リアクトル始動法とは?回路・タップと始動電流・トルクの比較と計算

遠心ポンプを駆動する三相誘導電動機

リアクトル始動法とは、三相誘導電動機の電源側にコイルを直列接続し、端子電圧を下げて始動電流と始動トルクを抑える方法です。加速した後はコイルをバイパスして、全電圧で運転します。

特徴は、タップで始動の強さを選べることと、電源につないだまま通常運転へ移れることです。一方、電流を小さくするほどトルクは大きく減るため、負荷を加速できる範囲で電圧を決めます。

回路の動きから、65%タップの電流とトルク、スターデルタやコンドルファとの違いを整理します。ポンプや送風機を選ぶときに必要な、電源容量・負荷特性・始動時間の読み方も計算例で示します。

動画でも基本の動きを紹介しています。1分25秒付近のトルク比較には条件の補足が必要です。同じ電源電流ならリアクトルのトルクはスター始動より小さく、65%タップならトルクも電源電流もスター始動より大きくなります。

1分35秒付近の費用は比較する方式や工事範囲によって変わります。1分49秒付近の11kW・45kWも、一律に方式を決める境界ではありません。切替時の衝撃も、給電が途切れなければ必ずゼロになるという意味ではありません。

目次

リアクトル始動法とは

リアクトル始動法は、比較的大きな三相かご形誘導電動機に使われる減電圧始動の一つです。始動中だけ電動機の手前にリアクトルを入れ、電動機に加わる電圧を小さくします。

定格電圧を最初から加える直入れ始動では、停止中の電動機に大きな電流が流れます。その電流が変圧器や配線の電圧降下を起こすと、同じ母線につながる照明や制御機器にも影響が及びます。

始動電流は、通常運転で必要な電流と区別して考える量です。日本電気技術者協会の説明では、直入れ時に定格電流の5〜8倍になる例が示されており、実際の値は電動機の試験成績書で読み取ります。

始動の瞬間は、かご形の回転子が止まり、回転磁界との速度差が最大になっています。この状態では大きな電流が流れますが、回転が上がるにつれて速度差が小さくなり、電流も通常運転の値へ近づきます。

三相の電源と電動機の間にコイルを入れる

リアクトルは、コイルのインダクタンスを利用して交流電流の流れ方を変える機器です。始動用では三相の各相にコイルを直列に入れ、コイルに生じる電圧降下によって電動機側の電圧を下げます。

抵抗で電流を抑える方式と異なり、主に交流のリアクタンスを利用します。コイル自体にも巻線抵抗や鉄損による発熱があるため、損失がない部品と考えるのではなく、定格に合った時間だけ使用します。

交流の「流れにくさ」には抵抗とリアクタンスの両方が含まれます。用語の関係はインダクタンスとインピーダンスの違いにまとめており、始動用コイルもその性質を利用しています。

図1:三相リアクトルとバイパス接点の二つの状態

始動時は三つのコイルを通り、加速後は並列の接点でコイルを短絡します。

始動:バイパス開運転:バイパス閉 電源 R/S/T電動機へ電源 R/S/T電動機へコイルの電圧降下で減電圧接点経由で全電圧を印加

主接触器・遮断器・過負荷保護・制御回路は省略した原理図です。実機の接続図や作業用配線図ではありません。

図のバイパス接点は、リアクトルの両端を結ぶ経路です。始動時に接点を開けば電流はコイルを通り、閉じれば低いインピーダンスの経路ができて、コイルを介さず電動機へ電力を供給できます。

バイパスで短絡するのは、同じ相に入っているコイルの両端です。電源の相どうしを短絡する操作とは異なり、三相それぞれの経路を対応させて切り替えます。実機では主回路と保護回路を含む構成になります。

三相では各相の電圧が時間差をもって変化し、電動機内に回転磁界をつくります。始動器の回路を読む前提は三相交流の仕組みで整理しておくと、三本の電源線の意味がつかめます。

始動から通常運転までの動き

一般的なバイパス式では、主回路を投入してリアクトル経由で始動し、加速後にバイパス用接触器を閉じます。電動機への給電経路を保ちながら全電圧へ移すため、切替時の開路に伴う衝撃を抑えられます。

回転が上がって電流が減ると、リアクトルで生じる電圧降下も小さくなります。したがって始動中の電動機電圧は一定の低い値に固定されるのではなく、加速に従って上がっていくのが特徴です。

電圧が回復すると、電動機が出せるトルクも回復します。始動直後には電流と力を抑え、回転が上がる途中で力を増す性質が、滑らかに立ち上げたい負荷に適しています。

切替は単に「何秒たったか」だけで決めるものではありません。実際の加速状態と始動電流の減衰を踏まえて設定し、電動機と負荷の組合せに応じた始動時間の検討に反映します。

早すぎる切替では、十分に加速する前に全電圧がかかり、大きな電流やトルクの変化が生じます。遅すぎる切替では短時間使用のリアクトルに負担がかかるため、保護と始動シーケンスを一緒に設計します。

タップの65%は何を表すか

始動用リアクトルには、50%・65%・80%などのタップが設けられるものがあります。始動条件に応じた巻線の接続点を選び、電動機へ加える始動電圧の割合を変えるためのものです。

65%タップなら、全電圧始動に対する電動機の始動電圧を約65%とする考え方です。これは運転中の回転数が65%になる意味でも、電流を65%削減する意味でもありません。

タップの値は、電動機の始動特性を前提に読む必要があります。始動時の電流とリアクトルの電圧降下が対応するため、異なる電動機に同じリアクトルを付ければ同じ特性が得られるというものでもありません。

図2:鉄心・巻線とタップの位置関係

タップは巻線の接続点です。始動用の選択と、加速中に自動で電圧が回復する現象を分けて考えます。

電源側鉄心連続した一つの巻線途中のタップ途中のタップ巻線端一相分の構造イメージ巻線は模式記号。端子は一つを選択

巻数と百分率の位置を厳密に表した図ではありません。タップの名称・端子・接続は製品図面に従います。運転中に端子をつなぎ替える手順ではありません。

タップを変更する作業は、始動回路が通電した状態で行いません。停止・電源隔離・無電圧確認などを定めた作業手順に従い、担当資格者がメーカーの端子図と照合して実施します。

始動用リアクトルのほかに、インバータ回路や進相コンデンサ回路で使うリアクトルもあります。同じコイルという名前でも目的と定格が違うため、始動器の部品へ任意に置き換えることはできません。

リアクトル始動法の特徴

鉄心に銅線を巻いた三相リアクトルのイメージ
鉄心と巻線の構造を示す生成イメージ。特定製品の写真・端子接続図ではありません。

利点は、始動電流を抑えながら、負荷に合わせて始動トルクを調整できることです。電源への影響と機械への衝撃を減らせる一方、低電圧にしすぎると負荷を回し始める力が足りなくなります。

選定では、電流だけを最小にするのではなく、必要な加速トルクを確保することが中心になります。同じ電流低減でも方式ごとのトルクが違うため、直入れを共通の基準にして比べます。

始動電流は電圧に比例し、トルクは二乗で変わる

周波数を同じにして電動機の始動状態を比べると、電流は印加電圧にほぼ比例します。トルクは電圧の二乗にほぼ比例するため、電圧を半分にすると電流は半分、トルクは四分の一になります。

ここでの基準は、同じ電動機を同じ電源で直入れしたときの値です。定格電流や定格トルクに直接掛ける倍率ではないので、試験成績書の「始動」と「定格」の欄を取り違えないことが大切です。

全電圧始動に対する電圧比と始動特性
k = VsV0
Is ≒ kI0  Ts ≒ k2T0
k:電圧比[無次元]、65%なら0.65。V0:全電圧[V]、Vs:始動電圧[V]。I0・T0:直入れ始動の電流[A]・トルク[N·m]。Is・Ts:減電圧始動の電流・トルク。同じ周波数・始動状態での近似です。

仮に400Vでの直入れ始動電流が660A、始動トルクが200N·mの電動機を考えます。65%タップを選ぶと、電動機の始動電圧は260V、始動電流は429A、始動トルクは84.5N·mになります。

65%タップの計算例
Vs = 0.65 × 400 = 260 V
Is ≒ 0.65 × 660 = 429 A
Ts ≒ 0.652 × 200 = 84.5 N·m
400V・660A・200N·mは説明用の仮定です。計算で得るトルクは直入れ始動の42.25%で、一般的な表では約42%または42.2%と表示されます。

電流が65%になるので、削減分は35%です。トルクは約42%まで下がり、削減分は約58%になります。電流の下がり方より力の下がり方が大きいことが、リアクトル始動の重要な性質です。

直入れ始動電流が定格の6倍という電動機なら、65%で始動しても定格の3.9倍です。減電圧始動を付けても、始動電流が通常運転の電流より十分に大きいことは変わりません。

図3:電圧を下げたときの電流とトルク

青は始動電流、灰は始動トルク。どちらも直入れ始動を100%とした比です。

50% 電流
330A
50% 力
50N·m
65% 電流
429A
65% 力
84.5N·m
80% 電流
528A
80% 力
128N·m

説明用の直入れ660A・200N·mに対する計算です。異なる単位の絶対値を同じ軸で比べず、それぞれの直入れ比を棒の長さにしています。

80%を選べば、65%よりも大きい力で立ち上げられます。ただし電源に流れる電流も増えるので、始動時の電圧降下が許容範囲に収まるか、上位の変圧器やケーブルを含めて評価します。

電源自体の電圧低下も、始動トルクに影響します。たとえば想定した端子電圧より10%低くなれば、同じ条件でのトルクは約81%になるため、電源電圧を理想値に固定した計算だけでは加速余裕を判断できません。

スターデルタ・コンドルファとの違い

スターデルタ始動は、巻線の結線をスターからデルタへ切り替える方式です。同じ電動機のデルタ直入れと比べると、スター始動時の電源電流とトルクは、どちらも約三分の一になります。

リアクトル65%ではトルクは約42%なので、スターデルタの約33%より大きくなります。一方、電源電流も65%と大きいため、「トルクが大きいから電源にも有利」と一緒に判断することはできません。

逆にリアクトルで電源電流を三分の一まで抑えると、トルクは約九分の一になります。スターデルタと同じ電流で比べる場合と、同じ電圧で比べる場合では結論が変わるので、比較の分母を先にそろえます。

結線や切替時間の詳細は、スターデルタ始動法の電流とトルクで扱っています。リアクトル方式はモータ巻線の結線変更ではなく、電源と電動機の間のインピーダンスを変える点が違います。

図4:同じ電動機を直入れしたときを100%とする比較

コンドルファでは変圧作用があるため、電源側と電動機側の電流を区別します。

比較する量直入れスター始動リアクトル65%コンドルファ65%
電源側始動電流100%約33.3%約65%約42.25%
始動トルク100%約33.3%約42.25%約42.25%
電動機への操作全電圧投入巻線の結線変更直列コイルで減電圧単巻変圧器で減電圧
運転への移行切替なしデルタ結線へコイルをバイパス中間段階を経て全電圧へ

スター始動はデルタ運転対応の同一電動機との比較。各倍率は始動状態の代表的な近似で、切替時の瞬時波形を示す数値ではありません。

コンドルファ始動は、単巻変圧器で電圧を下げる方式です。電動機側の電流が電圧比に比例して下がることに加え、変圧作用によって電源側の電流がさらに小さくなるため、同じトルクで電源負担を減らせます。

65%なら電源電流は直入れの約42.25%、トルクも約42.25%になります。電動機側の電流は約65%なので、電源側の値を電動機側ケーブルや接触器へそのまま当てはめず、回路の区間ごとに選定します。

先ほどの660Aの例では、コンドルファ65%の電源電流は約279Aで、モータ側は429Aです。リアクトル65%とトルクをそろえたまま、電源電流だけを小さくできる仕組みが、両方式の比較の要点です。

その代わり、単巻変圧器や切替回路が必要になります。コンドルファも開路を避けて切り替える方式です。両者の選定では、電源側電流をどこまで抑えるかに加え、回路構成や費用、負荷の加速特性を比べます。

電源を切り離さずに移行できる

一般的なオープン移行のスターデルタでは、スターを開いてからデルタを閉じる間に電源から離れます。再投入時の位相や電動機の残留電圧との関係で、切替電流や機械的なショックが問題になる場合があります。

リアクトルのバイパス式では、コイルの経路を保ったままバイパスを閉じられます。これにより電源からいったん切り離す移行を避け、切替による衝撃を抑えやすくなります。

電源とつながっていることは、切替電流の変化が一切ないという意味ではありません。加速が不十分な状態で全電圧へ移せば電流は増えるため、回路方式の利点と実際の設定条件を分けて評価します。

コンドルファも、単巻変圧器の巻線を中間段階でリアクトルとして使い、開路を避けて全電圧へ移行します。同じ減電圧でも、補償器始動の開路移行とコンドルファの閉路移行を名称だけで混同しないことが重要です。

ポンプや送風機では負荷トルク曲線を見る

電動機が加速するには、その回転数で出せるトルクが負荷の要求するトルクを上回る必要があります。差が加速に使える力なので、始動直後の一点だけでなく、通常速度へ至る途中の曲線も比べます。

遠心ポンプや送風機は、回転が上がるにつれて必要なトルクが増える負荷の代表例です。始動時の負荷が軽い条件では減電圧始動を組み合わせやすく、リアクトルの電圧回復も加速を助けます。

同じポンプでも、形式や流体の粘度、配管の運転状態によって始動条件は変わります。容積形のように低速から圧力に抗して大きな力が必要な負荷を、遠心式と同じものとして扱うと始動の見積もりを誤ります。

図5:加速できるかは二つのトルクの差で決まる

青の電動機トルクより負荷が低い区間では加速できます。高い負荷と交わると、その先へ加速できなくなります。

トルク回転速度 →停止電動機の減電圧始動曲線軽い負荷重い負荷加速余裕交点では余裕ゼロ

形を説明する概念図で、特定機種の性能曲線ではありません。電動機の全電圧/減電圧特性、負荷曲線、慣性から始動時間を評価します。

負荷トルクをわずかに上回るだけでは、回り始めても加速に時間がかかります。回転体が重く慣性が大きい場合も時間が延びるため、始動に成功したかだけでなく、許容時間内に立ち上がるかまで見る必要があります。

流量や圧力と回転速度の関係は、ポンプの流量と圧力の関係を土台にすると整理できます。通常運転での省エネ性能と、停止から立ち上げる瞬間の能力は別々に評価します。

簡単な例として、慣性モーメント12kg·m²の回転体を、平均加速トルク40N·mで150rad/sまで上げる場合を考えます。トルク差が一定という近似なら、必要時間は45秒になります。

一定の平均加速トルクを仮定した時間の概算
t ≒ JΔωTacc
t ≒ 12 × 15040 = 45 s
J:電動機軸へ換算した合計慣性モーメント[kg·m²]、Δω:角速度の増分[rad/s]、Tacc:電動機トルクと負荷トルクの平均差[N·m]、t:加速時間[s]。実機では速度ごとのトルク差を使って評価します。

同じ条件で平均差が20N·mになると、時間は90秒に延びます。電流をさらに減らしても加速時間が大きく延びれば、電動機と始動器の熱的な負担は増えるため、電流の大きさだけでは安全性を評価できません。

費用・設置スペースと短時間定格

リアクトル始動は、変圧器を使う方式に対して回路構成を簡単にしやすい選択肢です。ただし安価さは比較対象によって変わり、一般的なスターデルタより必ず安いという意味ではありません。

導入費には、リアクトルだけでなく盤・接触器・配線・据付工事が含まれます。既設盤を改造する場合は盤の寸法や機器間隔、配線ルートが制約になり、機器単体の価格差より工事費が大きくなることもあります。

リアクトルは鉄心と巻線を持つため、大きさと重量を考慮して据え付けます。運搬できるかだけでなく、盤内の放熱、端子接続、点検や部品交換のための空間も必要です。

図6:盤寸法と始動時間を一緒に照合する

本体が入る寸法だけでなく、換気・端子作業・交換経路と短時間定格が選定条件になります。

コイル本体と固定台端子の作業空間仕様を照合電圧・周波数始動電流とタップ始動時間・回数寸法・質量・換気前方への交換経路

配置の概念図です。必要な離隔距離・換気量・固定方法は製品と盤の設計条件で決まり、この図の比率を寸法基準には使いません。

始動用のリアクトルには、短時間定格が設定されます。東洋電機の製品例には1分定格と3分定格があり、同じ電動機容量でも想定する始動時間によって適用する製品が変わります。

1分定格は、どの負荷でも1分間以内なら何回でも始動できるという表示ではありません。適用電流や周囲条件、始動の繰返し条件と組み合わせて、巻線の温度が許容範囲に収まるように選定します。

東洋電機の選定資料では、時間定格は65%タップを基準とし、80%タップはその0.7倍、50%タップは1.7倍の使用時間としています。タップを変更する際は、電流やトルクだけでなく使用可能な時間も照合します。

同資料の時間定格は連続2回の始動を前提とし、3回以上では「始動回数×始動時間」が時間定格以内となるように選びます。再始動までの休止時間も容量と使用時間で変わるため、この製品の条件を他機種へ一律に適用しません。

停電から複数回の自動再始動をする設備や、短い周期で起動停止を繰り返す設備では、始動一回分の時間だけで判断できません。電動機の熱容量とリアクトルの冷却時間を含めて、実際の運転パターンをメーカーへ伝えます。

運転中は一般的なバイパス式でリアクトルを外すため、始動電流の低減がそのまま定常運転の電力量削減になるわけではありません。運転速度を変えて省エネを図るなら、インバータによるファン・ポンプの省エネとは目的を分けて検討します。

何kWから使うかを容量だけで決めない

11kWや45kWといった容量は、始動方式を考える際の目安として見かける数字です。しかし「11kWを超えればスターデルタ」「45kW以上はリアクトル」という共通の境界ではなく、容量だけから方式を確定できません。

同じ45kWでも、200Vと400Vでは電流が違い、50Hzと60Hzでも仕様の照合が必要です。さらに電動機の始動特性や負荷の慣性が異なるため、同じkW表示の機器を選ぶだけでは始動条件はそろいません。

東洋電機の一覧では、同じ回路電圧でも1分定格と3分定格で参考電動機容量の対応が変わります。容量欄だけを見ず、全電圧始動電流と時間定格の欄まで読むことが、適用間違いを防ぐ方法です。

電源が強く始動の影響を許容できる設備では、比較的大きい電動機でも直入れを選べる場合があります。反対に、発電機のような限られた電源では、小さめの電動機でも始動時の電圧低下が制約になります。

選定と始動不良の切り分け

選定資料は「電源」「電動機」「負荷」「運転条件」の四つに分けると漏れを減らせます。電源の条件と電動機の試験値をそろえ、負荷を加速する時間まで見積もったうえで、タップと始動器の定格を選びます。

  • 電源:電圧・周波数・変圧器や発電機の容量、許容電圧降下
  • 電動機:定格電流、直入れ始動電流、トルク速度特性、許容始動時間
  • 負荷:形式、始動時の状態、トルク速度特性、電動機軸へ換算した慣性
  • 運転:始動回数、再始動間隔、自動復帰の条件、周囲温度と盤の設置条件

最初に出せる力と、定格回転数に達するまで出し続けられる力を区別します。カタログに始動電流しか載っていなければ、電動機メーカーからトルク曲線や許容始動時間を入手し、負荷メーカーの曲線と重ねて検討します。

回転速度の到達点を読む際には、極数と周波数も必要です。基本となる同期速度と実際のすべりの関係はモーターの極数と回転数で整理しており、始動完了の判断にもつながります。

電流が下がらず加速しない場合

始動後も高い電流が続く場合は、負荷を加速できていない可能性があります。タップを低くした直後に症状が出たならトルク不足を疑い、端子電圧・三相電流・回転の立上がりを記録して設計条件と比べます。

電圧不足のほか、軸受や負荷機械の拘束、回転方向の不適合なども切り分ける項目です。ポンプの回転方向は三相モーターの相順と逆回転に関係しますが、通電中の配線変更によって試すことは避けます。

三相の電流に大きな偏りがある場合は、単純なタップ不足として処理しません。各相の接続や接触器、電源状態などの異常が考えられるため、安全に停止・隔離したうえで主回路の点検へ移ります。

始動できないまま繰り返し投入すると、コイルと電動機に熱が蓄積します。保護装置の復帰だけを続けず、始動時間と電流の記録から原因を調べ、保護が作動した理由を解消してから運転を再開します。

切替の瞬間に電流が増える場合

始動中は加速するのに、バイパス投入で大きな衝撃が出る場合は、切替時点の速度や電流を調べます。始動直後と切替直前を分けて記録すると、初期タップの問題か、移行条件の問題かを整理できます。

バイパス接触器が動作しない場合は、減電圧状態が長く続きます。指令信号だけで切替成功とみなさず、接点状態や電流の変化を含めて、想定した回路へ移っているかを照合します。

過負荷保護と短絡保護は、始動器を付けた後も必要です。始動時間との協調を保ちながら電動機を守る考え方はサーマルリレーの動作とリセット、電流から機械負荷を見る考え方はショックリレーの電流監視に関連します。

保護整定を大きくすれば始動できるという判断は避けます。電動機の許容始動時間、始動器の定格、保護曲線を重ねて原因を探し、電気側と機械側の担当者で条件を合わせることが必要です。

リアクトル始動法のよくある質問

65%タップなら電流は定格の65%になりますか?

基準は定格電流ではなく、同じ電動機を直入れ始動したときの電流です。直入れが定格の6倍なら、65%タップでも始動電流は約3.9倍になります。電動機の試験成績書で直入れ始動値を先に読み取ります。

リアクトル始動とスターデルタはどちらが低電流ですか?

リアクトル65%とスター始動を同じ電動機のデルタ直入れ基準で比べると、スター始動のほうが電源電流は小さくなります。始動トルクも小さくなるので、電流だけで優劣を決めず、負荷が加速するかで判断します。

一次抵抗始動とは何が違いますか?

一次抵抗始動は、直列リアクトルの代わりに抵抗器を入れて電圧を下げる方法です。抵抗器で消費する熱を考慮する必要があり、コイルのリアクタンスを利用する方式とは機器構造や熱設計が異なります。

ソフトスタータやインバータと同じですか?

ソフトスタータは半導体で交流電圧を制御して立ち上げ、インバータは周波数も変えて運転速度を制御します。リアクトル始動はコイルと接触器を使う減電圧始動であり、通常運転中の連続的な速度制御は担いません。

運転中もリアクトルに電流が流れますか?

一般的なバイパス式では、加速後にコイルの両端を短絡し、主な電流をバイパス経路へ移します。消磁式など別の構成を採る製品もあるため、製品名だけで回路を決めつけず、主回路図で構成を読み分けます。

大きなモーターならリアクトル始動を選べばよいですか?

容量が大きいことは検討のきっかけですが、方式を決める条件は電源容量と負荷の始動特性です。必要トルクに対して電源側電流をさらに抑えたい場合は、コンドルファなど別方式も含めて比較します。

まとめ

この記事のまとめ
  • リアクトル始動法は、電源と電動機の間にコイルを入れて減電圧で立ち上げる方式
  • 始動電流は電圧比にほぼ比例し、始動トルクはその二乗にほぼ比例する
  • バイパス式は電源への接続を保って全電圧へ移行し、切替の衝撃を抑えやすい
  • 比較的大容量の電動機でも、kWだけでなく電源・負荷曲線・慣性から選ぶ
  • 短時間定格と始動回数、電動機の許容始動時間、保護協調まで合わせて評価する

始動電流を抑える方法には、コンドルファ始動や一次抵抗始動などもあります。必要な力を確保したうえで電源への影響を減らすという順番で比較すると、リアクトル方式が向く条件を判断しやすくなります。

設備の更新では、始動時の記録を電気仕様と負荷仕様の両方へ残しておくと、次の機器選定に使えます。回路単体ではなくポンプや送風機を含む装置として、始動から通常運転までの条件をそろえることが大切です。

出典

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MONOSCOPEの運営者

プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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