2026年7〜9月にファナックがFA部門で受けた注文は1,122億円で、前年同期の2.3倍に増えました。CNC(工作機械を動かす数値制御装置)を中心とするFAの好調などを受け、同社は10月23日に通期予想を売上高1兆137億円、営業利益2,407億円へ引き上げています。
この記事では、上方修正の数字と、その裏にある工作機械向けの需要を読みます。決算短信と決算説明会資料を読むと、どの地域のどんな用途が伸び、どこにまだ分からない部分が残っているかが見えてきます。最後に、取引先や同業、就職・転職を考える人がどの数字を見ればよいかもまとめます。
ファナックの上方修正|売上1兆137億円・営業利益2,407億円に
ファナックは2026年10月23日、2027年3月期(同社の呼び方では2026年度)の通期予想を7月に続いて引き上げました。売上高は前回予想比6.9%増の1兆137億円、営業利益は10.4%増の2,407億円で、経常利益は3,088億円、純利益は2,283億円です。
売上・利益の4項目とも、期初予想から段階的に引き上げられています。
4月24日
7月31日
10月23日
※純利益は親会社株主に帰属する当期純利益。2027年3月期の通期予想。出典:ファナック 2026年3月期決算短信、2027年3月期第1四半期・第2四半期決算短信
前期(2026年3月期)の実績は売上高8,578億円、営業利益1,838億円で、売上はこれまでの最高でした。今回の予想どおりなら売上は前期比18.2%増となり、初めて1兆円を超えます。営業利益率も前期の21.4%から23.7%へ上がる計算です。
7月の修正では売上の上げ幅に比べて利益の上げ幅が小さく、部品の値上がりや米国の関税の影響を織り込んだためと説明されていました。今回は営業利益の上げ幅が売上を上回っており、上期の実績が7月時点の見込みをはっきり上回ったことが修正の土台になっています。
上期の増益を分解|売上増が中心、経常は持分法の利益が上乗せ

2026年4〜9月の上期は、売上高が前年同期比16.2%増の4,737億円、営業利益が35.7%増の1,167億円でした。7月時点の上期予想と比べると、売上は1.7%上回っただけですが、営業利益は11.7%上回りました。
売上の伸びより利益の伸びが大きく、下の段ほど伸び率が高くなっています。
※純利益は親会社株主に帰属する中間純利益。出典:ファナック 2027年3月期第2四半期(中間期)決算短信
営業利益を押し上げたもの
決算説明会資料の営業利益の増減分析では、前年同期の860億円から1,167億円への増加307億円のうち、235億円が売上の増加による分とされています。残りは原価差額の改善が27億円、その他が65億円などで、販売費・一般管理費の増加は37億円のマイナスでした。
売上原価率は前年同期の61.8%から59.1%へ下がっています。上期の平均為替は1ドル159.37円で、前年同期の146.04円より円安でした。海外売上が大きい同社には追い風ですが、資料は為替だけの影響額を示していないため、増益の主因は数量の増加と原価率の改善と読むのが妥当です。
経常利益の伸びが大きい理由
経常利益の伸び(38.1%)が営業利益(35.7%)を上回ったのは、本業以外の利益が増えたためです。持分法による投資利益(出資先の利益のうち自社の持ち分)が前年同期の147億円から230億円に増え、受取利息も52億円ありました。
このため「経常38%増益」という見出しには、本業の外で増えた分が含まれます。本業の稼ぐ力を見るなら、営業利益率が21.1%から24.6%へ上がった点を押さえておくと実態に近くなります。事業の仕組みや高収益の理由は、ファナックの企業研究で整理しています。
部門別に見る上期売上|ロボマシン31%増、FAとロボットも2桁増
ファナックはセグメントを1つにまとめて開示していますが、決算短信ではFA、ロボット、ロボマシン、サービスの4部門ごとに売上と市場の動きが説明されています。
4部門すべてが2桁増で、伸び率はロボマシンが最も高くなりました。
※金額は億円未満を四捨五入、伸び率は前年同期比。出典:ファナック 2027年3月期第2四半期(中間期)決算短信
金額が最も大きいのはロボットですが、伸び率は12.6%と4部門で最も低くなりました。中国の自動車向けが停滞した影響が出ており、上期の増収を引っ張ったのはFAとロボマシンという加工機まわりの2部門です。
ロボドリルは小型の部品を削る切削加工機、ロボカットは金型などを放電で切り抜く加工機で、どちらも上期は中国での需要増が効きました。旋盤やマシニングセンタとの違いは工作機械の種類と使い分けでまとめています。

7〜9月のFA受注は前年の2.3倍|CNCの注文が工作機械需要の先を映す理由
ここからは7〜9月(第2四半期)の受注を見ます。FA部門の受注は1,122億円で、前年同期比130.1%増、前の四半期比でも24.4%増でした。四半期ごとの推移は488億円、547億円、711億円、902億円、1,122億円と、1年間増え続けています。
前年同期の水準が低かったため伸び率は大きく見えますが、前の四半期からも2割以上増えている点が重要です。全社の受注3,060億円に占めるFAの割合は、1年前の23.7%から36.7%まで上がりました。
CNCは工作機械に組み込まれる部品なので、機械メーカーの注文が先に動きます。
※期間は機種や納期で異なり、ここでは順番だけを示しています。
工作機械メーカーは、自社の機械の注文が増えそうだと見ると、頭脳にあたるCNCとサーボモータを先に手配しやすくなります。このためCNCの受注は、工作機械の生産や出荷より早く需要の向きを映しやすいのです。統計の読み方は工作機械受注の推移と読み方で詳しく扱っています。
何が伸びたか|AIデータセンタ、半導体、人型ロボットの部品加工
決算説明会資料は、FAの需要を引っ張った用途として次のものを挙げています。
- AIデータセンタ向けの機器(中国、日本、韓国、台湾)
- 半導体関連の装置や部品
- 人型ロボットの機械加工部品(中国)
- NEV(電気自動車などの新エネルギー車、中国)
- 航空宇宙(日本、米州)と、自動車・社会インフラ(インド)
資料は用途の名前を挙げるだけで、金額の内訳は示していません。挙がった用途はいずれも部品の機械加工と関わりが深く、工作機械向けの需要がCNCの受注に先に表れていると読めます。
地域別|中国とアジアで受注が急増、売上の伸びはまだ小さい
全社の受注を地域別に見ると、7〜9月は中国が912億円で前年同期比79.8%増、中国以外のアジアが653億円で111.9%増でした。同じ期間の売上の伸びは中国20.8%、アジア17.2%にとどまり、受注の伸びが売上に表れるまでには時間差があります。
中国・アジア・国内は、受注の伸びが売上の伸びを大きく上回っています。
※全部門合計の受注高・売上高。濃い棒が受注、薄い棒が売上。出典:ファナック 2026年度第2四半期 決算説明会資料
国内の受注も54.3%増と大きく伸びており、AIデータセンタや半導体、航空宇宙向けを中心に工作機械メーカーの国内外の注文が好調なことが背景と説明されています。一方で欧州は受注・売上とも5%台の伸びで、回復は始まったばかりという同社の説明と合っています。
業界全体の動きも同じ向きです。日本工作機械工業会の速報を整理した第一生命経済研究所のレポートによると、2026年9月の工作機械受注は2,232億円で前年同月比60.4%増、13か月連続の2桁増でした。
対象や集計の時点はファナックの受注と異なるため、比べられるのは向きまでで、ロボット側の業界統計は産業用ロボット受注額の推移で確認できます。
受注が売上を上回る理由|部品の納期と先行発注

7〜9月の全社受注は3,060億円、売上は2,427億円で、受注は売上の約1.26倍でした。FA部門だけで見ると受注1,122億円に対して売上625億円で、約1.8倍の開きがあります。
この差について同社は、7月31日の第1四半期決算説明会の質疑で、一部部品の納期が長くなっていることを理由に挙げていました。納期が延びると、顧客は必要な時期より早めに注文を入れるため、受注の一部は先回りした注文の可能性があるという説明です。
同じ質疑では、第1四半期の受注水準が続くかまでは見通せていないとも述べています。今回の資料に受注残高の数字は載っていないため、積み上がった受注がいつ売上になるかは、次の四半期の売上の伸びで確かめるしかありません。
需要の強さと、納期の長期化による先回りの注文が混ざっています。
※2026年7月31日開催の第1四半期決算説明会の質疑応答要旨より。第2四半期の質疑要旨は本記事の執筆時点で未掲載。
調達の逼迫は同社だけの問題ではなく、世界的な設備投資の増加で業界全体がタイトになっていると説明されています。同社は代替品やセカンドソース(2社目の調達先)も使って納期の正常化を進めるとしており、納期が戻れば先回りの注文は減ると考えておくのが自然です。
下期予想の前提と見るべき点|1ドル150円で組んだ計画
通期予想から上期実績を引くと、下期(10月〜2027年3月)に見込んでいる数字が分かります。売上高は5,400億円、営業利益は1,240億円で、いずれも記事中の計算値です。下期の売上を上期より14%増やす計画は、7〜9月の受注が売上を大きく上回っている状況と整合します。
売上は上期より増やす一方、利益率と為替は上期より控えめに置いています。
※下期の売上高・営業利益は通期予想から上期実績を引いた計算値。為替前提は決算短信の注記による。
同社が受注を予定どおり出荷できるかどうかは、部品の調達にかかっています。利益率を上期より低く置いた理由は今回の資料に書かれていませんが、7月の質疑では部品の値上がりと価格転嫁の時間差が挙がっていました。
為替は上期実績より約9円の円高で計画しているため、円安が続いた場合は売上・利益とも押し上げ要因になります。ただし実際の為替は動くので、四半期ごとの為替と受注の両方を確かめる必要があります。
株主還元では、中間配当を前年の51.33円から72.54円に増やし、上限500億円・1,000万株の自社株買いも決めました。同じ月に予想を修正した安川電機の業績予想修正は営業利益だけを下げる内容だったため、FA大手2社でも利益の出方が分かれています。
取引先・同業・就職で見るポイント
同じ受注増のニュースでも、立場によって確かめるべき数字は異なります。
受注の伸びは入口で、地域・用途・納期まで見ると判断に使えます。
※数字はいずれも同社の決算短信・決算説明会資料で四半期ごとに更新されます。
部品サプライヤーにとっては、FAの受注増はそのまま自社への注文増になりやすい一方、納期が正常に戻った時点で発注が急に落ち着くおそれもあります。受注の伸び率だけでなく、前の四半期からの増え方と売上の伸びを毎回並べておくと、山の高さを見誤りにくくなります。
同社は9月の米国の見本市IMTS 2026で、生成AIを使うPhysical AI CNCや新しいCNC「Series 500i-A」を展示しました。こうした技術の流れはフィジカルAIの最新動向で、国内の新製品は10月26日開幕のJIMTOF2026の見どころで確かめられます。
ファナックの上方修正のよくある質問
ファナックの決算短信と説明会資料はどこで見られますか?
ファナックのWebサイトの投資家情報にある「決算短信・決算説明会資料等」のページに、四半期ごとのPDFが掲載されています。説明会の質疑応答要旨も同じページに後から追加されます。
今回の決算で配当や自社株買いは変わりましたか?
中間配当は1株72.54円で、前年の51.33円から増えました。期末配当は未定で、あわせて上限500億円の自社株買いを2026年10月26日から2027年4月30日までの期間で行うと決めました。
ロボット部門の伸びがFAより小さいのはなぜですか?
上期の決算短信によると、中国の自動車産業向けが停滞したためです。米州や国内、中国の一般産業向けは伸びており、7〜9月のロボット受注も前年同期比12.6%増と2桁の伸びを保ちました。
フィジカルAIはすでに業績に効いていますか?
7月の質疑では、引き合いは多いものの実装はまだトライアル段階が多いと説明されています。今回の増益の中心はCNCや加工機の数量増で、フィジカルAIによる需要の本格的な拡大はこれからと同社は見ています。
まとめ
- ファナックは2026年10月23日、通期予想を売上高1兆137億円・営業利益2,407億円に上方修正した(7月に続き2回目)
- 上期は営業利益35.7%増。増益の中心は売上増で、経常は持分法の利益が上乗せした
- 7〜9月のFA受注は1,122億円で前年同期の2.3倍、前四半期比でも24.4%増えた
- 中国・アジア・国内で受注が急増し、AIデータセンタ・半導体・人型ロボット部品・NEVが牽引した
- 受注には部品納期の長期化による先回りの注文も含まれうるため、売上への表れ方を次の四半期で確かめる
CNCの受注は工作機械の需要を先に映すため、ファナックの決算は加工機まわりで働く人にとって景気の早めの手がかりになります。業界の全体像はFA・ロボットの業種ページや産業機械・工作機械の業種ページ、顧客の設備投資の相談に乗る技術営業の職種ページからもたどれます。
出典
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