安全在庫を計算式どおりに持っていても、ある品目は欠品し、別の品目は倉庫にあふれることがあります。原因の多くは式そのものではなく、式が置いている前提と、式に入れるデータの取り方にあります。
安全在庫とは、注文の増加や納品の遅れといったぶれに備えて持つ在庫です。一般には「安全係数×標準偏差×√リードタイム」の式で計算され、リードタイムは発注から入荷までの期間を指します。
この記事では、安全在庫の定義と計算式、安全係数の意味、定量発注と定期発注での違いを整理したうえで、架空の部品を使った計算例を示します。後半では、計算どおりでも欠品と過剰在庫が同時に起きる8つの原因と、見直しの手順をまとめます。
安全在庫とは|発注点・サイクル在庫との関係

JIS Z 8141(生産管理用語)では、安全在庫を「需要変動又は補充期間の不確実性を吸収するために必要とされる在庫」と定義しています。つまり、注文が予想より多い、納品が予定より遅れる、という2種類のぶれに備える在庫です。
倉庫にある在庫は、大きく2つの部分に分けて考えます。1つは、毎回の発注で入ってきて、次の入荷までに使い切っていく「サイクル在庫」です。もう1つが、需要や納期がぶれたときにだけ使われる「安全在庫」です。
発注のタイミングを決める「発注点」は、JIS では「調達期間中の推定需要量と安全在庫との和」とされています。発注してから届くまでの間に平均的に使う量に、安全在庫を上乗せした水準まで在庫が減ったら発注する、という考え方です。
ふだんはサイクル在庫の範囲で上下し、需要が多い・納品が遅れたときだけ安全在庫に食い込みます。
※LT=リードタイム(発注から入荷までの期間)。図は定量発注方式(発注点方式)のイメージです。
ここで押さえておきたいのは、安全在庫は「欠品をゼロにする在庫」ではないという点です。計算式は、一定の割合の欠品を許容することを前提に、その割合に収まる量を求めるものです。
欠品率をゼロにしようとすると、理論上は安全在庫が無限大になってしまいます。
なお、在庫の効率を測る在庫回転率や、災害・供給停止に備える戦略的な在庫(BCP 在庫)は、目的が異なる別の指標・在庫です。この記事では、日々の需要と納期のぶれに備える安全在庫に絞って扱います。
安全在庫の計算式と安全係数
安全在庫の計算式は、何のぶれに備えるか、どの発注方式を使うかで少しずつ形が変わります。まず基本式を押さえ、そのあとで発注方式による違いと、リードタイムのばらつきを入れた式を見ていきます。
基本式:安全係数×需要の標準偏差×√期間
需要のばらつきだけに備える場合、安全在庫は次の式で求めます。
安全在庫=安全係数(k)×需要の標準偏差(σ)×√(リードタイム+発注間隔)
標準偏差は、日々の出庫数が平均からどれくらい散らばっているかを表す数字です。Excel では STDEV.S 関数で求められます。
σ を「1日あたり」で計算したなら、リードタイムと発注間隔も「日」で数える、というように時間の単位をそろえることが欠かせません。
期間に平方根が付く理由は、日々の需要が互いに無関係にぶれる場合のばらつき方にあります。このとき、複数日分を合計したときのばらつき(分散)は日数に比例して増え、標準偏差はその平方根で増えます。
5日分の需要のばらつきは、1日分の5倍ではなく√5倍、約2.24倍になります。
安全係数はサービス率(欠品許容率)から決まる
安全係数は、「期間中の需要が、平均+標準偏差の何倍までなら在庫でまかなうか」を表す倍率です。需要が正規分布に従うと仮定し、許容する欠品の確率に対応する値を正規分布表から読みます。
上側だけ(需要が多すぎる側だけ)を見るので、片側の値を使います。
よく使われるのは、サービス率95%(欠品許容率5%)で1.65、99%(同1%)で2.33という組み合わせです。
Excel なら NORM.S.INV 関数にサービス率を入れると求められ、NORM.S.INV(0.95) は約1.645になります。
サービス率を上げるほど、安全在庫は加速度的に増えます。
(欠品許容率)
※安全係数は正規分布の片側の値(標準正規分布の逆関数を小数第2位に丸めたもの。95%は慣例に従い1.65とし、正確には1.645)。部品Aは後述の計算例の架空データ(標準偏差5.44個/日、リードタイム5日、定量発注方式)で、小数点以下を切り上げています。倍率は切り上げ前の値で比べたものです。
95%から99%へ4ポイント上げるだけで安全在庫は約1.4倍になり、99.9%では約1.9倍です。サービス率は「高いほどよい」ではなく、欠品したときの損失と、在庫を持つ費用との釣り合いで決める数字だと分かります。
定量発注と定期発注で√の中身が変わる
発注の仕方には、「定量発注方式」と「定期発注方式」があります。定量発注方式は在庫が発注点まで減ったら決まった量を発注し、定期発注方式は毎週月曜・毎月25日のように決まった間隔で発注してそのつど量を決めます。
JIS では、一般に定量発注方式は発注点方式を指すとされています。
定量発注方式では、在庫が発注点を割った時点ですぐ発注できるので、備えるべきはリードタイムの間のぶれだけです。一方、定期発注方式では、次の発注日まで手を打てません。
そのため発注間隔とリードタイムを足した期間のぶれに備える必要があり、同じ品目でも安全在庫は多くなります。
発注できるタイミングの違いが、安全在庫の式に表れます。
※発注量の式は JIS Z 8141 の定期発注方式の定義による。向きやすい品目は一般的な傾向を編集部で整理したものです。
リードタイムのばらつきも入れる式
基本式は、リードタイムが毎回ぴったり同じであることを前提にしています。仕入先の納期が4日のときもあれば7日のときもある、という場合は、リードタイムのばらつきも式に入れる必要があります。
需要のばらつきとリードタイムのばらつきが互いに独立で、どちらも正規分布に従うとみなせる場合、安全在庫は次の式で求めます。
安全在庫=k×√(LT×σd²+d̄²×σLT²)
LT は平均リードタイム、σd は1日あたりの需要の標準偏差、d̄ は1日あたりの平均需要、σLT はリードタイムの標準偏差です。前半の項が需要のぶれ、後半の項が納期のぶれによる分で、2つのばらつきを二乗して足してから平方根を取ります。
米国の供給管理団体 APICS(現 ASCM)の機関誌に掲載された解説では、需要とリードタイムの変動が独立でない場合の注意を挙げています。その場合はこの合成式は使えず、需要分とリードタイム分をそれぞれ計算して単純に足すべきだとしています。
例えば、繁忙期に需要が増えると同時に仕入先の納期も延びる、という品目がこれにあたります。
計算式が成り立つ前提
ここまでの式は、いくつかの前提の上に成り立っています。後半で扱う「計算どおりなのに欠品と過剰が起きる」原因の多くは、このどれかが崩れていることから生まれます。
- 一定期間ごとの需要のばらつきが、おおむね正規分布に従う
- 需要の平均とばらつきが、計算に使った期間とこれからの期間で大きく変わらない
- 日々の需要は互いに独立で、需要とリードタイムのばらつきも独立している
- 標準偏差の時間単位と、リードタイム・発注間隔の時間単位がそろっている
東京海洋大学の講義資料では、需要の分布そのものが正規分布でない場合についても説明しています。多くの顧客の需要を合計した量は、中心極限定理によっておおむね正規分布とみなせる、という説明です。
逆に言えば、出荷の回数が少なく、1回の量が大きい品目では、この近似が合いにくくなります。
計算例|部品Aの安全在庫と発注点を出す(想定例)
ここからは、架空の部品Aを使って実際に計算してみます。数値はすべて説明用に作った想定例です。部品Aは組立ラインで使う金属ブラケットで、仕入先に発注してから届くまでのリードタイムは5日とします。
直近20稼働日の出庫数は、38、45、41、33、47、40、36、52、44、39、35、43、48、37、42、30、46、41、38、45個でした。合計は820個、1日平均は41.0個、最小は30個、最大は52個です。
定量発注方式、サービス率95%で計算した場合の流れです。
※架空の品目・架空のデータによる想定例。√5は約2.236。計算は Python で検算しています。
標準偏差は、20日分を「母集団から取り出した一部」とみなす標本標準偏差(STDEV.S)で計算しました。
全体を表すとみなす母標準偏差(STDEV.P)では5.30個になり、安全在庫の値もわずかに変わります。どちらを使うかは社内で統一しておくと、担当者によって結果がずれません。
定期発注方式にした場合
同じ部品Aを、5日ごとの定期発注に切り替えたとします。備える期間はリードタイム5日と発注間隔5日を合わせた10日になるので、安全在庫は1.65×5.44×√10=28.38、切り上げて29個です。定量発注の21個より8個多くなります。
発注日の手持在庫が250個、発注残(発注済みで未入荷の量)がゼロだったとします。JIS の式による発注量は、10日間の需要推定量410個−発注残0個−手持在庫250個+安全在庫29個=189個になります。
リードタイムのばらつきを入れた場合
部品Aの直近10回の実際のリードタイムは、4、5、7、5、4、6、3、5、6、5日でした。平均は予定どおり5.0日ですが、標準偏差は1.15日あります。これを先ほどの式に入れると、次のようになります。
5×5.44²=147.9、41²×1.15²(正確には1.155²)=2,241.3で、合計2,389.2の平方根は48.88です。これに1.65を掛けると80.65、切り上げて安全在庫は81個、発注点は205+81=286個になります。
部品Aでは、需要のぶれより納期のぶれのほうがはるかに大きく効いています。
※安全係数1.65、平均需要41.0個/日、需要の標準偏差5.44個/日、平均リードタイム5日、リードタイムの標準偏差1.155日。切り上げ前の値。合成式は需要と納期のばらつきが独立な場合、単純和は独立でない場合に使います。
需要のばらつきだけで計算した発注点226個のまま運用すると、納期が7日かかった回に不足が出ます。平均的な需要でも7日分の287個が必要になり、約60個足りなくなる計算です。
欠品の原因が需要ではなく納期にある品目では、需要側のデータをいくら精緻にしても欠品は減りません。
リードタイムのばらつきを減らせれば、安全在庫そのものを減らせます。仕入先との納期の約束や発注から入荷までの流れの見直しは、購買・調達の仕事の流れのうち納期管理の工程で扱われるテーマです。

「欠品率」「サービス率」は定義をそろえる
安全在庫の議論が社内でかみ合わない原因として意外に多いのが、欠品率やサービス率の定義の違いです。同じ「サービス率95%」でも、何を数えるかで意味がまったく変わります。
東京海洋大学の講義資料では、サービス率を「顧客からの注文に対して品切れを起こさずに対応できる比率」としています。欠品率は「品切れで納品できなかった比率」で、サービス率=1−欠品率です。
そのうえで、欠品率には2種類の定義があると整理しています。
1つは「確率」で数える定義で、期間中の需要が在庫を上回る確率、言い換えれば発注から入荷までの1サイクルのうち欠品が起きるサイクルの割合です。
もう1つは「期待値」で数える定義で、需要量全体のうち欠品した数量の割合です。前者はサイクルサービス率、後者は充足率やフィルレートと呼ばれることが多い指標です。
この記事の計算式が前提にしているのは、左の「回数」の定義です。
※部品Aの充足率は、発注量205個、リードタイム5日の条件で標準正規分布の損失関数を使って求めた編集部の試算(1サイクルの期待欠品数は約0.25個)。定義や呼び名は資料によって異なります。
部品Aの例では、同じ安全在庫21個でも、回数で見れば約95%、数量で見れば約99.9%になります。
「サービス率95%を目標に」と言うとき、営業や顧客が数量の意味で使い、生産管理が回数の意味で計算していることがあります。すると、在庫が足りているのか過剰なのか、議論そのものがずれてしまいます。
APICS の解説でも、サイクルサービス率は欠品の頻度だけを表し、欠品の大きさは表さないと指摘しています。目標値を決めるときは、どちらの定義か、どの単位(受注行・数量・金額)で数えるかを文書にしておくことをおすすめします。
計算どおりでも欠品と過剰在庫が同時に起きる8つの原因

では、式どおりに安全在庫を設定しているのに、欠品と過剰在庫が同時に起きるのはなぜでしょうか。ここでは原因を、データの取り方、式の前提、運用とマスタの3つに分けて整理します。
原因の分類は、前述の式の前提と各資料の指摘をもとにした編集部の整理です。
欠品する品目と余る品目が混在しているなら、全品目共通の設定を疑います。
※分類は編集部の整理です。複数の原因が重なっていることも少なくありません。
① 需要のばらつきの測り方がずれている
標準偏差は、どの期間のデータを使うか、例外的な出荷を含めるかで大きく変わります。
部品Aの20日分のうち、1日だけ特注の大口出荷で142個出ていたとします。すると標準偏差は5.44個から23.24個へ約4.3倍に跳ね上がり、安全在庫も21個から86個になります。
その大口出荷が二度と来ない一回限りのものなら、残りの品目にとっては余分な在庫を毎日抱え続けることになります。
逆に、繁忙期と閑散期がある品目で1年分をならして計算すると、繁忙期には足りず、閑散期には余ります。外れ値の扱いと、季節ごとに計算を分けるかどうかを決めておく必要があります。
② 品目ごとの違いを平均で見ている
「安全在庫は全品目1週間分」のように、平均使用量の何日分という一律のルールで決めているケースもあります。この方法では、需要が安定した品目は持ちすぎになり、ばらつきの大きい品目は足りなくなります。
APICS の解説でも、経験則やサイクル在庫の一定割合で安全在庫を決める方法は、手軽な反面、成績が悪くなりがちだと指摘されています。欠品と過剰が同時に起きる典型的な形がこれで、品目ごとにばらつきを測ることが見直しの出発点になります。
③ リードタイムの変動を無視している
計算例で見たとおり、納期が安定しない品目では、需要のばらつきだけで計算した安全在庫では大きく不足します。マスタには仕入先が回答した標準リードタイムが1つ入っているだけ、という運用では、このぶれは計算に表れません。
発注日と入荷日の記録から、品目・仕入先ごとに実際のリードタイムの平均とばらつきを出しておくと、どの品目で納期のぶれが効いているかが分かります。
社内の工程が長い製品では、製造リードタイムの内訳を見て、どこでぶれが生まれているかを確認するのも有効です。
④ 発注ロットや最小発注数量(MOQ)の影響
安全在庫の式は、在庫の「底」の部分だけを決めるものです。実際の平均在庫はおおむね「安全在庫+1回の発注量の半分」になり、発注量が大きければ、安全在庫が適正でも在庫は多く見えます。
部品Aを5日分(205個)ずつ発注すれば平均在庫は約124個ですが、仕入先の最小発注数量が600個(約15日分)なら約321個です。このとき在庫が多いのは安全在庫の設定ではなく、発注ロットの問題です。
原因を取り違えて安全在庫を削ると、在庫はあまり減らずに欠品だけが増えることになります。
⑤ サービス率を一律にしている/ABC分析をしていない
全品目のサービス率を一律に95%や99%にしていると、止まると生産ライン全体が止まる部品も、代わりがすぐ手に入る部品も、同じ考え方で在庫を持つことになります。
JIS Z 8141 では、ABC分析を「取扱い金額又は量の大きい順に並べて、管理の重要度が高い品目から順にA,B,Cの3種類に区分」する分析としています。その目的は、重要度に沿った管理の仕方を決めることです。
APICS の解説も、全品目に同じ安全係数を使うのではなく、戦略上の重要度や利益率、金額などで品目をグループに分け、グループごとに設定することを勧めています。
例えば欠品の影響が大きい品目は手厚くし、代わりが手に入りやすく金額の大きい品目は絞るというように、品目の性格に合わせて係数を使い分けます。
⑥ 需要予測の誤差を使っていない
需要予測や生産計画にもとづいて発注している場合、在庫が守るべきなのは「実績のばらつき」ではなく「予測と実績のずれ」です。
需要が増加傾向にある品目や季節性がはっきりした品目では、予測がうまく当たっていれば、予測誤差のばらつきは実績のばらつきより小さくなりえます。
逆に、予測を使っているのに実績の標準偏差で計算すると、安全在庫を過大にも過小にも見積もる可能性があります。
オランダ・英国の研究者による2017年の論文(European Journal of Operational Research)があります。
この論文は、予測にもとづく発注では、従来の計算方法だと安全在庫が過小に見積もられることがあると指摘しています。
需要予測の工程で、予測と実績の差を記録しておくと、この計算に使えます。
⑦ マスタを更新していない
安全在庫や発注点は、一度計算してシステムに登録すると、そのまま何年も使われ続けることがあります。その間に主力製品が変わる、仕入先が変わる、リードタイムが延びる、といった変化があっても、マスタの数字は計算した当時のままです。
終息に向かう品目は過剰在庫に、伸びている品目は欠品になりやすく、ここでも欠品と過剰が同時に生まれます。MES・ERPなどの基幹システムに安全在庫を登録している場合は、見直しの周期と担当者を決めておくことが大切です。
⑧ 有効在庫で発注判断していない
JIS の発注点方式の定義では、発注の判断に「有効在庫量」を使うとしています。手元にある在庫だけで判断すると、すでに発注済みの量を忘れて二重に発注したり、別の受注に引き当て済みの在庫を「ある」と思って発注が遅れたりします。
JIS Z 8141 では、有効在庫を、手持在庫に発注残と引当済みの量を考慮した実質的に利用可能な在庫量としています。式で表すと「有効在庫=手持在庫−引当量+発注残」です。
安全在庫の計算が正しくても、発注を判断する在庫の数え方がずれていれば、過剰と欠品の両方を招くことになります。
安全在庫の見直し方|5つのステップ

8つの原因を踏まえて、安全在庫を見直す手順を5つのステップにまとめます。全品目を一度にやり直すより、影響の大きい品目から順に進めるほうが現実的です。
品目を分け、データを整え、定義を決めてから計算します。
※手順は編集部の整理です。
ステップ1〜2:品目を分け、データを整える
最初に、取扱い金額や使用量で ABC 分析を行い、欠品したときに生産や出荷が止まる品目を加えて、重点的に見直す品目を決めます。次に、その品目の出庫データから外れ値の理由を確認し、季節性があれば期間を分けます。
あわせて、発注日と入荷日の記録から実績のリードタイムを出し、需要予測を使っている品目は予測と実績の差も集めます。データの粒度は、日別・週別のどちらでもかまいませんが、リードタイムや発注間隔と同じ時間単位にそろえます。
ステップ3〜4:定義を決めてから計算する
サービス率の定義(回数か数量か)と、品目グループごとの目標値を決めてから計算に入ります。発注方式が定量か定期か、リードタイムのばらつきが大きいか、需要と納期のぶれが連動しているかによって、使う式を選びます。
計算結果が出たら、最小発注数量や梱包単位も含めた平均在庫を見積もり、在庫が多い原因が安全在庫なのかロットなのかを切り分けます。
出荷の回数が少なく1回の量が大きい品目は正規分布の近似が合いにくいので、式の結果をそのまま使わず、過去の出荷実績と照らし合わせて判断します。
ステップ5:実績で検証し、定期的に更新する
新しい安全在庫で運用を始めたら、品目グループごとに欠品の回数や数量、在庫日数を記録し、目標としたサービス率に近い結果が出ているかを確かめます。サービス率95%で設計した品目なら、欠品がまったく起きないのは持ちすぎのサインかもしれません。
需要やリードタイムは変わっていくので、四半期ごとなど周期を決めて再計算し、マスタに反映します。
発注点や安全在庫は、生産計画や日程計画の前提にもなります。生産スケジューラなどで計画を組んでいる場合は、計画側の担当者とも更新のタイミングを共有しておくと混乱が起きにくくなります。

まとめ
- 安全在庫は需要と補充期間のぶれを吸収する在庫で、発注点=リードタイム中の平均需要+安全在庫
- 基本式は、安全係数×需要の標準偏差×√(リードタイム+発注間隔)。定量発注なら√リードタイム
- 安全係数は正規分布の片側の値で、95%なら1.65、99%なら2.33。サービス率を上げるほど急に増える
- 納期がぶれる品目は、k×√(LT×σd²+d̄²×σLT²)でリードタイムのばらつきも入れる
- 欠品と過剰の同時発生は、データの取り方・式の前提・運用とマスタのずれから起きることが多い
安全在庫の計算式そのものは難しくありませんが、式に入れるデータと、式が置いている前提を点検しないまま使うと、欠品と過剰在庫を同時に招きます。
まずは欠品している品目と余っている品目を数点ずつ選び、この記事の8つの原因に当てはまるものがないか確かめてみてください。
在庫と発注の仕事は、生産管理とはで整理した計画・手配の業務と、購買・調達の業務にまたがります。関連する記事は生産管理の職種ページと購買・調達の職種ページからもご覧いただけます。
出典
出典・参考資料(6件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 安全在庫・有効在庫・発注点・定量発注方式・定期発注方式・発注点方式・ABC分析の定義:JIS Z 8141:2022「生産管理用語」(閲覧:JIS Z 8141:2022 生産管理用語(7301〜7312)、同(7314〜7321))
- サービス率・欠品率の2つの定義、安全係数の表、定量・定期発注の安全在庫式、正規分布の仮定:東京海洋大学 ロジスティクス管理 講義資料「サービス率と欠品率 安全在庫」
- リードタイムのばらつきを含む式、独立でない場合の扱い、サイクルサービス率とフィルレート、品目グループごとの安全係数:Peter L. King, “The Code Cracker: Understanding safety stock and mastering its equations”, APICS magazine, July/August 2011
- 理論在庫=安全在庫+サイクル在庫、サイクル在庫=発注量の1/2、欠品率0%では安全在庫が無限大になる点:NX総合研究所「理論在庫(適正在庫)算定のかんどころ」(2024年11月26日)
- 予測にもとづく発注での安全在庫の過小評価:Prak, D., Teunter, R., Syntetos, A. (2017) “On the calculation of safety stocks when demand is forecasted”, European Journal of Operational Research, 256(2), 454-461
- 定量発注法・定期発注法の説明:J-Net21(中小企業基盤整備機構)「仕入品を管理するには」
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