ランキンサイクルとは、水を蒸気に変えてタービンを回し、燃料の熱エネルギーを電気に変える熱サイクルです。クラウジウスサイクル(クラウジウス・ランキンサイクル)とも呼ばれます。
水はボイラー → 蒸気タービン → 復水器 → 給水ポンプの順に回り、蒸発と凝縮をくり返します。火力・原子力・バイオマスなど、蒸気で発電する発電所の多くがこの仕組みです。
この記事では、サイクルの全体像、熱効率の式と蒸気表を使った計算例、再生・再熱サイクル、P-v線図とT-s線図、逆ランキンサイクルの順に整理し、内容は動画でも解説しています。
ランキンサイクルとは?
ランキンサイクルは、蒸気で電気をつくる熱サイクルで、火力・原子力・バイオマス発電などで使われています。「ランキン」は、このサイクルを確立したウィリアム・ランキン(1820〜1872)に由来します。スコットランド(イギリス)の技術者・物理学者で、蒸気機関の理論を初めて体系的にまとめた一人です。
サイクルは主に、次の機器でできています。
- ボイラー(給水を加熱して蒸気にする)
- 過熱器(蒸気をさらに加熱して過熱蒸気にする)
- 蒸気タービン(蒸気の膨張で羽根を回し、発電機を回す)
- 復水器(コンデンサ。タービンを出た蒸気を冷やして水に戻す)
- 給水ポンプ(水を加圧してボイラーへ送る)
オットーサイクルやブレイトンサイクルは、作動流体が気体のまま回ります。ランキンサイクルは、作動流体の水が液体と蒸気を行き来する点が大きな違いです。ガソリンエンジンのオットーサイクルと比べると、その差がよく分かります。
全体の動きは、アニメーションの動画にまとめています。
ランキンサイクルの全体の流れは、次のようになります。

- ボイラーで発生した高圧の飽和蒸気が、過熱器で過熱蒸気になる
- 過熱蒸気が蒸気タービンで可逆断熱膨張し、羽根を回す
- タービンを出た蒸気が、復水器(コンデンサ)で冷やされて飽和水になる
- 飽和水が給水ポンプで加圧され、ボイラーへ送られる
過熱蒸気とは、飽和蒸気を圧力一定のまま加熱し、飽和温度より高い温度にした蒸気で、水滴を含まないので、タービンの羽根を傷めにくくなります。
水は状態1〜4を順に回ります。番号は、このあとの式と線図でも同じです。
※理想のサイクルでは、タービンとポンプの変化を可逆断熱(エントロピー一定)、ボイラーと復水器の変化を等圧とみなします。
サイクルに加えるエネルギーは、ボイラーで蒸気をつくるための燃料と、給水を加圧するポンプの電力で、取り出せるのは、タービンにつながった発電機が回ってできる電気です。つまりランキンサイクルは、燃料の熱エネルギーを電気エネルギーに変えるサイクルです。
ランキンサイクルの効率

ここでは、ランキンサイクルの理論熱効率を求めます。燃料の熱を電気に変えるサイクルなので、入れた熱のうち、どれだけを仕事として取り出せるかが効率です。燃料による供給熱量をQb、タービンで取り出せる仕事をWt、ポンプで使う仕事をWpとすると、効率ηは次の式で表せます。
この式を、すべてエンタルピーで表す形に直し、上の図の1→4の流れを、蒸気の流量をm[kg/s]としてエンタルピーhで表します。
これらの式を、効率の式に代入します。
タービンで取り出す仕事に比べると、ポンプで加圧する仕事はごく小さくなるので、h3=h4と仮定すると、次のように表せます。
ランキンサイクルの効率は、各機器の入口と出口のエンタルピーだけで表せます。流量mは分子と分母で消えるので、蒸気1 kgあたりで考えても同じ結果です。
熱と仕事を、状態1〜4のエンタルピーの差に置き換えていきます。
数字を入れて、実際に効率を求めてみて、エンタルピーの値は、蒸気表(水と蒸気の性質の表)から読み取ります。
主蒸気が10 MPa・500℃、復水器の圧力が5 kPaの理想的なランキンサイクルの理論熱効率を求めよ。タービンとポンプは可逆断熱、蒸気1 kgあたりで考える。
求めた値を、効率の式に入れます。
ポンプ仕事は約10 kJ/kgで、タービン仕事1,363.5 kJ/kgの1%未満です。近似式との差も0.2ポイントほどで、h3=h4と置いてよい理由が数字で確かめられます。
タービン出口の乾き度は約0.77で、蒸気の2割以上が水滴になっている状態であり、この湿りが後で出てくる再熱サイクルの話につながります。ここで求めたのは損失のない理想サイクルの値で、実際の発電所の効率とは条件も指標も違うので、その違いは「よくある質問」で整理します。
効率の式から、ランキンサイクルの効率を上げる方法として、次の3つが考えられます。
- 主蒸気の温度を上げる:タービン入口のエンタルピーh1が大きくなり、受け取る熱の平均温度も上がる
- 主蒸気の圧力を上げる:同じ温度でも、高い温度で受け取る熱の割合が増える
- 復水器の圧力を下げる:真空度を上げて、タービン出口のエンタルピーh2を小さくする
式だけを見ると、復水器出口のh3は小さいほど分母が大きくなり、効率を下げる向きに働きます。それでも復水器の圧力を下げると効果があるのは、h3より h2のほうが大きく下がるからです。計算例と同じ条件で、ひとつずつ変えたときの結果は次のとおりです。
効率はどれも上がりますが、圧力を上げるとタービン出口の湿りが増えます。
理論熱効率(ポンプ仕事込み)
タービン出口の乾き度(1に近いほど水滴が少ない)
※基準は10 MPa・500℃、復水器5 kPa。各行は1つの条件だけを変えた理想サイクルの計算値です。再熱は2 MPaまで膨張させてから500℃に再加熱した場合。
少しでも効率を上げるため、発電所では高温・高圧の蒸気でタービンを回します。ただし材料が耐えられる温度に限りがあり、超々臨界圧(USC)の石炭火力でも、蒸気温度は600℃級、再熱で620〜630℃程度が限界とされてきました。
さらに温度を上げるには高温に耐える新しい材料が要り、蒸気温度700℃以上をめざす先進超々臨界圧(A-USC)の技術開発も進められてきました。
CO2を減らす技術としての位置づけは、脱炭素・カーボンニュートラルの基本もあわせて読むとつかみやすくなります。理論上の上限であるカルノーサイクルとの違いは、記事の後半で取り上げます。
ランキンサイクルの種類
ランキンサイクルには、効率を上げるための3つの発展形があります。どれも基本のサイクルに機器や配管を足し、熱の受け取り方・使い方を変えたものです。
再生は「給水を温める」、再熱は「途中の蒸気を温め直す」サイクルです。
※状態番号は基本サイクルと同じく、1がタービン入口、2がタービン出口です。
再生サイクル
再生サイクルは、タービンを通る蒸気をすべて復水器へ送るのではなく、一部を取り出して、ボイラーに入る前の給水を予熱するのに使うサイクルです。タービンで膨張させている蒸気の一部を取り出すことを抽気といい、このとき使うタービンを抽気タービンといいます。出力の考え方は抽気タービンの出力計算方法で解説しています。
駆動力としてはあまり役に立たない低圧の蒸気を、給水の加熱源に使うため、復水器で捨てる熱が減り、サイクル全体の熱効率が上がります。ボイラーは冷たい水から温める必要がなくなり、高い温度帯で熱を受け取る割合が増えます。この「受け取る熱の平均温度が上がる」ことが、効率が上がる理由です。
最近の発電所では、再生サイクルを使って発電するのが一般的で、抽気で給水を温める機器は給水加熱器と呼ばれ、低圧用と高圧用があります。給水を予熱する方法には、ボイラーの排ガスの熱を使うエコノマイザ(節炭器)もあります。抽気は蒸気の熱を、エコノマイザは排ガスの熱を使う点が違うところです。
再熱サイクル
再熱サイクルは、タービン出口の蒸気の乾き度が下がりすぎないようにするサイクルです。膨張の途中の蒸気を取り出し、ボイラーで再加熱して、もう一度タービンへ送ります。
再熱では、ボイラーで加える熱も、タービンで取り出す仕事も増え、増えた熱のうち仕事になる割合が、元のサイクルの効率より高いため、全体の効率も高くなります。
計算例の条件で、2 MPaまで膨張させた蒸気を500℃に温め直すと、蒸気1 kgあたり熱が約537 kJ増え、仕事が約282 kJ増えます。追加分の効率は約52.5%で、元の41.9%を上回るため、全体は43.4%になります。
タービン出口の乾き度も、0.77から0.88に高まり、水滴による羽根の浸食を抑え、タービン自体の寿命を延ばすことにもつながります。羽根の構造や役割はタービンの動翼と静翼で解説しています。
再生再熱サイクル
実際の発電所では、再生サイクルと再熱サイクルの両方を取り入れていることがあり、これを再生再熱サイクルといいます。なお、製造業のプラントでは、蒸気を発電だけでなく加熱にも使うので、タービンから出た蒸気を復水器ではなく、工場の装置へ送ります。
タービンから取り出せる仕事は減りますが、復水器で捨てる熱がなくなるため、熱と電気を合わせた全体の利用率は高くなるのが利点です。このように、タービン出口の蒸気圧力が大気圧以上になるタービンを背圧タービンといいます。工場で熱と電気をまとめて考える視点は、工場の省エネとエネルギー管理の基本でも整理しています。
ランキンサイクルのP-v線図とT-s線図
ランキンサイクルのP-v線図(圧力と比体積)とT-s線図(温度とエントロピー)は、それぞれ次のようになり、点線は飽和線で、山の頂点が臨界点です。

P-v線図では、3→4のポンプの線がほぼ垂直になるのは、水はほとんど縮まないので、圧力が上がっても体積がほとんど変わらないためです。4→1は圧力一定の水平線で、飽和線の内側を進む間に水が蒸発します。4本の線で囲まれた面積が、1サイクルの正味の仕事Wt−Wpにあたります。
どの機器で、どんな変化が起き、線図にどう表れるかを1行ずつ対応させます。
※理想サイクルの場合。実際のタービンでは損失があり、1→2は右にずれます(エントロピーが増える)。

T-s線図では、4→1の加熱が3つに分かれて見えます。4→4’で水が飽和温度まで温まり、4’から水平に蒸発し、飽和線を越えたあと過熱されて1に達します。
理想サイクルは可逆変化なので、T-s線図の面積を熱量として読めます。4→1の線の下の面積がQb、2→3の線の下の面積がQcで、囲まれた面積が正味の仕事です。P-v線図とT-s線図は、形そのものが試験で問われることがあるので、状態1〜4がどの機器の出口かと合わせて、意味をつかんでおきましょう。
タービンでの膨張は、理想的には等エントロピー膨張ですが、実際には摩擦などの損失があるため、エントロピーは増えます。その評価の仕方はタービン効率と熱落差の考え方で解説しています。
逆ランキンサイクルとは
逆ランキンサイクルは、ランキンサイクルの状態変化を逆向きにしたもので、蒸気圧縮冷凍サイクルとも呼ばれ、発電ではなく、冷凍機・エアコン・ヒートポンプで熱を運ぶ側のサイクルです。こちらもアニメーションの動画にまとめています。
冷凍サイクルの流れは、次のようになります。
- 圧縮機:冷媒の蒸気を圧縮し、高温・高圧にする
- 熱交換器(凝縮器):熱を奪われて液体になる
- 膨張弁:減圧されて低温・低圧になり、一部が蒸発した気液混合の状態になる
- 熱交換器(蒸発器):周りから熱を奪って蒸発し、気体に戻る
熱を受け取る側と捨てる側が入れ替わり、タービンの代わりに膨張弁が入ります。
※ランキンサイクルは仕事を取り出すサイクル、冷凍サイクルは仕事(電力)を入れて熱を運ぶサイクルです。
ランキンサイクルは蒸気の膨張で電気を取り出すのに対し、冷凍サイクルは、電気の力で冷媒を圧縮し、状態変化と温度変化を利用して外から熱を奪います。同じ仕組みで熱を高温側へ汲み上げて使うのが、ヒートポンプで、省エネ機器とされる理由はヒートポンプの原理と用途で解説しています。
ランキンサイクルのよくある質問
ランキンサイクルとカルノーサイクルの違いは?
カルノーサイクルは、等温で熱を受け取り、等温で熱を捨てる理論サイクルです。効率は高温側と低温側の温度だけで決まり、同じ温度範囲では最も高い効率になります。
ランキンサイクルは、冷たい給水を温めるところから熱を受け取るので、受け取る熱の平均温度が最高温度より低くなります。そのため、同じ温度範囲のカルノーサイクルより効率が下がります。
計算例の温度範囲(32.9℃〜500℃)なら、カルノーサイクルは1−306.0/773.2≒60%で、ランキンサイクルの約42%との差が、熱の受け取り方の違いによるものです。
蒸気でカルノーサイクルを実現しようとすると、水滴の混じった湿り蒸気を圧縮しなければならず、実機では難しくなります。ランキンサイクルは蒸気を完全に水に戻してポンプで送るので、実際の設備で無理なく回せるのが強みです。
実際の火力発電所の効率はどのくらい?
計算例の約42%は、損失のない理想サイクルの値で、実際の発電所では、ボイラーの損失、タービンの内部損失、発電機の損失、ポンプや送風機など所内で使う電力(所内動力)が加わります。
数字を比べるときは、効率の基準をそろえる必要があり、発電機の出力で見る「発電端」と、所内動力を引いた「送電端」、燃料の発熱量を高位・低位どちらで数えるかで値が変わります。
- 600℃級の超々臨界圧(USC)石炭火力:送電端・高位発熱量基準で42〜43%程度が実質的な限界(NEDO の資料)
- 700℃級の先進超々臨界圧(A-USC):送電端・高位発熱量基準で46%の見通しを目標に開発
- ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせたコンバインドサイクル:中部電力西名古屋火力発電所7-1号(現在は JERA が運営)が発電端・低位発熱量基準で63.08%(2018年にギネス世界記録に認定)
USC・A-USC の値は送電端・高位発熱量基準、西名古屋の値は発電端・低位発熱量基準です。基準が違うので、数字をそのまま比べることはできません。
コンバインドサイクルでは、ガスタービン(ブレイトンサイクル)の高温の排気で蒸気をつくり、ランキンサイクルでもう一度発電します。高温側と低温側で2つのサイクルを使い分けるため、蒸気だけの発電所より効率が高くなります。
バイナリー発電(有機ランキンサイクル)とは?
バイナリー発電は、水の代わりにペンタンなど沸点の低い媒体を蒸発させてタービンを回す方式です。加熱源の系統と媒体の系統、2つのサイクルを使うことから「バイナリー(2つの)」と呼ばれます。
水では蒸気が十分に得られない低温の熱水や排熱でも発電できるのが特長です。有機媒体を使うランキンサイクルは有機ランキンサイクル(ORC)と呼ばれ、地熱・工場の廃熱回収・バイオマスなどで使われています。
まとめ
- ランキンサイクルは、蒸気を使って燃料の熱エネルギーから電気を取り出すサイクル
- ボイラー・タービン・復水器・給水ポンプの4過程で、水が蒸発と凝縮をくり返す
- 理論熱効率は各機器のエンタルピーだけで表せ、ポンプ仕事を無視すると η≒(h1−h2)/(h1−h3)
- 効率は主蒸気の温度・圧力を上げ、復水器の圧力を下げると上がる
- 全体の効率を上げるため、再生サイクル、再熱サイクル、再生再熱サイクルがある
ランキンサイクルは発電所で広く使われ、資格試験でもたびたび出題されるので、効率の式の土台になるエンタルピーとあわせて押さえておきましょう。試験と実務の関係は製造業のエネルギー管理士の仕事で紹介しています。熱サイクル全体の位置づけは、熱機関とはで整理しています。
出典
出典・参考資料(8件)を開く出典・参考資料を閉じる
- サイクルの過程・効率を上げる方法:MIT 16.Unified Thermodynamics「8.5 Rankine Power Cycles」、「8.6 Enhancements of Rankine Cycles」
- カルノーとランキンの比較・蒸気圧縮冷凍サイクル:Purdue University ME200 講義ノート(Week 13)
- 蒸気表の値:NIST Chemistry WebBook「Thermophysical Properties of Fluid Systems」(IAPWS-IF97 による計算値と照合)
- ウィリアム・ランキン:Britannica「William John Macquorn Rankine」、MacTutor(University of St Andrews)「William John Macquorn Rankine」
- 蒸気タービンの蒸気条件:三菱重工「蒸気タービン」
- USC・A-USC の蒸気条件と効率:NEDO「先進超々臨界圧火力発電実用化要素技術開発プロジェクト」事業原簿
- コンバインドサイクルの効率:GE ニュースリリース(2018年3月27日)(英語版で gross=発電端)、東芝エネルギーシステムズ「中部電力西名古屋火力発電所が総合運転を開始」(2018年3月30日、低位発熱量基準)
- バイナリー発電:九州電力「地熱バイナリー発電方式について」(2005年2月)、三菱重工「ORC(有機ランキンサイクル)」
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