コリオリ流量計とは、振動させた測定管に生じるねじれから、単位時間に流れる質量を直接測る流量計です。温度によって体積が変わる液体でも、原料を何kg送ったかという基準で管理できます。
測定の鍵は、管の入口側と出口側で検出する振動の時間差です。質量流量に加えて密度や温度も得られるため、配合や充填では計測点をまとめる選択肢になります。
一方で、価格や圧力損失、配管振動への配慮も必要です。原理とコリオリの力を押さえたうえで、メリットとデメリットを、選定時の条件や計算例につなげて整理します。
次の自社動画は、質量を直接測る考え方を紹介しています。測定管は駆動部で振動させており、流れによって加わるねじれを入口・出口の信号差から取り出します。
コリオリ流量計とは?
代表的な構造は、流れを二つに分けて平行な測定管へ通し、出口で再び合流させる形です。U字状の管のほか、直管形やループ形、一本の管で測定するものもあります。
流量計の駆動部は、測定管をばねのように繰り返し振動させます。そこを流体が通ると管の入口側と出口側に逆向きの作用が加わり、振動にねじれが重なります。
図1:励振と二つのピックオフの位置
一本のU字管を代表例として示します。流れを受けるだけでなく、中央を駆動して振動させます。
二管式では二本を組み合わせて振動させます。実際の振動方向やセンサ配置は構造によって異なり、この図は部品位置の説明です。
管の動きは、ピックオフと呼ぶセンサで電気信号に変えます。変換器が二つの信号を比較し、どれだけ時間がずれたかを質量流量へ換算する仕組みです。
ゼロ流量では、入口側と出口側の振動信号に流れによる時間差がありません。流量が増えるとこの差が大きくなるため、管の振幅そのものを流量として読むわけではありません。
図2:流量として読むのは信号のずれ
同じ形の波でも、入口と出口で山に達する時刻がずれると流れを検出できます。
波形は仕組みを示す模式図で、実機の周波数や時間差の数値を表していません。差の正負と正流方向の対応は機器の定義に従います。
この原理は、流れの速さを一点で測って管断面全体へ広げる方式とは異なります。上流の曲がりで速度分布が変わっても影響を受けにくく、長い直管部を設けずに使える利点があります。
もう一つの測定値である密度は、測定管の共振周波数から求めます。同じ容積の管に重い流体が入ると振動系の質量が変わるため、ばねと重りの関係を利用して密度を取り出せます。
管の温度も測り、温度による測定系の特性変化を補正します。したがって「質量を直接測る」という利点と、計器内部で温度補正をしていることは両立します。
体積流量が必要なら、測定した質量流量を密度で割って算出します。流速まで知りたい場合は、そこから管の内径を使う配管流速の計算へ進みます。
同じ1000kg/hでも、密度が1000kg/m³なら体積流量は1.00m³/hになります。kg基準の配合とL基準の充填では管理する量が違うため、表示の単位を先に決めると選定が進みます。
一定の流量を一定時間流した総量も、そのまま計算できます。時間当たりの値と総量の区別は、瞬時流量と積算流量の違いを押さえると、パルス出力の仕様にもつながります。
変動する流量では、時間ごとの質量流量を足し合わせて積算します。停止弁を閉めるまでに流れる量も含むため、計器の精度とバッチ全体の停止精度は分けて考えます。
測定管の動きを立体的に見るには、メーカー公式の次の動画も役立ちます。入口・出口で異なる動きが生まれ、その差が質量流量に対応する部分に注目すると理解が進みます。
コリオリの力とは?
コリオリの力は、回転する座標系から見て動く物体に現れる慣性力です。名称は19世紀のフランスの研究者コリオリに由来し、地球上の風の向きを考えるときにも登場します。
北半球の水平運動では、進行方向の右側へ曲がる作用として表れます。北に進むものは東へ、南に進むものは西へ偏るので、地図の東西だけを見ると力が逆向きに見えます。
図3:北半球では進行方向に対して右へ偏る
北向きと南向きは進行方向が逆なので、右側に当たる方位も逆になります。
水平運動の向きを示す模式図で、移動距離や曲がり方の縮尺を表しません。
台風の地上付近では、周囲の空気が低気圧の中心へ向かい、上から見ると反時計回りに流れ込みます。南北それぞれから入る風の偏向を考えると、同じ回転につながることが分かります。
流量計は地球の自転の弱い作用を測定に使う装置ではなく、管を振動させて必要な運動をつくります。管の入口と出口を通る流体に逆向きの作用が生まれる点が、ねじれの元になります。
同じ振動条件なら、流体の質量と管内を進む速度が作用の大きさに関わります。そのため、体積を測って別の密度を掛ける手順を経ずに、質量流量を取り出せます。
コリオリ流量計のメリット
最大の利点は、密度が変わる流体を質量基準で管理できることです。温度や組成で体積が変わる原料でも、必要な量をkgで受け渡す工程では換算の負担を減らせます。
例えば二つの原料を質量比で混ぜるなら、それぞれの質量流量を同じ基準で比較できます。体積だけで比を決める場合と比べ、運転中の密度変化を別途追い掛ける作業が少なくなります。
液体にも気体にも対応する機種があり、高粘度液やスラリーを測れることも特徴です。電磁式のように液体の導電性を測定の前提としないので、油や溶剤も候補になります。
ただし、高粘度液では流せるかどうかと、測定できるかどうかを別々に評価します。粘度が高い条件の圧損と必要な供給圧力まで含めて選ぶことで、計器だけが良くても流量が出ない問題を防げます。
精度の例として、Endress+HauserのPromass F 300は液体の質量流量で標準±0.1%、プレミアム校正で±0.05%を示します。いずれも指示値に対する値で、対象流体と流量範囲を仕様書に対応させて読みます。
図4:密度換算と誤差を、同じ単位で比較する
固定量のゼロずれは、流量が小さいほど割合として大きくなります。以下は説明用の仮定です。
| 比べるもの | 条件 | 計算結果 |
|---|---|---|
| 同じ質量の体積 | 1000kg/h、密度800kg/m³ | 1.25m³/h |
| 同じ質量の体積 | 1000kg/h、密度1000kg/m³ | 1.00m³/h |
| 指示値の0.1% | 1000kg/h / 100kg/h | 1kg/h / 0.1kg/h |
| 0.2kg/hの固定ずれ | 1000 / 100 / 10kg/h | 0.02% / 0.2% / 2% |
固定ずれ0.2kg/hは製品仕様ではありません。実際の保証精度は、メーカーが示す流量範囲・零点安定性・誤差式で評価します。
「指示値の0.1%」は、常にフルスケールの0.1%を意味するわけではありません。仮に1000kg/hを示すときなら1kg/hですが、100kg/hを示すときの比例分は0.1kg/hになります。
低流量では、これに零点安定性などの条件が効いてきます。最大流量だけで機種を選ばず、普段使う流量と最小流量を見積もり、必要な精度が出る範囲を比較するのが要点です。
応答が速く、バッチ処理や流量制御に使いやすいことも利点です。一方、出力を滑らかにするダンピングを強めると表示が遅れるため、計測の速さと設定後の応答を分けて評価します。
密度と温度を同時に得られることは、原料の切替や混合状態の監視にも役立ちます。濃度への換算には、対象液の密度と濃度の対応、温度条件を設定し、密度表示と濃度表示を区別します。
ほかの方式と比較するときは、欲しい値を最初にそろえます。導電性液体の体積流量が目的なら、静電容量式を含む電磁流量計と比べることで、質量計測の追加価値が明確になります。
| 比較する観点 | コリオリ式 | 電磁式 |
|---|---|---|
| 主な流量値 | 質量流量を直接測定 | 流速から体積流量を算出 |
| 流体の条件 | 液体・気体向けの機種がある | 必要な導電率を持つ液体 |
| 密度の扱い | 測定し体積流量換算にも使用 | 質量流量を求めるには密度が必要 |
| 選定で重視する点 | 精度範囲・圧損・振動・混相 | 導電率・満管・電極や接地 |
コリオリ流量計のデメリット

主な負担は、導入費用、圧力損失、外部振動への対策です。高い測定性能だけで決めず、配管系統の中で安定して使えるかまで含めて判断します。
本体は精密な振動機構と変換器を備え、一般に初期費用が高くなります。一方で密度計や換算処理をまとめられる場合もあるため、計器単価とシステム全体の費用を分けて比較すると適否が見えます。
曲がった管や細い流路を通る構造では、圧力損失が大きくなります。粘度が上がる低温時や最大流量時の条件をメーカーへ渡し、計器前後でどれだけ圧力を消費するかを見積もります。
接続する配管と同じ呼び径でも、内部の測定管の太さや本数は機種によって異なります。配管のスケジュール番号と内径だけから、流量計内部の圧損を決めることはできません。
液体の圧力が低くなると、気泡の発生も測定を妨げます。溶けたガスの分離と液体自体の蒸発を分け、入口圧力だけでなく計器を通った後の圧力と液温を組み合わせて調べます。
図5:液体計測では充満を保つ配置を考える
高所の気泡だまりや、計器より手前での大きな減圧を避け、測定管を液体で満たします。
液体用の考え方です。ガスでは逆に凝縮液のたまりを避けます。実機の姿勢・支持・背圧は取扱説明書と系統設計に従います。
気泡が多いと振動系が不安定になり、流量や密度の値が乱れます。液体を測るときは満管を保ち、空気を巻き込むタンク出口や配管の高所など、発生源から調べると原因を絞れます。
気体を単独で測れる機種でも、液体に気泡が混ざる条件は別の評価になります。ポンプからの混入か減圧で生じた蒸気かの区別は、キャビテーションとエア噛みの違いも参考になります。
外部振動が測定管の微小な信号に重なると、誤差が生じます。近くのポンプを動かしたときだけ表示が変わるなら、実際の流量変動に加えて、振動が配管を伝わる経路も調査します。
支持位置と固定方法は、機種に合わせて決めます。配管を無理に引き寄せて接続したり、本体の任意の場所を固定したりすると応力を加えるため、指定された取付方法を使います。
低流量で重要になるのが、ゼロ点の状態です。仮に0.2kg/hのずれが残ると、10kg/hの計測では2%に相当し、カタログの指示値精度だけでは見えない誤差になります。
ゼロ点を確かめる際は、測定管に対象流体が充満し、流れが完全に止まっている状態をつくります。温度や圧力が落ち着くことも前提で、わずかな弁漏れや対流を流量ゼロと誤認しないようにします。
閉じ込めた液体がさらに加熱されると、熱膨張によって圧力が上昇する危険があります。弁の開閉や隔離は設備の承認手順で進め、ゼロ調整の条件は対象機種の取扱説明書に合わせます。
ゼロ調整は、流量を流して器差を確かめる校正とは役割が異なります。付着や摩耗が疑われる場合は、ゼロを合わせるだけで正常とせず、密度や診断値、基準量との比較も含めて評価します。
配管圧力を記録するときは、ゲージ圧と絶対圧を区別して仕様を渡します。液体の蒸発条件と対応させるための圧力の読み方は、連成計と圧力目盛の違いで整理しています。
現場表示が正しくても、制御盤の表示だけが違う場合は、出力設定を照合します。質量流量か体積流量か、単位とレンジ、正流の向きを送信側と受信側でそろえると、機械的な不具合と切り分けられます。
アナログ値の換算は、4〜20mAの仕組みと同じです。積算をパルスで渡す場合は重みと最高周波数、盤側の入力方式を決め、AI・PIなどの信号区分に合わせて接続します。
複数の測定値や診断情報を取り出すなら、通信機能も比較します。対応機器ではHART通信で情報を扱えますが、盤へ渡す値の割当てと通信経路まで計画することが必要です。
見積依頼には通常・最小・最大の流量を分け、密度と粘度の変化、温度・圧力の範囲を添えます。接液材、洗浄方法、防爆の要否、許容圧損、出力の種類もそろえると、用途に合う候補を比較できます。
コリオリ式は化学、食品、医薬などの工程で使われており、精密な原料計量に価値があります。単なる大流量の監視と、高価な原料を質量で受け渡す用途とでは、費用を評価する基準が変わります。
コリオリ流量計のよくある質問
コリオリ流量計は密度が変わっても使えますか?
質量流量は密度換算を経ずに測るため、密度が変わる工程にも適しています。体積流量として使う場合は密度を用いた演算になるので、どの運転状態の体積かを単位とともにそろえます。
気泡が入ると測定に影響するのはなぜですか?
液体と気体が混ざると、測定管内の振動系が均一な流体のときと変わるためです。まず充液と混入源を調べ、混相対応機能を使う場合も、対象の気泡条件をメーカーへ示して適用を判断します。
蒸気流量計の温圧補正と同じ仕組みですか?
体積流量に温度・圧力から求めた密度を掛ける方式とは、質量を得る手順が違います。渦式や差圧式の蒸気計測の換算は、蒸気流量計の補正と区別して読むと整理できます。
容積式流量計と、どちらを選べばよいですか?
kgで配合・受入量を管理したいならコリオリ式が候補になり、体積を直接数える用途なら容積式も比較対象です。容積式流量計の仕組みと、対象液の粘度・異物・許容圧損を合わせて比べます。
逆流や停止中の微小表示はどう扱いますか?
正流の設定と、逆流を含む積算の方式を機器・盤側でそろえます。停止時の微小表示は、実際の漏れ流れや振動、ゼロ点を調べてから評価し、表示をゼロにする設定だけで原因を隠さないようにします。
まとめ
- コリオリ流量計は、励振する測定管の入口・出口の信号差から質量流量を測る
- 密度換算を経ずにkg基準の管理ができ、密度・温度も活用できる
- 指示値精度に加え、最小流量と零点安定性を含めて選ぶ
- 価格・圧損・外部振動・気泡が主な検討項目になる
- 充液とゼロ点、出力単位・レンジまでそろえると計測系として使える
コリオリ式の強みは、精密なセンサで質量の流れを連続的に取り出す点にあります。必要な量の基準と運転範囲を決め、計測性能と配管条件を一緒に評価すると、採用する価値を判断できます。
出典
出典・参考資料(10件)を開く出典・参考資料を閉じる
- Endress+Hauser:コリオリ流量計の測定原理(励振・位相差・密度・充満条件)
- Endress+Hauser:Proline Promass F 300、Modbus RS485取扱説明書(174〜179頁、指示値精度・零点安定性・応答時間)
- HORIBA:コリオリ式流量計の原理・特徴・用途
- キーエンス:コリオリ式流量計、トラブルと対策
- 横河電機:ROTAMASS Total Insightクイックマニュアル(2025年1月版、48頁、ゼロ点調整条件)
- 東京計装:MASSMAX 6400取扱説明書(4頁、取付け・充満条件)
- KROHNE:コリオリ流量計(ゼロ点調整・校正・付着と摩耗)
- 大阪工業大学 真貝寿明:日常は物理で満ちている(2015年度公開講座、コリオリの力)
- 気象庁:台風に伴う風の特性
- A. O. Smith:Technical Bulletin 45: Thermal Expansion(密閉された水の加熱と圧力上昇)
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