PFAS(有機フッ素化合物の一群)と呼ばれる物質は、1万種類以上あるとされます。規制の対象は、物質のグループ、用途、国や地域によって大きく異なります。
すでに製造や輸入が禁止された物質がある一方で、EUでPFASを広く対象にする制限のように、まだ審議の途中のものもあります。
顧客から含有調査票(製品に特定の物質が含まれるかを答える書類)が届いたときは、決まったことと審議中のことを分けて読む必要があります。
この記事では、2026年10月1日時点の公的資料をもとに、PFASに関する情報を整理します。PFASの範囲、国内と海外の規制のうち決まっていることと審議中のこと、影響を受けやすい部材や工程、自社での調べ方、代替検討の進め方の順です。
PFAS規制で製造業が困る理由と、先に押さえる4点
現場で起きている困りごとは、おおむね3つに分けられます。顧客から「PFAS不使用」の証明や含有調査を求められる、ニュースや解説によって言っていることが違い何が決定事項か分からない、仕入先に問い合わせても十分な情報が返ってこない、の3つです。
原因の多くは、「PFAS」という言葉が指す範囲と、それぞれの規制が対象にしている範囲がずれていることにあります。ひとくくりに語られがちですが、規制は物質群と用途ごとに組み立てられています。
細かい話に入る前に、全体像として次の4点を押さえておくと、この後の内容が読みやすくなります。
「すべて禁止」ではなく、物質群・用途・地域ごとに状況が違います。
※2026年10月1日時点の公表資料にもとづく整理です。最新の状況は各機関の公式ページで確認してください。
PFASとは|規制済みの物質とフッ素樹脂は分けて考える
PFAS(ピーファス)は、ペルフルオロアルキル化合物とポリフルオロアルキル化合物をまとめた呼び名です。環境省のPFASハンドブックは、分類の仕方によって数は変わるものの、1万種類以上の物質があるとされると説明しています。
広く参照されているのは、OECD(経済協力開発機構)が2021年に示した定義です。
完全にフッ素化されたメチル基(-CF3)またはメチレン基(-CF2-)の炭素原子を少なくとも1つ含むフッ素化合物、という定義です。
構造だけで決まる定義なので、有害性が確認されているかどうかとは別の話になります。
共通するのは、炭素とフッ素の結合が強く安定していることです。そのため分解されにくく、物質によっては水や油をはじく、熱や薬品に強いといった性質を示します。
ハンドブックでは用途として、溶剤、界面活性剤、繊維や紙の表面処理剤、イオン交換膜、潤滑剤、泡消火薬剤、半導体原料、フッ素ポリマーの加工助剤が挙げられています。
同じPFASでも、規制の進み方は区分ごとに異なります。
※説明のための大まかな区分です。冷媒などのフッ素系ガスも、定義によってはPFASに含まれます。
規制が先行している4つの物質群
規制が先に進んだのは、PFOS(ペルフルオロオクタンスルホン酸)、PFOA(ペルフルオロオクタン酸)、PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)です。これに長鎖PFCA(炭素数9〜21のペルフルオロカルボン酸)を加えた4つです。
難分解性、高蓄積性、長距離移動性という性質から、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約)の対象に順次追加されてきました。
追加の時期は、PFOSが2009年、PFOAが2019年、PFHxSが2022年です。長鎖PFCAは2025年4月から5月に開かれた第12回締約国会議で、廃絶の対象に加えることが決まりました。
注意したいのは、酸や塩そのものだけでなく「関連物質」も対象になることです。関連物質とは、環境中で分解されてPFOAや長鎖PFCAなどに変わる物質を指します。
名前に「PFOA」と書かれていない原料や添加剤が該当することがあるため、調査を難しくする要因になっています。
フッ素樹脂・フッ素ゴムの位置づけ
PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)に代表されるフッ素樹脂やフッ素ゴムは、OECDの定義に当てはめるとPFASに含まれます。ただし高分子であり、PFOSやPFOAのような低分子の物質とは性質が異なります。
環境省のハンドブックは、フッ素樹脂でコーティングされたフライパンや撥水スプレーなどについて、PFOS・PFOAとは別の物質が使われていると説明しています。
PFOAはかつてフッ素コート剤の製造過程で使われていましたが、企業の自主的な取り組みで全廃されたとのことです。
日本弗素樹脂工業会と日本フルオロケミカルプロダクト協議会(FCJ)は、条約で規制済みのPFASを「特定PFAS」と呼ぶことを提案しています。ほかのPFASと区別するためです。
一方で、後述するEUの包括制限案はフッ素ポリマーも対象に含めており、日本弗素樹脂工業会は反対の意見を提出しています。立場によって見方が分かれている論点だと理解しておくのがよいでしょう。
国内の規制|化審法で何がいつ禁止されたか
国内でPFASの製造や輸入を規制しているのは、化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)です。POPs条約で対象になった物質を、順に「第一種特定化学物質」に指定してきました。
第一種特定化学物質は、難分解性、高蓄積性、長期毒性などを持つ化学物質です。指定されると、製造と輸入は許可制(原則禁止)になり、使用も政令で認められた用途に限られます。
あわせて、その物質が使われている特定の製品の輸入禁止や、取り扱う事業者の基準適合義務・表示義務が定められます。
条約での決定を受けて、第一種特定化学物質への指定が順に施行されています。
※環境省・経済産業省の公表資料による。年月は指定の施行時期。PFOAの分枝異性体は2024年9月に指定。
長鎖PFCAは2026年11月22日に施行
直近の動きが、長鎖PFCAの指定です。化審法施行令を改正する政令が2026年5月19日に閣議決定され、5月22日に公布されました。指定の施行日は公布から6か月後の2026年11月22日です。
対象は「長鎖PFCAとその塩」と「長鎖PFCA関連物質」です。関連物質の具体的な範囲は、厚生労働省・経済産業省・環境省の省令で定める方式がとられました。
e-Govのパブリックコメントの結果公示によると、この省令は2026年9月18日に公布されています。
5月の審議会に示された案の別表には156の物質が並んでいました。ただし意見募集の後に技術的な修正が加えられたとされており、該当の有無は公布された省令で確認する必要があります。
もう一つ知っておきたいのは、例外的に使用を認める用途、いわゆるエッセンシャルユースが設けられていないことです。3省が示した措置案には、政令で指定する用途を設けることなく使用を禁止すると書かれています。
なお環境省のハンドブックは、長鎖PFCAについて、2017年度以降は製造・輸入・出荷がほとんどないことが確認されていると説明しています。
輸入できなくなる製品
部品や材料を海外から調達している会社に関係が深いのが、輸入禁止製品の指定です。政令は、長鎖PFCAやその関連物質が使われている場合に輸入できない製品として、次の10品目を定めています。
2026年11月22日から、次の10品目が対象になります。
※政令(令和8年5月22日公布)の表をもとに4つにまとめたもの。製品の区分の詳細は経済産業省の資料で確認してください。
2026年6月17日に指定が施行されたPFHxS関連物質でも、同じように10種類の製品が指定されました。
こちらには、金属の加工や半導体の製造に使うエッチング剤、メッキ用の表面処理剤、半導体用のレジストや反射防止剤が含まれています。
物質群ごとに対象製品が違うので、自社の輸入品がどの表に当たるかを個別に見ることになります。
水道水の基準と健康影響の評価
製造・輸入の規制とは別に、水道水の管理も強化されています。PFOSとPFOAの合算で1リットルあたり50ナノグラムという値が、2026年4月1日から水道法の水質基準になりました。それまでは暫定の目標値という位置づけでした。
健康影響については、食品安全委員会が2024年6月に評価書をまとめました。耐容一日摂取量(一生涯毎日摂取し続けても健康への悪影響がないと推定される量)は、PFOS、PFOAそれぞれ体重1kgあたり1日20ナノグラムとされました。
同委員会は、通常の一般的な食生活から摂取される程度のPFOS・PFOAによって、著しい健康影響が生じる状況にはないとの見方を示しています。
一方で、健康影響に関する情報はまだ不足しているともされており、国による調査研究が続いています。
海外の規制|EUと米国は「決定済み」と「審議中」を分けて読む

海外の規制は、日本よりも対象が広いものがあり、輸出品や海外顧客向けの部材に影響します。ただし、ニュースで大きく扱われる話題ほど、まだ決まっていない段階のものが多い点に注意が必要です。
すでに決まっているものと、提案・審議の段階にあるものを分けて整理します。
※各機関の公表資料にもとづく。審議の進み方によって内容や時期は変わる可能性があります。
EU:個別の制限は適用が始まり、包括制限は審議が続く
すでに決まっているものの一つが、PFHxA(ウンデカフルオロヘキサン酸)とその関連物質の制限です。REACH規則の附属書XVIIを改正する規則(EU)2024/2462で定められました。
2026年10月10日から、一般消費者向けの衣類や履物、食品に接触する紙・板紙、化粧品などが対象になります。PFHxAとその塩の合計が25ppb以上、関連物質の合計が1,000ppb以上のものは、上市・使用ができなくなります。
適用時期は用途ごとに異なり、訓練用などの一部の泡消火薬剤は2026年4月10日からです。衣類以外の一般消費者向け繊維製品は2027年10月10日から、民間航空の泡消火薬剤は2029年10月10日からとされています。
包装・包装廃棄物規則(PPWR、規則(EU)2025/40)にもPFASの規定があります。2026年8月12日から、食品接触包装は一定の濃度以上のPFASを含む場合に上市できません。
基準は、個別のPFASで25ppb、合計で250ppb、フッ素ポリマーを含むPFAS全体で50ppmの3段階です。
一方、もっとも注目されている包括制限案は、まだ審議の途中です。2023年1月にドイツ、オランダ、デンマーク、スウェーデン、ノルウェーの5か国の当局が欧州化学品庁(ECHA)に提出したものです。法令として成立したものではありません。
2026年3月に、ECHAのリスク評価委員会(RAC)が最終意見を採択し、社会経済分析委員会(SEAC)が意見案に合意しました(ECHAの発表は3月26日)。
ECHAの発表を伝える法律事務所などの解説によると、どちらも用途ごとの除外を条件にEU全体での制限を支持しています。SEACは、代替手段がまだない用途に絞った除外を設ける考え方を示しています。
意見案への意見募集は5月25日に締め切られ、SEACの最終意見は2026年末までに採択される見込みです。
なお、審議の途中で追加された8つの分野は、2026年中の意見のとりまとめには含まれず、評価に2026年より後までかかるとされています。
その後は、欧州委員会が制限の案を作成し、加盟国の投票にかける手順になります。
2026年10月1日時点で当サイトが確認した範囲では、SEACの最終意見の採択と、両委員会の意見の欧州委員会への送付は確認できていません。
どの用途が除外されるか、移行期間が何年になるかは、最終的な法令が出るまで確定しないと考えておくのが安全です。
米国:連邦の報告規則は延期が続き、州法が先行
米国の連邦レベルで製造業に関係が深いのは、有害物質規制法(TSCA)第8条(a)(7)にもとづくPFAS報告規則です。
2011年以降にPFASやPFASを含む成形品を製造・輸入した事業者に、用途や数量などの報告を一度だけ求めるもので、2023年10月に最終化されました。
ただし、報告期間の開始は何度も延期されています。環境保護庁(EPA)は2025年11月に、輸入成形品や濃度0.1%以下の混合物などを報告対象から外す見直し案を公表しました。
続いて2026年4月13日の最終規則で、報告期間の開始を、2027年1月31日と、この見直しの最終規則の発効から60日後のうち、早いほうに改めました。
見直しの最終規則は、2026年10月1日時点で当サイトが確認した範囲では連邦官報に公布されていません。
州のレベルでは、製品への規制が先に進んでいます。
メイン州は、意図的に添加したPFASを含む製品の販売禁止を製品分類ごとに段階的に適用しており、2026年1月からは調理器具、化粧品、洗浄剤などが加わりました。
2032年1月からは「現在避けられない用途」と認められたものを除く製品全般が対象になります。ミネソタ州も2025年1月から11の製品分類で販売を禁止し、2032年に対象を広げる予定です。
州法には適用除外の規定もあり、対象は州ごとに違います。米国向けの製品がある場合は、販売先の州を確認したうえで、現地の代理店や専門家に該当性を確かめるのが確実です。
影響を受けやすい部材と工程

では、製造業のどこに影響が出やすいのでしょうか。フッ素系の材料は、耐熱性、耐薬品性、滑りやすさ、撥水・撥油性といった性質を理由に、目立たない場所で広く使われています。
部品そのものだけでなく、工程で使う薬剤や設備にも関係します。
※代表的な例であり、すべてが規制の対象という意味ではありません。該当するかどうかは物質と用途ごとに確認が必要です。
フッ素樹脂・フッ素ゴムと表面処理
シール、ガスケット、チューブ、コーティングなどのフッ素樹脂・フッ素ゴムの部品は、国内では製造・使用の禁止対象ではありません。影響が出るとすれば、EUの包括制限が成立した場合の輸出品や、材料メーカーの供給方針の変更を通じてです。
一方、撥水・撥油の表面処理に使う薬剤や、それで処理した生地・衣服は、化審法の輸入禁止製品に名前が挙がっている分野です。
処理剤を輸入している、あるいは処理済みの材料を海外から仕入れている場合は、早めの確認が欠かせません。めっきも無関係ではありません。
環境省の資料によると、PFOSは金属めっきの処理剤などに使われてきました。めっきの種類ごとに、使っている薬液の成分を仕入先に確かめておくと安心です。
半導体製造と電池材料
半導体では、露光に使うフォトレジストや反射防止剤、洗浄やエッチングの薬液、温度を制御する熱媒体、薬液を流す配管や装置の部品にフッ素系の材料が使われています。
半導体製造の工程の多くに関わるため、業界団体のSEMIは「PFAS Initiative」を立ち上げました。PFASへの依存を減らす取り組みを進めるとともに、代替がない場合には環境に配慮したリスク管理を行うという方針を示しています。
条約や各国の制度でも、半導体は例外規定の対象になりやすい分野です。ただし国内の化審法では、長鎖PFCAに例外的な使用用途は設けられませんでした。
「半導体向けだから対象外」とは一概に言えないので、物質ごとに確認する必要があります。エッチングに使うフッ素系ガスの排出については、排ガス処理装置(除害装置)による処理という別の論点もあります。
リチウムイオン電池では、電極の材料を固めるバインダーにフッ素樹脂のPVDF(ポリフッ化ビニリデン)が広く使われています。これもフッ素ポリマーなので、国内で禁止されているわけではありませんが、EUの審議の行方に左右される分野の一つです。
材料メーカーの動き
供給側の方針も確認しておきたい点です。米国の3Mは2022年12月に、2025年末までにPFASの製造から撤退し、製品でのPFAS使用の中止に取り組むと発表しました。
フッ素ポリマーやフッ素系の液体も含む方針で、同社製の材料を使っている工程では切り替えの検討が必要になります。
一方、国内の化学業界の大手は、供給を続ける姿勢を示しています。
ダイキン工業は2026年2月更新の公表資料で、フッ素材料は半導体や自動車、エネルギーなどに欠かせないという立場です。そのうえで、排水中のPFAS回収率を99.9%にする目標や、製造工程の新技術への切り替えを掲げました。
AGCの2024年2月付の同社ウェブサイトによると、PFOSとPFHxSは製造したことがありません。PFOAと長鎖PFCAは、規制に先立って使用・製造・販売を終了したとしています。
このように、規制そのものよりも先に、材料メーカーの方針で調達できる製品が変わることがあります。各社の方針は発表時点のものなので、使っている銘柄については仕入先に最新の状況を確かめてください。
自社の製品・工程での調べ方

ここからは対策です。最初にやることは代替材料を探すことではなく、どこに何が使われているかを把握することです。次の5つの手順で進めると、抜けが出にくくなります。
洗い出しから記録の更新までを、1つの流れとして回します。
※一度で完璧に把握するのは難しいため、重要度の高い製品から順に広げていくのが現実的です。
SDS・chemSHERPA・仕入先調査の使い分け
薬剤や材料については、まずSDS(安全データシート)を確認します。
ただしSDSの提供や成分の記載が義務づけられているのは、化管法・労働安全衛生法・毒物及び劇物取締法で指定された物質を一定の含有率以上含む場合などに限られます。
指定されていない物質や、含有率の低い成分は載っていないことがあります。SDSにフッ素系の物質名がないことは、PFASを含まないことの証明にはなりません。
部品や成形品では、製品含有化学物質の情報を伝える共通の仕組みであるchemSHERPA(ケムシェルパ)が使われています。
管理対象は、化審法、RoHS指令、REACH規則、TSCAなどの法規制と、IEC 62474やGADSLといった業界基準に載った物質です。
2026年3月公開の管理対象物質リストはVer.2.13.00で、定期的に改訂されています。
言い換えると、chemSHERPAで分かるのは「規制や業界基準の対象になっている物質が含まれるか」です。OECDの定義に当てはまるPFAS全体の有無までは分かりません。
顧客が求めているのがどちらなのかを確かめたうえで、足りない部分を仕入先への個別の調査で補うことになります。ここは購買・調達の担当と品質保証が連携して進める場面です。
CAS番号だけでは特定しきれない理由
含有調査では、化学物質を識別するCAS番号で照合するのが一般的です。しかしPFASでは、この方法に限界があります。
理由は3つあります。1つ目は、関連物質が構造の条件で定義されていることです。
長鎖PFCA関連物質の審議会資料でも、CAS番号は参考であり、化学物質名に含まれる化学物質が該当すると注記されています。2つ目は、PFASの定義自体が国や制度によって異なることです。
米国のTSCAの報告規則は、OECDとは別の構造の条件でPFASを定義しています。
3つ目は、意図して加えていなくても、製造工程の副生成物や不純物として微量に含まれる場合があることです。
日本弗素樹脂工業会は、PTFEマイクロパウダー中の副生PFOAへの対応について文書を公表しています。
こうした点は材料メーカーでなければ分からないため、「意図的な使用の有無」と「不純物としての含有の可能性」を分けて問い合わせると、回答が得やすくなります。

想定例:シール部品メーカーが調査依頼に答えるまで
ここで、架空の例で流れを確認します。実在の企業の事例ではありません。フッ素ゴムのOリングとPTFEのシートを加工している従業員80人の部品メーカーに、顧客の装置メーカーから「PFAS含有調査票」が届いたとします。
担当者はまず、顧客が言うPFASの範囲を確認しました。すると目的は2つあり、化審法などで規制された物質が含まれないことの確認と、EUの制限案に備えたフッ素ポリマーを含む使用箇所の把握でした。
そこで材料メーカーに、規制対象の物質を意図的に使用しているか、不純物として含む可能性があるかを問い合わせました。
回答をもとに、この会社は次の2つを分けて答えました。「製品はフッ素ポリマーであり、OECDの定義ではPFASに該当する」と「化審法の第一種特定化学物質は意図的に使用していない(材料メーカーの回答による)」です。
「PFASを含むか」という問いに一言で答えようとしないことが、誤解を防ぐポイントです。
代替検討の進め方
使用箇所と規制の関係が整理できたら、次は対応の方針を決めます。選択肢は「別の材料に替える」だけではありません。大きく3つに分けて考えると、検討の順序が見えてきます。
規制の確かさと、代替の難しさの両方から選びます。
規制の確かさで対応を分ける
化審法の第一種特定化学物質や、適用日が確定している海外の制限に当たるものは、期限までに使用をやめるか切り替えるしかありません。優先順位はもっとも高くなります。
一方、EUの包括制限案のように審議中のものは、除外される用途や移行期間がまだ決まっていません。この段階で全面的に切り替えると、性能や品質の面で別のリスクを抱えることがあります。
使用箇所の把握と代替候補の情報収集までを先に済ませ、切り替えの判断は法令の内容が固まってから行うという二段構えが現実的です。
代替の評価で確認すること
別の材料や工法に替える場合は、元の材料が担っていた機能を洗い出すところから始めます。耐熱性、耐薬品性、摺動性、撥水性、絶縁性など、フッ素系の材料は複数の機能を同時に担っていることが多いためです。
そのうえで、必要な性能を満たせるか、寿命や信頼性が変わらないか、工程や設備の変更が必要か、安定して調達できるかを確認します。見落としやすいのは、代替候補そのものの安全性と規制の状況です。
フッ素系でないからといって、将来規制されないとは限りません。
どの材料が適しているかは、使用条件によって変わります。この記事で特定の材料を勧めることはできません。
たとえばSEMIは2020年の見解で、半導体製造に必要な機能を十分に満たす代替は現時点ではないと述べており、分野によっては代替が容易でないことがうかがえます。
よくあるつまずきと相談先
つまずきやすいのは、顧客の承認にかかる時間を見込んでいないケースです。材質の変更は、顧客側での再評価や認定のやり直しを伴うことがあります。切り替えを決めてから量産に反映するまでの期間を、早い段階で顧客とすり合わせておく必要があります。
もう一つは、「PFASフリー」という表現の使い方です。何を基準に含まないと言うのか、定義、対象物質、しきい値、確認方法を示さないまま使うと、後で説明がつかなくなるおそれがあります。
個別の製品が規制に該当するかどうかの判断は、この記事の範囲を超えます。材料メーカーや仕入先、所属する業界団体、経済産業省など行政の相談窓口、専門家に確認してください。
化学物質の届出の手続きについては、上のカードで紹介した記事もあわせて参考になります。
まとめ
- PFASは1万種類以上あるとされ、規制は物質群・用途・国や地域ごとに異なる
- 国内は化審法による指定で、長鎖PFCAと関連物質は2026年11月22日に施行される
- EUの包括制限案は審議中で、除外される用途や移行期間は確定していない
- 調査は使用箇所の洗い出しから始め、規制対象の物質とPFAS全体を分けて答える
- 代替は「やめる・替える・管理して使う」の3つから、規制の確かさに応じて選ぶ
PFASへの対応は、一度調べて終わりではなく、法令と材料メーカーの動きに合わせて更新していく仕事です。関連する技術テーマとして材料技術や表面処理、担当する職種として品質保証・品質管理の記事もあわせてご覧ください。
フッ素化学を含む素材メーカーの動向は、化学・樹脂・ゴムの業種ページから関連記事をたどれます。
出典
出典・参考資料(20件)を開く出典・参考資料を閉じる
- PFASの定義・用途・条約と国内規制の経緯・水道水質基準・健康影響評価の概要:環境省「PFASハンドブック」(令和7年12月更新)、環境省「有機フッ素化合物(PFAS)について」
- PFASに関する今後の対応の方向性:環境省 PFASに対する総合戦略検討専門家会議(2023年)
- OECDによる定義:OECD “Reconciling Terminology of the Universe of Per- and Polyfluoroalkyl Substances”(2021年)
- 長鎖PFCA等の第一種特定化学物質への指定:環境省 報道発表(2026年5月19日)、経済産業省 ニュースリリース(2026年5月19日)、政令の案文・理由
- 長鎖PFCA関連物質の省令案と審議:3省合同会合 資料(2026年5月25日)、経済産業省 化審法のページ(意見募集の結果、2026年9月18日)、e-Govパブリック・コメント 結果公示(案件番号595126095)
- 第一種特定化学物質の指定日:経済産業省「第一種特定化学物質一覧」(2026年8月4日時点)
- PFHxS関連物質の指定:環境省 報道発表(2025年12月12日)、e-Gov法令検索「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律施行令」(改正履歴)
- 水道水質基準:環境省「水質基準に関する省令の一部を改正する省令」等の公布について
- 食品健康影響評価:食品安全委員会「有機フッ素化合物(PFAS)」の評価に関する情報
- EUのPFHxA制限:Commission Regulation (EU) 2024/2462
- EUの包装・包装廃棄物規則:Regulation (EU) 2025/40(第5条)
- EUの包括制限案の審議状況:ECHA “Per- and polyfluoroalkyl substances (PFAS)”、CMS法律事務所の解説(2026年4月8日)、The National Law Review “RAC and Draft SEAC Opinions Support REACH PFAS Restriction with Targeted Derogations”(ECHAのサイトは2026年10月1日の確認時にアクセス制限で閲覧できず、解説記事で確認)
- 米国TSCAのPFAS報告規則:EPA “TSCA Section 8(a)(7) Reporting and Recordkeeping Requirements for PFAS”、Federal Register(2026年4月13日)
- 米国の飲料水基準:EPA “Per- and Polyfluoroalkyl Substances (PFAS)”
- 米国の州法:メイン州環境保護局 “PFAS in Products”、ミネソタ州公害管理局 “PFAS in products”、同 “2025 PFAS prohibitions”
- 業界団体の見解:日本弗素樹脂工業会「PFASに関するQ&A」、日本フルオロケミカルプロダクト協議会(FCJ)、日本弗素樹脂工業会「PTFEマイクロパウダー中の副生PFOAへの対応について」(2021年5月)、SEMI “SEMI PFAS Initiative”、SEMI “Fluorinated Chemicals Are Essential to Semiconductor Manufacturing and Innovation”(2020年)
- メーカーの方針:3M プレスリリース(2022年12月20日、米国証券取引委員会提出資料)、ダイキン工業「PFASに関する当社の取り組み」、AGC “What are PFAS?”
- 電池用バインダー:クレハ「PVDF樹脂 KFポリマー」
- chemSHERPAの管理対象物質:CMPコンソーシアム「chemSHERPA データ作成支援(ツール等)」
- SDSの提供制度:経済産業省「化管法SDS制度」、厚生労働省・経済産業省「化管法・安衛法・毒劇法におけるラベル表示・SDS提供制度」
NEWSLETTER
選んだ職種・業種に合わせた記事を、週1回メールで
週刊MONOSCOPEは、登録時に選んだ職種・業種に合わせた記事を週1回お届けする無料のメルマガです。
職種・業種を選んで登録へ ›無料・週1回。登録後に届く確認メールのリンクを押すと登録が完了します。配信はメール内のリンクからいつでも停止できます。
WEEKLY NEWS
今週の製造業ニュース10選
メルマガは職種・業種に合わせた記事。LINEとnoteでは、全員共通の10本を毎週土曜の朝にお届けします。
LINEでニュース10選を受け取るnote今週のニュース10選をnoteで読む ›

コメント