蒸気タービンの制御は、ガバナ(調速機)が回転数や出力、蒸気の圧力を見て蒸気加減弁を開け閉めし、タービンに入る蒸気の量を変えることで行います。蒸気タービンそのものは、ボイラーでつくった蒸気を翼に吹き付けて軸を回す原動機です。
制御のやり方は「何を一定にするか」で分かれます。基本は発電電力・回転速度・排気圧力・一次圧力の4つで、工場へ蒸気を送る抽気タービンでは、さらに抽気圧力も一定にします。
この記事では、4つの制御の使い分け、抽気圧力制御、ガバナの構造と調速方式、よくある質問の順に整理します。
蒸気タービンの制御方法
どの制御でも、実際に動かすのはタービン入口の蒸気加減弁(ガバナ弁)で、弁を開けば蒸気が多く流れて出力が上がり、絞れば下がります。
その弁の開度を決めるのがガバナ(調速機)で、回転数や圧力を検出して設定値と比べ、差をなくす向きに油圧で弁を動かします。現場では、弁まで含めて「ガバナ」と呼ぶことも多くあります。
検出した量を設定値と比べ、その差で弁を動かします。結果がまた検出されて、差が小さくなるまで繰り返します。
※検出する量と一定にしたい量が同じとは限りません。系統につないだ発電機では、回転数を測りつつ出力を目標にします。
蒸気タービンの制御方法は、大きく分けると次の4パターンです。ポイントは、1組の加減弁で一定にできる量が1つだけという点です。どれか1つを一定にすると、ほかの量は運転状況まかせの「成り行き」になります。
どの制御も動かすのは蒸気加減弁です。違うのは、何を一定にして何を成り行きにするかです。
※操作するのはいずれも蒸気加減弁。抽気タービンは抽気圧力をタービン内部で制御する形式は弁を2組持つので、2つの量を同時に一定にできます(後述)。
どれを選ぶかは、運転のしかたで決まります。目安は次の3つです。
- 系統(電力会社の送電網)とつないでいるか、切り離した単独運転か
- つながる相手が発電機か、ポンプ・ブロワなどの機械か
- タービンの排気や抽気をプロセス蒸気として工場で使うか
いまのディジタル式ガバナには、回転数・出力・入口圧力・排気圧力の制御を1台に持つ製品もあります。運転の場面に応じて切り換えて使います(Woodward 505 の製品仕様)。
発電電力制御

発電用の蒸気タービンで最も多く使われているのが発電電力制御で、発電機の出力が設定値になるよう、ガバナが蒸気加減弁を開閉して、タービンに送る蒸気量を調整します。
系統とつないでいる間は、回転数は系統の周波数に引っ張られて大きくは変わらないため、回転数ではなく出力を目標にして運転できます。
主に売電を目的とした発電プラントで使われます。出力を一定にする制御なので、加減弁の後(ガバナ二次側)の圧力や排気圧力は、運転状況による成り行きになります。
蒸気タービンでポンプを駆動して流体を送る場合は、流体の出口圧力を制御し、タービンの仕事量を調整するという意味では、同じ制御方法です。
抽気がある場合の出力の求め方は抽気タービンの出力計算方法で、系統の周波数変化に対する出力の分担はドループ制御とアイソクロナス制御の違いで解説しています。
系統と並列の発電機の無効電力は、ガバナではなく励磁装置が決めます。調整のしくみはAQR制御で解説しています。
回転速度制御

発電機を系統から切り離し(解列)、プラントの自立運転をするときは、発電機の回転数がそのまま所内の周波数になるため、蒸気タービンは回転速度が一定になるように制御します。
発電機の回転数は、周波数と極数で決まります。4極の発電機なら、50Hzで1,500min−1(rpm)、60Hzで1,800min−1です。
タービンと発電機の間に減速機があるときは、タービン側の回転数が減速比の分だけ高くなります。設定値はこのタービン側の回転数で決めます。
回転速度制御は、起動してから系統につなぐ(同期併入)までの間にも使います。回転数を周波数に合わせ込んでから併入し、その後は出力の制御に移ります。
回転速度制御では、加減弁の後の圧力は成り行きで、抽気圧力も、別の弁で制御しないタービンでは成り行きになります。発電機の出力は、所内の負荷と同じになります。自立運転の考え方はプラントの自立運転とはで詳しく扱っています。
排気圧力制御

背圧タービンを使い、排気蒸気を工場などで利用する場合は排気圧力制御を使います。背圧タービンは、復水器で真空にせず、使い終えた蒸気をそのまま工場へ送るタービンです。
排気圧力が一定になるため、安定した性状の蒸気を送れますが、その代わり、ボイラー出口圧力と発電機の出力は成り行きになります。
日立評論(1972年)の表では、通常の背圧タービンは系統と並列なら排気圧力制御、単独運転なら回転数制御です。並列中は、蒸気の需要に合わせて出た電力の過不足を系統が受け持ちます。
単独運転では、所内の周波数を保てるのがタービンだけになるため、1組の加減弁は回転数に使い、排気圧力は成り行きになります。
背圧タービンの特徴は背圧タービンとはで、電気と熱を同時に使う設備全体の考え方はコージェネレーションとコンバインドサイクルの違いで解説しています。
一次圧力制御

最後に、ガバナの一次側の圧力を一定にする一次圧力制御があり、初圧制御・主蒸気圧力制御とも呼ばれます。
この制御は、ボイラーの出口圧力を一定にして、ボイラーの運転を安定させたいときに使います。一次側の圧力を一定に保つと、ボイラーで発生した蒸気と同じ量をタービンへ送ることになります。
燃料の性状が不安定なときや、ボイラーの制御が緩慢なときに、この制御を使う場合が多くあります。
製紙の回収ボイラや、何種類もの燃料を燃やすボイラと組む場合、タービン側で主蒸気圧力を制御するほうが有利なことが多いとされています(日立評論 1972年)。
図の PT は圧力伝送器、PIC は圧力の指示調節計で、計器記号の読み方はP&ID(配管計装図)の読み方で整理しています。
抽気タービンの抽気圧力制御
抽気タービンは、タービンの途中の段から蒸気の一部を取り出し、工場のプロセスに送るタービンです。抽気圧力をタービン内部で制御する形式では、加減弁を高圧側と低圧側の2組持つので、回転数(出力)と抽気圧力を別々に一定にできます。
日立評論(1972年)は、産業用タービンの種類ごとに一定にする量を次のように整理しています。抽気の段数が増えるほど、一定にする量も増えます。
系統とつないでいるか(並列)、切り離しているか(単独)で、一定にする量が変わるものがあります。
※日立評論 1972年2月「産業用タービンにおける電子油圧式ガバナの運転」表1をもとに作成。並列中の「回転数」は、実際には出力の制御になります。
2組の弁は、一方の量を動かさないよう協調して動きます。工場の抽気量が増えたときの動きは次のとおりです。
一段抽気背圧タービンの単独運転の例です。回転数を変えずに、抽気圧力だけを元に戻します。
※日立評論 1968年9月「蒸気タービン電子油圧式ガバナの開発」の説明をもとに作成。電力の需要が増えたときは、逆に抽気圧力を変えないよう両方の弁を動かします。
日立評論(1968年)の一段抽気背圧タービンの例では、単独運転のとき排気圧力をタービン自体では制御しません。必要なら、タービンを通さずに減圧して送るバイパスのラインで補います。
抽気復水タービンの仕組みは抽気復水タービンの仕組み・メリット・制御方法、抽気圧力の保ち方の違いは内部抽気圧力制御と外部抽気圧力制御の違いで解説しています。バイパス側の設備はタービンバイパスの記事も参考になります。
ガバナ(調速機)とは?仕組みと調速方式
ガバナ(調速機・調速装置)とは、負荷が変わっても回転数と出力が揺れ続けないよう、タービンに入る蒸気を自動で調整する装置です。発電用火力設備の技術基準を定める省令(第14条)で、蒸気タービンに設置が義務づけられています。
ここでは、ガバナの中身(検出から弁までの構造)、偏差に対する効き方(速度調定率)、弁の開け方(調速方式)の3つを順に見ます。
ガバナの構造(機械式と電子油圧式)
ガバナは、回転数を測る検出部、設定値と比べる比較部、弁を動かす油圧の駆動部でできています。方式は、検出と比較をてこと油圧でこなす機械油圧式と、電気信号でこなす電子油圧式に分かれます。
弁を油圧で動かす点は同じです。違うのは、回転数を測って設定値と比べる部分です。
※日立評論(1968年・1972年・1977年)をもとに作成。日立では電子油圧式の製品化1号機が1968年に営業運転に入り、1970年代後半にはディジタル式も開発されています。
ガバナとは別に、過回転などの異常時に蒸気を自動かつ速やかに遮断する非常調速装置も、省令(第15条)で義務づけられています。ガバナは回転数を整える装置、非常調速装置はタービンを止める装置と考えると区別しやすくなります。
速度調定率(ドループ)
速度調定率は、無負荷から全負荷まで出力が変わる間に、回転数をどれだけ変えるかの割合です。たとえば4%なら、全負荷を遮断すると回転数が定格より約4%高いところで落ち着きます。
JIS B 8102(蒸気タービンの受渡試験方法)では、これを「整定速度調定率」として負荷遮断試験で確かめます。定格出力から負荷を遮断し、落ち着いた回転数と定格速度の差を割合で表します。
日立評論(1968年)の負荷遮断試験でも、設定した4%の調定率の分だけ回転数が変わったと報告されています。調定率を持たせることで、並列運転する複数の発電機の間で負荷の分担が決まります。
具体的な値は、設備の仕様と系統連系の要件で決まります。たとえば東京電力パワーグリッドの系統連系技術要件は、定格100MW以上の火力発電設備にガバナフリー運転の調定率5%以下を求めています。
設定できる幅は方式でも違い、1970年代の例ですが、日立評論(1971年)の比較では、機械式が2〜6%(運転中は変更不可)、電子油圧式が1〜10%(運転中に変更可)でした。
回転数の偏差に比例して弁を動かす考え方は、制御理論の比例動作(P動作)と同じです。基本はPID制御とはで整理しています。
ノズル締切調速と絞り調速
加減弁が複数あるタービンでは、弁の開け方にも2つの方式があります。それぞれの加減弁は、第1段のノズル(静翼)の一部のグループにつながります。
- ノズル締切調速:加減弁を1つずつ順番に開け、使うノズルの数で蒸気量を変える
- 絞り調速:すべての加減弁を同じ開度で一緒に開け閉めし、絞りで蒸気量を変える
部分負荷の効率を取るか、蒸気の入り方の均一さを取るかの違いです。
※日立製作所の米国特許 US4714401、日立評論 1962年4月をもとに作成。起動時は全周から入れ、負荷運転ではノズル締切調速に切り換える使い分けもあります。
産業用の蒸気タービンでも、ノズル締切調速は高効率化の手段として使われています。川崎重工業は、自社の蒸気タービン発電設備の高効率化技術の1番目に「高効率型多弁式ノズル締切調速方式」を挙げています。
蒸気タービンの制御のよくある質問
タービンのガバナとは?
タービンの回転数や出力を一定に保つため、入る蒸気(ガスタービンなら燃料)の量を自動で調整する装置で、日本語では調速機・調速装置と呼びます。
発電用火力設備の蒸気タービンでは、誘導発電機と組む場合を除いて設置が省令で決められています。非常調速装置(過回転で止める装置)とは別のものです。
蒸気タービンとは?どんな仕組みで回る?
ボイラーでつくった高温・高圧の蒸気を、静翼(ノズル)で勢いのある流れに変え、動翼に当てて軸を回す原動機で、回った軸で発電機やポンプ、ブロワを動かします。
翼の役割は動翼と静翼とは、蒸気がボイラーとタービンと復水器を回る流れはランキンサイクルとはで解説しています。軸の貫通部から漏れる蒸気の処理はグランドコンデンサとはが参考になります。
用途は自家発電から事業用・原子力の大型機まで幅広く、三菱重工は小型単車室タービンから100万kW超級までを手がけています。新日本造機のように、背圧形300〜50,000kW・復水形最大100,000kWの産業用を得意とするメーカーもあります。
ガバナとガバナ弁(蒸気加減弁)の違いは?
ガバナは「どれだけ開けるか」を決める頭脳で、蒸気加減弁は実際に蒸気を絞る手足です。現場では蒸気加減弁を「ガバナ弁」、加減弁の後の圧力を「ガバナ二次側」と呼ぶことがあります。
タービンの回転数は何で決まる?
系統とつないでいる間は、系統の周波数で決まり、切り離した単独運転では、ガバナの設定値で決まります。
発電機の回転数は N=120f/P で、4極なら50Hzで1,500min−1、60Hzで1,800min−1です。減速機があれば、タービン側は減速比の分だけ高い回転数になります。
まとめ
- ガバナ(調速機)は、回転数や出力・圧力を見て蒸気加減弁を動かし、蒸気量を調整する装置
- 発電電力制御:送電を前提とした発電所などで使う
- 回転速度制御:周波数を一定にしたいとき(起動〜併入、自立運転)に使う
- 排気圧力制御:背圧タービンの排気蒸気を工場などで使うときに使う
- 一次圧力制御:一次圧力を一定にして、ボイラーの運転を安定させたいときに使う
- 抽気圧力を内部で制御する抽気タービンは加減弁を2組持ち、回転数(出力)と抽気圧力を同時に一定にできる
実際には、プラントの機器構成や運転状況によって、これらを組み合わせながら運転する場合が多くあります。
接続先が発電機なのかポンプなのかによっても変わるので、何を優先したいのかを考えながら、制御方法を検討しましょう。
タービンの制御は、運転だけでなく設備の計画・更新の場面でも問われます。関わる仕事はプラントエンジニアの仕事や製造業のエネルギー管理士の仕事で紹介しています。
出典
出典・参考資料(12件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 調速装置・非常調速装置の規定:e-Gov法令検索「発電用火力設備に関する技術基準を定める省令」(第13〜15条)
- 産業用タービンの種類と制御、主蒸気圧力の制御:日立評論 1972年2月「産業用タービンにおける電子油圧式ガバナの運転」
- 機械式・電子式ガバナの構造、抽気背圧タービンの弁の動き、調定率:日立評論 1968年9月「蒸気タービン電子油圧式ガバナの開発」
- 起動から同期併入までの回転数調整、二段抽気の独立制御:日立評論 1969年6月「28,000kW二段抽気復水タービンの新しい電子油圧式ガバナ」
- 速度調定率の設定範囲:日立評論 1971年3月「再熱蒸気タービン用電子油圧式ガバナ」
- ディジタル式ガバナの調速機能:日立評論 1977年5月「蒸気タービン用ディジタル式電子油圧ガバナ」
- ノズル締切調速と全周噴射:日立評論 1962年4月、日立製作所 米国特許 US4714401「Governing mode change-over apparatus」
- 整定速度調定率の試験:日本規格協会 JIS B 8102:2025「蒸気タービン―受渡試験方法」プレビュー
- ガバナフリー運転の調定率:東京電力パワーグリッド「系統連系技術要件」(託送供給等約款別冊)
- ディジタル式ガバナの制御モード:Woodward Product Specification 03422「505 Digital Control for Steam Turbines」
- 多弁式ノズル締切調速の採用例:環境共創イニシアチブ 先進設備 公開用概要書(川崎重工業 蒸気タービン発電設備)
- 蒸気タービンの用途と出力範囲:三菱重工業「蒸気タービン」、新日本造機「蒸気タービン」
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