カルマン渦とは?発生原理・ストローハル数の計算と渦式流量計への活用

工場の縦配管に取り付けた流量計のイメージ

カルマン渦は、流れの中の物体の後ろに、回転方向が逆の渦が交互に並ぶ現象です。渦の発生する頻度と流速の関係を利用すると、配管を流れる液体や気体の量を測れます。

一方、渦がつくる力は、煙突などの構造物を揺らす原因にもなります。ただし、球の変化球や橋の崩壊、海峡の渦潮まで、すべてを同じカルマン渦の式で説明できるわけではありません。

この記事では、渦が交互に生まれる仕組みから、ストローハル数を使う計算、渦式流量計の条件を順に整理します。身近な例では、共通する「流れの変化」と、異なる仕組みを分けて見ていきます。

目次

カルマン渦とは?

カルマン渦の名は、流れの中の渦列を研究したセオドア・フォン・カルマンに由来し、一様な流れを円柱に当てたときの後流が代表例です。その下流には、左右交互に渦の列が現れます。

ここでいう「後ろ」は、流体が流れていく下流側を指します。物体を流体の中で動かす場合も、物体から見た相対的な流れを考えれば、後流に渦が生まれる現象を捉えられます。

片側から離れた渦と、その次に反対側から離れた渦は、回転する向きが逆になります。規則的な渦列があることと、物体の周りに何らかの乱れがあることは、同じ意味ではありません。

図1:円柱の後ろで、逆向きの渦が交互に生まれる

上から見た模式図です。流れは下向き。円柱の左右から離れる渦を、交互の位置に描いています。

流れD円柱上流下流

青矢印:流体の進む方向

橙の曲線:渦の回転方向

灰破線:円柱後方へ続くせん断層の模式

渦の大きさ・間隔・流線を再現した計算結果ではありません。円柱は紙面に垂直な向きに延び、実際の後流は条件によって三次元になります。

川の石の後ろで葉が回る様子や、風で電線が鳴る現象は、流れと渦を考える入口になります。ただ、旗のはためきには布の変形も関わります。見た目が揺れているだけで、すべてを同じ渦列と決めつけないことが大切です。

渦の発生は、計測では規則的な信号として利用できます。構造物では繰り返す力となり、振動対策が必要になる場合があります。同じ流れの現象でも、利用したい情報と抑えたい作用を分けて考えます。

カルマン渦の原理

流体には粘性があり、物体の表面近くには速度が変化する境界層ができます。円柱の周りを流れた流体は、条件によって表面から離れ、その下流には速度の違う領域が生まれます。

物体の後ろには、周囲より流れの遅い後流ができます。その両側のせん断層が不安定になり、渦が交互に放出されます。「速い流れが遅い流れを摩擦で引っ張る」という説明だけでは、剥離や周期性を十分には説明できません。

図1では、円柱の左右から離れる渦を、交互の位置に描いています。物体から渦が離れる側と、その次の渦ができる側を順に確認すると、単なる乱れとの違いを捉えやすくなります。

数値計算の動画では、渦度を色で表したり、流れに乗る粒子を描いたりして後流を示します。表示方法によって色の示す量は異なるため、赤い部分を高温、青い部分を低温と読み替えることはできません。

流れの状態を見るレイノルズ数は、代表的な速さ、物体の寸法、流体の粘性を組み合わせた指標です。流れが遅すぎる場合や、形状・乱れの条件が変わる場合は、きれいな交互の渦列が続くとは限りません。

配管内の流れの整理には、層流・乱流とレイノルズ数も役立ちます。ただし、管内流の代表長さには管径を使う一方、円柱まわりでは円柱径を使います。同じ記号のReでも、何を基準にした値かをそろえる必要があります。

渦による力は、流れの向きと直角な方向にも変動します。速度と圧力の関係を読み解く際は、静圧・動圧・全圧の違いが基礎になります。渦の検出信号と配管の機械振動を分ける理由も、ここにつながります。

カルマン渦の活用方法

カルマン渦を積極的に利用する代表例は、渦式流量計です。一方、球や橋、潮流の例は、流体が物体に与える力や、流れの不安定さを考える材料になります。それぞれの現象で、何が動き、何を測っているかを確認します。

渦式流量計

渦式流量計は、配管の中に渦発生体を設け、その後ろで生じる渦の周波数から流量を求めます。横河電機は1969年に産業用渦流量計を発売し、1979年に汎用のYEWFLOを製品化したと説明しています。

基本となる無次元数はストローハル数Stで、ここでは代表長さをDとして表します。一定の形状と流れの範囲でStをほぼ一定とみなせるなら、渦の周波数fは流速Uに比例します。

渦放出の周波数と流速を結ぶ関係
St = fDU
f = St・UD
St:ストローハル数[無次元]、f:渦放出周波数[Hz]、D:代表長さ[m]、U:その定義に対応する流速[m/s]。円柱ではDに円柱径を用いる例を考えます。

Dに渦発生体の幅を使う資料もあるため、Dはいつでも配管の内径を意味する記号ではありません。発生体が占める面積によって周辺の流速も変わるので、局所流速と管内平均流速を混ぜないことが大切です。

Stの値は形状やReなどの条件に依存します。「Reが500〜20万なら、どの物体・どの計器もSt=0.2」とは扱えません。メーカーの特性図や校正値を確認し、一定とみなせる範囲で関係式を使います。

図2:同じ寸法・同じStなら、流速2倍で周波数も2倍

仮定D=20mm、St=0.2。上下の横軸は、どちらも0.2秒です。波の高さは信号の強さを比較するものではありません。

U=1 m/s → f=10 HzU=2 m/s → f=20 Hz00.2 s00.2 s

橙の波:周期的に変わる検出信号の模式

灰の横軸:経過時間

周波数は1秒あたりの繰り返し回数です。この図は一周期の信号で周波数を表し、左右の渦を数える方法や出力パルスの設定を規定するものではありません。

例えば、D=20mm、St=0.2、f=20Hzと仮定すると、Uは2m/sです。寸法をメートルへ直してから代入します。20mmを20のまま式に入れると、流速が1000倍になる単位の誤りが生じます。

仮定した円柱に当たる流れの流速を求める例
D = 20 mm = 0.020 m
U = fDSt = 20 × 0.0200.2
U = 2.0 m/s
D・St・fは説明用の仮定値です。特定の流量計の校正値・保証範囲を表す計算ではありません。
同じ円柱径を基準にしたReの確認例
Re = UDν = 2.0 × 0.0201.0 × 10−6
Re = 40,000
ν:動粘度[m²/s]。ここでは1.0×10−6m²/sを仮定。Reを求めただけでSt=0.2が実機に成立すると保証されるわけではなく、形状と対応する特性の確認が必要です。

実機では、渦の発生で生じる交番力を圧電素子で検出する方式があります。超音波を使う検出方式もあり、すべての製品が同じセンサ構造ではありません。必要なのは、渦に由来する周期を安定して取り出すことです。

図3:渦を検出し、校正された関係から流量へ変換する

流体は管内を下へ進みます。渦発生体からの変動を検出し、電子回路で流量に換算する、機能のつながりです。

発生体検出部校正・演算流量を表示配管の断面を横から見た模式

青矢印:流体の流れ

橙の曲線:渦の回転

灰破線:検出した情報

灰実線:配管・機器・機械的な接続

機能を説明する図で、特定製品の寸法・内部構造ではありません。実際の信号処理・センサの位置・流向と設置条件は、製品の取扱説明書に従います。

流量計の出力では、一定体積あたりのパルス数を使って流量を求めることもあります。渦の周波数fと、外へ出すパルスの周波数fpは、設定によって同一とは限りません。計器のKファクタやパルス重みの定義を確認します。

別の仮定例として、出力が100パルス/秒、Kが10パルス/Lなら、体積流量は10L/s、1時間あたりでは36m³/hとなります。係数の単位がL/パルスの仕様なら、割り算ではなく掛け算になる点にも注意します。

Kを「単位体積あたりのパルス数」と定義した例
Q = fpK = 100 パルス/s10 パルス/L
Q = 10 L/s = 36 m³/h
Q:体積流量、fp:出力パルス周波数、K:校正・設定で定まる係数。この例のKは10パルス/L。前の円柱の仮定例とは別の計器条件です。

1秒間の流量と、ある期間の合計量は別の値なので、積算する時間や信号の扱いを瞬時流量と積算流量の違いで整理すると分かりやすくなります。測定値を戻して弁を動かす流量制御には、調節計や操作端も必要です。

水・蒸気・空気などに使える渦流量計がありますが、流体名だけで採用は決まりません。温度・圧力・粘度・密度や流量範囲を示し、材質、接続、出力を選びます。低流量では信号が小さく、Reの条件も外れやすくなります。

測定できる流量の上限と下限の比を広く取れる点は特長ですが、どの条件でも一定のレンジを得られるわけではありません。液体と気体では密度も信号の強さも異なるため、カタログの最大値だけで選ばず、通常流量と最小流量を確認します。

発生体があるため、圧力損失はゼロではありません。「ほかの方式より必ず小さい」とも言えません。配管振動や脈動、上流側の曲がりによる乱れも確認し、必要な直管長や設置方向は、具体的な機種の条件に合わせます。

測っている体積は、そのときの流体の状態に対応します。気体や蒸気を基準状態の体積や質量に直す場合は、温度・圧力などを使う補正が必要です。過熱度と蒸気の状態を確認し、蒸気の流量と圧力の管理を区別すると、計器に必要な入力を整理できます。

方式の比較では、コリオリ流量計は質量流量を扱う原理、容積式流量計は一定容積を送り出す回数に着目します。面積式流量計はフロートの位置で流れを読みます。必要な量と条件から方式を絞ることが基本です。

野球のナックルボール

ナックルボールは、回転を少なくして投げることで、軌道が複雑に変わる球として知られます。ボールの後ろの流れや、表面の縫い目による空気力の変化が関わりますが、円柱の二次元的な渦列と同じ図だけでは説明できません。

風洞実験では、縫い目の向きを変えた際の抗力・揚力・横力が測定されています。ボールの姿勢やわずかな回転で力が変わるため、「無回転なら一定間隔のカルマン渦だけで左右へ動く」と単純化しないことが大切です。

円柱の周波数の式を、そのまま球の横揺れや変化量の予測へ使うこともできません。流れを乱す物体の形と、物体自身が動く自由度が違うからです。共通点は、後流の変化が物体に作用する力へつながるという点です。

橋の崩壊

1940年に崩壊したタコマナローズ橋は、風による振動を考える重要な事例です。ワシントン州交通局は、崩壊の主な説明をねじれフラッターとしています。単純なカルマン渦による共振だけで起きた事故、と断定するのは適切ではありません。

フラッターでは、橋の動きによって周りの流れが変わり、その空気力がさらに橋の動きへ影響します。外から一定周期の力を受けるだけでなく、構造物と流れの相互作用によって振動が成長する点が重要です。

図4:タコマの教訓は、風と橋の動きの相互作用

上は橋桁断面のねじれのイメージ。下の破線は、流れと構造の関係を示す情報のつながりで、荷重の向きではありません。

上の灰破線:ねじれ前の位置風橋桁断面:ねじれを誇張橋の動き・姿勢が変わる流れ・空気力が変わる下の灰破線:相互作用の関係

特定の瞬間の風圧分布や崩壊過程を再現した図ではありません。渦励振とフラッターを同一視せず、実構造の形状・剛性・減衰と風の条件を合わせて評価します。

風による振動には、渦の放出に伴う渦励振など、複数の仕組みがあります。どの仕組みが支配的かで、形状の変更、剛性、減衰などの対策の考え方も変わります。見た目の揺れから原因や対策を一つに決めることはできません。

瀬戸大橋や明石海峡大橋などの長大橋でも、耐風性は重要な設計課題です。ただし、補強部材があれば必ず安全になるという意味ではありません。事故の概要は補足のタコマナローズ橋の解説でも確認できますが、原因の整理は交通局の資料を参照します。

鳴門の渦潮

鳴門海峡の渦潮は、潮の満ち引きによる水位差、狭い海峡、海底地形などによって生じる速い潮流と関係します。中央の速い流れと周囲の遅い流れの速度差から、渦が発達すると説明されています。

速度差のある流れのせん断から渦ができる点は共通しますが、鳴門の渦潮を「一本の円柱の左右から交互に渦が出る現象」と同じ条件では扱えません。場所ごとの潮流と海底地形を考慮する必要があります。

潮流の向きや強さは時刻によって変わり、どの時間も同じ渦が見えるわけではありません。観察の条件や地形を知るには、現地施設の渦の道による発生の仕組みが参考になります。渦の大きさだけを物体の代表長さDへ置き換える計算はしません。

煙突周りのらせん階段

煙突の周りにあるらせん状の部材は、まず用途を確認する必要があります。人が上るための階段や点検設備と、渦励振を抑えるためのらせん状フィンは、同じものではありません。形だけで「振動防止用の階段」と判断しないようにします。

らせん状フィンは、円柱の高さ方向にそろって渦が放出される状態を乱し、周期的な空気力を抑えるために使われます。英語ではhelical strakesと呼ばれ、煙突のほか、流れにさらされる保護管などにも応用されています。

工場の円筒形煙突の上部に設けられたらせん状フィンのイメージ
円筒構造物とらせん状部材のイメージ画像。特定設備の設計寸法や耐風性能を示すものではありません。

図5:らせん状フィンと、点検のための階段は用途が違う

煙突の灰色のらせんは、外側へ張り出すフィンの模式です。下の段付きの絵は点検階段の例で、同じ部材として描いていません。

風フィン上:渦励振を抑えるための部材下:人が移動する点検階段の例

青矢印:風の方向

灰の形:構造物と付属部材

フィンの枚数・高さ・ピッチや階段の設置基準を指定する図ではありません。既設設備の部材を追加・変更する判断は、個別の設計条件に基づきます。

ただし、フィンを付ければ、どんな振動もなくなるわけではありません。風荷重や支持条件も関わるため、既設煙突へ自己判断で部材を追加することは避けます。点検では、部材の名称と目的を図面や設備資料で確認することが出発点です。

フィンの役割は煙突のらせん状フィンに関する一般のQ&Aでも話題になりますが、個別の回答は設計根拠にはしません。メーカーの技術説明と、その設備の設計資料を区別して参照します。

カルマン渦のよくある質問

カルマン渦はどんな条件でも発生しますか?

物体の形、流速、粘性などで後流は変わるため、障害物があれば必ず規則的な渦列になるわけではありません。Reの代表長さを確認し、対象の形状に対応した特性で判断します。

ストローハル数は0.2で固定してよいですか?

0.2は説明や概算に使われる値ですが、万能な定数ではありません。形状とReの範囲、代表長さや流速の定義に依存します。用語はストローハル数の解説でも確認できますが、実機の計算には製品の校正値を使います。

渦の周波数だけで蒸気の質量流量が分かりますか?

周波数から求める体積流量を質量流量へ換算するには、蒸気の状態に対応した密度などが必要です。計器が温度・圧力をどこまで測り、どの条件で補正するかを確認します。

流量が少ないと渦流量計は測れませんか?

低流量では、渦の信号の弱さやReの条件が測定下限に関わります。どこまで測れるかは、流体や口径、機種で異なります。表示がゼロだから無流量だと決めず、仕様の測定範囲や低流量時の処理を確認します。

煙突が揺れるのはすべてカルマン渦が原因ですか?

揺れの原因は一つとは限りません。風の状態、支持や構造の特性、ほかの機械から伝わる振動なども確認が必要です。揺れている映像だけで原因を断定したり、フィンの追加を決めたりはできません。

まとめ

カルマン渦は、物体の後ろに逆向きの渦が交互に並ぶ現象です。流れの剥離と後流の不安定さを押さえると、流量計で周波数を測る理由や、構造物へ変動する力が加わる仕組みを理解できます。

  • St=fD/Uでは、代表長さと流速の定義をそろえる
  • Stを一定とみなせる範囲は、形状・Re・製品の条件で確認する
  • 流量計では体積流量、質量流量、出力パルスの設定を分ける
  • ナックルボール、橋のフラッター、渦潮を同じ式で説明しない
  • 煙突の点検階段と、渦励振を抑えるらせん状フィンを区別する

出典

出典・参考資料(一次資料9件・用語補足)を開く

TOOLS & SERVICES

製造業で働く人の、仕事の道具・サービス紹介

これからの働き方、資格の勉強、打合せの記録。MONOSCOPE で紹介している3つです。

仕事の道具・サービス紹介をすべて見る ›

NEWSLETTER

設備保全・プラントエンジニアリングの記事を、週1回まとめてメールで受け取る

週刊MONOSCOPEは、登録時に選んだ職種・業種に合わせた記事を週1回お届けする無料のメルマガです。

実際に届くメールの例を見る

件名:今週のあなた向け記事|週刊MONOSCOPE 10/9号
登録内容:生産技術 × 自動車・輸送機器

週刊MONOSCOPEの見本(生産技術 × 自動車・輸送機器)

職種3本・業種3本・製造業で働くすべての方へ2本・今週よく読まれた記事3本が届きます。記事は毎週入れ替わります。ほかの見本を見る

設備保全を選んだ状態で登録へ ›

無料・週1回。登録後に届く確認メールのリンクを押すと登録が完了します。配信はメール内のリンクからいつでも停止できます。

WEEKLY NEWS

今週の製造業ニュース10選

メルマガは職種・業種に合わせた記事。LINEとnoteでは、全員共通の10本を毎週土曜の朝にお届けします。

LINEでニュース10選を受け取るnote今週のニュース10選をnoteで読む ›
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

MONOSCOPEの運営者

プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

▶ お仕事のご依頼はこちら

目次