設備保全に必要なスキル・資格とキャリアパス|年収・将来性も解説

設備保全のスキル・キャリアパス

工場の設備が止まったとき、故障の原因は機械の部品だけでなく、センサーの汚れや配線の断線、設備の動きを指示する制御プログラムにあることも少なくありません。そのため設備保全(設備の点検・修理を担う仕事)には、機械・電気・制御と幅広い知識が求められます。

最初からすべてを知っている必要はなく、現場で経験を積みながら少しずつ対応できる範囲を広げていくのが一般的な育ち方です。機械系の出身なら電気を、電気系の出身なら機械を意識して学ぶと、対応できる範囲が早く広がります。

目次
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設備保全に必要な知識・スキル

設備保全に求められる知識・スキルは、大きく次の4つに分けられますが、専門知識だけでなく、原因を考える力や、周りと連携する力も同じくらい大切です。

図1:設備保全に必要な4つの力

どれか一つではなく、組み合わせて使う場面がほとんどです。

機械の知識軸受・歯車・ベルトなどの機械要素、潤滑、油圧・空圧
電気・制御の知識モーター、センサー、シーケンス制御やPLCの基礎
原因を切り分ける力図面や記録を手がかりに、故障の原因を絞り込む
連携と安全の意識現場や業者と調整し、安全手順を確実に守る

これらは入社後の指導(OJT)や社内研修、技能検定の勉強で身につけるのが一般的で、機械系出身なら電気を、電気系出身なら機械を意識して学ぶと、対応できる範囲が早く広がります。

機械の知識

設備の多くは、軸受(ベアリング)や歯車、ベルト、チェーン、シールといった機械要素の組み合わせでできています。それぞれがどのように壊れるのか、どんな兆しが出るのかを知っておくことが保全の土台になります。

加えて、潤滑油やグリースの選び方、油圧・空圧機器の仕組み、ボルトの締め付けや芯出しといった基本作業の知識も欠かせません。分解と組立を正しくできることは、機械系の保全担当の基本です。

電気・制御の知識

いまの生産設備は、モーターやセンサー、制御盤、PLC(プログラマブルロジックコントローラ)で動いています。故障の原因が機械ではなく、センサーの汚れや配線の断線、制御プログラムにあることも少なくありません。

テスターでの電圧・導通の確認や、シーケンス図の読み方、PLCのラダープログラムの基礎を身につけると、対応できる故障が大きく広がります。機械と電気の両方がわかる人材は、どの工場でも重宝されます。

図面を読む力と測定器の扱い

機械図面や電気図面、配管図を読み、実物と照らし合わせる力は、点検でも故障対応でも毎日のように使います。図面がない古い設備では、自分で現物を調べて図面を起こすこともあります。

測定器の正しい使い方も大切で、主な測定器は次のとおりです。

  • ノギス
  • マイクロメーター
  • ダイヤルゲージ
  • 振動計
  • 絶縁抵抗計

感覚だけに頼らず、数値で設備の状態をつかめるようになると、判断の精度が上がります。設備の取扱説明書や部品メーカーのカタログを読み、交換部品の型式や仕様を調べる力も、日々の仕事で意外と多く使います。

故障の原因を切り分ける力

設備が止まったとき、どこから調べるかの順番を組み立てる力が、保全担当の腕の見せどころです。症状と記録、アラームの内容から原因の候補を挙げ、確かめやすいものから一つずつつぶしていきます。

この力は、教科書だけでは身につきにくく、実際の故障に数多く向き合うことで少しずつ磨かれていきます。先輩の対応を間近で見て、なぜその順番で調べたのかを聞くことが近道です。

連携と安全の意識

保全の仕事は、製造のオペレーターや生産技術、外部の業者との連携なしには進まないため、状況をわかりやすく伝え、停止の日程を調整するといった、人とのやり取りの力も求められます。

特に故障の報告では、何が起きて、何をして、何が残っているのかを短く正確に伝えることが大切で、記録を書く力も、この連携の力に含まれます。

また、回転体や高電圧、高所など、危険を伴う作業が多い職種です。電源を切って施錠する手順や、保護具の着用といった安全のルールを、急いでいるときほど確実に守れることが、何より大切な資質といえます。

設備保全に役立つ資格

設備保全は、資格がなければ就けない仕事ではありませんが、扱う設備によっては資格が必要な作業があり、会社が取得を後押ししていることも多くあります。代表的なのは、次のような資格です。

  • 機械保全技能士
  • 電気工事士(第一種・第二種)
  • 第三種電気主任技術者
  • 危険物取扱者
  • ボイラー技士
  • 冷凍機械責任者
  • エネルギー管理士
  • など

図2:設備保全に役立つ資格の特徴

保全の技能そのものを示す資格と、特定の設備を扱うための資格があります。

機械保全技能士
製造・技能日本プラントメンテナンス協会が実施する国家検定。保全の技能を特級〜3級で証明する
電気工事士(第一種・第二種)
工事電気技術者試験センターが実施。電気工事の作業に従事するための国家資格
第三種電気主任技術者
運転・保安電気技術者試験センターが実施。受変電設備などの保安の監督に必要な国家資格
危険物取扱者
運転・保安消防試験研究センターが実施。油類などの危険物を取り扱うための国家資格
ボイラー技士
運転・保安安全衛生技術試験協会が実施する免許試験。ボイラーの取扱いに必要な国家資格
冷凍機械責任者
運転・保安高圧ガス保安協会が実施。冷凍設備の保安の責任者となるための国家資格
エネルギー管理士
設計・技術省エネルギーセンターが実施。工場のエネルギーの使い方を管理するための国家資格

※試験の区分や受験資格は、各実施団体の公式サイトで最新の情報を確認してください。

最初の目標としてよく挙がるのが、保全の技能を直接示す機械保全技能士です。機械系保全作業、電気系保全作業、設備診断作業の区分があり、実務経験に合わせて等級を上げていけます。

電気の作業を広く担うなら電気工事士、受変電設備を持つ工場では電気主任技術者が評価されます。ボイラーや冷凍設備、危険物を扱う工場では、それぞれの資格が必要な場面があるため、職場の設備に合わせて選ぶのが現実的です。

若手のうちは機械保全技能士の3級や2級、第二種電気工事士から始め、経験に合わせて上位の資格へ進むのがよくある順番です。資格の勉強は、現場で見てきたことを体系的に整理する機会にもなります。

電気工事士や電験三種の通信講座を検討する場合は、SATの講座内容と受講料を学習方法の比較に使えます。

設備保全のキャリアパス

設備保全のキャリアは、現場で技能を身につける時期から始まり、故障対応や計画の中心を担う時期を経て、部門の管理や設備投資の判断へと広がっていきます。入口は一つではなく、主な入り方は次の3つです。

  • 工業高校や高専、大学の機械・電気系学科から新卒で入る
  • 製造オペレーターから保全へ移る
  • 自動車整備などの経験を生かして転職する

設備を触った経験があれば、異業種からでも入りやすい職種です。

図3:設備保全のキャリアの例

若手、中堅、ベテラン・管理職の3つの段階に分かれます。

若手
01点検・整備の習得先輩について点検や部品交換の基本を身につける
02故障対応の補助故障の現場に同行し、原因の調べ方を学ぶ
03資格の取得機械保全技能士や電気工事士などに挑戦する
中堅
04故障対応の主担当難しい故障でも自分で原因を突き止め、復旧させる
05保全計画・改善点検周期や設備改善を企画し、効果を確かめる
06後輩の指導若手やオペレーターに点検や作業の方法を教える
ベテラン・管理職
07保全部門の管理人員・予算・計画を管理し、稼働率の目標を担う
08設備投資の提案更新や新設の判断に、保全の立場から関わる

※年数や役割の分け方は、会社の規模や体制によって異なります。

保全のスペシャリストとして極める

一つ目は、現場の技術者として専門性を深める道です。特定の設備や技術、たとえば油圧、制御、振動による設備診断などに強みを持ち、難しい故障のときに頼られる存在を目指します。

機械保全技能士の上位等級や、設備診断の技術を身につけると、社内外で評価されやすくなります。「この人に聞けば直る」と言われる技術者は、年齢を重ねても現場で長く活躍できます。

大手メーカーでは、技能の高い人を認定する社内制度や、技能競技会に挑戦する機会を設けている会社もあります。

保全部門の管理職・工場の管理者へ

二つ目は、保全部門のリーダーや課長として、人と計画、予算を管理する立場に進む道です。どの設備にいくら使うか、どの設備を更新するかといった判断は、工場の収益に直結します。

設備全体を見てきた経験は、製造部門の管理や工場長など、工場全体を預かる立場でも生きてきますし、保全から工場の管理者になるケースも珍しくありません。

管理職になると自分で手を動かす機会は減る分、部下の育成や、限られた予算で成果を上げる仕組みづくりが仕事の中心になります。

別職種への転身や独立

三つ目は、保全の経験を生かして別の職種へ進む道です。設備の弱点を知る経験は、新しい設備を導入する生産技術で重宝されます。設備メーカーのサービスエンジニアや、技術営業に転じる人もいます。

電気工事や設備工事の資格と経験を積めば、工事会社への転職や、保守を請け負う会社を立ち上げて独立する道もあります。設備を扱う経験は、業界や会社を越えて通用するのがこの職種の強みです。

設備を扱う経験を社外で生かす道を、今の工場で続ける道と並べて考える際は、転職・キャリアガイドも参考にできます。

設備保全の年収と将来性

設備保全の年収は、会社の規模や業界、担当する設備、夜勤や呼び出しの有無によって大きく変わるため、ここでは、公的な統計で目安を確認します。

年収の目安

厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)で、設備保全に近い職業として掲載されている「産業用ロボットの保守・メンテナンス」の統計(分類は「はん用・生産用・業務用機械器具整備・修理工」)では、平均年収は571.2万円、平均年齢は42.7歳です(令和7年賃金構造基本統計調査)。

同じ統計で、ほかの設備に関わる職業と比べると次のとおりで、工場の設備保全に近い職業は、設備系の仕事の中では中ほどの水準にあることがわかります。

図4:設備に関わる職業の平均年収

厚生労働省 job tag に掲載された、令和7年賃金構造基本統計調査の値です。

電気技術者703.9万円
設備保全に近い職業(機械器具整備・修理工)571.2万円
自動車整備士503.8万円
ビル施設管理452.3万円

※職業ごとに統計上の分類が異なります。会社の規模や地域、残業・手当によって実際の年収には幅があります。

なお、この統計は工場の保全担当だけでなく、機械の修理を専門に行う人なども含む分類です。大手メーカーの保全部門では、交代勤務の手当などが加わり、これより高くなることもあります。

また、ハローワークの求人での賃金(月額)は26万円(令和7年度)とされており、未経験から入る場合は、この水準から経験と資格に応じて上がっていくのが一般的です。

需要と将来性

設備保全の人材は、多くの工場で不足しています。同じくjob tagによると、この職業のハローワークでの有効求人倍率は5.63(令和7年度)で、求職者1人に対して5件を超える求人がある状態です。

工場の自動化が進むほど、ロボットや自動化設備を止めずに動かす保全の役割は大きくなります。設備の老朽化が進む工場も多く、ベテランの退職によって技術の継承も課題になっています。

こうした背景から、人手不足・省人化の流れの中でも需要が続く職種といえます。設備はどの製造業にもあるため、特定の業界の景気に左右されにくいのも特徴です。ある業界で身につけた保全の技術を、別の業界の工場で生かすこともできます。

今後求められるスキル

これからの保全では、センサーやIoTで設備のデータを集め、故障の兆しをとらえる予知保全の知識が求められます。データを見て判断できる力は、経験の浅い人でも早くから強みにしやすい分野です。

産業用ロボットや制御の知識、省エネルギーへの対応も重要になっています。機械・電気の基礎に、デジタルの力を掛け合わせられる人ほど、活躍の場が広がると言えます。

設備保全に向いている人

ここまで見てきた仕事の性質から、向いているのは次のような人です。裏を返せば、この3点に抵抗がある場合は、入ってからのギャップが大きくなりやすいと言えます。

機械や仕組みに興味がある

設備がどうやって動いているのか、なぜ壊れたのかを知りたくなる好奇心は、保全の仕事の原動力になります。分解して中を見てみたい、仕組みを理解したいと思える人ほど、技術の伸びが早い傾向があります。

最初は知識がなくても問題ありません。わからないことを自分で調べ、試しながら覚えていくのが苦にならない人に向いています。

地道な確認を続けられる

保全の成果の多くは、毎日の点検や記録といった地道な作業の積み重ねから生まれます。何も起きない日が続いても、同じ確認を丁寧に続けられることが大切です。

小さな変化に気づき、「念のため確かめておこう」と動ける人は、大きな故障を防ぐ力を持っています。記録をこまめに残し、あとから振り返る習慣がある人も、この仕事で力を発揮しやすいと言えます。

慌てず冷静に判断できる

ラインが止まった現場では周りから早く直すよう求められますが、その中でも手順を飛ばさず、原因を冷静に切り分けられる人が信頼を集めます。

また、夜間や休日の対応、急な予定の変更もあるため、状況に合わせて柔軟に動ける人ほど、やりがいを感じやすい職種です。

逆に、決まった作業を決まった時間に淡々とこなしたい人や、体を動かす仕事を避けたい人にとっては、負担を感じやすい面があります。職場見学などで、実際の働き方を確かめておくと安心です。

設備保全のスキル・キャリアのよくある質問

設備保全は未経験からでもなれますか?

資格がなければ就けない仕事ではなく、設備を触った経験があれば異業種からでも入りやすい職種です。製造オペレーターから移る人や、自動車整備の経験を生かして転職する人もいます。

機械と電気はどちらから学ぶべきですか?

自分の出身に近い分野を土台にし、足りない側を意識して学ぶのが近道です。機械系の出身なら電気を、電気系の出身なら機械を学ぶと、対応できる範囲が早く広がります。

設備保全の仕事はきついですか?

夜間や休日の対応や急な予定の変更があり、回転体や高電圧など危険を伴う作業も多い職種です。その一方で、状況に合わせて柔軟に動ける人ほど、やりがいを感じやすい仕事でもあります。

設備保全は自動化で仕事がなくなりますか?

工場の自動化が進むほど、ロボットや自動化設備を止めずに動かす保全の役割は大きくなります。予知保全などデータを扱う知識を身につければ、活躍の場はさらに広がると考えられます。

まとめ

この記事のまとめ
  • 設備保全には、機械・電気・制御の知識と、故障の原因を切り分ける力が求められる
  • 機械保全技能士や電気工事士など、保全や設備の取扱いに関わる資格が役立つ
  • キャリアはスペシャリスト、管理職、生産技術や設備メーカーへの転身など幅広い
  • 近い職業の平均年収は571.2万円(令和7年)、求人倍率は5.63(令和7年度)
  • 機械が好きで、地道な確認を続けられ、冷静に判断できる人に向いている

設備保全という職種の全体像は設備保全とはで、日々の業務の進め方は設備保全の仕事の流れで解説しています。保全の経験が生きるFA業界や電子部品・半導体業界の記事もあわせて参考にしてください。

設備保全の働き方については、設備保全の職種ページから関連記事もあわせてご覧ください。

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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