ガスタービンは、吸い込んだ空気を圧縮機で押し縮め、燃焼器で燃料を燃やし、その高温・高圧のガスでタービンを回す熱機関です。圧縮・燃焼・膨張の3つの工程が止まらずに同時に進むため、体格のわりに大きな出力を取り出せます。
発電用の最新機の一つ、三菱重工のM501JACは単体の発電効率が44.0%で、排熱で蒸気タービンも回すコンバインドサイクルでは64%を超えます(ISO条件・低位発熱量基準)。効率は圧力比とタービン入口温度でほぼ決まり、排気の熱の使い方で発電所全体の効率が大きく変わります。
ガスタービンの仕組み|圧縮・燃焼・膨張の3ステップ
ガスタービンは、圧縮機・燃焼器・タービンの3つの機械を1本の空気の流れでつないだ構造です。空気は入口から出口まで一方向に流れ、途中で圧力と温度が上がってから下がり、下がる間に取り出した力で軸を回します。
圧縮機とタービンは同じ軸でつながっていて、タービンが生んだ力の一部で圧縮機を回し、残りを発電機やファンに渡します。自動車のエンジンのように吸気と燃焼を交互に繰り返すのではなく、どの工程も常に同時に動いている点が大きな違いです。
空気は左から右へ一方向に流れ、圧縮機とタービンは同じ軸で回ります。
※図は発電用の一例(発電機を圧縮機側につなぐ形)。発電機を排気側につなぐ機種もあります。
圧縮機|空気を何段にも分けて押し縮める
大型機の圧縮機は、回る翼と止まっている翼を交互に何段も重ねた軸流式が主流です。1段ごとに少しずつ圧力を上げ、旅客機用の最新エンジンでは入口の60倍まで空気を押し縮める例もあります。翼の並び方は動翼と静翼の考え方と同じです。
燃焼器|圧力を保ったまま温度を上げる
燃焼器では、圧縮した空気に天然ガスや灯油系の燃料を吹き込み、途切れずに燃やし続けます。圧力はほぼ一定のまま温度だけが大きく上がり、最新の発電用では燃焼ガスがタービンに入るときの温度が1,600℃級に達します。
高い温度で燃やすほど窒素酸化物(NOx)が増えるため、発電用では燃料と空気を先に混ぜてから燃やすドライ式低NOx燃焼器が使われます。三菱重工は2023年11月、この燃焼器を使い、都市ガスに水素を体積比で30%混ぜた燃料で大型ガスタービンを発電運転したと発表しました。
タービン|ガスの膨張で軸を回す
高温・高圧のガスはタービンの翼列を通り抜けながら膨張し、圧力と温度を下げる代わりに軸を回す力を生みます。このとき生まれた仕事のおよそ4〜8割は、同じ軸の圧縮機を回すために使われるのが、ガスタービンならではの事情です。
外に取り出せるのは、タービンの仕事から圧縮機の仕事を引いた残りだけです。蒸気タービンでは水を送るポンプの仕事が数%で済むのに対し、気体を押し縮めるガスタービンでは、圧縮機の効率が少し落ちただけでも正味の出力が目に見えて減ります。
圧力は圧縮で上がり膨張で下がり、温度は燃焼でいちばん大きく上がります。
※温度や圧力の具体的な値は機種と運転条件で変わるため、ここでは上がり下がりの向きだけを示しています。
タービンの仕事を100とすると、圧縮機が使う分を引いた残りが発電機に渡ります。
タービンの仕事を100としたときの例
※割合は圧力比や圧縮機・タービンの効率で変わります。大学の講義資料(Purdue大学)では、一般的なガスタービンで圧縮機に使われる割合は40〜80%とされています。
ガスタービンとほかの熱機関の違い
ガスタービンは、燃やしたガスそのもので羽根車を回す内燃機関で、熱機関の一種です。同じガスを燃料に使うガスエンジンはピストンの往復運動で、蒸気タービンはボイラーで作った蒸気で回るため、燃やす場所と動き方がそれぞれ違います。
違いがはっきり出るのは、出力あたりの大きさと起動の速さです。ガスタービンは軽く小さく、短い時間で起動できる一方、単体では排気に多くの熱が残るため、排熱を使うかどうかで向く用途が分かれます。
燃やす場所と回し方が違い、それが起動の速さや向く用途の差になります。
※効率はガスタービンが三菱重工の公表値(ISO条件・低位発熱量基準)、ガスエンジンが日本原子力研究開発機構 ATOMICA の目安です。
| 比べる点 | ガスタービン | ガスエンジン | 蒸気タービン |
|---|---|---|---|
| 燃やす場所 | 燃焼器(機械の中) | シリンダー(機械の中) | ボイラー(機械の外) |
| 回し方 | 燃焼ガスで連続回転 | ピストンの往復 | 蒸気で連続回転 |
| 起動 | 速い | 速い | 時間がかかる |
| 発電効率の目安 | 単体44.0%(M501JAC) | 35〜38%(希薄燃焼方式) | プラント全体で評価 |
| 主な用途 | 火力発電、コージェネ、航空機 | 工場・ビルのコージェネ | 火力・原子力発電、自家発電 |
ブレイトンサイクルで見る効率|圧力比と入口温度で決まる
ガスタービンの理想的な動きはブレイトンサイクルと呼ばれ、理論上の効率は圧力比(圧縮した後と前の圧力の比)だけで決まります。断熱圧縮、圧力一定での加熱、断熱膨張、圧力一定での放熱という4つの過程を1周するサイクルです。
1→2が圧縮、2→3が燃焼、3→4が膨張、4→1が排気。色の付いた面積が1周で取り出せる正味の仕事です。
※理想サイクルの概念図です。実機では損失があるため、圧縮と膨張の線は垂直からやや右に傾きます。
P-v線図では、圧縮(1→2)で体積が縮んで圧力が上がり、燃焼(2→3)で圧力が一定のまま体積が膨らみます。膨張(3→4)で得る仕事から圧縮に使う仕事を引いた、線で囲まれた部分が1周あたりの正味の仕事です。
T-s線図で見ると、加熱の線2→3が高い温度まで伸びるほど囲まれた面積、つまり取り出せる仕事が大きくなります。タービン入口温度を上げることが出力と効率の両方に効くのは、この面積が広がるからです。

圧力比を上げるほど理論効率は上がりますが、伸び方はしだいに緩やかになります。
比熱比 κ=1.4 で計算
※η=1−1/π^((κ−1)/κ)(πは圧力比)で計算した理想値です。実機の発電効率はこれより低く、同じグラフでは比べられません。
理想と実機の差|入口温度との組み合わせで決まる
実際のガスタービンの効率は、図6の理想値より低くなります。圧縮機とタービンには翼の摩擦や漏れによる損失があり、さらに高温の翼を守るために圧縮した空気の一部を冷却に回すので、仕事をしない空気が増えるからです。
実機で効くのは、圧力比とタービン入口温度の組み合わせです。入口温度が低いまま圧力比だけを上げると、圧縮機の仕事が増えて正味の出力が細るため、ガスタービンの効率を上げる歴史は入口温度を上げる歴史でもありました。
タービン入口温度はどこまで上がったか
1939年にスイスで商用運転を始めた最初の発電用ガスタービンは、出力4MW、効率17.4%でした。三菱重工の発電用大型機は、1,500℃級のG形から入口温度を100℃上げた1,600℃級のJ形を2011年に試運転し、現在の最新機M501JACは1,650℃級です。
翼に使う金属はこの温度にそのままでは耐えられないため、翼の内部に冷却空気の通路を設け、表面をセラミックの遮熱コーティングで覆って守っています。冷却と遮熱の技術が進んだぶんだけ、燃焼ガスの温度を上げられるようになりました。
入口温度を上げるたびに、単体の効率とコンバインドサイクルの効率が伸びてきました。
※1939年の数値は米国機械学会(ASME)の機械遺産の説明、G形・J形・JACは三菱重工の公表資料によります。
気温が上がると出力が落ちる理由
実機の出力は、吸い込む空気の状態にも左右されます。圧縮機が吸い込む空気の体積はほぼ決まっているため、気温が高く空気が薄い夏は吸い込む空気の重さが減り、同じ機械でも夏は出力が下がります。
そのため夏の電力需要に合わせて、入口で空気を冷やす吸気冷却を設ける発電所もあります。ただし冷やしすぎると圧縮機の入口で着氷するので、冷却後の温度には下限を設けて運転します。
コンバインドサイクルとコージェネ|排熱の使い道

ガスタービンの排気は、タービンを出た後も高い温度を保っています。この排熱で蒸気を作って蒸気タービンも回すのがコンバインドサイクル、工場の蒸気や温水に使うのがコージェネレーションです。
コンバインドサイクルでは、ガスタービンを高温側、蒸気タービンを低温側に置き、1つの燃料の熱を2段で電気に変えます。蒸気側はランキンサイクルで動いていて、その流れはMONOSCOPEのランキンサイクル解説動画でも図で追えます。
排熱回収ボイラーで作った蒸気を、蒸気タービンに送るか工場に送るかで呼び方が変わります。
排気に含まれるNOxは、燃焼器で発生を抑えたうえで、排熱回収ボイラーの中の脱硝装置でさらに減らします。脱硝の還元剤には、アンモニアや発電所で使う尿素水が使われます。
発電効率と総合効率は別の指標
冒頭のM501JACでも、ガスタービン単体からコンバインドサイクルにすると発電効率が約20ポイント上がります。一方でコージェネの効率は電気と熱を合わせた総合効率で示すのが一般的で、電気だけを数える発電効率とは分母も意味も違います。
日本原子力研究開発機構のATOMICAは、排熱を適切に使えたコージェネの総合効率を70〜85%としています。熱の使い道が年間を通じてある化学・製紙・食品などの工場はコージェネ、電気だけを大量に作る発電事業はコンバインドサイクル、という形で選ばれます。
上の2本は電気だけの効率、下の1本は電気と熱を合わせた効率です。同じ物差しでは比べません。
発電効率(電気だけ、低位発熱量基準)
総合効率(電気+熱)
※発電効率は三菱重工の公表値(ISO条件)、総合効率は日本原子力研究開発機構 ATOMICA の目安です。

発電用と航空用の違い|コアから何を取り出すか

発電用も航空用も、圧縮機・燃焼器・タービンでできた中心部(コア)は同じ原理で動きます。違うのは、タービンの力を軸の回転として取り出すか、ファンを回して空気の流れとして使うかです。
発電用の大型機は、タービンで取り出せる力をできるだけ軸の回転に変えて発電機を回し、排気の勢いはほとんど使いません。重さの制約が小さいため頑丈な構造にでき、長い時間止めずに回し続ける前提で作られています。
旅客機のターボファンエンジンは、タービンの力で前方の大きなファンを回し、コアの外側を通る空気で推力の大部分を生みます。GE AerospaceのGE9Xでは、燃焼器を通る空気1に対して約10の空気がコアの外を通り(バイパス比約10:1)、エンジン全体の圧力比は60:1に達します。
航空エンジンを地上用に作り替えた航空転用型(エアロデリバティブ)もあり、軽くて起動が速い特徴を生かして、需要の変動やピークに合わせる発電や船舶の推進に使われます。国内では川崎重工業のように、産業用ガスタービンと航空エンジンの両方に関わるメーカーもあります。
コアの原理は同じで、取り出すものと重さの制約が違います。
※数値は三菱重工・GE Aerospace の公表値です。
| 比べる点 | 発電用の大型機 | 航空転用型 | ターボファン |
|---|---|---|---|
| 取り出すもの | 軸の回転 | 軸の回転 | ファンが生む推力 |
| 重さ・構造 | 重く頑丈 | 軽い | 軽さが最優先 |
| 得意な使い方 | 大規模発電 | 出力の上げ下げが多い発電、船舶 | 旅客機 |
| 例 | M501JAC(453MW) | ― | GE9X(バイパス比約10:1) |
現場の保守ポイント|どこが傷み、何を見るか

ガスタービンでいちばん傷みやすいのは、燃焼器やタービン入口の翼など、高温のガスに直接さらされる高温部品です。次いで、吸い込む空気のちりや塩分で汚れる圧縮機と、回転体の振動が日常の監視の中心になります。
空気の入口から回転体まで、傷み方の違う4か所を分けて見ます。
出力低下・燃費悪化・振動が出たら疑う場所
運転データの変化から、どこを疑うかの目安をまとめると次の表になります。判断の基準値は機種ごとに違うため、表は確かめる順番の目安として使い、数値はメーカーの資料で確認します。
| 見えた症状 | まず疑う場所 | 確かめること |
|---|---|---|
| 同じ気温・負荷なのに出力が下がった | 圧縮機の汚れ、吸気フィルタの詰まり | フィルタの差圧、圧縮機出口の圧力、洗浄前後の比較 |
| 燃料の消費が増えた | 圧縮機・タービンの翼の劣化、翼先端のすき間の広がり | 出力と排気温度の関係の推移 |
| 排気温度が周方向でばらつく | 燃焼器の不具合(燃料ノズルの詰まり、ライナの損傷) | 排気温度の各測定点の偏差 |
| 振動が増えた | 回転体のアンバランス、軸受、翼の損傷 | 振動値の傾向と周波数 |
圧縮機の汚れは、運転したまま吸気側から水を噴霧するオンライン洗浄と、停止して回しながら洗うオフライン洗浄で落とします。ただし翼の形の変化や先端のすき間の広がりは洗浄では戻らず、点検で部品を替えるまで性能は回復しません。
振動は値そのものより、運転を重ねたときの変化の傾向が大切です。測る位置や判定の考え方は、ほかの回転機と同じく設備の振動診断の基本に沿って進めます。
点検の時期は運転時間と起動回数で決まる
定期点検は、燃焼器だけを見る燃焼器点検、タービンの高温部品まで開ける高温部点検、機械全体を分解する大点検の3段階が基本です。時期は単純な運転時間ではなく、起動・停止の回数や緊急停止(トリップ)、高負荷での運転を重み付けした等価運転時間で決めます。
起動と停止のたびに高温部品は急な温度変化を受け、熱による疲労が進みます。毎日起動と停止を繰り返す運用では、連続運転より早く点検時期が来るので、具体的な間隔はメーカーの保守基準と技術通知で確かめて運用計画に組み込みます。
段階が上がるほど開ける範囲が広がり、停止期間も長くなります。
ガスタービンのよくある質問
ジェットエンジンとガスタービンは同じものですか?
ジェットエンジンはガスタービンの一種です。圧縮機・燃焼器・タービンでできたコアは共通で、タービンの力をファンや噴流として推力に使うものを、航空の分野でジェットエンジンと呼んでいます。
ガスタービンの起動が速いのはなぜですか?
水を沸かして蒸気を作る工程がなく、燃料に点火すればすぐに高温のガスが得られるためです。ただしコンバインドサイクルでは、蒸気側の配管や蒸気タービンを温める時間が必要なので、発電所全体の起動はガスタービン単体より遅くなります。
再生サイクルのガスタービンとは何ですか?
排気の熱で、燃焼器に入る前の圧縮空気を温める熱交換器(再生器)を付けた方式です。燃料を減らせますが、圧縮後の空気が排気より冷たいことが条件になるため、圧力比が低い小型機で使われます。
発電効率の「低位発熱量基準(LHV)」とは何ですか?
燃料を燃やしてできる水蒸気が水に戻るときの熱を含めない発熱量を分母にした効率です。含める高位発熱量基準(HHV)より分母が小さいため、同じ機械でもLHV基準の効率のほうが高い数字になり、比べるときは基準をそろえます。
まとめ
- ガスタービンは圧縮・燃焼・膨張を連続して行い、タービンの仕事の4〜8割を圧縮機の駆動に使う
- 理論効率は圧力比で決まり、実機では入口温度との組み合わせが効率と出力を左右する
- 最新の発電用M501JACは1,650℃級で、単体44.0%、コンバインドサイクルで64%超
- 排熱を蒸気タービンに使えばコンバインドサイクル、工場の熱に使えばコージェネで、効率の物差しが違う
- 保守は高温部品・圧縮機の汚れ・振動が中心で、点検時期は起動回数も含めた等価運転時間で決まる
出典
出典・参考資料(10件)を開く出典・参考資料を閉じる
- M501JACの出力・効率:三菱重工 M501J Series 製品ページ
- J形1,600℃級の試運転:三菱重工 プレスリリース(2011年5月)
- 水素30%混合の発電実証:三菱重工 プレスリリース(2023年11月30日)
- 1939年の発電用ガスタービン:ASME Landmark #135 Neuchâtel Gas Turbine
- GE9Xのバイパス比・圧力比:GE Aerospace GE9X
- ブレイトンサイクルの理論効率・再生器:Brayton cycle(Wikipedia)
- 圧縮機の仕事の割合(バックワーク比40〜80%):Purdue University, C. Wassgren 講義ノート(Brayton cycle)
- コージェネの総合効率・ガスエンジンの効率:日本原子力研究開発機構 ATOMICA「コージェネレーション」
- 航空転用型の用途:Turbomachinery Magazine「Aeroderivative Gas Turbines」
- 圧縮機の汚れと洗浄:NTNU「Gas Turbine Deterioration and Recovery」
TOOLS & SERVICES
製造業で働く人の、仕事の道具・サービス紹介
これからの働き方、資格の勉強、打合せの記録。MONOSCOPE で紹介している3つです。
CAREER社外の仕事を知りたい転職・キャリアガイド今の会社で続けるか、社外にも目を向けるか。考える視点と転職サービスの紹介。仕事と働き方を考える ›
LICENSE仕事に関わる資格を学びたいSAT電験三種・エネ管・QC検定など。職種から資格を選べる表と受講料の比較。SATの対象資格を見る ›
RECORD打合せを記録したいPLAUD録音から文字起こし・要約まで。3機種の選び方と業務で使う前の確認表。PLAUDの使い方を見る ›
NEWSLETTER
機械設計・プラントエンジニアリングの記事を、週1回まとめてメールで受け取る
週刊MONOSCOPEは、登録時に選んだ職種・業種に合わせた記事を週1回お届けする無料のメルマガです。
機械設計を選んだ状態で登録へ ›無料・週1回。登録後に届く確認メールのリンクを押すと登録が完了します。配信はメール内のリンクからいつでも停止できます。
WEEKLY NEWS
今週の製造業ニュース10選
メルマガは職種・業種に合わせた記事。LINEとnoteでは、全員共通の10本を毎週土曜の朝にお届けします。
LINEでニュース10選を受け取るnote今週のニュース10選をnoteで読む ›
