空気ダクトの平均流速は、運転中の実体積流量を、ダクト内部の断面積で割って求めます。風量がNm³/hで示されている場合は、温度と圧力から実際のm³/sへ換算するのが先です。
同じ量の空気でも、温めると膨らみ、圧力を上げると縮みます。風量の数字とダクトの呼び寸法だけを見て計算すると、必要な断面積や送風機の条件を取り違えます。
ここでは最大流量の決め方から温圧換算、丸・角ダクトの面積計算へ進みます。最後に15m/s・20m/sという目安の位置づけと、圧力損失や実測値との照合を整理します。
動画では流量と断面積の関係を追えます。以下の計算は標準状態を0℃・101.325kPaとし、15m/s・20m/sは学会公開教材の区分表の上限として読み分けます。
空気ダクトの流速計算方法
流速計算の出発点は、その断面を1秒間に通り抜ける空気の体積です。断面積に空気が進む距離を掛ければ体積になるので、体積流量を面積で割ると速さが出ます。
図1:1秒間に断面を通る空気柱
流速は空気柱の長さ、体積流量は断面積とその長さの積です。
断面内で速度に分布があるため、vは断面全体の平均値を表します。
単位もここでそろえると、その後の検算が簡単になります。m³/sをm²で割った結果がm/sになり、風量をm³/hのまま使うと答えには3600倍のずれが生じます。
最大流量を決める
最初に、使用先が必要とする最大の空気量を決めます。室内の換気、装置の冷却、燃焼用空気では必要量の決め方が違うため、用途に応じた要求値を設計条件にします。
枝ダクトでは使用先の流量を扱い、主ダクトでは基準状態をそろえた同時使用流量を合計します。停止中の装置まで常時運転として足すと、必要以上に大きい設備を選ぶ原因になります。
一方で、通常の使用量だけを採ると、複数装置を同時に立ち上げたときの需要を見落とします。運転の組合せを表にして、各区間が受け持つ最大同時流量を整理すると明確です。
風量の条件には、数値と一緒に単位・基準温度・基準圧力を残します。カタログにあるm³/minも、吸込状態の実風量なのか、基準状態へ直した量なのかで意味が変わります。
例えば「3600Nm³/h」と「3600m³/h」は、同じ空気量を指すとは限りません。前者は標準状態に換算した体積、後者は記載された温度・圧力における体積として読みます。
送風機の選定では、必要風量とダクト抵抗を一組にして扱います。静圧がゼロのときの最大風量を示す自由吐出風量だけでは、抵抗のある系統の送風量を判断できません。
体積流量を計算する

標準体積流量で指定された空気は、計算する場所の温度と絶対圧力へ換算します。同じ質量が流れていても、ダクトの中で占める体積が変わるからです。
ここでは0℃・101.325kPaを標準状態として計算します。組成と水分の基準が変わらない空気を理想気体として扱い、まず1時間の風量を1秒の風量へ直します。
温度には℃の数字を直接使わず、273.15を加えた絶対温度を使います。圧力も同様に、大気圧をゼロとするゲージ圧ではなく、完全真空をゼロとする絶対圧で比を取ります。
大気圧を101.325kPaと置く場合、上の分母は101.325+Pです。ダクト内が負圧ならPに負の値を入れ、温圧条件は風速を求める断面の位置に合わせます。
PaとkPaの混在にも気を配ります。圧力計が示す500Paは0.500kPaであり、分母に500をそのまま足すと、普通の送風ダクトを高い圧力の配管として計算してしまいます。
図2:温度と圧力で変わる空気の体積
同じ空気量を0℃から60℃へ温めると、500Paの加圧を含めても体積は約1.214倍です。
同じ質量を表す模式図で、箱の面積比を容積比の約1.214に合わせています。圧力は絶対圧、現地大気圧は101.325kPaと仮定しています。
計算例は、標準流量3600Nm³/h、温度60℃、ゲージ静圧+500Paとします。現地の大気圧を101.325kPaと仮定すると、実体積流量は次のようになります。
この条件では、標準風量をそのまま実風量とした場合より約21%大きくなります。低い静圧の空調ダクトでも、温度差が大きい系統では体積の補正が効いてきます。
すでに60℃・運転圧力で測ったm³/hなら、温圧換算を繰り返さず3600で割ります。標準状態の違いやANRなどの表記は、Nm³とm³の違い・換算式で詳しく整理しています。
ダクトの断面積で割る

面積には、空気が通れる内側の寸法を使います。外径が分かっている丸ダクトは板厚を両側分だけ引き、図面が内径表記なら板厚を二重に引かずに計算します。
長さの単位は、面積を求める前にmへ直します。500mmは0.500mなので、500mm角の面積は0.250m²となり、数字の500同士を掛けた値をm²とは扱えません。
先ほどの実流量を、内径500mmの丸ダクトへ流してみます。内径を0.500mに直して面積を出し、その面積で実流量を割ると、流速は約6.18m/sになります。
図3:丸と角の流路を内寸で比べる
同じ「500mm」を含む寸法でも、円と長方形の面積は違います。
寸法単位はmm。板厚の灰色部分は説明のため拡大し、空気が流れる内側の面積だけを使っています。
外径500mm、板厚1mmという別条件なら、内径は498mmで流速は約6.23m/sです。差はこの例で約0.8%ですが、内貼り断熱材などがある場合は実際の流路寸法で計算します。
角ダクトの相当直径は、摩擦損失を評価するための換算寸法です。流速計算では縦と横の実面積を使い、相当直径の円の面積へ無条件に置き換えないようにします。
流量と内径から速さを求める関係は、水の配管でも共通です。質量流量からの換算や呼び径との違いは、配管流速の計算方法に具体例があります。
空気ダクトの適正流速

適正流速は、騒音や圧力損失、設置スペースを合わせて決めます。日本冷凍空調学会の空調用ダクト教材には、低圧は15m/s以下、高圧1・高圧2は20m/s以下という区分表があります。
これはすべての場所を15m/sや20m/sで設計するという意味ではありません。同資料は低圧ダクトでも、騒音・省エネ・経済性を考慮して単位長さ当たりの摩擦損失を選ぶ考え方を示しています。
| 公開教材の区分 | 記載された流速範囲 | 設計での読み方 |
|---|---|---|
| 低圧ダクト | 15m/s以下 | 騒音・摩擦損失からさらに絞る |
| 高圧1・高圧2ダクト | 20m/s以下 | 静圧・強度の区分と合わせて扱う |
例えば静かな室内へつながる枝管では、主ダクトより低い速度を選ぶ理由があります。吹出口の通過音や振動も含め、必要な風量が出ることと音の条件を同時に満たす寸法を探します。
同じ実風量なら、面積を広げると速度は下がります。ただし大きなダクトは天井内の空間を使い、材料や支持の費用も増えるため、低速にするほど常に得とはいえません。
仮に前節の実流量を10m/s以下にしたいなら、必要面積は約0.1214m²です。丸ダクトにすると必要内径は約393mmとなり、製作可能な寸法から候補を選んで抵抗計算へ進みます。
圧力損失と送風機を照合する
ダクト内の空気は、直管の壁との摩擦やエルボ、分岐、ダンパを通るときにエネルギーを失います。この圧力損失が大きいほど、必要な風量を流すために送風機の圧力が必要です。
局部的な抵抗による全圧損失は、係数の基準断面の動圧に損失係数を掛けて表せます。密度と係数が同じ条件なら、速度が2倍になると動圧もその局部損失も4倍になるため、細すぎるダクトは不利です。
図4:流速が上がると動圧は二乗で増える
空気密度1.2kg/m³を仮定した比較です。前節の60℃の空気とは別条件です。
| 流速 | 動圧 | 10m/sに対する比 |
|---|---|---|
| 10m/s | 60Pa | 1.00 |
| 15m/s | 135Pa | 2.25 |
| 20m/s | 240Pa | 4.00 |
仮にζ=2の局部抵抗を15m/sで通るとΔp=2×135=270Pa。実機の係数は形状に対応した資料を使い、直管やフィルタ等の損失を別に足します。
動圧は、ダクト内を流れる空気の速さに対応する量です。壁を押す静圧とは役割が違い、意味と測り方は静圧・動圧・全圧の違いで整理しています。
実際の損失は、流路ごとに通過風量を割り当てて計算します。枝分かれ後も主ダクトの総風量を使い続けると、枝の流速と損失を過大に見積もるので、区間を分けることが大切です。
送風機は、風量と必要圧力を満たす運転点で選びます。抵抗のない状態の最大風量だけで判断せず、ダクト抵抗との交点を見る考え方はファン・ブロワ・コンプレッサーの違いでも扱っています。
フィルタの汚れやダンパの開度が変わると、抵抗も運転点も変わります。設計時の風量と運転中の風量を分けて管理すると、風量低下を直ちにダクト径の不足と決めつけずに済みます。
高速化で圧損や振動が増える関係は、配管の流速が速いと生じる問題にも共通します。ただし空気ダクトには、液体配管で使う速度の目安をそのまま当てはめずに検討します。
計算値を実測で確かめる
流速の計算結果は断面平均なので、風速計を中心に1回差した値とは区別します。壁の近くやエルボの下流では速さと向きに偏りがあり、測定位置によって結果が変わるためです。
日本カノマックスの技術解説では、直管で測定し、分割した各面積の代表風速から風量を求めます。測定点の数と位置は適用する測定法に合わせ、偏りを捉えられるように選びます。
図5:中心1点と断面平均は違う
9等面積区画の中心で測る模式例です。断面に垂直な方向の代表速度を、区画面積で重み付けします。
9点は計算説明用で、規格の必須測定点数ではありません。区画面積が異なる場合は単純平均せず、速度×区画面積を合計して全面積で割ります。
測定器が風量を直接表示する場合も、登録した断面積の内寸を確かめます。設定が丸径か角の縦横かを取り違えると、風速が正しく測れていても風量表示だけがずれてしまいます。
ピトー管では、全圧と静圧の差から速さを求めます。差圧の取り方や液柱換算の考え方は、マノメーターの原理と差圧の計算が手掛かりになります。
実測記録には運転台数、ダンパの状態、空気温度と静圧を添えます。比較する条件をそろえてから計算値と突き合わせると、流量不足と測定基準の違いを切り分けやすくなります。
空気ダクトの流速計算でよくある質問
m³/minの風量から流速を求めるには?
運転状態の実風量なら60で割ってm³/sに直し、内寸から求めた面積で割ります。Nm³/minのように基準状態の風量なら、同じ時間換算に加えて温度と絶対圧力の換算も必要です。
ダクトが負圧のときはどう計算する?
現地大気圧に負のゲージ圧を足し、正の絶対圧力へ直して使います。正圧と負圧を同じ計器で読む場合は、連成計の目盛とゲージ圧の読み方も参考になります。
角ダクトを丸ダクトに替えると流速は変わる?
実風量と実際の流路面積が同じなら、断面平均流速も同じです。ただし周囲の長さや曲がり部の形が変わると抵抗が変わり、同じ送風機でも実際に流れる風量が変わることがあります。
吹出口でもダクト断面積を使えばよい?
吹出口では、羽根の隙間に速い流れや旋回流が生じ、外枠面積と数点の風速だけでは風量を求めにくくなります。出口全体を覆う風量フードや、上流ダクトでの多点測定を使い分けます。
排ガスダクトも空気と同じ計算でよい?
実体積流量を面積で割る関係は共通ですが、温度と組成、乾き・湿りの基準をそろえます。燃焼で生じる水蒸気も含めた求め方は、排ガス量の計算方法で確認できます。
まとめ
- 用途と同時使用条件から、区間ごとの最大流量を決める
- 標準風量は運転温度と絶対圧力で実体積流量へ換算する
- 丸・角とも内寸をmへ直し、実体積流量を断面積で割る
- 15m/s・20m/sの区分上限だけで決めず、騒音と圧損を検討する
- 送風機の運転点と、同じ条件で測った断面平均流速を照合する
空気は温度と圧力によって密度が変わるため、標準風量と実風量の区別が計算の要になります。入力条件、単位、流路面積を一つずつそろえると、算定結果を実際のダクト設計へつなげられます。
出典
出典・参考資料(8件)を開く出典・参考資料を閉じる
- 質量保存と流量・断面積・速度:NASA Glenn Research Center「Conservation of Mass」
- 理想気体の状態方程式と絶対温度:NASA「Equation of State」
- 低圧・高圧ダクトの区分と流速範囲:日本冷凍空調学会「ダクト・解答9」
- ダクトの多点測定と面積加重:日本カノマックス「空調・換気設備の風量測定について」
- 風量と圧力損失、ファンの動作点:オリエンタルモーター「風量-静圧特性」
- 動圧の式と適用条件:NASA「Bernoulli’s Equation」
- 局部全圧損失と基準断面:ASHRAE Handbook 2021「Duct Design」
- 吹出口の風量フードとダクト多点測定:ASHRAE Handbook 2021「Measurement and Instruments」
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