設備保全は、工場の設備を止めないために、点検や部品交換、故障の修理を計画的に進める仕事です。突発の故障に駆けつける対応は、その流れの一部にあたります。
どの設備を、いつ、どのように守るかを計画し、実行し、結果を振り返って次の計画に生かす。この流れを1年単位で回しながら、日々の点検や故障対応という小さなサイクルも重ねて、設備を止めない状態をつくっていきます。
この記事では、設備保全の仕事の流れを、計画、実行、分析・改善の3つの段階に分け、工程ごとに使う道具や書類、関わる人、よくある失敗まで整理します。最後に、業界や会社による違いも紹介します。
設備保全の仕事の全体像
設備保全の仕事は、次のような流れで進みます。
設備の把握 → 保全計画の立案 → 部品・工事の手配 → 点検 → 計画整備 → 故障対応 → 原因解析・再発防止 → 記録と計画の見直し
計画、実行、分析・改善の3つの段階に分かれます。
※実際には、実行の段階で見つかった不具合がすぐ次の計画に反映されるなど、工程は並行して進みます。
計画から改善までが一巡すると、また次の計画が始まります。1年単位の大きなサイクルと、日々の点検や故障対応という小さなサイクルが重なって回っているのが、保全の仕事の特徴です。
関わる人も段階によって変わり、それぞれ次の部門・会社と連携しながら進めます。
- 計画の段階:生産管理や購買
- 実行の段階:製造のオペレーターや外部の工事会社
- 分析・改善の段階:生産技術や設備メーカー
新しい設備の導入は主に生産技術が担い、保全は立ち上げ後の設備を引き継ぐところから関わるのが一般的です。ここからは、段階ごとに順に見ていきます。
計画の段階
計画の段階では、工場にある設備を把握し、限られた人員と予算で何をどこまで守るかを決めます。保全の出来の多くは、この段階で決まると言っても言い過ぎではありません。
設備の把握
最初に行うのは、工場にどんな設備があり、どんな状態にあるのかをつかむことです。設備台帳には、次のような情報をまとめておきます。
- 型式や設置年
- 主要な部品
- 図面や取扱説明書の保管場所
あわせて、過去の故障記録から、よく止まる設備や部位を洗い出します。そのうえで、止まったときの生産や安全への影響を基準に、設備ごとの重要度を決めていきます。
重要度によって、保全にかける手間と費用を変えます。
重要度を決めずにすべての設備を同じように扱うと、手間ばかりかかって肝心の設備に手が回らなくなります。守るべき設備に力を集中させるための仕分けが、この工程の目的です。
よくある失敗は、台帳が古いまま放置されていることです。改造の内容が反映されていないと、故障のときに図面と実物が合わず、原因の特定に時間がかかります。
保全計画の立案
重要度が決まったら、設備ごとに保全の方式と、点検・整備の周期を決めます。点検項目と判定の基準をまとめた点検基準書をつくり、それをもとに月次・年間の保全計画を組み立てます。
大型の整備は、生産を止められる長期休暇や定期修理の期間に集中させます。そのため、生産管理や製造部門と停止日程を早めにすり合わせることが欠かせません。
周期を短くしすぎると費用と手間がかさみ、長くしすぎると故障が増えます。最初は設備メーカーの推奨値を目安にし、実績を見ながら調整していくのが現実的です。
クレーンやボイラー、圧力容器などは、法令で定められた検査や自主点検が必要な設備です。こうした法定点検の時期を漏れなく計画に組み込むことも、計画担当の大切な仕事です。
計画は保全管理システムや表計算ソフトで管理し、担当者と実施日を割り当てます。作業が終わったら実績を記録し、計画との差を確認できるようにしておきます。
部品・工事の手配
計画が固まったら、交換する部品や必要な工具、外部業者の手配に移ります。部品によっては納期が数か月かかるものもあるため、発注は早めに行います。
外部の工事会社に作業を頼む場合は、作業範囲や安全対策、日程を事前に打ち合わせます。停止期間は限られているため、段取りの抜けがそのまま工期の遅れにつながります。
購買部門を通して発注する会社も多く、見積もりの取得や予算の確認も保全の担当者が進めます。購買・調達との連携も、この工程の大切な要素です。
重要な設備については、故障に備えて予備品を常に在庫しておきます。どの部品をいくつ持つかは、故障の頻度と納期、価格を見比べて決めます。在庫が多すぎれば費用がかさみ、少なすぎれば故障のときに復旧できません。
実行の段階
実行の段階では、計画に沿って点検と整備を進めながら、突発の故障にも対応します。計画どおりの仕事と、計画外の仕事が同時に動くのがこの段階の難しさです。
突発の故障が続けば、予定していた点検や整備が後回しになり、さらに故障が増えるという悪循環に陥ります。計画した保全をきちんとこなせているかを、実施率として確認している工場も多くあります。
点検
点検には、オペレーターが毎日行う日常点検と、保全担当が一定の周期で行う定期点検があります。音や振動、温度、油量、ゆるみなどを、点検表に沿って確かめていきます。
定期点検では、振動計や温度計、絶縁抵抗計などを使って数値を測り、前回との変化を見ます。数値の小さな変化を見逃さないことが、突発故障を減らす近道です。
よくある失敗は、点検が形だけになってしまうことです。チェック欄を埋めることが目的になると、異常があっても気づけません。なぜその項目を見るのかを理解して点検することが大切です。
点検で見る主なポイントは、次の4つにまとめられます。どれも、五感と簡単な測定器で確かめられるものです。
異常の多くは、これらの変化として先に表れます。
計画整備
計画整備では、休日や定期修理の期間に、部品の交換や分解整備(オーバーホール)を行います。作業の前には、電源を切り、スイッチに施錠して表示札を付けるなど、誤って設備が動かないようにする手順を必ず踏みます。
限られた時間で多くの作業をこなすため、作業の順番や人の配置をあらかじめ決めておきます。整備後の試運転と確認までを終えて、はじめて作業完了になります。
整備の後に設備が立ち上がらない、という失敗も起こりがちです。取り外した部品の位置や配線を写真に残す、締め付けトルクを記録するなど、元に戻すための工夫が欠かせません。
外部の工事会社が入る場合は、保全の担当者が作業に立ち会い、品質と安全を確認します。複数の作業が同じ場所で重なるときは、作業どうしの干渉や危険がないかを事前に調整することも大切な役割です。
故障対応
設備が突然止まったら、連絡を受けて現場に駆けつけ、状況を確認して原因を切り分けます。表示されたアラームや、止まる直前の様子をオペレーターから聞き取ることが第一歩です。
まず止まったラインを動かし、そのあとで根本の対策に移ります。
※安全に関わる異常の場合は、復旧を急がず、原因がはっきりするまで設備を止めておくことが原則です。
原因がわかったら、部品の交換や調整で復旧させます。すぐに根本対策ができない場合は、応急処置で動かし、恒久的な対策は後日の計画整備に回すという判断もよく行われます。
よくある失敗は、症状だけを見て部品を交換し、原因を確かめないまま復旧してしまうことです。同じ故障がすぐに再発し、結局は長い停止につながることがあります。
故障対応の結果は、次の項目を故障報告書にまとめます。
- 発生日時
- 現象
- 原因
- 処置
- 停止時間
この記録が、次の分析・改善の段階の材料になります。
夜間や休日の故障では、少ない人数で判断しなければなりません。自分で対応できない場合に誰へ連絡するか、どこまでなら一人で作業してよいかを、あらかじめ決めておくと安心です。
分析・改善の段階
分析・改善の段階では、実行の段階で起きたことを振り返り、同じ故障を繰り返さない仕組みをつくります。直して終わりにせず、次の計画に生かすところまでが保全の仕事です。
原因解析・再発防止
故障の原因を調べるときは、「なぜ壊れたのか」を何度も問いかけて、表面の現象から根本の原因までたどっていく「なぜなぜ分析」がよく使われます。壊れた部品の摩耗や割れ方を観察することも、大切な手がかりになります。
原因の候補は、人・設備・材料・方法といった観点で洗い出すと、見落としを減らせます。「担当者の不注意」で終わらせず、仕組みの問題までさかのぼることが、再発防止のポイントです。
原因がわかったら、次のような対策を打ちます。
- 部品の材質や形状を変える
- 給油の方法を見直す
- 点検の項目を追加する
対策の効果を一定期間見届けることまでが再発防止です。
大がかりな改造が必要な場合は、設備メーカーや生産技術と相談して進めます。改造の内容は図面と台帳に必ず反映し、後の人が困らないようにしておきます。
改善の成果は、故障の件数や停止時間がどれだけ減ったかで確かめます。効果の大きかった対策は、同じ種類の設備にも横展開していきます。
記録と計画の見直し
点検の結果や故障の内容、交換した部品、かかった時間と費用は、保全記録として残します。紙の報告書で管理する工場もあれば、保全管理システムに入力して集計する工場もあります。
記録を集計すると、停止時間の長い設備や、費用のかかっている設備が見えてきます。その結果をもとに、点検の周期や項目、設備の更新時期を見直し、次の年度の保全計画と予算に反映します。
古くなった設備を修理し続けるか、更新するかの判断も、この工程で行います。修理費と故障のリスク、更新の費用を比べて、経営層に提案するのも保全の大切な仕事です。
近年は、センサーで振動や温度を常時監視する予知保全や、設備データを集めて分析するスマートファクトリーの取り組みも広がっています。記録をデータとして活用できるかどうかが、これからの保全の力の差になりつつあります。
業界・会社による違い
ここまでの流れは多くの工場に共通しますが、業界や会社によって比重の置き方は変わります。特に違いが大きいのが、組立・加工の量産工場と、化学や鉄鋼などの装置産業です。
設備の止め方と、止まったときの影響の大きさが異なります。
※同じ業界でも、工場の規模や製品によって進め方は異なります。
量産工場と装置産業
自動車業界のような組立・加工の量産工場では、1台の設備が止まるとライン全体が止まります。そのため、故障からいかに早く復旧させるかが重視され、保全担当が生産ラインのそばに常駐する形も多く見られます。
一方、化学・樹脂業界や鉄鋼・非鉄金属業界のような装置産業では、設備を24時間止めずに運転します。数年に一度、工場全体を止めて行う定期修理が一大行事で、そこに向けた計画と工事管理が仕事の大きな部分を占めます。
食品・医薬品業界では、衛生管理の観点から、洗浄や異物混入の防止に関わる保全も欠かせません。業界の特徴によって、点検の項目や記録の残し方が変わってきます。
大手と中小
大手メーカーでは、保全部門が機械系・電気系などに分かれ、計画担当と現場の作業担当が分業していることもあります。保全管理システムで計画と記録を管理し、大型の工事は協力会社に任せて管理する立場になることも多いのが特徴です。
担当する範囲が限られる分、特定の設備や技術を深く学べるのが大手の良さです。一方で、若いうちは計画や工事管理が中心になり、自分の手で修理する機会が少ないと感じる人もいます。
中小メーカーでは、少人数の保全担当が計画から修理、改善までを一人で幅広く担います。一通りの流れを早く経験できる反面、仕組みづくりは自分たちで進める必要があると言えます。
また、受注生産で多品種の製品をつくる工場では、製品ごとに設備の使い方が変わるため、段取り替えに関わる調整や治具の保守も保全の仕事に含まれることがあります。自分が働く工場の特徴に合わせて、流れの重みづけを考えることが大切です。
まとめ
- 設備保全の仕事は、計画、実行、分析・改善の3つの段階を繰り返して進む
- 計画の段階では設備の重要度を決め、保全方式と周期、部品・工事を手配する
- 実行の段階では、点検・計画整備を進めながら突発の故障にも対応する
- 分析・改善の段階では、故障の真因をつぶし、記録をもとに次の計画を見直す
- 量産工場と装置産業、大手と中小で、保全の比重や分業の形は大きく異なる
設備保全という職種の全体像は設備保全とはで、必要な知識や資格、キャリアの選択肢は設備保全に必要なスキル・資格とキャリアパスで解説しています。定期修理の比重が大きいプラント業界の記事もあわせて参考にしてください。
設備保全の働き方については、設備保全の職種ページから関連記事もあわせてご覧ください。
出典
出典・参考資料(2件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 設備保全に近い職業の仕事内容:厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「産業用ロボットの保守・メンテナンス」
- 設備保全に近い職業の仕事内容:厚生労働省 職業情報提供サイト(job tag)「紡織設備管理・保全」
NEWSLETTER
選んだ職種・業種に合わせた記事を、週1回メールで
週刊MONOSCOPEは、登録時に選んだ職種・業種に合わせた記事を週1回お届けする無料のメルマガです。
職種・業種を選んで登録へ ›無料・週1回。登録後に届く確認メールのリンクを押すと登録が完了します。配信はメール内のリンクからいつでも停止できます。
WEEKLY NEWS
今週の製造業ニュース10選
メルマガは職種・業種に合わせた記事。LINEとnoteでは、全員共通の10本を毎週土曜の朝にお届けします。
LINEでニュース10選を受け取るnote今週のニュース10選をnoteで読む ›

コメント