ソルベー法(アンモニアソーダ法)とは、食塩水にアンモニアと二酸化炭素を吸わせて炭酸水素ナトリウムを沈殿させ、それを焼いてソーダ灰(炭酸ナトリウム、Na2CO3)をつくる工業的製法です。主な原料は食塩と石灰石で、途中で使うアンモニアは回収して何度も使い回します。
全体では2NaCl+CaCO3→Na2CO3+CaCl2という単純な式になりますが、食塩と石灰石を混ぜても反応は進みません。そこでアンモニアを仲立ちに炭酸水素ナトリウムの沈殿と熱分解という2つの反応に分け、ほぼ同量の塩化カルシウムを副生しながらソーダ灰を取り出します。
ソルベー法の目的:食塩と石灰石からソーダ灰をつくる
ソルベー法の目的は、ガラスや洗剤の原料になるソーダ灰を、どこでも手に入る食塩と石灰石から安く大量につくることです。ベルギーのエルネスト・ソルベーが特許を取り、1863年に弟のアルフレッドと会社を設立して、ガラス産業の集まるシャルルロワ近郊のクイエに最初の工場を建てました。
ソーダ灰は、ガラスの主原料であるケイ砂に混ぜると砂の溶ける温度を下げる融剤として働き、溶かすのに要るエネルギーを減らします。板ガラスやびんに欠かせないほか、洗剤では水を軟らかくする成分として、化学工業では重曹などのナトリウム化合物の出発原料として使われています。
原料の食塩と石灰石は世界の多くの地域で手に入るので、消費地の近くに工場を建てられることがこの製法の強みです。
工程は5つのStepに分けて説明されますが、ソーダ灰をつくる主な反応は、Step3の炭酸水素ナトリウムの沈殿とStep4の熱分解の2つです。残りの3つは、CO2と石灰をつくる工程と、使ったアンモニアを取り戻す工程にあたります。
ソルベー法の流れと手順(Step1〜5)
ソルベー法の5つのStepは、物質を回しながら1本の流れになっています。まず全体の流れを図で確認します。
アンモニア塩水にCO₂を吸わせて重曹を沈殿させ、ろ過して焼くとソーダ灰になります。焼いたときに出るCO₂は炭酸化塔へ戻します。
※Step2の石灰炉でつくったCO₂も炭酸化塔へ送ります。ろ過で分けた母液はStep5の蒸留塔へ送り、取り戻したアンモニアをStep1に戻します。
Step1 食塩水にアンモニアを溶かす
最初に、ほぼ飽和の食塩水(1 Lあたり約300 gのNaCl)にアンモニアを吸収させます。アンモニアの一部は水と反応してアンモニウムイオンと水酸化物イオンになるため、食塩水は塩基性のアンモニア塩水になり、次のStep3でCO2を吸い込みやすくなります。
食塩水は、使う前にカルシウムとマグネシウムを取り除きます。残っているとアルカリやCO2と反応して水に溶けにくい塩になり、ボイラーのスケールと同じように塔や配管の内側にこびりつくからです。
Step2 石灰石を焼いてCO2をつくる
Step2では、石灰炉で石灰石(炭酸カルシウム)を焼き、二酸化炭素と酸化カルシウム(生石灰)に分けます。炉の温度は950〜1,100℃で、熱源と不足分のCO2を補うため、コークスなどの固体燃料を石灰石と一緒に燃やします。
この分解は、熱を吸って物質のもつエンタルピーが増える反応です。後のStep4で炭酸水素ナトリウムを分解する反応も同じく吸熱なので、ソルベー法では石灰炉と焼成炉の2か所で大きな熱を加えています。
燃料にコークスや石炭のような炭素の多いものを使うのは、炉から出るガスのCO2濃度を高く保つためです。天然ガスを燃やすとガスが薄まり、炭酸化塔で使うには濃縮する設備が別に要ると、欧州連合の技術資料(BREF)は説明しています。
Step3 炭酸化塔で炭酸水素ナトリウムを沈殿させる
Step3がソルベー法の中心で、Step1のアンモニア塩水にStep2のCO2を吹き込み、炭酸水素ナトリウム(重曹、NaHCO3)を沈殿させます。この反応を進める炭酸化塔(ソルベー塔)は、上から液を流し、下からCO2を送り込んで、塔の中で連続的に反応させる設備です。
式の上では1本ですが、塔の中では段階を追って進みます。CO2はまずアンモニアと中和して炭酸アンモニウム、さらに炭酸水素アンモニウムになり、その炭酸水素イオンがナトリウムイオンと組んで沈殿します。
沈殿するのが炭酸水素ナトリウムなのは、液に溶けている塩の中でとくに溶けにくいからです。重曹を分けた母液1 Lには塩化アンモニウムが約190 g残るのに対し、炭酸水素ナトリウムは約7 gしか残らず(化学辞典 第2版)、工場では液を水で冷やして溶ける量をさらに減らし、結晶を育てます。
沈殿した結晶は遠心分離機か真空ろ過機で母液から分け、洗ってからStep4へ送ります。塩化アンモニウムを含む母液はStep5へ回り、塔から出るガスは食塩水で洗ってアンモニアを回収してから大気へ出します。
Step4 炭酸水素ナトリウムを焼いてソーダ灰に
Step4では、Step3で取り出した炭酸水素ナトリウムを加熱して分解し、目的のソーダ灰にします。これが2つ目の主な反応で、炭酸水素イオン2個から炭酸イオンと水とCO2ができる熱分解です。
焼成炉では、回転する管の中に蒸気を通し、その熱で重曹を分解する方式が一般的です。出てきたガスを冷やして水を凝縮させるとCO2の濃いガスが残り、これを圧縮してStep3の炭酸化塔へ戻します。
Step3で吸わせたCO2のうち、半分はこのStep4で再びガスになって戻ってくる計算です。残りの半分を補うのがStep2の石灰炉で、2か所のCO2を合わせて炭酸化塔に送っています。
Step5 アンモニアを回収して使い回す
原料に入っていないアンモニアは、Step3の母液に塩化アンモニウムとして残っています。Step2の生石灰に水を加えて消石灰の懸濁液(石灰乳)にし、母液に加えて加熱すると、アンモニアが再びガスとして出てきます。
この工程は工場では「蒸留」と呼ばれ、塔の底から低圧の蒸気を吹き込んでアンモニアを追い出します。ソーダ灰1トンあたり約500〜550 kgのアンモニアが工場の中を回っていて、失われるのはその0.5%未満です(BREF)。
一方、蒸留塔の底からは塩化カルシウムの溶液が出ます。製品にできるのはごく一部で、大半は未反応の食塩や石灰石由来の固形分とともに排液として処分されるため、この点は後の章で詳しく見ていきます。
ソルベー法のまとめ式(全体の反応式)
Step1〜5の式を足し合わせると、アンモニアやCO2、途中でできる物質がすべて消え、食塩と石灰石からソーダ灰と塩化カルシウムができる式になります。アンモニアは反応の仲立ちをするだけで、全体の式には出てきません。
消えた物質のうち、CO2とアンモニアは工場の中をぐるぐる回る物質です。どこで生まれ、どこで使われ、何が外へ出ていくかを整理すると、ソルベー法が「アンモニアとCO2の2つの循環」で成り立っていることが分かります。
CO₂は石灰炉と焼成炉から半分ずつ、アンモニアは蒸留塔で取り戻し、外へ出ていくのは塩化カルシウムを含む排液です。
※数値は欧州連合の技術資料(BREF LVIC-S、2007年)による欧州の工場の例です。
計算例:ソーダ灰1トンに要る食塩と石灰石
全体の式から、ソーダ灰1トンに要る原料と、副生する塩化カルシウムの量を見積もれます。ここでは原子量をNa=23、Cl=35.5、Ca=40、C=12、O=16とし、反応が式どおりに完全に進むとした理論量を求めます。
実際の工場が使う食塩は、塩水に含まれるNaClでソーダ灰1トンあたり1.53〜1.80トンです(BREF)。理論量の1.10トンを実際の量で割ると0.61〜0.72になり、食塩のうちソーダ灰になるのは6〜7割ほどで、残りは反応しきれずに排液へ出ていきます。
石灰石も、石灰炉の入口で1.05〜1.60トンと理論量より多く使います。石灰石に含まれる不純物の分に加え、炭酸化塔で吸収しきれないCO2を補う分を余分に焼くためで、主原料のほかに燃料や蒸気の形でも大きなエネルギーが工場に入ります。
実際のソーダ灰工場では:石灰炉・炭酸化塔・焼成炉・蒸留塔
実際の工場は、Step1〜5の反応をそれぞれ専用の設備で連続して行う、液とガスの流れが大きい装置産業です。欧州の工場の年間の生産能力は16万〜120万トンで、大きな工場は1日に1,000トン以上のソーダ灰をつくります(BREF)。
原料の準備、反応と分離、製品化と回収の3つの段階に分かれ、それぞれのStepが専用の設備で行われます。
※温度と濃度は欧州連合の技術資料(BREF LVIC-S、2007年)の代表的な値です。
炭酸化塔とろ過:結晶を育てて分ける
炭酸化塔では、アンモニア塩水にCO2を吸わせながら水で冷やし、炭酸水素ナトリウムの結晶を育てます。吸収しきれなかったガスは塔の出口で食塩水と接触させる洗浄塔に通し、残ったアンモニアを吸わせて工程へ戻します。
欧州連合の技術資料は、装置の清掃と保全の周期を計画し、高い稼働率を保ってきたことを欧州のソーダ灰工場の強みに挙げています。設備を順に止めて手入れする段取りは、プラント全体を止める定修と同じ考え方です。
結晶は遠心分離機か真空ろ過機で母液から分けます。真空ろ過では結晶の層に空気を吸い通すので、その空気に混じるアンモニアとCO2も洗浄塔で食塩水に吸わせて回収します。
焼成炉と軽灰・重灰
焼成炉で得たソーダ灰は、かさ密度が約0.5 t/m3と軽いため「軽灰」と呼ばれ、主に洗剤や化学品に使われます。ガラス工場向けには、いったん水を加えて一水塩の結晶にし、乾かしてかさ密度を約1.0 t/m3に高めた「重灰」にします。
重灰はガラス工業で好まれる形で、同じ重さでもかさが半分になるため、遠くへ運ぶときの輸送の効率も良くなります(BREF)。製品はサイロに蓄えますが、大きな工場の生産量に比べると貯蔵できるのは1週間分にも満たない量です。
蒸気と電力:ソーダ灰工場は熱の工場
ソルベー法は大量の蒸気を使う製法です。ソーダ灰1トンあたり、アンモニアの回収に1.3〜2.4トン、重曹の焼成に1.1〜1.3トン、重灰の乾燥に0.35〜0.45トンの蒸気が要ります(BREF)。
そこで多くの工場は、ボイラーで100〜150 barや60〜80 barの高圧蒸気をつくり、タービンで発電してから圧力の下がった蒸気を工程で使います。背圧タービンの排気をそのまま蒸留や焼成に回せるので、発電と熱利用を合わせた効率は約90%に達します。
エネルギーの合計は、欧州のソルベー法でソーダ灰1トンあたり9.7〜13.6 GJで、うち石灰炉の燃料が2.2〜2.8 GJです。温かい液やガスの熱を熱交換器で塩水や母液の予熱に回すことも、ソーダ灰工場の省エネの基本になっています。
副生する塩化カルシウムと排水・CO2の課題
ソルベー法の弱点は、全体の式そのものにあります。ソーダ灰1トンにつき塩化カルシウムがほぼ1トンできますが、その大半は売り先がなく、排液として処分されています。
欧州連合の技術資料によると、EU-25のソルベー法のソーダ灰は年770万トンで、ほぼ同じ量の塩化カルシウムができる計算です。これに対し、EU内の塩化カルシウムの需要は全グレードを合わせて年約33万トンで、そのうちソーダ灰由来は約半分にとどまります。
製品になる塩化カルシウムは、蒸留塔の出口液から固形分と食塩を除き、約76〜78%に濃縮してフレーク状にしたものです。道路の防じん剤や融雪剤、乾燥剤、油田の掘削液などに使われます。
食塩と石灰石は理論量より多く使い、塩化カルシウムを含む約10 m³の排液とCO₂が出ていきます。
※欧州連合の技術資料(BREF LVIC-S、2007年)の欧州の工場の範囲。排液は蒸留塔の出口で処理する前の量で、CaCl₂は溶けた状態で含まれます。
排液の量は、ソーダ灰1トンあたり約10 m3に及びます。年産50万トンの工場なら年500万m3、1日約1.4万m3で、塩化物イオンやカルシウム、未反応の食塩、石灰石やコークス由来の細かい固形分が含まれています。
処分の方法は立地で分かれ、海沿いの工場は排液を海へ流して拡散させています。内陸の工場は沈殿池で固形分を沈めてから上澄みを川や湖へ流しますが、沈殿池から塩化物が地下水へ漏れないようにする管理が欠かせません。
CO2については、石灰石から出た分の多くが炭酸化塔でソーダ灰に取り込まれる一方、吸収しきれない分とコークスの燃焼分の一部は大気へ出ます。単独のソーダ灰工場からの放出はソーダ灰1トンあたり200〜300 kgとされ、このほかに蒸気をつくるボイラーの燃料の分も加わります。
ソーダ灰は、使われる段階でもCO2を出します。ガラスの溶解炉で炭酸ナトリウムが分解するとCO2が出るため、日本の温室効果ガスの統計ではガラス製造などの排出として数えられています。
ガラスびんの工場ではガラスくず(カレット)を原料に混ぜてソーダ灰の使用量を減らしており(USGS)、脱炭素の面でも意味のある工夫です。
ソーダ灰の用途と世界・日本の生産

ソルベー法は過去の製法ではなく、いまも世界のソーダ灰の大半をつくる現役の製法です。米国地質調査所(USGS)によると、2025年の世界の生産は推定約7,100万トンで、そのうち約5,200万トン(7割強)が食塩などからつくる合成ソーダ灰でした。
用途:ガラス・洗剤・化学品
USGSによる米国の2025年の用途は、ガラスが45%、化学品が28%、石けん・洗剤が5%、排煙脱硫が4%などです。日本でも環境省の資料でソーダ灰の半分以上がガラスの原料とされ、窯業・セラミックス業界のガラスメーカーが最大の使い手です。
化学品では、食品や医薬、排ガス処理に使う精製重曹、漂白剤の過炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウムなどの原料になります。鉄鋼・非鉄金属業界でも、溶けた鉄の脱硫・脱りんや、鉛電池のリサイクルに使われています(BREF)。
ソーダ灰は硫酸やアンモニア、苛性ソーダと並ぶ基礎化学品で、化学業界のサプライチェーンの上流に位置します。製紙や水処理の一部では、アルミナを溶かすバイヤー法でも使う苛性ソーダで代用でき、両者は用途によって置き換えのきく関係です(USGS)。

天然ソーダ灰(トロナ)との比較
米国では、ソーダ灰を鉱石から直接つくっています。ワイオミング州のグリーンリバー盆地には世界最大のトロナ鉱床があり、トロナはセスキ炭酸ナトリウム(Na2CO3・NaHCO3・2H2O)という、炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムが組になった鉱物です。
トロナを焼いて溶かし、不純物をこしてから結晶をつくり直せばソーダ灰になり、トロナ約1.8トンからソーダ灰1トンが得られます。米国の2025年の生産は推定約1,200万トンで、その半分以上を輸出しています(USGS)。
USGSは、天然ソーダ灰はコストと環境への負荷が小さく、エネルギーを多く使う合成ソーダ灰より競争で有利だとしています。欧州連合の技術資料でも、ソーダ灰1トンあたりのエネルギーは、欧州のソルベー法の9.7〜13.6 GJに対し、北米の鉱物からの方法は6.1〜7.7 GJです。
| 比べる点 | ソルベー法 | 塩安ソーダ法 | 天然ソーダ灰(トロナ) |
|---|---|---|---|
| 主な原料 | 食塩、石灰石(燃料にコークス) | 食塩、アンモニア、CO2(アンモニア工場から受け取る場合が多い) | トロナ鉱石 |
| ソーダ灰のほかにできるもの | 塩化カルシウム(ほぼ同量、大半は排液) | 塩化アンモニウム(ほぼ同量、肥料に) | 鉱石の不純物(地下や池で保管) |
| アンモニアの扱い | 石灰乳で回収して循環 | 塩化アンモニウムとして製品に | 使わない |
| エネルギーの目安 | 9.7〜13.6 GJ/t(欧州) | アンモニア工場と一体で運転 | 6.1〜7.7 GJ/t(北米) |
| 主な地域 | 欧州、アジア | 中国、日本 | 米国、トルコ |
塩安ソーダ法(侯徳榜法)
塩安ソーダ法は、ソルベー法の母液からアンモニアを取り戻す代わりに、塩化アンモニウム(塩安)を肥料として取り出す改良法です。母液にアンモニアを吸わせ、食塩を加えて溶かしてから15℃以下に冷やすと、溶けにくくなった塩安が析出します。
塩安をそのまま製品にするので、石灰でアンモニアを取り戻す工程と塩化カルシウムの排液が要らず、食塩のナトリウムと塩素の両方を製品に生かせます。その代わり、アンモニアとCO2はアンモニア合成の工場から受け取る場合が多く、アンモニア工場と組み合わせて運転する形になります。
中国では化学者の侯徳榜(こう・とくほう)が開発した「聯合製碱法」として知られ、欧州連合の技術資料は、この併産方式の工場の多くが中国にあり、塩安は水田の肥料に使われるとしています。日本でも同じ考え方の塩安ソーダ法が開発され、1950年ごろから使われてきました(日本大百科全書)。
世界と日本の生産
世界の生産のうち、食塩からつくる合成ソーダ灰が7割強を占め、その中心は中国です。
10のうち7が合成ソーダ灰(約73%、2025年推定)
※USGS「Mineral Commodity Summaries 2026」。中国は天然もありますが大半が合成のため合成に、トルコは合成もありますが大半が天然のため天然に数えています。
世界最大の生産国は中国で、2025年は推定約3,800万トンとその大半が合成です。中国・米国・トルコの3か国で世界の約8割を占め、2023年に中国の内モンゴルで年約500万トンの天然ソーダ灰の能力が加わり、2025年の価格は供給過剰で下がりました(USGS)。
日本ではトロナが採れないため、ソーダ灰は食塩からつくる合成品です。環境省の温室効果ガスの算定資料によると、国内の生産は塩安ソーダ法です。石灰炉に石灰石とコークスを入れてCO2を得るほか、ハーバーボッシュ法のアンモニア工場から出たCO2をパイプラインで受け入れる場合もあります。
つくる会社は減ってきました。セントラル硝子は2015年5月にソーダ灰の生産を止めました。一方、アンモニア法のソーダ製造を目的に1918年に創業したトクヤマは、2026年3月期の有価証券報告書でもソーダ灰と塩化カルシウムを製造・販売品目に挙げています。
国産と輸入の量は近く、2024年は国産ソーダ灰の国内出荷が約26万トン、輸入が約21万トンでした(環境省の算定資料)。国内生産は終わっておらず、輸入品と並んで国内の需要をまかなっているのが日本の現状です。
ソルベー法のよくある質問
食塩と石灰石を混ぜるだけでは、なぜ反応しないのですか?
逆向きのNa2CO3+CaCl2→2NaCl+CaCO3のほうが進みやすいからです。炭酸カルシウムは水にほとんど溶けずに沈殿するため、反応は石灰石ができる向きに進み、塩水の精製ではこの性質を使ってカルシウムを取り除いています。
なぜアンモニアを溶かしておく必要があるのですか?
CO2は水に溶けにくい弱い酸なので、液を塩基性にして中和の形で炭酸水素イオンとして大量に取り込むためです。アンモニアは蒸留で回収できる塩基なので、使い捨てにせず工場の中で循環させられる点が工業的に重要です。
なぜ炭酸ナトリウムではなく炭酸水素ナトリウムが沈殿するのですか?
CO2を過剰に吹き込むので液中の炭酸は主に炭酸水素イオンの形になり、ナトリウムイオンと組んだ炭酸水素ナトリウムが溶けにくいため先に沈殿します。炭酸ナトリウムは水によく溶けるので、いったん重曹として取り出し、Step4で焼いてソーダ灰にするのが合理的です。
ソルベー法はいまも使われていますか?
使われています。2025年の世界のソーダ灰約7,100万トンのうち7割強が合成で、欧州はほぼ全量がソルベー法、日本も塩安ソーダ法でつくっています。ただし米国はトロナから天然ソーダ灰をつくっていて、国内の生産はすべて天然品です。
ソーダ灰と重曹は何が違いますか?
ソーダ灰は炭酸ナトリウム(Na2CO3)、重曹は炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)で、ソルベー法では重曹がStep3でできる中間の製品にあたります。食品や医薬に使う精製重曹は、ソーダ灰を溶かした液にCO2を吸わせ、改めて結晶にしてつくります。
まとめ
- ソルベー法は、アンモニア塩水にCO2を吸わせて重曹を沈殿させ、焼いてソーダ灰(Na2CO3)にする工業的製法
- 主な反応はNaCl+H2O+NH3+CO2→NaHCO3+NH4Clと2NaHCO3→Na2CO3+H2O+CO2の2つ
- 全体の式は2NaCl+CaCO3→Na2CO3+CaCl2で、アンモニアとCO2は工場の中で循環する
- ソーダ灰1 tにつき塩化カルシウムがほぼ1 t、排液が約10 m3出ることが最大の課題
- 世界の生産の7割強はいまも合成で、日本は塩安ソーダ法でつくりながら輸入品も使っている
ソルベー法は、中和・溶解度・弱塩基の遊離という化学の基本が、炭酸化塔や蒸留塔、石灰炉といった設備にそのまま表れている製法です。同じ無機の工業的製法である接触法や、ソーダ灰をつくる会社も含めた化学メーカーの勢力図とあわせて読むと、基礎化学品の工場の姿がつかみやすくなります。
出典
出典・参考資料(9件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 反応・工程・原単位・排出・塩化カルシウム・用途:European Commission「Reference Document on Best Available Techniques for the Manufacture of Large Volume Inorganic Chemicals – Solids and Others industry」第2章 Soda Ash・第7章 Calcium chloride(2007年8月)
- 世界・米国の生産と用途、トロナ:U.S. Geological Survey「Mineral Commodity Summaries 2026: Soda Ash」
- 日本の製法(塩安ソーダ法・石灰炉・アンモニア工業のCO2):環境省「温室効果ガス排出・吸収量算定方法 2.B.7 ソーダ灰の製造」
- 日本のソーダ灰の用途・国内出荷と輸入:環境省「温室効果ガス排出・吸収量算定方法 2.A.4.b その他の用途でのソーダ灰の使用」
- セントラル硝子の沿革(2015年5月 ソーダ灰の生産停止):セントラル硝子 有価証券報告書「沿革」(EDINET)
- トクヤマの製造品目・沿革:トクヤマ 有価証券報告書(2026年3月期、EDINET)
- ソルベー社の設立と特許:Solvay「History 1863-1885」
- 塩安ソーダ法:日本大百科全書(ニッポニカ)・化学辞典 第2版「塩安ソーダ法」(コトバンク)
- 侯徳榜と聯合製碱法:張一帆・王朗「炼碱铸魂:侯德榜的科学实践与精神丰碑」科技導報 43(13)(2025年)
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