過熱度とは?過熱蒸気の計算方法・測り方と用途を整理

保温材で覆われた工場の蒸気配管のイメージ

過熱度とは、過熱蒸気の温度が、同じ圧力の飽和温度より何度高いかを表す温度差です。飽和温度が150℃、蒸気の温度が170℃なら、過熱度は20℃となります。

蒸気の温度が高いというだけでは、過熱度の大きさは決まりません。圧力が変わると基準となる飽和温度も変わるため、温度と圧力の二つを組にして調べることが基本です。

ここでは、過熱度の意味と計算式、過熱蒸気の作り方、タービンや加熱工程での使い方を整理します。後半では、圧力計と温度計の値から蒸気表を使って求める計算例も示します。

この記事の内容は、動画でも解説しています。

目次

過熱度とは?

図1:過熱度は「飽和温度から上にある分」

同じ圧力で、飽和温度150℃と蒸気温度170℃との差を取ります。

温度[℃]170160150140蒸気温度 170℃飽和温度 150℃過熱度 20K(20℃差)青い両矢印:二つの温度の差

数値は定義を示す仮定例です。150℃という飽和温度を、すべての蒸気の基準にはしません。

飽和温度は、その圧力で水と蒸気が平衡状態にあるときの温度です。水が蒸発するときや蒸気が凝縮するときの基準であり、圧力が高くなるほど飽和温度も高くなります。

過熱蒸気は、同じ圧力の乾き飽和蒸気よりも高い温度にある水蒸気です。飽和蒸気は圧力から温度を定められますが、過熱蒸気は同じ圧力でも異なる温度を取れます。

過熱度を計算するときは、実際の蒸気温度から、その蒸気の圧力に対応する飽和温度を引きます。温度がどれだけ高いかを表す量なので、百分率のような単位は使いません。

過熱度の定義
ΔTsup = T − Tsat(P)
(仮定例)170 − 150 = 20 K
T:蒸気の温度[℃]、Tsat(P):同じ圧力Pでの飽和温度[℃]。温度差20Kと温度差20℃は同じ大きさです。

蒸気温度が同じでも過熱度は変わる

例えば蒸気温度が200℃でも、圧力が違えば過熱度は異なります。IAPWS-IF97による計算では、絶対圧力0.5MPaの飽和温度は約151.84℃、1.0MPaでは約179.89℃です。

この条件で200℃との差を取ると、0.5MPaでは約48.2K、1.0MPaでは約20.1Kになります。蒸気温度を並べるだけでなく、そのときの圧力が同じかどうかも合わせて比較します。

条件例A例B
絶対圧力0.5MPa1.0MPa
蒸気温度200℃200℃
飽和温度約151.84℃約179.89℃
過熱度約48.2K約20.1K
IAPWS-IF97による算出例。圧力はゲージ圧ではなく絶対圧力です。

圧力が同じまま過熱蒸気を冷やすと、まず温度が飽和温度へ近づきます。飽和温度に達してから凝縮が始まるため、過熱分はその間に取り去られる熱に相当します。

ただし、この説明は圧力をそろえて比べた場合のもので、実際の配管では圧力も温度も変化します。入口の過熱度だけから、離れた出口まで凝縮しないと保証することはできません。

過熱器で加熱して過熱蒸気を作る

図2:蒸発させる場所と過熱する場所を分ける

水を蒸発させた後の蒸気へ、過熱器でさらに熱を加えます。

給水ボイラー蒸気蒸発の熱飽和蒸気過熱器過熱の熱過熱蒸気タービン回転動力出口蒸気青:水・蒸気の流れ橙:熱の入力 灰:機器・軸

概念図。実機のボイラー構造・過熱器配置・タービンの段数を表す設計図ではありません。出口蒸気の行き先は用途により異なります。

過熱蒸気は、ボイラーで発生した蒸気を過熱器などでさらに加熱して作ります。水を蒸発させる段階と、蒸発後の蒸気の温度を上げる段階を分けると、仕組みを理解しやすくなります。

一定圧力で水と蒸気が共存している間は、加えた熱が主に水の蒸発に使われます。液体の水を蒸発させ終えた蒸気へ、さらに熱を加えることで過熱した状態になります。

ボイラー内での配置や加熱の受け方は、過熱器(スーパーヒーター)の仕組みで詳しく整理しています。過熱度は蒸気の状態を表し、過熱器はその状態を作る機器の名前です。

減圧すると過熱蒸気になる場合もある

蒸気は、減圧弁などで圧力を下げた結果、過熱状態になる場合もあります。外部との熱のやり取りや速度の変化を小さいとみなす絞りでは、前後の比エンタルピーをほぼ同じとして考えます。

圧力が下がると飽和温度が変わるため、減圧前の熱を保った蒸気が、減圧後の飽和状態より高い温度になることがあります。減圧は加熱とは違い、弁から新しく熱を加えているわけではありません。

減圧後も湿り蒸気のままの場合があり、入口の圧力や乾き度、圧力の下がり方によって結果が変わります。減圧したという事実だけで、過熱蒸気になったと判断しないようにします。

入口の状態と減圧後の圧力を使う判定方法は、蒸気を減圧したときの乾き度と過熱蒸気の計算にまとめています。過熱度の引き算に先立ち、どの状態の蒸気を扱うかをそろえることが大切です。

過熱蒸気は何に使う?

代表的な用途は、蒸気タービンを駆動して動力を取り出す設備です。過熱蒸気を入口へ供給し、圧力を下げながら仕事を取り出すことで、蒸気の持つエネルギーを回転へ変えます。

タービンの中では、仕事を取り出すにつれて蒸気の状態が変わり、条件によって水滴が発生します。入口を過熱状態にするのは、膨張中の湿りを抑え、熱サイクルの効率を改善するためです。

ただし入口で過熱していても、膨張の全区間で蒸気が乾いているとは限りません。出口の乾き度や取り出す仕事は、蒸気タービンのエンタルピー計算で状態ごとに評価します。

発電設備を熱サイクルとして見ると、加熱・膨張・凝縮・給水が一続きになっています。過熱や再熱による改善を理解するには、ランキンサイクルの仕組みと合わせて考えると位置づけが分かります。

加熱工程では飽和蒸気の特性を活かす

図3:過熱分の冷却と凝縮の熱を分けて考える

一定圧力で過熱蒸気を冷やすと、飽和温度へ下がってから凝縮が進みます。

温度[℃]過熱度①②③乾き飽和蒸気飽和水取り去った比熱量[kJ/kg]① 過熱分の冷却:温度が下がる② 凝縮:飽和温度を保つ③ 液体の冷却:温度が下がる左の青い両矢印が過熱度

圧力一定の模式図。水平部の温度が飽和温度です。各区間の長さや傾きは定量値ではありませんが、凝縮の区間を長く、液体の冷却を過熱分の冷却より緩く描いています。

熱交換器で製品を温める用途では、蒸気が凝縮するときの潜熱を利用することが多くあります。圧力を保ちながら凝縮する飽和蒸気は、温度をそろえた加熱に向いています。

過熱蒸気を供給した場合は、蒸気が飽和温度まで冷える過程を経てから凝縮が進みます。蒸気の入口温度を高くした分だけ、同じ伝熱面積で必ず大きな熱を渡せるという関係ではありません。

過熱蒸気を加熱用に利用する設備では、必要な温度まで減温して使う方法もあります。タービン用と加熱用では求める状態が違うため、設備の目的に合った蒸気条件を選びます。

適切な過熱度は、用途や機器の許容条件、必要な出口状態を踏まえて決めます。過熱度が大きいほど良いという一律の目標を置かず、温度上限や材料の条件も設計仕様と照合します。

取り外した工業用温度センサーのイメージ
測定に使う温度センサーのイメージ画像

圧力と温度を測り、飽和蒸気表と比べる

図4:同じ状態の温度と圧力を一組で読む

測定した圧力で飽和温度を求め、実際の温度との差を取ります。

圧力 P温度 T同じ測定区間・時刻で読む① 圧力を絶対圧へそろえる② 飽和温度 Tsat(P) を求める③ T − Tsat(P)= 過熱度灰の点線:測定値を計算へ使う流れ

点線は測定値を計算に使う流れで、配線・配管ではありません。青い配管の矢印は蒸気の流れを示します。

過熱度を求めるには、蒸気の温度と圧力を両方把握します。まず圧力に対応する飽和温度を蒸気表で調べ、その飽和温度と実際の蒸気温度の差を計算するのが基本です。

圧力を読んだ場所と温度を読んだ場所は、同じ蒸気状態を表す区間にそろえます。減圧弁の上流の圧力と下流の温度を組み合わせると、基準となる飽和温度が合わなくなります。

測定時刻もそろえ、圧力や負荷が大きく変動している途中の値を混ぜないようにします。安定運転時の圧力と温度を一組で記録すると、過熱度が変化した理由を追いやすくなります。

蒸気温度には、対象の温度範囲に適合する温度計の値を使います。温度計の原理と測定誤差を踏まえ、配管表面の温度を流体温度と同じ意味で扱わないことが重要です。

圧力計の読みも、ゼロが何を基準にしているかを確認して使います。圧力計や連成計の目盛を読む基本は、圧力計・真空計・連成計の違いから整理できます。

蒸気配管の圧力計には、計器を熱から保護するためのサイフォン管を使う構成もあります。値の確認は既設の計測設備で行い、運転中の高温・加圧部を緩めて測定しません。

ゲージ圧力を絶対圧力へそろえる計算例

大気圧をゼロとする圧力計の値は、ゲージ圧力と呼びます。絶対圧力を用いる蒸気表へその値を入れる場合は、大気圧を足してから飽和温度を調べます。

蒸気表や計算ツールによっては、ゲージ圧力を直接入力できるものもあります。表の説明や入力欄の基準を先に確かめ、すでに換算された値へ大気圧を二重に足さないようにします。

圧力基準の換算
Pabs = Pg + Patm
Pabs:絶対圧力、Pg:ゲージ圧力、Patm:大気圧。三つの圧力は同じ単位にそろえます。

説明用にゲージ圧力0.9MPa、蒸気温度200℃という測定値を置きます。この例では大気圧を0.1013MPaと仮定し、絶対圧力は1.0013MPaとして計算します。

図5:圧力の換算から過熱度までを計算する

途中の飽和温度は丸めず、最後の過熱度を約20.1Kとします。

① 圧力基準をそろえる0.9+0.1013=1.0013MPa abs
② 飽和温度を調べるIAPWS-IF97:179.942…℃
③ 蒸気温度を読む同じ状態の測定値200℃
④ 差を計算する200−179.942…=20.058…K
ΔTsup = 200 − 179.942…
ΔTsup ≒ 20.1 K
圧力と温度、大気圧は説明用の仮定値です。飽和温度はIAPWS-IF97による算出値です。

ここで0.9MPaを絶対圧力と取り違えると、別の飽和温度を選ぶことになります。引き算そのものが正しくても基準が違うため、過熱度には圧力の換算ミスがそのまま現れます。

一般の飽和蒸気表では、欲しい圧力が表の行間になる場合もあります。概算にはその範囲の補間を使い、より細かく求める場合は圧力基準を指定できる計算ツールを利用します。

飽和蒸気表から読んでいるのは、過熱度の基準となる飽和温度です。過熱蒸気そのものの比エンタルピーや比体積を求める場合は、圧力と実温度に対応する過熱蒸気表を使います。

過熱度が小さいときの読み方

実温度が飽和温度に近いときは、圧力計や温度計のわずかな誤差が判定へ影響します。計算上の小さな正の値だけで断定せず、計器の精度や応答、測定位置をそろえて評価します。

例えば、表を小数点以下まで読めても、温度の測定精度がそれより粗ければ、過熱度の細かな桁に意味はありません。計算結果を何桁示すかは、使う測定値の確かさに合わせます。

温度が飽和温度と一致していても、蒸気にどれだけ水滴が混じるかまでは分かりません。湿り蒸気の気相の質量割合を表す乾き度は、過熱度とは別の量として扱います。

蒸気に空気などの非凝縮性ガスが含まれると、全圧から読む飽和温度と蒸気の状態が一致しない場合があります。単純な温度差の式は、主として純水蒸気の平衡状態を考えるためのものです。

記録では過熱度だけを残さず、元の温度、圧力、圧力基準、測定場所も保存します。圧力が変わった結果なのか、実際の温度が変わった結果なのかを、後から切り分けられるためです。

過熱度と、蒸気が運ぶ熱量を区別する

過熱度は温度の差であり、蒸気が運ぶ熱量そのものではありません。熱量を求めるには流量や比エンタルピーが必要で、過熱度20Kという値だけから加熱能力のkWは決まりません。

過熱した分の熱を計算する場合は、対象圧力と実温度での比エンタルピーと、同じ圧力の乾き飽和蒸気の値を比べます。蒸気表では、この二つの値をそれぞれ対応する状態から読み取ります。

同じ圧力で過熱分を冷却するときの比エンタルピー差
Δhsup = h(P,T) − hg(P)
Δhsup:過熱分の比エンタルピー差[kJ/kg]。h(P,T):過熱蒸気、hg(P):同じ圧力の乾き飽和蒸気の比エンタルピー。過熱度[K]とは別の量です。

温度差へ比熱を掛ける近似を使う場合も、過熱蒸気の比熱をすべての圧力や温度で同じ定数とはしません。適用する温度範囲と圧力を決め、その範囲に合う物性値を使います。

過熱蒸気の流量を質量へ換算する際にも、圧力だけで密度を選ぶと実温度の違いを取り込めません。過熱度の監視とは別に、流量計がどの圧力・温度で補正しているかを仕様書で把握します。

加熱装置へ供給する条件を伝える場合は、過熱度だけでなく、必要な蒸気圧力と温度、流量も併記します。受け取る側がどの飽和温度を基準にした値なのかを再現できるようにするためです。

例えば「過熱度を20Kにする」という条件だけでは、150℃の基準に対する170℃なのか、別の飽和温度に対する値なのかが分かりません。設備間の引き渡しでは、温度差と運転条件を一つの仕様にまとめます。

過熱度を調整するための温度や圧力の設定変更は、機器の設計条件と制御方式に関わります。単に引き算の値を大きくすることを目的にせず、供給先が必要とする蒸気状態を満たすように設計します。

過熱度のよくある質問

過熱度20℃と20Kは同じ意味ですか?

温度差としては同じ大きさです。蒸気の実温度170℃を170Kと言い換えることはできませんが、170℃と150℃の差は20℃差、または20Kと表せます。

過熱度がゼロなら乾いた蒸気ですか?

ゼロというだけでは、乾き飽和蒸気か水滴を含む湿り蒸気かを区別できません。同じ飽和温度でも湿りの量は異なるため、乾き度の情報を別に把握します。

圧力だけ測れば過熱度が分かりますか?

圧力だけでは求められません。圧力から分かるのは基準の飽和温度であり、過熱度を求めるには同じ状態の蒸気温度を測り、その差を計算します。

減圧弁を通った蒸気は必ず過熱蒸気になりますか?

必ずなるわけではありません。減圧前の圧力や湿りの状態、減圧後の圧力で結果が変わり、湿り蒸気のままの場合もあるため、入口状態と出口圧力に基づいて評価します。

過熱度は大きいほど加熱に有利ですか?

加熱の能力は過熱度だけでは決まりません。凝縮潜熱を使う熱交換器では飽和蒸気の特性を活かせるため、タービン用の高温蒸気と同じ考えで過熱度を大きくしないようにします。

まとめ

この記事のまとめ
  • 過熱蒸気は、同じ圧力の飽和温度より高い温度の蒸気
  • 過熱度は実際の温度から、その圧力の飽和温度を引く
  • 計算には同じ状態の圧力と温度が必要
  • ゲージ圧と絶対圧、飽和表と過熱表を区別する
  • タービンと加熱工程では、求める蒸気の状態が異なる

過熱度の式は単純ですが、使う飽和温度を選ぶには圧力の基準が欠かせません。温度と圧力を一組で残し、機器の目的と運転条件に合った蒸気状態を評価します。

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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