UPSは、停電や電源異常が起きたときに、蓄えた電力で接続機器への給電を続ける無停電電源装置です。制御盤では、制御機器の停止を防ぐだけでなく、データ保存や設備を安全な状態へ移すための時間を確保します。
ただし、制御盤の電源を保てても、別の電源につながるポンプや通信機器まで動き続けるわけではありません。まず保護する機器と、停電時に続ける動作・止める動作を決めることが、UPSを選ぶ出発点です。
この記事では、UPSの役割と三つの給電方式を整理し、VA・Wで表す容量とバックアップ時間の見方を解説します。方式の名前だけで判断せず、制御システム全体の電源の流れから使い分けを考えましょう。
動画の補足として、通常時の電圧調整は電池の常時補助ではなく、主にAVRが担います。安全性やノイズ性能も方式名で一律に決まらず、負荷の要求と機種の仕様で評価します。
UPSとは
UPSはUninterruptible Power Supplyの略で、無停電電源装置と呼ばれます。通常は商用電源を受けて負荷へ給電しながら蓄電池を充電し、電源異常時には蓄えたエネルギーを使って出力を維持します。
蓄電池は筐体に内蔵するものと、外部の電池装置を接続するものがあります。机の下に置く小型機から、サーバーや工場の重要設備を支える大型システムまで、規模に応じた構成が使われます。
UPSは蓄えたエネルギーを使い、電源異常の間をつなぎます。発電機が起動するまで給電したり、電池が尽きる前に対象機器を終了させたりする使い方があります。
例えば、監視用パソコンが動く間に運転記録を保存し、その後にOSを終了させます。UPSへ接続しただけで保存処理が自動になるのではなく、管理ソフトや通信・接点信号との連携が必要です。
プラントでは、DCSなどの制御・監視システムが保護対象になります。設備の要求に応じて、制御装置・監視端末・通信機器の電源構成と、必要なバックアップ範囲を決めます。
図1:制御電源を保つ範囲と、別電源の動力機器を分ける
UPSにつながる制御盤・監視機器と、通常の動力電源につながるモーターを描いた概念例です。
信号線は省略しています。通信スイッチや操作端も必要に応じて保護対象へ含め、実際のバックアップ範囲を設計します。
制御盤の内側でも、交流電源、直流電源、通信機器の電源が分かれている場合があります。制御盤の内線・外線を整理した図面へ、UPSからの供給範囲を重ねると、保護する機器の抜けを見つけやすくなります。
UPSには交流入力・交流出力のもののほか、直流で使う制御機器向けの方式もあります。この記事で比較する常時インバータ・ラインインタラクティブ・常時商用は、交流を給電する代表的な方式です。
制御機器がDC24Vなら、ACのUPSから直流電源装置を介す構成と、DC側を直接バックアップする構成を区別します。必要な電圧・電流に加え、停電検知や停止指令をどの機器へ渡すかも設計条件です。

UPSの役割
UPSの役割は、短い電源異常を乗り切ることと、長い停電に備えて終了処理の時間を確保することに分けられます。運転を続ける目的と、設備を止める目的では、保護対象も必要な保持時間も変わります。
突発的な電圧低下による装置停止対策
電圧が一時的に下がる現象を瞬時電圧低下、供給が短時間途絶える現象を瞬停と呼びます。停電や瞬停と違い、瞬低では電圧がゼロまで下がるとは限りません。落雷に伴う系統事故や大きな負荷の始動などによる短い変動でも、制御機器が停止する場合があります。
電線の断線や電源の抜け、保護装置の動作による遮断も、接続機器から見れば給電の異常です。UPSは入力を監視し、機種ごとの範囲を外れると電池を使うなどして、出力を維持します。
ここで区別したいのが、給電を切り替える時間と、電池で給電できる時間です。前者は負荷が瞬間的な中断に耐えられるかに関係し、後者は保存や停止を終えるまで電力が残るかに関係します。
切替時間が短いUPSでも、電池が劣化していれば必要な時間を保てません。逆に、大容量の電池があっても、切替時の中断が機器の許容範囲を超えると、その瞬間に制御が止まる可能性があります。
出力の電圧・周波数・波形を、接続機器が許容する電源仕様と対応させます。給電方式の選定では、平常時の電源環境と、異常時に必要な出力品質を先に定めます。
電源経路と信号経路では、ノイズ対策を入れる場所と目的が異なります。ノイズフィルタの役割と配置も整理し、UPSの電源変換機能と合わせて対策します。
上流の事故と、UPSの出力につないだ機器の短絡は、保護の考え方が異なります。配線用遮断器と漏電遮断器を含め、どの異常でどの部分を切り離すかを電源系統全体で整理します。
生産データの保守
生産設備では、測定値、警報履歴、製造条件などをコンピューターへ記録します。電源が急に切れると、保存中のファイルやデータベースの整合性に影響し、停止直前の記録が残らないことがあります。
UPSで記録装置への給電を維持すると、保存処理やアプリケーションの終了に必要な時間を確保できます。停電を検知してから、何を保存し、どのサービスを止めるかという手順も、電源の設計と合わせて決めます。
監視用パソコンだけを保護しても、ネットワークスイッチが停止すれば、別の装置からのデータは届きません。記録を継続する目的なら、測定・制御・通信・保存先までの必要な経路をたどります。
UPSの電池運転や残量低下を、接点信号で制御装置へ渡す構成もあります。接点を扱うときのDI・DOの方向と信号の意味をそろえ、停電中にどの条件を検出できるかを整理します。
図2:電池が残る間に、必要な保存と停止を終える
工程の並びを示す時系列の例です。各欄の幅は処理時間の比率を表していません。
工程によって、設備停止とデータ保存の順序は変わります。給電方式の切替時間(ms)と、ここで扱う保持時間(秒・分)は別の仕様です。
設備を安全な状態へ移すには、電力だけでなく停止の条件と順序が必要です。インターロックの考え方と合わせて、電源喪失時にどの出力を維持し、どの出力を解除するかを決めます。
例えば制御装置の電源が残っても、弁を動かす電磁弁や計装空気が使えなければ、意図した動作を完了できない場合があります。UPSの接続範囲と、停電時に設備が移る状態を別々に確かめます。
UPSの給電とは別に、保存済みデータを別媒体へ複製するバックアップも必要です。電源喪失への対策と、機器故障や誤操作によるデータ消失への対策を組み合わせます。
復電後も、UPSが出力を再開することと、パソコンが起動すること、設備が運転を再開することは別です。必要な充電状態と起動順序を定め、停電前の出力が不用意に再開しないよう、復旧の動作も設計します。
UPSの種類
交流給電のUPSには、常時インバータ給電方式、ラインインタラクティブ方式、常時商用給電方式があります。違いを理解するには、通常時に電力が通る経路と、入力異常時に使う経路を見分けます。
三方式とも、蓄電池の充電と電源異常時の給電を行います。一方、通常の電圧調整、電池運転への切替時間、損失や発熱には違いがあるため、用途に合わせて方式と機種を選びます。
常時インバータ給電方式
常時インバータ給電方式では、通常時も商用電源をいったん直流へ変換し、インバータで交流へ戻して負荷へ供給します。出力側はインバータから給電され、蓄電池は直流側の回路につながります。
図3:常時インバータ方式では、通常時も出力を作り直す
通常の主経路は整流器・DC母線・インバータです。電池運転へ移っても、出力側のインバータを使い続けます。
電池の充放電・保護回路は簡略化しています。バイパス時は通常の電力変換経路を通らず、保護の範囲が変わります。
入力が途絶えたときは、直流側の電力を蓄電池から受け、同じインバータで交流出力を維持します。このため、通常運転から電池運転へ移る際に、給電経路を切り替える瞬断がないことが特徴です。
出力の電圧や周波数を整えやすく、電源品質の要求が高いサーバーや制御機器で使われます。入力の乱れをどこまで抑えるかは、入力範囲や出力精度など、機種の仕様で判断します。
常に電力を変換するため、その損失と発熱への配慮が必要です。盤内の温度と排熱の経路に応じて設置場所を決め、必要な周囲空間を確保して、機器を保守できる構成にします。
過負荷や内部の異常時などに、商用電源を直接出力するバイパスを備えた機種もあります。バイパス中はインバータが電源を作り直す経路を通らないので、通常時と同じ保護が続くという理解は適切ではありません。
通常運転から電池運転への無瞬断と、故障時・保守時の切替条件は区別します。異常時に何を維持する必要があるかに応じ、冗長構成や保守用バイパスの必要性も検討します。
ラインインタラクティブ方式
ラインインタラクティブ方式は、通常時には商用電源側の経路で給電し、AVRという自動電圧調整機能で電圧変動を補正します。入力電圧が上がったり下がったりした場合に、変圧器のタップ切替などで出力を調整します。
図4:通常時の電圧調整と、停電時の電池給電を分ける
単巻変圧器のタップ切替を使うAVRの概念例です。共通線を持ち、入出力を絶縁する図ではありません。
充電経路と制御回路は省略。通常時のAVRによる調整と、電池運転への移行は別の動作です。
AVRで対応できる範囲の変動なら、電池を消費せずに電圧を調整できます。入力が使用範囲を外れた場合や停電時には、商用側から電池・インバータ側へ切り替えて負荷に給電します。
この切替には時間があるため、対象機器が許容する中断時間との照合が必要です。数msという切替時間は機種ごとの仕様値で、全機種共通の値ではありません。
常時商用方式に比べて通常時の電圧調整機能を持ち、サーバーや周辺機器などへ使われます。出力波形やノイズ対策は個別の回路にも左右されるので、「この方式にはノイズ除去機能がない」と一律に決めません。
入力の変動が頻繁に調整範囲を超えると、電池運転を繰り返す原因になります。給電方式を比較するときは、平常時に測った電圧の変動幅と、異常の頻度も役に立ちます。
常時商用給電方式
常時商用給電方式は、通常時は商用電源を主な経路として負荷へ渡し、同時に電池を充電します。停電などの入力異常を検知すると、電池からインバータを介した経路へ切り替えます。
図5:常時商用方式は、入力異常時に接点の行き先を変える
切替部を拡大した機能模式図です。実機のリレーや半導体スイッチの形状を示したものではありません。
正常時に常用する商用経路と、異常時の電池経路を示しています。機種ごとの出力波形や保護機能は別に確認します。
通常はインバータで常時変換しないため、内部で消費する電力を小さくしやすい方式です。小型・軽量の機種も多く、電源の変動が少ない環境のパソコンや周辺機器などで使われます。
一方、入力異常から電池運転へ移るまでには切替時間があります。負荷が許容する中断時間と、UPSの切替時間を照合して選びます。
電池運転中の出力は、正弦波の機種と矩形波の機種があります。負荷の電源回路が求める波形と合わせることが必要で、容量が足りていても出力波形が適合しない組合せがあります。
特にモーターや変圧器などの負荷、起動時に大きな電流を流す負荷は、接続可否を機種の条件から判断します。一般的な小型UPSへ工場の動力機器をまとめてつなぐ構成は、制御電源の保護とは分けて検討します。
図6:通常の経路・切替・電圧調整を比べる
代表的な機能をまとめています。波形や切替時間の数値、バイパス機能の有無は機種の仕様で照合します。
| 比較する点 | 常時インバータ | ラインインタラクティブ | 常時商用 |
|---|---|---|---|
| 通常時の主経路 | 整流器・インバータ経由 | 商用経路+AVR | 商用経路 |
| 電池への移行 | 通常運転からは無瞬断 | 切替時間がある | 切替時間がある |
| 通常の電圧調整 | インバータで出力を生成 | AVRで調整範囲を持つ | 主に商用入力に依存 |
| 選定の要点 | 出力品質・損失・排熱・バイパス | AVR範囲・切替・入力変動頻度 | 切替・出力波形・電源環境 |
容量はVAとW、時間は負荷に対する曲線で選ぶ
UPSの出力容量には、皮相電力を表すVAと、有効電力を表すWの両方が示されます。接続する機器の合計が、どちらの定格も超えないことが必要で、VAだけ大きければ足りるというものではありません。
例として、制御機器120W・150VA、監視端末180W・225VA、通信機器40W・50VAを接続するとします。各値は計算のための仮定で、実機を選ぶときは機器ごとの最大消費電力や仕様値を使います。
この例で1000VA・300WのUPSを選ぶと、VAには余裕があっても、負荷340WがW定格を超えます。VAとWの両定格を、負荷一覧の合計と突き合わせます。
容量の余裕には、将来の増設や負荷の変動も関係します。ただし定格内でも起動時の突入電流などで過負荷になる場合があるため、通常の消費電力と瞬間的な負荷を分けて評価します。
バックアップ時間は、同じUPSでも接続負荷のWによって変わります。メーカーの時間表や曲線へ実負荷を当てはめ、必要な保存・停止時間を確保できるかを調べます。
電池のVとAhを掛ければ、定格上のエネルギーの目安は得られます。しかし実際の保持時間には放電条件、変換損失、終止電圧などが関係し、その値を負荷Wで割るだけでは機種の性能を決められません。
必要時間は、電源異常の検知待ち、記録の保存、設備の停止、OSの終了などから積み上げます。一律に10分と決めず、処理が混み合ったときの所要時間や、終了直前の余裕も含めて計画します。
電池の劣化と周囲温度も、確保できる時間に影響します。交換時期まで必要な時間を保てるよう、容量の余裕と点検計画を持たせます。
盤内の発熱、吸排気の妨げ、設置場所の温度上昇は、電池と本体の寿命に関係します。電池の種類と機種の温度条件に応じて、交換時期を定めます。
負荷側の異常を切り離すため、サーキットプロテクタの保護範囲と、ヒューズの定格・遮断の役割を整理します。インバータ運転とバイパス運転では、供給できる短絡電流が異なります。機種の短絡・過負荷特性と保護機器の動作特性を照合し、分岐の構成と保護協調を設計します。
保守では警報履歴、電池の状態、負荷の増減、必要な保持時間を定期的に見直します。実際の停電を待つだけでは劣化を見つけにくいため、機種の診断機能と、影響を管理した点検計画を組み合わせます。
UPSのよくある質問
UPSを付ければ工場は止まりませんか?
UPSが給電する範囲と、電池が保つ時間の中で機器を支えます。別電源の動力や計装空気、通信などが停止すれば運転を続けられない場合があるため、継続する設備と停止する設備を分けて設計します。
常時インバータなら、どの異常でも無瞬断ですか?
通常のインバータ給電から電池給電へ移る際の無瞬断を特徴とします。内部故障や過負荷、バイパス・保守時の動作は別条件なので、異常時も含めた動作仕様を機種ごとに読みます。
UPSの容量が大きければ長時間使えますか?
出力容量のVA・Wと、蓄電池が供給できる時間は別の性能です。同じ出力容量でも電池の構成で保持時間が変わるので、接続負荷Wに対する時間表を使って必要な時間を選びます。
UPSだけでデータを自動保存できますか?
UPSは給電する装置なので、保存や終了のための連携が必要です。対応ソフトや通信・接点で異常を伝え、アプリケーションとOSの終了を、電池が残っている間に完了する構成にします。
停電から戻れば、すぐ通常運転へ戻せますか?
電源が戻ることと、十分に充電されることは同時ではありません。再停電時に必要な処理を終えられるかを考え、UPS出力・コンピューター・設備の起動順序と再開条件を決めておきます。
まとめ
UPSは電源異常時に機器への給電を続け、運転の継続や保存・停止のための時間を確保します。何を守るかを先に決め、制御電源が残ることと設備全体が動き続けることを分けて考えましょう。
三方式は、通常時の経路と電圧調整、電池への切替に違いがあります。常時インバータの無瞬断という特徴も、通常の電池移行とバイパス時を区別し、必要な電源品質に合わせて選びます。
容量はVAとWの両方、保持時間は実負荷Wに対する曲線から評価します。停止の順序、復電後の再開条件、電池の劣化と保守まで含めることで、UPSを設備の電源対策として生かせます。
出典
- オムロン:UPSの給電方式
- 三菱電機:無停電電源装置の製品特長(電源障害・給電方式・バイパス)
- 関西電力送配電:瞬時電圧低下
- オムロン制御機器:UPS技術解説・概要
- オムロン制御機器:シャットダウンソフト
- 富士電機:UPSの選定方法
- シュナイダーエレクトリック:UPSの選定方法
- オムロン:仕様項目の説明
- オムロン:復電後のパソコン自動起動
- シュナイダーエレクトリック:電源障害時のシャットダウンシーケンス(復電・再充電と再停電)
- シュナイダーエレクトリック:UPS下流の保護協調(三相UPSの個別検討例)
- シュナイダーエレクトリック:AVRの電圧調整と電池運転の違い
- ルネサス:単巻変圧器のタップ切替によるAVRの設計例(図4の原理。UPSの実配線図ではありません)
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