供給料金には基本料金などもある。
  • 非水液体は物性に対応した演算、蒸気は状態と比エンタルピーを使う演算が必要。
  • 流量・温度差の保証範囲、設置側、演算設定、取引用途の検定条件を確認する。

熱の使用量を読むときは、最初に測定場所と時間の範囲をそろえます。流量、往還温度、積算値を一緒に記録すれば、負荷の変化と測定条件のずれを分けて追いやすくなります。

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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