鉄の製錬とは?溶鉱炉(高炉)と転炉の反応式・製鉄所のしくみ

夕暮れの製鉄所に立つ高炉と4基の熱風炉

鉄は、鉄鉱石に含まれる酸化鉄から酸素を取り除く(還元する)ことでつくり、工業的には溶鉱炉(高炉)の中でコークスから生じた一酸化炭素を還元剤に使います。溶鉱炉(高炉)は、鉱石とコークスを上から入れ、下から熱風を吹き込んで銑鉄を取り出す縦長の炉です。

全体の反応はFe2O3+3CO→2Fe+3CO2で、鉱石から外れた酸素は二酸化炭素になって炉の上から出ていきます。

高炉から出てくる鉄は炭素を約4.5%含む銑鉄(せんてつ)で、硬くてもろいため、転炉で酸素を吹き込んで炭素や不純物を燃やし、粘りのある鋼(こう)にします。日本の粗鋼の約4分の3はこの高炉・転炉法でつくられ、鋼は連続鋳造で板や棒の素材に固められて圧延工場へ送られます。

この記事では、一酸化炭素が還元剤になる理由、高炉に入れる原料と反応式、酸化鉄が段階的に還元される様子、転炉の反応を順に整理します。続いて、実際の製鉄所の設備と高炉の寿命、連続鋳造と電炉との違い、日本と世界の生産量とCO2の排出を見ていきます。

目次

鉄は一酸化炭素によって還元してつくる

鉄は自然界ではほとんど単体で存在せず、酸素と結び付いた酸化鉄として鉄鉱石の中にあります。主な鉄鉱石は赤鉄鉱(Fe2O3)や磁鉄鉱(Fe3O4)などで、日本の製鉄所は鉄分60%前後の鉱石をオーストラリアやブラジル、インドから輸入しています。

酸化鉄から鉄を取り出すには、酸素を引きはがす還元剤が必要です。高炉でその役目を担うのが一酸化炭素(CO)で、COは酸素をもう1つ受け取ってCO2になれるため、酸化鉄から酸素を奪います。炭素の酸化数が+2から+4に上がる分だけ、鉄の酸化数が+3から0に下がる酸化還元反応です。

酸化鉄(赤鉄鉱)を一酸化炭素で還元する(全体の反応)
Fe2O3 + 3CO → 2Fe + 3CO2
鉄の酸化数は+3→0(還元される)、炭素の酸化数は+2→+4(酸化される)。反応はわずかな発熱で、鉄1トンあたり約222 MJの熱を出します(NEDO 成果報告会資料)。

磁鉄鉱の Fe3O4 は磁石に付く黒い酸化鉄で、鉄の表面にできる黒錆と同じ成分です。赤錆との性質の違いは錆と磁石の関係(赤錆と黒錆の磁性)で詳しく扱っています。

図1:鉄鉱石から鋼材ができるまで

高炉で還元して銑鉄にし、転炉で炭素を減らして鋼にし、連続鋳造で固めます。

鉄鉱石コークス・石灰石高炉銑鉄(C約4.5%)転炉鋼(成分を調整)連続鋳造スラブ・ビレット還元脱炭凝固

※銑鉄を溶かしたまま転炉へ運ぶため、多くの製鉄所は高炉から圧延までを1つの敷地にまとめた銑鋼一貫製鉄所になっています。

鉄鉱石・コークス・石灰石を溶鉱炉(高炉)に入れる

溶鉱炉は高炉とも呼ばれる縦長の炉で、上から鉄鉱石(焼き固めた焼結鉱など)とコークスを層になるよう交互に入れ、下の羽口(はぐち)から約1,200℃の熱風を吹き込みます。炉内は2,000℃以上に達し、原料はゆっくり下りながら、下から上ってくる高温のガスで還元されていきます。

コークスは石炭を空気を断って蒸し焼きにした炭素の塊で、作り方と石炭との違いはコークスと石炭の違いで詳しく扱っています。高炉の中では還元剤のもとになるだけでなく、燃えて熱を出し、潰れずに残ってガスと溶けた鉄の通り道を保つ役目も担います。

図2:高炉に入れる3つの原料の役割

鉄鉱石が鉄のもと、コークスが還元と熱、石灰石が不純物の受け皿です。

鉄鉱石(焼結鉱)鉄の供給源。酸化鉄の酸素を外して鉄にする。粉鉱石は焼き固めてから入れる銑鉄1 tあたり 1.6 t
コークス燃えて熱を出し、COをつくる還元剤のもと。固い塊のまま残り、ガスと溶けた鉄の通り道を保つ銑鉄1 tあたり 0.4 t
石灰石分解してできた生石灰が、鉱石に混じるケイ酸などと結び付いてスラグになる銑鉄1 tあたり 0.1 t

※量は日本製鉄「鉄鉱石から製品ができるまでの工程」の目安。羽口から吹き込む微粉炭も、還元剤と熱の一部を受け持ちます。

還元剤のCOは、コークスが燃えるところから生まれます。羽口の前では熱風の酸素でコークスが燃えてまずCO2ができ、そのCO2が周りの赤熱したコークスとすぐに反応してCOに変わるため、C→CO2→COの順に還元ガスがつくられます。

コークスの燃焼(発熱)
C + O2 → CO2  ΔH = −393.5 kJ
CO2が赤熱したコークスと反応する(吸熱)
CO2 + C → 2CO  ΔH = +172 kJ
2つを足し合わせると
2C + O2 → 2CO
ΔH は25℃・1気圧の標準生成エンタルピー(CO −110.53 kJ/mol、CO2 −393.51 kJ/mol、NIST)から計算した値です。2つ目の式は、酸化数0の炭素と+4の炭素が反応し、どちらも+2のCOになる反応です。

2つ目の反応は熱を吸うので、ルシャトリエの原理から温度が高いほどCOができる向きに進みます。コークスの燃焼で出た大きな熱が、COをつくる反応と鉱石を溶かす熱をまかなっており、ここでコークスは還元剤のもとと熱源を兼ねています。

石灰石(CaCO3)は、炉の中で熱分解して生石灰(CaO)とCO2になります。このCO2もコークスと反応してCOになりますが、石灰石を入れる本来の目的は、鉄鉱石に混じる脈石(SiO2などの岩石の成分)と結び付けてスラグにすることです。

石灰石の熱分解
CaCO3 → CaO + CO2
生石灰が脈石の二酸化ケイ素と結び付く(スラグができる)
CaO + SiO2 → CaSiO3
実際のスラグは、ケイ酸カルシウムにアルミナや酸化マグネシウムなどが混ざったもので、ここでは主な反応だけを書いています。スラグは銑鉄より軽いため、炉の底で上の層に分かれます。

鉄以外の成分をスラグとしてまとめて溶かし出すことで、不純物を銑鉄から分けて炉の外へ取り出せます。スラグは銑鉄1トンあたり約300 kgも出るため、還元と並んで、スラグをうまく溶かして流し出すことが高炉の安定した操業を支えています。

酸化鉄が還元される様子(Fe2O3→Fe3O4→FeO→Fe)

鉄鉱石の酸化鉄は一度に鉄になるのではなく、酸素の少ない酸化物へ段階的に還元されます。赤鉄鉱の Fe2O3 は鉄の酸化数が+3で、磁鉄鉱の Fe3O4 は FeO(+2)と Fe2O3(+3)が1対1で組み合わさった酸化物なので、平均すると+8/3という分数になります。

高炉の中では上から順にFe2O3→Fe3O4→FeO→Feと酸素が外れていき、反応式は次の3段階で書けます。係数は、鉄と酸素の原子の数が左右でそろうように決めたものです。

1段目:赤鉄鉱が磁鉄鉱になる
3Fe2O3 + CO → 2Fe3O4 + CO2
2段目:磁鉄鉱が酸化鉄(Ⅱ)になる
Fe3O4 + CO → 3FeO + CO2
3段目:酸化鉄(Ⅱ)が鉄になる
FeO + CO → Fe + CO2
1段目+2段目×2+3段目×6 を3で割ると全体の式になる
Fe2O3 + 3CO → 2Fe + 3CO2
Fe3O4 は FeO・Fe2O3 とも書きます。高炉の中の FeO(ウスタイト)は実際には鉄がわずかに少ない組成ですが、ここでは FeO として扱います。

これらはガスのCOが鉱石の酸素を奪う「間接還元」で、炉の上部から中部にかけて進みます。炉の下部では、溶けて流れ落ちる鉄分(FeO などの酸化鉄を含む)がコークスの炭素と接触してさらに還元される「直接還元」も起こり、このときはCO2ではなくCOができます。

炭素による直接還元
Fe2O3 + 3C → 2Fe + 3CO
FeO + C → Fe + CO
直接還元で出たCOは炉の中を上っていき、上部の間接還元に使われます。実際の還元ガスにはコークスなどから出る水素も含まれ、ここに書いた式は炉内の反応を単純化したものです。

図3:高炉の中の反応(模式図)

原料は上から下り、還元ガスは下から上ります。上から順に酸素が外れ、底に銑鉄とスラグがたまります。

装入:鉱石とコークス→ 高炉ガス上部 Fe₂O₃→Fe₃O₄中部 Fe₃O₄→FeO下部 FeO→Fe羽口から熱風約1,200℃原料は下りるガスは上るスラグ銑鉄出銑口炉内2,000℃以上

※構造と反応の位置を簡単にした模式図です。温度は日本製鉄の説明(熱風 約1,200℃、炉内 2,000℃以上)によります。実際の炉内では還元の領域が重なり合います。

炉の底にたまった溶けた鉄が銑鉄で、還元の途中でコークスの炭素が溶け込むため、炭素を約4.5%(4〜5%)含みます。炭素が多い鉄は融点が下がって溶けたまま取り出しやすい一方、硬くてもろく、叩いたり曲げたりする加工には向きません。

銑鉄とスラグは比重の差で上下に分かれ、炉の底の出銑口から取り出されます。銑鉄をそのまま型に流して固めれば鋳鉄の部品になりますが、鋼板や棒鋼のように延ばして使う鋼材にするには、炭素を大きく減らす次の工程が必要です。

銑鉄を転炉に入れて鋼にする

銑鉄を粘りのある鋼にする工程が製鋼で、その主役が転炉です。転炉は炉体を傾けられるつぼ形の炉で、少量の鉄スクラップを入れたあと溶けた銑鉄を注ぎ、生石灰などを加えて上から高圧の純酸素を吹き付けます。

酸素は銑鉄中の炭素・ケイ素・マンガン・りんと急速に反応し、炭素はCOのガスとして抜け、ほかは酸化物になって生石灰と一緒にスラグに取り込まれます。この酸化反応の熱だけで温度が上がるので、転炉は外から燃料を加えずに精錬できる設備です。

炭素を除く(脱炭)
2C + O2 → 2CO
ケイ素・マンガンを除く
Si + O2 → SiO2  2Mn + O2 → 2MnO
りんを除く(生石灰のスラグに取り込む)
2P + 5FeO + 3CaO → Ca3(PO4)2 + 5Fe
C・Si・Mn・P は銑鉄に溶けている元素です。酸素で一部できた酸化鉄(FeO)がスラグに溶け、りんを酸化する役も担います。りんの式は、スラグの中の反応を簡単にした形です。

硫黄は転炉の酸素では取りにくい元素なので、日本の製鉄所では転炉に入れる前の溶銑予備処理で、ケイ素やりんとともに先に取り除きます。転炉は主に炭素を下げる工程で、そのあとの二次精錬で成分を細かく合わせるという役割分担になっています。

図4:製鋼の3つの工程で取り除くもの

硫黄とりんは先に、炭素は転炉で、ガスと最後の成分調整は二次精錬で受け持ちます。

01溶銑予備処理転炉に入れる前に、ケイ素・りん・硫黄を除く
02転炉(一次精錬)純酸素で炭素を約4.5%から大きく下げる。酸化物は石灰のスラグへ
03二次精錬真空で水素・窒素などのガスを抜き、合金を加えて成分を合わせる

※日本製鉄「モノづくりの原点 科学の世界」VOL.11、日本鉄鋼連盟「鋼をつくる」によります。りんは転炉で取ることも多くあります。

鋼は炭素がおおむね2%以下の鉄で(日本製鉄は1.7%未満と説明)、実際に使われる鋼材の多くは1.2%以下です。

鋼は「はがね」とも読みますが、化学や鉄鋼業では「粗鋼」「鋼材」のように「こう」と読むのが一般的で、炭素量と熱処理の組み合わせで硬さや粘りが大きく変わります。その使い分けは焼入れ・焼戻しなど鋼の熱処理で整理しています。

その他の鉄の単体の製法(テルミット反応・直接還元)

酸化鉄から鉄を取り出す方法は高炉のほかにもあり、身近な例がアルミニウムで還元するテルミット反応です。アルミニウムの粉と酸化鉄を混ぜて点火すると、アルミニウムが酸素を奪うときの大きな熱で、鉄が溶けた状態で得られます。

テルミット反応(酸化鉄の場合)
2Al + Fe2O3 → Al2O3 + 2Fe
アルミニウムは鉄より酸素と強く結び付くため、酸化鉄から酸素を奪います。反応は激しい発熱を伴い、できた鉄は溶けて下にたまります。

この反応は鉄道のレールをつなぐテルミット溶接などに使われますが、鉄を大量につくる方法には向きません。還元剤のアルミニウム自体が、大量の電気を使うアルミナの融解塩電解でつくられる金属だからです。

量産の方法としては、天然ガスからつくった還元ガスで、鉄鉱石を溶かさずに固体のまま還元する直接還元法もあります。

経済産業省が worldsteel のデータ(世界の生産量の53%をカバー)から試算した2022年の粗鋼のうち、直接還元法は約7%で、還元ガスを水素に置き換える開発が各国で進んでいます。

実際の製鉄所では:焼結・熱風炉と高炉の大きさ・寿命

高炉の出銑口から樋を流れる銑鉄と耐熱服の作業者

ここまでの反応を工場の規模で回すため、製鉄所の製銑(せんてつ)工程は焼結、コークス、高炉の3つの工程でできています。焼結とコークス炉が原料を高炉に入れられる形に整え、熱風炉が熱を送り、高炉が還元と溶解を担うという分担です。

原料を整え、高炉に熱を送る設備

輸入する鉄鉱石の大半は5 mm以下の粉で、そのまま入れると炉が目詰まりして還元ガスが通らなくなります。そこで粉鉱石に粉コークスと5〜15%の石灰石を混ぜて約1,300℃で焼き固め、5〜25 mm程度の塊の焼結鉱にしてから高炉に入れます。

前の章の石灰石は、この焼結の段階で鉱石に混ぜて高炉へ入れることもできます。コークスは製鉄所の中のコークス炉で、粘結性のある石炭を十数時間蒸し焼きにしてつくり、そのとき出るコークス炉ガスも所内の燃料として使われます。

熱風をつくるのは、高炉の横に並ぶ円筒形の熱風炉です。燃焼ガスで蓄熱レンガを熱する燃焼と、熱くなったレンガに空気を通して1,200℃を超える熱風をつくる送風を交互に切り替えるため、高炉1基に通常3〜4基の熱風炉を置いて途切れずに熱風を送ります。

大型高炉の規模と改修

日本鉄鋼連盟によると、日本では高さ100 m以上、内容積4,000 m3以上の大型高炉が主流で、1基から1日におよそ1万トンの銑鉄が生み出されます。日本製鉄 大分製鉄所の第1・第2高炉はどちらも内容積5,775 m3で、第2高炉は2004年の改修で当時の世界最大になりました。

図5:数字で見る大型高炉

1基で1日に約1万トンの銑鉄をつくり、十数年から20年以上止めずに動かします。

4,000 m³以上日本で主流の内容積(大分は5,775 m³)
約1万t/日大型高炉1基の銑鉄の生産
1,200℃超熱風炉(1基に3〜4基)がつくる熱風
約300 kg銑鉄1 tあたりの高炉スラグ

※日本鉄鋼連盟「高炉の中で」、日本製鉄の技術解説・スラグ製品の説明、新日本製鐵の発表(2009年)によります。

大型高炉の底には出銑口が4〜5か所あり、流れ出た銑鉄はトーピードカーと呼ばれる貨車に積まれて製鋼工場へ運ばれます。一緒に出たスラグは天然の岩石に似た成分を生かし、急冷した水砕スラグはセメントの原料に、ゆっくり冷やした徐冷スラグは道路やコンクリートの骨材に使われます。

高炉は一度火を入れると、内側の耐火れんがが傷むまで十数年から20年以上も止めずに動かし続けます。たとえば八幡製鉄所の戸畑第4高炉は、1989年の改修から約25年操業したあと、2014年1月25日に吹き止めました。

そこから85日間・約340億円の改修で内容積を4,250 m3から5,000 m3に広げ、同じ年の4月20日に再び火を入れています。

改修では炉体を新しくするだけでなく、羽口を36本から40本に増やし、原料の装入方式をベル式からベルレス式に変えるなど設備も見直しています。大分の第1高炉も1993年5月から2009年2月まで約16年動かしたあと、拡大改修を経て同年8月に再び火を入れました。

数百億円規模の改修は数十年に一度の判断で、どの高炉を直して残し、どれを止めるかが各社の生産体制を決めます。高炉メーカー2社の製鉄所の配置や戦略は日本製鉄とJFEスチールの違いで比べています。

反応式からは、還元に必要なCOの量も見積もれます。鉄鉱石を純粋な Fe2O3 とし、鉄1トンをすべてCOで還元すると考えると、次のように計算できます。

鉄1 tの物質量
nFe = 1,000,000 g55.85 g/mol ≒ 17,905 mol
必要なCO(Fe 2 mol に CO 3 mol)
nCO = 17,905 × 32 ≒ 26,858 mol → 26,858 mol × 28.01 g/mol ≒ 約752 kg
炭素に直した量と、必要な酸化鉄の量
26,858 mol × 12.01 g/mol ≒ 約323 kg  17,9052 × 159.69 g/mol ≒ 約1.43 t
n:物質量[mol] モル質量:Fe 55.85、CO 28.01、C 12.01、Fe2O3 159.69 g/mol。全体の式 Fe2O3+3CO→2Fe+3CO2 だけで還元が進むと仮定した理論値で、銑鉄に溶ける炭素などは考えていません。

実際に使う原料は、図2で見たとおり銑鉄1トンあたり鉄鉱石1.6トン、コークス0.4トン、石灰石0.1トンです。鉱石は脈石や水分の分だけ理論値の1.43トンより多く、コークスは還元のほかに熱源と通り道の役目を負うため、炭素だけで見た理論値の約323 kgを上回ります。

転炉から連続鋳造へ:二次精錬と電炉との違い

転炉は1回に約300トンの銑鉄とスクラップを精錬でき、酸素は1 cm2あたり約10 kgの大きな圧力で吹き込まれます。

1856年にベッセマーが考えた最初の転炉は、底から空気を吹く方式でした。その後、1949年に上から純酸素を吹く試験が始まり、1952年にオーストリアで最初の上吹き転炉(LD転炉)が操業を始め、いまは上吹きと底吹きを組み合わせた方式が主流です。

転炉で炭素を下げた溶鋼は、真空の容器に吸い上げて水素や窒素などのガスを抜く真空脱ガスなどの二次精錬で仕上げます。ここでフェロマンガン、フェロシリコン、アルミニウムなどを加えて成分を合わせ、溶鋼に残った酸素も取り除きます。

成分を合わせた約1,600℃の溶鋼は連続鋳造機に送られ、水で冷やした鋳型に流し込んで外側から固めながら、ロールで切れ目なく引き抜かれます。所定の長さに切った鋼片は形によってスラブ・ブルーム・ビレットと呼ばれ、圧延工場で鋼板や形鋼、棒鋼、線材になります。

電炉(電気炉)との違い

製鋼にはもう一つ、鉄スクラップを主な原料にして電気で溶かす電炉(電気炉)があります。アーク式の電炉は、黒鉛の電極とスクラップの間にアークを飛ばし、その熱と酸素の反応熱でスクラップを溶かしてから精錬する方式です。

スクラップはすでに還元された鉄なので還元の工程が要らず、粗鋼1トンあたりのCO2は高炉法の約2.0トンに対し電炉法は約0.5トンとされます。

一方でスクラップに混じる銅などは精錬で取り除きにくく、自動車用の薄板のような高級鋼は高炉・転炉法が中心で、電炉の比率はH形鋼など建設向けの鋼材で高くなります。

図6:高炉・転炉法と電炉法の違い

鉄鉱石を還元してつくるか、還元済みのスクラップを溶かすかで、CO2も得意な鋼材も変わります。

高炉・転炉法
電炉法
主な原料
鉄鉱石、コークス、石灰石(転炉で一部スクラップ)
鉄スクラップ(還元鉄を使うことも)
還元の工程
高炉でCOとコークスにより酸化鉄を還元
不要(スクラップは還元済み)
主な熱源
コークスの燃焼、転炉では酸化反応の熱
電気(アーク)と酸素の反応熱
粗鋼1 tあたりのCO2
約2.0 t
約0.5 t
比率が高い鋼材
熱延・冷延コイル(9割超)、厚中板(約85%)
H形鋼(約7割)など建設向け
日本の比率(2025年)
74.2%(転炉鋼)
25.8%(電炉鋼)

※CO2は経済産業省資料(JFEグループ 2021年の説明会資料による値)。スクラップも元は鉄鉱石から還元された鉄なので、Scope3まで含めると製法による差はなくなる点に注意が必要です。品種別の比率は同資料(鉄鋼新聞・日本鉄鋼連盟などから作成)、日本の比率は日本鉄鋼連盟の2025年(暦年)統計。

電炉を主力とするメーカーの事業と値決めの仕組みは電炉最大手の東京製鉄の記事で紹介しています。高炉メーカーも動いており、日本製鉄は2026年4月、九州製鉄所八幡地区で大型電炉への転換工事に着工しました。高炉でつくってきた高級鋼を電炉でつくる計画です。

日本と世界の粗鋼生産とCO2

worldsteel(世界鉄鋼協会)によると、2025年の世界の粗鋼生産は18億4,940万トンで、前年より2.0%減りました。中国が9億6,080万トンと半分あまりを占め、インド、米国に続く日本は8,070万トンで4位でした。

日本鉄鋼連盟の統計では、2025年(暦年)の日本の粗鋼のうち転炉鋼が5,983万トン(74.2%)、電炉鋼が2,085万トン(25.8%)で、高炉でつくった銑鉄は5,845万トンでした。業界全体の需要先や推移は鉄鋼・非鉄金属業界の市場規模と動向でまとめています。

図7:日本の粗鋼の約4分の3は転炉鋼

2025年の日本の粗鋼8,068万トンを10に分けると、約7が高炉・転炉法、約3が電炉法です。

10のうち約7が転炉鋼(74.2%、2025年)

※日本鉄鋼連盟「鉄鋼生産高 2025年(暦年)」。転炉鋼5,983万トン、電炉鋼2,085万トン。

高炉法がCO2を多く出すのは、還元剤の炭素が酸素を受け取ってCO2になる反応そのものが鉄づくりの中心にあるからです。経済産業省の資料では、2022年度の日本の鉄鋼業のCO2は1億3,400万トンで、産業部門の38%、国全体の13%(電気・熱の配分後)を占めました。

鉄鋼業の排出の約8割は製銑の工程から出ます。世界では worldsteel の推計で、2024年の鉄鋼業の排出は約41億トン(CO2換算、Scope1〜3)となり、人為的な温室効果ガスの7〜8%にあたります。

排出の範囲の考え方はScope1・2・3の違い、鋼材の排出量データを求めるEUの制度はEU CBAMの鉄鋼・アルミ製品への対応、国内の排出量取引はGX-ETSの対象企業と対応手順で整理しています。

還元剤の一部を水素に替える技術や直接還元、高炉から電炉への転換投資は、水素還元製鉄とは何かの記事で詳しく扱っています。どのルートも、この記事で見た Fe2O3+3CO→2Fe+3CO2 の炭素をどう減らすかが出発点です。

鉄の製錬のよくある質問

溶鉱炉と高炉は同じものですか?

同じ設備を指します。鉱石を溶かして鉄を取り出す炉という意味で溶鉱炉とも呼びますが、鉄鋼業や統計では背の高い炉の形から「高炉」と呼ぶのが一般的です。

鉄はなぜアルミニウムのように電気分解でつくらないのですか?

鉄はアルミニウムより酸素との結び付きが弱く、コークスから生じる一酸化炭素で還元できるからです。アルミニウムは炭素では還元しにくいため、大量の電気を使う融解塩電解でつくっています。

高炉はなぜ止めずに動かし続けるのですか?

高炉は、上から原料を入れ続け、下から銑鉄とスラグを取り出し続けることで、炉内の温度と反応を保つ連続式の設備だからです。改修のとき以外は止めずに動かすのが基本で、需要が落ちたときは送風を止めて、再び動かせる状態で休ませる「バンキング」という方法がとられます。

銑鉄と鋳鉄は何が違いますか?

どちらも炭素を2%以上含む鉄で、高炉から出た鉄を銑鉄、それを型に流して部品の形に固めたものを鋳鉄と呼び分けることが多くあります。炭素が多いので融点が低く鋳造しやすい一方、もろいため叩いて延ばす加工には使えません。

まとめ

この記事のまとめ
  • 鉄は、鉄鉱石の酸化鉄を高炉(溶鉱炉)で一酸化炭素により還元してつくり、全体は Fe2O3+3CO→2Fe+3CO2
  • COは羽口の前でコークスが燃えてCO2になり、赤熱したコークスと反応してできる(C→CO2→CO)
  • 石灰石の主な役割は、脈石と結び付いてスラグをつくり、不純物を銑鉄から分けること
  • 酸化鉄は Fe2O3→Fe3O4→FeO→Fe と段階的に還元され、炭素約4.5%の銑鉄になる
  • 転炉で酸素を吹いて炭素などを除き鋼にし、連続鋳造で固める。日本の粗鋼の74.2%が転炉鋼(2025年)

高炉と転炉は、酸化還元や平衡、熱化学といった化学の基本が、そのまま巨大な設備と原料の配合、CO2の課題に表れる工程です。鉄鉱石から鋼材、自動車や建設の需要家までの商流は鉄鋼・非鉄金属業界の構造で、業界の主要企業や仕事の種類は上で紹介した業界の解説記事で整理しています。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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