温度放射とルミネセンスの違い|発光原理と照明・センサーの使用例

白熱電球の線条と放熱器に載せたLED素子

温度放射は物体の温度に由来する電磁波の放出で、ルミネセンスはそれ以外の仕組みによる発光です。白熱電球は温度放射、蛍光灯やLEDはルミネセンスを利用しています。

見分ける基準は、触って熱いかではなく、光が生まれるまでにエネルギーがどう渡されるかです。LEDも点灯中に発熱しますが、高温の物体を白熱させて光る方式とは異なります。

温度と光の関係から両者の違いを整理し、照明や表示器の発光部分を見比べます。後半では、接着剤の塗布検査や溶存酸素計で、光が何を測る手掛かりになるかを説明します。

動画でも発光の違いを紹介しています。赤外線は目に見えず、液晶は光を通す量を変える部品ですので、発光する部分を区別しながらご覧ください。

目次

温度放射とは

温度放射は熱放射とも呼ばれ、物体が熱運動に伴って電磁波を出す現象です。物体内部の電荷の運動などに由来し、表面から周囲へエネルギーを運びます。

物体は赤く光る前から熱放射を出しており、室温付近では主に赤外線の領域に現れます。赤外線と赤い光は波長の範囲が違い、人の目で赤外線を直接見ることはできません。

温度が上がると放射が強くなり、波長ごとの分布も短い波長の側へ移ります。十分に高温になると可視光の成分も増えるため、赤熱した金属や白熱したフィラメントが見えるようになります。

図1:温度を上げると黒体の放射ピークは短波長側へ移る

400℃でもピークは約4.31μmの赤外線域です。白熱した光源でも、ピークが可視域にあるとは限りません。

可視域赤外線域0246810波長[μm]2700K → 1.07μm400℃ → 4.31μm25℃ → 9.72μm縦の高さは放射強度を表さない

黒体の波長あたりの放射分布を対象に、ウィーンの変位則で計算したピーク位置です。可視域は約0.38〜0.78μmとして示しています。実際の材料は波長による放射率の影響も受けます。

温度と波長を計算すると何が分かるか

黒体は、その温度で放射できるエネルギーを最大限に出す理想的な物体です。波長あたりの放射が最大となる位置は、ウィーンの変位則を使って温度から求められます。

黒体のピーク波長:ウィーンの変位則
λmax = 2898T
400℃の場合:絶対温度に直してから代入
T = 400 + 273.15 = 673.15[K]
λmax = 2898673.15 ≒ 4.31[μm]
λmax:波長あたりの放射が最大となる波長[μm] T:絶対温度[K] 2898:変位定数の丸め値[μm·K]

25℃なら約9.72μm、2700Kなら約1.07μmとなり、温度上昇でピークは短くなります。ピーク以外の波長にも放射があるため、この値だけで見た目の色を決めることはできません。

高温の物体が可視光を出しても、エネルギーのすべてが照明に使えるわけではありません。可視光以外の成分も含めて周囲へ熱を渡すため、加熱用途と照明用途では評価する量が変わります。

熱放射を逆に使い、物体から来る光を検出して温度を求めるのが放射温度計です。赤い波長帯の明るさを基準と比べる方式は、光高温計の線条消失の原理で整理しています。

放射温度計では放射率や周囲からの反射も測定値に影響するため、材質と観測条件が重要です。接触式との使い分けは、温度計の種類と測定誤差を基に考えると整理できます。

ルミネセンスとは

ルミネセンスは、熱放射によらない発光をまとめた呼び名で、冷光とも呼ばれます。光や電気、化学反応などで高いエネルギー状態をつくり、そのエネルギーの一部を光として取り出します。

物質がエネルギーを受け取り、高いエネルギー状態へ移ることを励起といいます。安定した低い状態を基底状態、励起された高い状態を励起状態と呼び、光を出すのは低い状態へ戻る過程です。

図2:光励起では「吸収して上がる」と「発光して戻る」が別の過程

光を吸収して励起された後、一部のエネルギーは熱などへ移り、残りが蛍光として出ます。

基底状態励起状態の高い準位低い振動準位光を吸収して励起熱などへ蛍光を放出エネルギー高

光励起による蛍光の模式図です。吸収・発光の矢印は準位差を表し、実材料の波長や時間の縮尺を示しません。

光を当てて励起する方式はフォトルミネセンスと呼ばれ、蛍光塗料や蛍光ランプに利用されます。光を吸収してから出し直すため、単に表面で光が反射する現象とは区別します。

吸収されたエネルギーは、発光だけでなく分子の振動などにも振り分けられます。そのため一般的な蛍光では、出てくる光の光子エネルギーが小さくなり、照射した光より波長が長くなります。

蛍光とりん光は発光する経路が違う

蛍光は励起を止めると速く弱まり、りん光はそれより長く残る、という観察上の違いがあります。分子の発光では、電子のスピン状態を含む励起状態から戻る経路の違いで両者を区別します。

基底状態が一重項の分子では、励起一重項から戻る発光が蛍光、励起三重項から戻る発光がりん光です。後者の遷移は起こりにくいため、一般に発光が続く時間は長くなります。

照射を止めても光が残る様子は、エネルギーを一度蓄えてから放出する材料を理解する入口になります。ただし残光の長さだけでは、材料内部で起きている発光の経路までは特定できません。

光以外のエネルギーでも励起する

電気による発光はエレクトロルミネセンス、化学反応による発光は化学ルミネセンスに分類されます。励起源で分ける分類と、蛍光・りん光という発光機構の分類は、同じ軸ではありません。

ホタルやホタルイカなどの生物が光る現象は、生物発光というルミネセンスの仲間です。ホタルではルシフェラーゼという酵素が反応を助け、ルシフェリンという物質の酸化に伴って光が生まれます。

放射線によって材料に蓄えられたエネルギーを、加熱により光として読み出す熱ルミネセンスもあります。加熱は蓄積した電子の状態を変えるきっかけなので、温度だけで決まる熱放射とは別の現象です。

温度放射とルミネセンスの違い

両者の違いは、物体の温度に由来する放射か、別の仕組みでつくった励起状態からの発光かにあります。電源が同じでも、白熱電球とLEDでは電気から光までの変換経路が異なります。

比較項目温度放射ルミネセンス
光の生まれ方物体の温度に由来する放射光・電気・化学反応などによる励起から発光
波長の決まり方温度と波長ごとの放射率が関係材料のエネルギー準位や発光経路が関係
照明の例白熱電球のフィラメント蛍光ランプの蛍光体、LEDの発光層
発熱との関係高温にすることで可視光が増える発光と別に機器の損失熱も発生する
計測への応用物体の放射を読む温度測定蛍光の有無や発光寿命を読む検査・分析

図3:白熱電球・蛍光ランプ・LEDで光が出る場所

フィラメントを熱する、紫外線を蛍光体へ当てる、半導体で電子と正孔を再結合させる、という違いがあります。

正孔電子白熱電球加熱した線条蛍光ランプ放電 → UV → 蛍光体LED電子・正孔の再結合発光層の構造模式図管内面の蛍光体P側N側

原理を示す模式図で、配線・寸法・器具の安全構造は省略しています。白色LEDでは、素子の青色光で蛍光体を励起する構成も使われます。

白熱電球では、電流が流れるフィラメントの抵抗で熱が生じ、温度が高くなって発光します。温度を上げると赤みの強い光から白っぽい光へ変化しますが、可視光だけを出しているわけではありません。

蛍光ランプでは、放電中の電子が水銀原子に衝突して紫外線を生み、管内面の蛍光体を励起します。蛍光体が出す可視光を照明に使うため、管全体を白熱するまで加熱する必要はありません。

蛍光ランプも管や電極、安定器などが発熱し、吸収したエネルギーのすべてが光になるわけではありません。発光部分の非放射的な損失もあるので、熱さを測るだけで発光機構を判定しないことが大切です。

LEDでは、半導体中の電子と正孔という電荷の担い手が再結合するとき、エネルギーの一部を光として出します。白色LEDには、その青色光で蛍光体を励起し、複数の色を混ぜて白く見せる方式があります。

一つの白色LEDの内部でも、電気による発光と光による励起を組み合わせています。機器の内部で、どの部品で何をエネルギー源に発光しているかを追うと、複合した発光方式も理解できます。

発生した熱を周囲へ逃がす経路は、発光原理とは分けて設計します。固体内部と表面から空気への伝熱の違いは、熱伝導率と熱伝達率の違いで理解を深められます。

温度放射とルミネセンスの使用例

試験片の接着剤へ向けて固定した光学検査ヘッド
光学検査設備のイメージ。発光原理は本文の図で示しています。

温度放射は白熱電球のほか、ガスマントルを加熱して光らせるガス灯などに利用されます。照明として光を得る使い方と、赤外線も含む放射で対象を加熱する使い方があります。

熱設備では、照明として見えるかよりも、何Wの熱が対象や周囲へ移るかを考えます。配管から失われる熱を見積もる場合は、配管の放熱量と保温効果の計算のように面積や温度差も扱います。

照明とディスプレイは発光部を分けて見る

照明ではLEDや蛍光ランプなど、ルミネセンスを利用する方式が身近にあります。一般照明用蛍光ランプは、水俣条約に基づく規制により、2027年末までに製造・輸出入が終了します。

これは既設ランプの使用を同時に禁止する意味ではなく、在庫の売買や継続使用は可能です。LED化ではランプと既設器具の適合が安全に関わるため、設備ごとに更新方法を選びます。

液晶ディスプレイは、背面の光源から来る光の透過量を液晶層で変え、画面を表示します。液晶そのものが蛍光を出すわけではなく、LEDバックライトなどの発光と光の制御が別の役割を担います。

有機ELディスプレイでは、発光材料に電荷を注入して画素自体を光らせるため、バックライトが不要です。画面が暗いときも、光源が弱ったのか光の制御に問題があるのかで点検箇所が変わります。

蛍光を使って接着剤や塗料の付着を検出する

蛍光成分を含む接着剤や塗料へ紫外線を照射すると、その場所から可視光が出ます。地の色と見分けにくい透明材料でも、発光する位置から塗布の有無や欠落を検査できます。

図4:塗布検査では照射光と蛍光を分けて受ける

接着剤の蛍光を検出する方式では、背景の反射光をそのまま測る方式と、見る対象が異なります。

紫外LEDフィルター受光部欠落蛍光成分を含む接着剤可視蛍光

検出光路の模式図。材料の蛍光特性と検出波長を合わせ、良品・欠落品・背景の実サンプルで判定差を確かめます。

照射する波長と検出する波長を分けると、励起光の反射が測定へ入り込む影響を減らせます。どの材料がどの波長で光るかが出発点なので、対象物の色だけでセンサーを選ぶことはできません。

導入時は良品だけでなく、未塗布品や塗布切れ、背景が汚れた試料も同じ距離で比較します。受光量の差が小さいときは、角度や外乱光、材料のばらつきを調べて判定条件を決めます。

反射・透過による存在検出との違いは、近接センサと光電センサの選定基準が参考になります。蛍光センサーでは、対象の有無に加えて発光する材料かという条件が加わります。

判定結果を制御盤へ渡す場合は、センサーの出力と盤側の入力仕様を合わせます。合否をON/OFFで伝える場合と濃度を数値で伝える場合の違いは、DI/DO・AI/AOの信号の種類で整理できます。

溶存酸素計では消光と発光寿命を利用する

光学式溶存酸素計は、水に接する酸素検知膜を励起し、その発光を検出して酸素濃度を求めます。膜へ入った酸素が発光を弱めたり寿命を短くしたりする、消光という現象を利用します。

図5:酸素検知膜の発光が早く減衰するほど酸素が多い

水中の酸素が膜へ入ることで発光寿命が変わります。光を読み取る側は窓の内側に配置されます。

水側の酸素酸素検知膜透明な窓励起LED受光器酸素が少ない酸素が多い励起停止後の時間発光強度(概念)光の往復と酸素の透過を分けて描いた模式図

右の曲線は実測値ではなく、発光寿命の差を示す概念図です。製品によって寿命・位相差などの読み取り方が異なります。

寿命を見る方式では、励起を止めた後に発光が減る速さを調べ、酸素濃度との対応を使います。同じ測定条件では、酸素が多いほど発光寿命が短くなるため、減衰曲線と濃度の対応を押さえます。

この測定では酸素を反応で消費しないため、電極で酸素を消費する方式とは測定条件が異なります。一方で膜の汚れや劣化、試料温度の変化は管理対象となり、校正と清掃を組み合わせて使います。

同じ光学測定でも、濁度計は粒子による散乱や透過の変化を使い、原理は蛍光と別です。気泡や汚れが光路へ及ぼす影響は、濁度の測定方式と校正と比べると整理できます。

試薬で発色させた液の吸光度から濃度を求める測定は、液が自ら発光する分析ではありません。シリカ測定器のモリブデンブルー法は、発光・吸収を区別する比較例になります。

生物発光を検査の信号へ置き換える

食品設備などのふき取り検査には、ホタルの発光反応を応用してATPを測定する方法があります。ATPは生物のエネルギーの受け渡しに使われる物質で、試料中の残存物を評価する手掛かりになります。

試薬と反応させて出た光を検出し、相対的な発光量として数値化するのが基本的な流れです。ATP量を光へ変換するため、数値をそのまま微生物の個数や酵素濃度として読むことはできません。

酵素の働きを調べる分析でも、反応で増減したATPなどを発光へ結び付ける方法があります。測りたい物質が直接光る場合と、試薬の反応を介して光に変える場合を区別すると、測定値の意味が明確になります。

工程へ導入するときは、試料採取から反応、発光検出、信号出力までの範囲を決めます。連続計の濃度を遠方へ送る場合は、4-20mAと測定レンジの対応も合わせて整理します。

光源や検知膜を定期交換するか、出力や校正結果の傾向から交換するかも、運用の違いになります。保全計画では、時間基準保全と状態基準保全を、故障の影響に合わせて組み合わせます。

温度放射とルミネセンスのよくある質問

ルミネセンスは熱を出さない光ですか?

冷光という名前でも、機器全体が発熱しないという意味ではありません。電子回路や材料で光に変わらないエネルギーが熱になるため、発光方式とは別に放熱を考えます。

蛍光とりん光は光る時間だけで区別しますか?

分子の発光では、時間だけでなく電子の励起状態と戻る経路によって区別します。りん光は一般に寿命が長いものの、目に見える残光の有無だけで仕組みを確定することはできません。

赤く光るLEDも温度放射ですか?

赤色という見た目が同じでも、LEDの光は半導体での再結合によるルミネセンスです。赤熱した金属とは光の生まれ方が違い、色からLEDの温度を逆算することはできません。

ルミネセンスと光の反射は何が違いますか?

光励起のルミネセンスでは、材料が光を吸収し、励起状態から戻るときに光を放出します。反射は入射光が表面で向きを変える現象で、蛍光検査では両者を光学フィルターなどで分けて検出します。

ルミネセンスセンサーなら透明な接着剤をすべて検出できますか?

対象に検出可能な蛍光成分があることが条件で、透明という性質だけでは決まりません。実材料の良品と未塗布品を使い、検出距離や外乱光もそろえて発光の差を評価します。

まとめ

この記事のまとめ
  • 温度放射は物体の温度に由来し、赤外線も含めてエネルギーを運ぶ
  • ルミネセンスは光・電気・化学反応などで励起した状態からの発光
  • 白熱電球・蛍光ランプ・LEDは、電気から光までの変換経路が違う
  • 蛍光検査や溶存酸素計では、発光の有無や寿命を測定へ結び付ける
  • 機器の発熱、発光する材料、検出する光を分けて考えると用途が分かる

光・化学材料の分野で使うルミネセンスは、照明だけでなく検査や分析を支える原理です。温度による放射を熱の移動として考えるときは、放射伝熱の仕組みと産業での利用へつながります。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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