ローディングデータは、機器から基礎・架台・建物へ伝わる荷重を、関係者で共有するための設計資料です。重量の一覧に加え、重心位置、支持点、力の向き、運転条件などを示し、受け側の構造設計へ渡します。
購買仕様書の提出書類に名前があっても、重量だけ送れば十分とは限りません。同じ重量の機器でも、重心の位置や支持方法が変わると、基礎の各部へ伝わる力や転倒に対する条件が変わるためです。
動画0:24付近の記載項目は、機器や発注条件によって取捨選択するものです。0:35付近のアンカーボルトの位置や埋込みに関する情報も、機器側と基礎側の担当範囲を調整し、整合を確認して決定します。
0:40付近の「基礎が必要な機器」には、建物の床や鉄骨架台で支持する場合も含めて考えます。独立したコンクリート基礎の有無だけで、荷重資料の要否を決めるものではありません。
ローディングデータとは
機器の重さや重心、大きさ、運転に伴う力などを、基礎設計へ使える形で整理した資料を指します。機器荷重図や基礎荷重資料などの名称で求められることもあるため、提出する内容を発注側とそろえます。
対象は、ポンプ、タンク、コンプレッサ、タービン、各種の架台など、構造物へ荷重を伝える機器です。独立基礎に置くか、建物の床や架台へ載せるかによっても、渡す相手と必要な条件が変わります。
重量・重心・支持点を、同じ座標で伝える
形状は説明用の模式図。座標の取り方を一つに決め、重心位置と荷重の作用位置が読める資料にします。
まず、資料がどの機器を対象にしているかを明確にします。機器タグ、型式、台数、付属品の範囲を図面へ記載し、単体の重量なのか、電動機や共通ベースまで含むのかを区別します。
重量には、乾燥時、運転時、液充填時、試験時などの状態差があります。機器本体だけの値と、内部液、保温、付属品を含めた値を混ぜず、どの状態を示した数字なのかを添えます。
運転停止と、静荷重・動荷重の分類は、同じ区分ではありません。運転中でも自重や内容液の重量は静的な成分です。起動停止、振動、回転や往復運動で変動する力とは分けて整理します。
「質量2500 kg」と「鉛直荷重24.5 kN」では、表している物理量と単位が異なります。質量から力へ換算した値なのか、質量そのものなのかを区別し、数字だけの重量表を渡さないことが大切です。
次に、重心位置と、基礎へ力を伝える支持点の位置を示します。外形寸法だけでは重心は分からず、機器の中央にあるという仮定が妥当かどうかも、納入する実機の構成で確認します。
重心の高さは、水平力によって生じる転倒方向のモーメントにも関係します。農林水産省の電気設備据付資料でも、機器の重量、重心高さ、ボルト間隔などを用いて基礎の検討例が示されています。
資料の座標原点は、機器中心、ベース端、基準となる支持点など、図面上で識別できる位置に置きます。X・Y・Zの向きと寸法の基準面をそろえ、基礎側で別の原点へ読み替える際の誤りを減らします。
図面の寸法は、現物と同じ基準点から追えることが必要です。寸法入りの図面を作る方法も参考に、支持点間の距離や基準面からの高さを示します。外形とともに、重心の位置も読み取れる図へ整理します。
力とモーメントを表にする場合には、各成分の正方向も明記します。「機器が基礎へ加える力」と「基礎が機器を支える反力」は逆向きです。表の対象をそろえて、方向の取り違えを防ぎます。
荷重を集計する位置と、基礎側が計算する位置が違う場合には、その基準の差も共有します。同じ水平力でも作用する高さが違えばモーメントが変わるため、数値と作用位置を別々の資料へ切り離さないようにします。
荷重ケースは、状態と含むものを対にして記載
上表は記載例。停止中でも液が残る場合は、乾燥状態と分けて示します。必要なケースは機器・設置場所・設計条件で決め、互いに成立しない最大値を機械的に足し合わせません。
地震や風などの作用については、機器メーカーと建築・土木側で算定する範囲を決めます。重量や重心から受け側が計算するものと、メーカーが既に算定して示すものを区別し、同じ作用を二度加えないようにします。
回転機械では、振動する力の大きさだけでなく、回転数や周波数、作用方向が必要になることがあります。静的な荷重の表だけで足りるかを確認し、必要な動的データはメーカーへ具体的に依頼します。
例えば「動荷重」とだけ書かれた値では、時間とともに変動する力なのか、静荷重へ割増しを加えた値なのかが分かりません。値の定義、変動する方向、必要な周波数情報とともに、どの計算へ使うものかを確認します。
機器のノズルへ作用する配管荷重も、別の確認項目です。KSBの公式資料は、ポンプと内部液の重量に加え、配管の自重や内部液の重量も扱っています。熱膨張や圧力による力も、支持条件に応じて考慮する説明です。
機器ノズルの「許容荷重」は、機器へ加えてよい力の範囲を示す値です。それを、そのまま機器から基礎へ常時伝わる荷重と読み替えず、実際に作用する配管荷重と、受け持つ支持を照合します。
許容変位や据付精度も、機器の構成によって基礎設計へ渡す条件になります。伸縮継手とフレキシブルチューブの違いも踏まえ、熱膨張で動く部分と固定点を区別します。拘束による力を受け持つ範囲も共有します。
支持点の反力を理解するため、単純な二支持点の模型で考えてみます。乾燥質量1500 kg、内部液1000 kgで、運転時の合計は2500 kgです。重力加速度は説明用に9.8 m/s²を用います。
同じ24.5 kNでも、重心が偏ると反力は等しくならない
二点で鉛直荷重だけを支える模型。実機の四脚やアンカーボルトの負担を、この図だけで決めることはできません。
支持点AとBの間隔を2.0 m、重心をAから0.8 mの位置に置くとします。Bの反力はA回りのモーメントの釣合いから求まり、残りの鉛直力をAが受け持つことになります。
この例では、AとBを均等に12.25 kNずつと扱うと、実際の反力と違う値になります。総重量だけでは各支持部の設計条件が足りず、重心と支持点の位置が必要になる理由がここにあります。
実際のスキッドでは、支持点の数、剛性、固定方法、水平力、モーメントなども関係します。二支持点の例は情報の意味を理解するための計算であり、そのままアンカー本数や基礎寸法を決める式ではありません。
ローディングデータの目的
目的は、機器を選ぶ担当と、機器を支える構造を設計する担当の条件をつなぐことです。機器の能力や接続口が決まっていても、支持部へ作用する荷重が分からなければ、基礎や架台の設計条件は完成しません。
プラント工事と建築・土木工事を分離して発注する場合、機器メーカーの設計条件を建築側へ渡す必要があります。プラント側が機器の選定と配置を取りまとめ、建築・土木側は受け取った条件で構造を検討する、という受渡しが一例です。
機器の図面と荷重表を、基礎側の設計条件へつなぐ
分離発注の受渡し例。単に資料を転送するだけでなく、実際に納入する機器と配置に合っているかを照合します。
機器メーカーへ提出を求める条件は、購買仕様書の項目と記載方法で整理します。書類名だけでなく、必要な荷重ケース、形式、提出時期、改訂時の連絡方法まで記載すると、認識差を減らせます。
プラント側は、メーカー資料の機器タグと、配置図、配管や付属品の条件を照合します。同じシリーズの参考図を受け取った場合も、納入型式や電動機、ベースの仕様が実機へ反映されているかを確認します。
建築・土木側へ渡す際には、機器の荷重だけでなく、支持する位置と高さを対応させます。設置階や基礎の位置が変更されたら、同じ重量でも受け側の構造条件が変わるため、配置と荷重を一組で管理します。
アンカーボルトの穴位置、機器側のベース寸法、基礎側の定着条件は、互いに整合している必要があります。先埋めアンカーと後打ちアンカーの違いも関係しますが、機器図の穴径だけから定着長や基礎の適合を判断しません。
鉄骨架台へ機器を固定する場合には、コンクリート基礎とは異なる接合部の情報が必要です。タッププレートを用いる機器据付など、採用する固定方法と、力を受ける側の部材・接合の条件を対応させます。

許容変位や振動などの機器側条件は、構造側が満たすべき性能を伝える情報になります。反対に、支持条件や基礎の剛性が機器の前提と異なると、機器側の評価をやり直す必要が生じることもあります。
受け渡す数値が、基準となる実荷重なのか、既に割増しや荷重係数を含む設計値なのかも明記します。「安全側に大きくしておいた」という口頭説明では、受け側でさらに係数を掛けるなどの不整合を防げません。
特に見積段階では、未確定の機器や付属品を含むため、概略値で先行することがあります。その際は見込む余裕と対象範囲、確定する期限を記録し、何を根拠に先行設計したかを残します。
除外項目も明記すると、機器側と基礎側の間で荷重の計上漏れを減らせます。現地で追加する配管、保温、点検架台、ケーブル設備などについて、機器資料へ含むのか別途集計するのかを決めます。
重量は大きく見れば常に安全になるというものでもありません。浮き上がりや転倒に対する検討では、軽い状態が厳しい場合もあります。最大値と最小値、各ケースの成立条件を適切に共有します。
資料の作成と受領確認、設計上の承認も、同じ意味ではありません。承認返却図の扱いを踏まえ、誰がどの条件を確認し、どの未確定事項が残っているかを管理します。
形式を整えるだけでなく、読み手が再確認できる参照先を付けることが有効です。外形図、基礎図、荷重表の図面番号と改訂をそろえ、どの資料どうしが対応するのかを明確にします。
複数の機器を同じ架台へ載せる場合は、個々の最大値だけでなく、同時に成立する運転状態も整理します。通常運転、予備機切替、試験や保全など、必要な組合せを関係者で決め、架台全体の検討条件へつなぎます。
ローディングデータが必要な時期
基本となる提出時期は、基礎や建屋の構造設計へ条件を入力する前です。機器の納入直前に確定資料が出ても、基礎工事や建屋の設計が進んでいれば、変更の影響を大きくしてしまいます。
プラント建設の流れは、基本計画、機械設計、建屋・基礎設計、基礎工事、建屋工事、機械据付、配管・電気工事という順で捉えられます。実務では設計が並行するため、機械の全仕様が確定するまで資料提出を待つ進め方にはできません。
概略値・確定値・変更連絡を、工事の節目へ合わせる
固定の日数ではなく、受け側の設計・施工の節目から逆算します。変更は工事開始後でも放置せず、影響と対処を関係者へ共有します。
基本計画では、候補機器の概略寸法と重量を、配置や床荷重の検討へ使うことがあります。正式なローディングデータではない段階でも、暫定値であることと、除外した範囲を図面や一覧へ明記します。
見積時の条件は、見積仕様書とその役割を通じてそろえます。発注後に荷重が変わり得る項目を把握し、先に受け側と調整すべき範囲を明らかにします。
発注時には、購買仕様書の提出期限を工程へ結び付けます。単に「受注後に提出」とせず、基礎図の確定やアンカー施工の検討に間に合う期限を関係者で合わせます。
メーカーから正式な機器図と荷重条件を受け取ったら、先行資料との差を確認します。重量、重心、支持点、外形、付属品が変わっていないかを照合し、変更があれば基礎側へ差分を渡します。
最終的な納入範囲は、納入仕様書と対応させて管理します。荷重表だけが最新になっていても、基礎側が参照する外形図や配置図が旧改訂なら、条件の食違いが残ります。
レビューでは、タグと台数、状態別重量、重心、支持点、座標と単位、作用と許容値の区別を順に確認します。続いて、荷重係数や余裕の有無、未確定項目、関連図面の改訂を確認すると、基本的な抜けを拾いやすくなります。
変更連絡には「何が変わったか」だけでなく、「どこへ影響するか」を添えます。質量の増加なら支持部の荷重、重心移動なら反力や転倒が検討対象です。穴位置の変更ならアンカーとの整合を示し、受け側が追える形にします。
図面を差し替えただけでは、工事を進める担当へ変更が届かないことがあります。配布先、受領、反映する図面と施工の状態を確認し、既に発注したアンカーや加工部材へ影響がないかも調べます。
受け側から照会が来た場合は、荷重表のどの値を、何の条件で見直すのかを明確にして回答します。口頭の回答で完結せず、必要な改訂へ反映し、回答と図面の内容が食い違わないように管理します。
基礎施工の後で変更が分かった場合も、数字を元へ合わせて資料だけを整える対処はできません。実際の機器条件と施工済みの状態を示し、受け側の設計担当と必要な再検討や対応を決めます。
最終図書には、確定した条件と改訂履歴が追える資料を残します。将来の機器交換や増設でも、元の重量、支持点、運転条件を確認できることが、既設設備の評価を進める助けになります。
ローディングデータのよくある質問
機器の重量が分かれば作成できますか?
重量に加え、状態、重心、支持点、力の向きなど、受け側が必要とする情報をそろえます。同じ重量でも反力や転倒条件が違うため、重量表だけで資料が完成すると考えないことが大切です。
誰が作成して、誰へ提出しますか?
機器メーカーが機器の条件を示し、プラント側が配置などと整合を取って建築・土木側へ渡す流れが一例です。契約や設計の分担に応じて、取りまとめる担当と、算定・確認する範囲を決めます。
停止時重量と静荷重は同じですか?
運転・停止は機器の状態、静・動は力の性質に関する区分なので、同じ意味ではありません。運転中の自重や内容液の重量と、起動停止や振動で変動する力を分けて提示します。
見積段階は大きな荷重にしておけば安全ですか?
暫定値の余裕を明記することは有効ですが、単純にすべてを大きくすればよいわけではありません。軽い状態が厳しい検討や係数の二重計上もあるため、ケースと値の性質を共有します。
機器変更で重量が同じなら再提出は不要ですか?
重心、支持点、外形、アンカー位置、動的な作用などが変われば、重量が同じでも影響します。変更点を比較し、基礎側へ影響する条件を更新した資料で連絡します。
まとめ
- ローディングデータは機器と基礎・架台・建物の設計条件をつなぐ資料
- 重量に加え、重心・支持点・座標・状態別の作用を明記する
- 運転/停止と静/動、実際の作用と許容値を混同しない
- 暫定値・余裕・係数の有無と、確定する時期を共有する
- 基礎設計前から情報を渡し、変更差分と改訂の反映を追う
資料を渡す目的は、数字を埋めることではなく、実際に納入する機器を受け側が適切に設計できるようにすることです。どの状態の、どの位置へ、どちら向きに作用する値かを、図と表の両方で明確にします。
出典
出典・参考資料(4件)を開く出典・参考資料を閉じる
- KSB:Pump foundation(基礎へ伝わる力・トルクと振動)
- KSB:Planning information for tubular casing pumps(機器・配管の重量、熱・圧力に伴う作用)
- KSB GIW:Is Your Piping Stressing Your Pump(配管荷重と機器の許容値)
- 農林水産省:機器の据付及び配線(電気設備の建築調整、重心と基礎の検討例)
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