制御弁を並列設置する理由は?大小弁の制御性と緩やかな立ち上げ

配管に接続された小型制御弁の弁箱とフランジ

制御弁を並列に設置する主な理由は、小流量まで安定して調節することと、設備を緩やかに立ち上げることです。大流量用の主弁に小容量の弁を組み合わせ、必要な流量や運転段階に応じて使い分けます。

最大負荷だけで弁を選ぶと、少量しか使わない時間帯に開度が閉止位置へ偏ります。大小の弁で担当する範囲を分ければ、主弁のわずかな動きで供給量が大きく変わる状態を避けやすくなります。

並列の小弁が何を担当するかは、配管の形だけでなく制御信号と運転手順から読み取れます。ここでは並列設置の目的を中心に、大小弁の動かし方、容量の考え方、起動専用弁との違いを整理します。

動画の「開度0〜10%」は過大選定を説明する例で、全機種共通の使用限界ではありません。「常用時に小弁側を閉じる」は起動専用の構成を指し、流量調節用の小弁とは使い方が異なります。

目次

制御弁を並列設置する目的

大小の制御弁が同じ配管の上流と下流を結ぶ並列模式図

並列設置とは、同じ上流側から分岐した流路に弁を置き、下流側で再び合流させる構成です。流体は各枝に分かれて流れ、合流後の供給量はそれぞれの枝を通った流量の合計になります。

大小弁を組み合わせる場合、常用時の流量範囲を広げる用途と、起動時だけ流入を絞る用途を分けて考えます。同じように小さな枝管があっても、運転中に小弁を使い続けるかどうかが異なります。

  • 制御性を上げる:小流量は小弁で細かく調節し、大流量では大弁も利用する。
  • 立ち上げ速度を緩やかにする:起動用小弁などで供給を制限し、温度や圧力を徐々に上げる。

図1:大小の給水弁で合流後の流量を調節する

一つの流量調節計が大小の弁へ指令を配分し、同じ供給先の需要に追従させる構成例です。

流量調節計FT大弁小弁供給水供給先へ実線:水の流れ 点線:計測・操作信号

※遮断弁などは省略した概念図。FTは流量発信器です。調節計出力と弁開度の配分は図3で示します。

小流量で制御性を上げる

制御弁には、安定して調節できる流量の範囲があります。生産量が大きく変わる設備では、最大時に十分流せることに加え、最低負荷でも必要量を細かく増減できることが重要になります。

例えば大容量の弁が開度0〜10%付近だけで動くと、弁の微小な変位が供給量に強く影響します。必要流量を少し変えるだけでも、操作器の分解能や弁軸の摩擦の影響が目立つ状態です。

弁軸の摩擦で動き出しが遅れると、調節計が指令を増やした後に弁がまとめて動くことがあります。低流量を大弁だけで扱うと、この動きが流量や圧力の振れとして表れやすくなります。

小容量の弁なら、同じ供給量に対してより大きな動作幅を使える設計を選べます。季節で冷却水需要が変わる場合や、少量生産と最大生産を切り替える場合に、大小弁の分担が有効になります。

ここで比べるべき値は配管の呼び径だけでなく、弁がどれだけ流せるかを示す流量係数です。Cv値の選定方法では、流量と弁前後の差圧を組み合わせて必要容量を求めます。

図2:同じ相対開度変化でも、容量によって流量増分が違う

同じ固有特性・差圧で容量が異なる弁を、弁座の模式断面で対比します。実際の内部形状や口径との比例を示す図ではありません。

大弁:容量100の仮定小弁:容量10の仮定広い流路を大きく調節少量を細かく調節実際の増分は弁特性・差圧・摩擦で変わる

※同じ相対的な容量変化でも、小弁が担当する流量の絶対値は小さくなります。容量100対10は説明用の仮定です。

必要な調節範囲を数字で確かめる

レンジアビリティは、規定の条件で調節できる最大容量と最小容量の比です。カタログにある弁単体の値と、配管につないだ状態で実現する流量範囲は、分けて評価します。

説明用に、必要な流量を0.5〜100m³/hと仮定すると、設備が求める比は200になります。弁単体の比を仮に50と置けば、最大100m³/hの大弁だけでは最低側を扱い切れない計算です。

必要流量の比と、大弁単独の最小流量
Rreq = QmaxQmin = 1000.5 = 200
QL,min = 10050 = 2 m³/h
Rreq:必要流量比[無次元] Q:流量[m³/h] L:大弁。差圧一定で、弁の容量比50を流量比へ置き換えた仮定です。

そこで最大10m³/h、同じ容量比50の小弁を組み合わせると、その最小流量は0.2m³/hです。最低需要0.5m³/hは小弁の担当域に入り、最大需要は大弁と小弁の合計で受け持てます。

小弁を追加した場合の机上の範囲
QS,min = 1050 = 0.2 m³/h
Qtotal,max = 100 + 10 = 110 m³/h
Rideal = 1100.2 = 550
S:小弁 Rideal:机上の合成流量比。両枝の差圧一定、調節範囲が途切れずつながることを仮定した説明用の数値です。

この550は最大と最小の端点を割った机上値で、全域を連続して調節できる保証は含みません。小弁の0.2〜10m³/hと大弁の2〜100m³/hには重なる範囲があり、そこでの配分が設計の要点です。

図3のように小弁を10m³/hで保持すると、大弁の最小調節流量2m³/hが加わり、合計10〜12m³/hの間が調節しにくくなります。切替時に小弁を絞る配分などを検討し、合計流量の連続性を確かめます。

差圧が変われば、同じ開度でも流れる量が変わるため、最低負荷と最大負荷の圧力条件を別々に置きます。流量が増えるほど配管抵抗も増え、弁に使える差圧が減る系統では、この違いが特に効きます。

固有特性は差圧を一定にして調べた容量と開度の関係で、据付後の特性には配管も影響します。イコールパーセント特性とリニア特性を選ぶ際も、二つの条件を混同しないことが要点です。

小弁を先に開くスプリット制御

大小弁を順に働かせる方法として、一つの操作量を複数の弁へ配分するスプリット制御があります。小流量では小弁だけを動かし、需要が増えると大弁の開度も増やして合計流量を確保します。

図3は、操作量の前半で小弁を全開にし、後半は小弁を開いたまま大弁を増やす例です。切替点を50%に固定する決まりはなく、必要容量や弁特性に合わせて配分を設計します。

図3:小弁を先に開き、後半は全開保持する配分例

操作量の前半は小弁だけを開き、50%以降は小弁を全開保持して大弁を開きます。

開度 %1000050100共通の操作量 %小弁:全開を保持大弁:後半で開く容量10+100の例では、後半の増量感度が大きくなる

※開度の配分例であり、流量のグラフではありません。最小調節限界を省いたリニア特性・差圧一定・容量10対100の理想化では、後半の増量感度は前半の10倍です。

容量の異なる弁に同じ操作量幅を割り当てると、大小の切替前後で流量の増え方が変わります。図のような単純な配分を出発点にしても、制御の滑らかさは合計容量の変化から評価します。

大弁が動き始める瞬間に流量が増えすぎると、調節計が戻して小弁側へ入り直す動作を繰り返します。二つの弁の信号範囲に加え、流量の増え方と応答速度をそろえる調整が必要です。

一方、指令に重なりや不感帯を設ける設計もあり、その狙いと合計流量の連続性を一緒に検討します。配分の種類と信号の具体例は、スプリット制御の平行・V字特性で整理しています。

指令の配分は調節計や制御システム側でも、ポジショナー側の設定でも実装できます。弁の実位置を指令に合わせるポジショナーと、合流後の流量を目標に戻す調節計は役割が異なります。

弁開度が目標どおりでも、流量発信器の測定範囲が粗いと小流量の制御は改善しません。大小弁の選定と同時に、最小流量が測定できるか、信号の分解能や応答が適切かを検討します。

起動時の流入を抑えて緩やかに立ち上げる

制御弁出口の弁箱とボルトで締結したフランジ接続部
制御弁と配管接続部のイメージ(生成画像)。

もう一つの目的は、起動時に蒸気や温水などが急に流れ込むのを抑えることです。温まっていない配管や機器に高温流体を一度に通すと、急な温度変化や膨張差が負担になります。

起動専用の小弁を主弁と並列に置けば、主弁を閉じた段階で少量を通し、予熱する構成にできます。温度や圧力の上昇に応じて主弁へ移る条件を定めれば、立ち上げ工程の自動化にもつながります。

蒸気系では、冷たい配管を温める間にドレンという凝縮水が発生します。ドレンの滞留と高速移動、急な凝縮はウォーターハンマーの原因となるため、小弁の設置と排出経路を一体で考えます。

図4:主弁を閉じ、小弁で蒸気配管を暖める構成例

少量の蒸気で予熱し、発生したドレンを排出します。小弁は過圧保護やドレン排出装置の代用にはなりません。

主弁:閉起動小弁から予熱冷たい配管スチームトラップドレン排出予熱後、承認された温度・圧力条件で常用へ移行

※蒸気とドレンの経路を示す模式図。枝の遮断弁・ストレーナ・安全装置などは省略しています。具体的な弁操作は設備の起動手順に従います。

起動専用小弁は、予熱が終わると閉じて常用系へ切り替える構成があります。この運用を低流量調節用の小弁へ当てはめると、常用時に必要な調節範囲を失うため、用途を先に区別します。

起動を遅くする効果は、必要な熱量や充填量に対し、どれだけの流量を投入するかで決まります。小弁を小さくすれば一定の条件で投入量は減りますが、必要な起動時間に間に合う容量も確保します。

例えば予熱に必要な凝縮蒸気の合計を30kg、予熱中の平均凝縮量を60kg/hと仮定すれば、時間は30分です。同じ必要量で平均凝縮量を30kg/hに下げると、所要時間は1時間になります。

必要凝縮蒸気量と平均凝縮量から予熱時間を見積もる
t = Mqavg
t = 30 kg60 kg/h = 0.5 h = 30分
t = 30 kg30 kg/h = 1時間
M:予熱に必要な凝縮蒸気量[kg] qavg:予熱中の平均凝縮量[kg/h] t:時間[h]。両者を与えた算術例です。供給蒸気の全量が凝縮する場合に限り、平均供給流量で置き換えられます。

実際は温度上昇に伴って凝縮量や差圧が変わるため、起動時間は弁の呼び径だけでは決まりません。配管と機器の熱容量、保温、放熱、ドレン排出能力を合わせて、必要な昇温条件から小弁を選びます。

圧力を一定にするのか、投入流量を制限するのかでも、測定位置と制御の組み方が変わります。加熱工程では蒸気の流量制御と圧力制御の違いを整理すると、起動時の制約を設定しやすくなります。

並列配置の役割を図面と信号から見分ける

大小弁の並列、起動用バイパス、常用予備の二系列は、いずれも流路が分岐する構成です。設備の意図は、通常時に動く弁と、もう一方へ切り替える条件から読み分けます。

図5:見た目が似た並列構成の比較

小弁を常用中に閉めてよいかは、担当する仕事によって違います。

比べる観点大小弁で範囲を拡大起動専用の小弁常用・予備の二系列
主な目的小流量から最大流量まで調節予熱・充填時の急流入を抑制故障・保守時の運転継続
小負荷時小弁が調節を担当起動工程なら使用常用系列で必要量を調節
通常運転中配分に応じ大小弁が作動閉止して主系へ移る構成予備は待機する構成
設計の焦点最小容量・切替連続性昇温・昇圧条件と排水各系列の能力・切替条件

※代表的な使い分け。大小弁の小弁が、主弁全容量の予備になるとは限りません。

小弁だけで通常の最大流量を流せない構成は、主弁の完全な予備にはなりません。主弁の保守中に生産を続けたいなら、縮小運転で必要な能力と、遮断・隔離の方法まで別に設計します。

図面では分岐の始点と合流点、計器の測定点、制御信号の行き先を順にたどります。温度や圧力などの目標と、弁へ出す操作量の関係は、調節計のPV・SV・MVで把握できます。

主弁を迂回する手動バイパスでは、人が弁開度を調整し、自動制御とは別の流路を受け持ちます。手動弁の開度を変えると自動系が想定する流量配分も変わるため、運転状態を図面に記録します。

容量選定と試運転で押さえること

選定の出発点は、最小・通常・最大・起動の運転条件を別々に並べることです。それぞれの流量だけでなく、弁入口と出口の圧力、流体温度をそろえれば、小弁に必要な容量を比較できます。

非圧縮性液体の非チョーク・乱流条件では、流量はKv値と差圧の平方根に比例します。同じ水10m³/hでも、利用できる差圧が1barから0.25barに下がると、必要なKv値は2倍になります。

水の単相流を用いた必要Kvの比較
Kv = Q√(Δp / G)
Δp = 1 bar:Kv = 10√(1 / 1) = 10
Δp = 0.25 bar:Kv = 10√(0.25 / 1) = 20
Q:流量[m³/h] Δp:弁差圧[bar] G:水を基準とした比重[無次元]。G=1、非チョーク・乱流で配管形状と粘度の補正を1とした例。Kvと米国単位系のCvは数値が異なります。

蒸気やガスは圧力によって密度が変わるため、この液体式をそのまま使う対象ではありません。特に起動時は二次側圧力が低くなりやすく、常用時と異なる差圧や流れの制限を評価します。

弁の閉止側では漏れ量も小流量制御を左右し、主弁の漏れだけで最低需要を超える場合があります。小弁の調節幅を広げても主弁側からの過剰供給は消えないため、閉止性能も選定条件に含めます。

試運転では共通操作量、大小の指令と実開度、流量、弁前後の圧力を同時に記録します。低負荷から増量し、切替域を往復させたときの跳びや振れを見れば、配分と実際の動きの違いをつかめます。

空気や電源が失われたときの位置は、大小弁のそれぞれで決めておく必要があります。調節弁の正動作・逆動作と失気時の位置を参照し、下流設備が受ける流量や圧力も合わせて評価します。

片方の弁の動作が遅い場合は、配分設定だけでなく操作空気や弁軸の摩擦を調べます。指令と位置のずれを追う自動弁の渋滞の切り分けは、大小弁の切替不良にも役立ちます。

制御弁の並列設置のよくある質問

大きな制御弁一台では対応できないのですか?

必要な流量範囲と差圧条件を一台で満たせれば、並列に増やす必要はありません。弁種や内部のトリムを変える方法も含め、最小負荷で調節できるかと最大時の容量を比較して判断します。

大小弁の容量比は何対何にすればよいですか?

全設備に共通する容量比はなく、最小需要と切替域から小弁を選びます。本文の10対100は説明用の仮定で、必要な流量と差圧、弁特性が変われば適切な組合せも変わります。

並列ならCv値は単純に足せますか?

液体の非チョーク・乱流条件で両弁の流体と弁差圧が同じなら、各開度の有効Cvを足して扱えます。枝管の抵抗やレデューサの影響が異なる場合は枝全体の流量を計算し、呼び径の合計から容量を決めません。

小弁は常用運転中に閉じておくものですか?

起動専用なら予熱後に閉止する構成がありますが、低流量制御用なら運転中も調節に使います。弁の大きさだけで判断せず、運転手順と制御信号の割付から担当する役割を読み分けます。

小弁を付ければウォーターハンマーは防げますか?

小弁だけで防止は完結せず、蒸気供給の変化とドレン排出を組み合わせて設計します。配管の勾配や低部の滞留、トラップの能力も関係するため、異常な衝撃時は設備の安全手順に従います。

まとめ

この記事のまとめ
  • 大小の制御弁は、小流量の調節と大流量の供給を分担できる。
  • 過大容量の弁を微小開度だけで使うと、細かな調節が難しくなる。
  • 小弁先行のスプリット制御では、切替域の合計流量と安定性を評価する。
  • 起動用小弁は、予熱時の急流入を抑える用途で使われる。
  • 低流量調節・暖機・予備の役割を分け、流量と差圧から容量を選ぶ。

並列設置を検討するときは、二台に分けたい理由を運転条件へ置き換えることが出発点です。蒸気や冷却水などの供給系の位置づけは、プロセスとユーティリティの違いも合わせて読むと整理できます。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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