吸収式冷凍機のCOPの計算方法|蒸気・ガスの式とターボとの比較

機械室に設置された横形吸収式冷凍機

吸収式冷凍機のCOPは、冷却能力を再生に使う熱で割って求めます。JIS基準の機器性能では、分母に機内の消費電力も加えて評価します。

蒸気式なら蒸気が渡す熱、ガス式なら燃料の発熱量を入力に使います。電力を入力とするターボ冷凍機とは、数字の大きさを読む前提が違います。

計算では、まず冷水側の能力と熱源側の入力を同じ単位にそろえます。ここでは式と計測位置を示し、廃熱利用の判断まで数値例で整理します。

目次

冷凍機のCOPは何を表すのか

COPは成績係数といい、投入したエネルギーに対する有効な出力の比です。冷却用途では奪った熱、加熱用途では供給した熱を分子に置きます。

電動冷凍機の基本形は冷却能力を消費電力で割ったもので、どちらもkWで表すと、単位が打ち消されて無次元の値になります。

電動冷凍機の基本形
COPc = QcW
Qc:冷却能力[kW] W:消費電力[kW] 添字cは冷却を示します。

冷凍機は電気をすべて冷たさに変える装置ではなく、熱を移す装置です。低温側の熱を高温側へ運ぶため、COPが1を超えても矛盾しません。

加熱用ヒートポンプでは低温側から集めた熱に入力した仕事が加わるため、冷却と加熱のCOPを比べるときは分子に置く熱の違いが出発点です。

電力のkWと電力量のkWhも区別します。ある瞬間の能力同士、または同じ期間の熱量と電力量同士で割れば、正しい比になります。

例えば冷却能力600kWを1時間保てば、取り去った熱は600kWhです。熱量と能力の関係は、設備全体のヒートバランスの読み方につながります。

吸収式冷凍機のCOPの計算方法

吸収式は、冷媒蒸気を機械式圧縮機で圧縮する代わりに、吸収と再生を使います。水を冷媒にする方式では、水蒸気を吸収液に取り込んで低圧を維持します。

蒸発器では冷媒の水が蒸発し、冷水から熱を奪います。吸収器で薄くなった吸収液を再生器へ送り、蒸気や燃料の熱で濃度を戻します。

図1:吸収・再生で冷媒の水を循環させる

冷水から奪う熱と、再生器へ入れる熱を分けて追います。

再生器凝縮器蒸発器吸収器冷媒蒸気冷媒液水蒸気濃い吸収液薄い吸収液をポンプで戻す再生用の熱冷水の熱を奪う放熱放熱

原理を示す模式図です。配管の山形交差は非接続を示し、弁や溶液熱交換器は省略しています。再生器の段数や内部配管は機種ごとに異なります。

したがって主な入力は電力ではなく、再生器へ与える熱になります。溶液ポンプや冷媒ポンプ、制御回路にも電力を使うため、電気が不要という意味ではありません。

熱による駆動だけを表すときは冷却能力を再生熱量で割る熱COPを使い、カタログに載る機器COPでは採用する規格の電力範囲までそろえます。

吸収式の熱COPと、機内電力を加えた評価
COPth = QcQg
COP = QcQg + Wu
Qg:加熱源の消費熱量[kW] Wu:評価に含める機内消費電力[kW]。外付けポンプや冷却塔は、システム評価で別途扱います。

冷却能力は冷水の流量と温度差から求める

分子の冷却能力は、冷水の質量流量と入口・出口温度差から計算します。水が装置を通って何度冷えたかを、通過する水の量と組み合わせる考え方です。

説明用に冷水30kg/s、入口12℃、出口7℃とします。比熱を4.18kJ/(kg・K)で一定と近似すると、冷却能力は627kWです。

冷水側の熱収支
Qc = ṁw cp (Tin − Tout)
= 30 × 4.18 × (12 − 7)
= 627[kW]
ṁw:冷水質量流量[kg/s] cp:比熱[kJ/(kg・K)] T:温度[℃]。1kJ/s=1kWです。

流量計の表示がm³/hなら、密度を掛けてkg/hに直し、さらに3600で割ります。温度差だけが大きくても、流量が少なければ冷却能力は小さくなります。

入口と出口の温度は、同じ運転時刻の値を使います。起動直後や負荷が急変した瞬間を避けると、計算結果と実際の運転を結び付けやすくなります。

蒸気式は入口とドレン出口の熱量差を使う

蒸気式では、蒸気が入ったときの比エンタルピーから、出るドレンの値を引きます。蒸気流量にこの差を掛けると、再生器に渡した熱が求まります。

比エンタルピーは流体1kgが持つ熱的なエネルギーを表し、蒸気が凝縮しても温かいドレンとして熱を持ち出します。そのため入口の値だけを掛けると、再生器に渡した入力を多く数えます。

図2:COPを実測するときの計測境界

冷水の往復と、蒸気・ドレンの入口出口を同じ境界で測ります。

吸収式冷凍機蒸気ṁ・h入口ドレンh出口冷水出口7℃冷水入口12℃冷水流量ṁ機内電力破線内の機内電力も計量

冷水流量は往復のどちらか一方で計量します。弁やトラップを含める範囲に合わせて、出口状態を決めます。

説明用の条件を、蒸気700kg/h、入口2760kJ/kg、ドレン出口600kJ/kgとします。ここでの状態値は計算手順を示す仮定で、特定の圧力に対する蒸気表の引用ではありません。

蒸気が再生器に渡す熱
Qg = ṁs(hin − hout)3600
= 700 × (2760 − 600)3600 = 420[kW]
COPth = 627420 ≒ 1.49
COP = 627420 + 8 ≒ 1.46
ṁs:蒸気質量流量[kg/h] h:比エンタルピー[kJ/kg]。最後の式は機内消費電力8kWを加えた例です。

実設備では、入口蒸気の圧力・温度と、出口ドレンの状態から物性値を選びます。飽和・過熱・湿りの違いは、エンタルピーの意味と蒸気の熱量を押さえると整理できます。

ガス式は発熱量の基準をそろえる

直焚きガス式では、ガス使用量に発熱量を掛けて熱入力を求めます。発熱量がMJ/m³、使用量がm³/hなら、積を3.6で割るとkWになります。

仮にガス40m³/h、低位発熱量40.6MJ/m³、機内電力8kWとします。冷却能力680kWなら、熱と電力を合わせたCOPは約1.48です。

説明用のガス式計算
Qgas = Vgas HL3.6 = 40 × 40.63.6 ≒ 451.1[kW]
COP = 680451.1 + 8 ≒ 1.48
Vgas:ガス使用量[m³/h] HL:低位発熱量[MJ/m³]。体積は発熱量と同じ温度・圧力の基準に換算します。

低位発熱量は、燃焼で生まれた水蒸気の凝縮潜熱を含めない値です。高位発熱量はそれを含むため、同じ装置でも分母が大きくなります。

この違いだけで、表示COPは変わります。カタログのJIS基準と高位発熱量基準を混ぜず、高位発熱量と低位発熱量のどちらを使ったかを併記します。

COP1.5や1.74はどう読むのか

吸収式のCOPは、効用数や熱源、運転温度で変わります。二重効用では、高温の再生器で生じた冷媒蒸気の凝縮熱を別の再生段で利用します。

川重冷熱工業の製品例では、二重効用の定格COPが1.51と表示されています。三重効用の製品例はJIS基準で1.74、高位発熱量基準で1.60です。

これはそれぞれの機種と定格条件に対応する数値なので、吸収式全体の性能を一つの値で代表させるより、熱源と試験条件を付けて読むほうが正確です。

図3:同じCOPでも、入力と範囲が異なる

比較表には数値だけでなく、熱源・発熱量・補機範囲を一緒に記入します。

評価分子分母使う場面
電動機のCOP冷却能力機器消費電力同じ温度条件で機器比較
吸収式の熱COP冷却能力再生用の熱熱駆動の原理や熱量計算
ガス式のJIS基準冷却能力低位発熱量による入力+機内電力規格とカタログの照合
システムの評価供給した冷熱対象に含めた熱と電力冷却塔・ポンプ込みの運用改善

高位発熱量基準の慣用表示では機内電力を含めない場合もあるため、算定式を確認します。

定格COPは決められた負荷と温度条件での性能であり、工場では季節や生産量によって負荷が変わるので、その値だけで年間消費量は決まりません。

期間効率は複数の負荷条件をまとめて評価する指標なので、年間の判断では冷水温度と冷却水温度、運転時間帯の組合せまで見ると役立ちます。

ターボ冷凍機よりCOPが低いと不利なのか

ターボ式は主に電力、吸収式は主に熱を使って入力の性質が違うため、COPの大小だけで費用や一次エネルギーの優劣を決めることはできません。

電力は発電・送電を経て工場へ届き、蒸気は構内ボイラーや排熱設備から供給されます。方式を公平に比べるには、どこから先の消費を数えるかをそろえます。

購入蒸気を使う場合は蒸気単価、専用ボイラーなら燃料とその効率が効きます。ボイラーを新たに運転するなら、ボイラー効率と蒸気配管の損失も評価に加わります。

両方式とも冷水から取り去った熱を外へ捨てる必要があります。吸収式では再生に加えた熱も放熱側へ回り、吸収器と凝縮器で冷却水へ渡されます。

図4:吸収式もターボ式も、冷却水へ放熱する

冷却能力が同じでも、加えた入力の分だけ必要な放熱量が変わります。

吸収式:冷水の熱627 + 再生熱420ターボ式:冷水の熱627 + 電力104.5627627放熱1047kW放熱731.5kW420104.5

説明用の熱収支です。ポンプ動力・外部への熱損失を省略した仮定で、実機の性能比較値ではありません。

放熱量の違いは、冷却塔の能力や冷却水流量にも影響します。更新時は冷凍機本体の寸法と容量だけでなく、既設の放熱設備が新しい条件に合うかを見ます。

両方式とも冷却能力の異なる機種があり、必要な負荷範囲に合わせて選びます。冷却水の流量を増やせば、ポンプ動力も変わります。配管との関係はポンプの流量と圧力、水質面は冷却塔の濃縮倍数が関連します。

廃熱がある工場で吸収式を選ぶ理由

冷凍機につながる保温された冷水配管とフランジ
冷水配管と冷凍機のイメージ(生成画像)

吸収式の利点は、使い道のない蒸気や温水を冷却の入力にできることです。熱を捨てながら電動冷凍機で冷やしている設備では、排熱の利用先を増やせます。

荏原冷熱システムの排熱利用機も蒸気や温水の熱で水を冷却する構成であり、発電と熱利用を組み合わせるコージェネレーションでは、冷房も熱の使い道になります。

熱の量だけでなく、温度と必要な冷水温度の組合せが重要です。熱源温度が変われば使える機種と能力が変わるため、余剰熱の年間データを整理して選びます。

例えば冬に余る温水が、夏の冷房時には使えなければ効果は小さくなります。運転時間が重なる負荷を見つけると、排熱の存在と実際の利用量を区別できます。

冷凍機へ送るためだけに蒸気を増産するなら、その熱は余剰熱ではありません。工程加熱との取り合いがある場合も、冷房へ回した熱の価値を費用に含めます。

導入検討では、熱源の温度・流量・時間変動と、必要な冷水条件を対にします。熱源と需要の両方を測ることが、工場の省エネとエネルギー管理の基本です。

運転費は同じ冷却量で比べる

前の蒸気式の例を使い、同じ627kWを供給する費用を計算します。蒸気単価を3000円/t、電力単価を25円/kWhと置いた説明用の試算です。

吸収式は蒸気0.7t/hと機内電力8kWを使います。比較する電動機をCOP6と仮定すると、必要電力は104.5kWになります。

図5:同じ627kWの冷却を1時間続ける費用

COPに直接単価を掛けず、必要な蒸気量と電力量に戻して比較します。

蒸気式の入力0.7t/h × 3000円/t
+8kW × 25円/kWh
2300円/h
電動機の入力627kW ÷ COP6
=104.5kW
2612.5円/h
次に加えるもの冷却塔・外付けポンプ
保守・水処理・熱源設備
年間の総費用へ

単価・能力・COPは説明用の仮定です。冷却塔などを含める前の計算で、方式の経済性を一般化する値ではありません。

この条件では蒸気式の入力費用が312.5円/h小さくなります。蒸気の単価が上がれば結果が変わり、廃熱なら入力費用の考え方も変わります。

年間費用は季節ごとの負荷と運転時間を使って積み上げ、初期費用や保守も加えると、本体COPの順位とは異なる選択になる場合があります。

維持管理では真空状態と伝熱面の汚れを把握し、性能変化を追います。点検の組み方は、時間基準保全と状態基準保全の考え方で整理できます。

実測のCOPが低いときの調べ方

計算値が定格を下回ったら、最初に測定条件をそろえます。冷却水温度や冷水出口温度が違うまま比較すると、機器の劣化と運転条件の影響が混ざります。

次に、冷水流量と温度差の測定を照合します。温度差が小さい運転では、温度計の小さなずれが熱量の計算に占める割合を大きくし、COPも振れやすくなります。

例えば温度差5℃を5.2℃として計算すると、流量が同じでも冷却能力は4%大きくなります。分子が増えた結果、実際には性能が変わらなくてもCOPが高く出ます。

蒸気側では流量の単位とドレン出口の状態を点検します。トラップ前後を取り違えたり、湿り蒸気を乾き飽和蒸気として扱ったりすると、入力熱量を正しく評価できません。

測定と条件がそろった後で、機内の真空状態や冷却水側の汚れを調べます。日常記録に冷却能力と熱入力を残すと、同じ負荷での性能変化を追いやすくなります。

COPが下がったという結果だけで、吸収液の調整や安全装置の変更へ進めてはいけません。内部の点検や調整はメーカーの取扱手順に従い、測定記録を添えて保守担当へ引き継ぎます。

本体とシステムの数字を分けて記録する

本体COPとシステムCOPを並べると、改善すべき場所が見えます。本体の熱入力が減っていても、冷却水ポンプや冷却塔の電力が増えれば、設備全体の削減量は小さくなります。

計測表には対象機器名と集計期間を書き、熱量計と電力量計の時刻を合わせます。月間値は毎時COPの単純平均ではなく、月間冷熱量を月間の入力合計で割って求めます。

例えば軽負荷の短い時間と、重負荷の長い時間を同じ重みで平均すると、実際の消費とずれます。熱量の合計から計算すれば、運転時間と能力の違いを自然に反映できます。

吸収式冷凍機のCOPでよくある質問

吸収式冷凍機は電気を使わないのですか?

機械式圧縮機は使いませんが、ポンプや制御回路には電力を使います。冷水ポンプ、冷却水ポンプ、冷却塔も含めると、周辺設備の電力も必要です。

COPが1を超えるのはなぜですか?

COPは、冷水から奪った熱と駆動入力の比だからです。燃料から仕事を取り出す熱効率とは定義が違い、冷却した熱がそのまま入力熱から生まれるわけではありません。

吸収式冷凍機のCOPは1.5が上限ですか?

1.5は上限ではなく、高効率な二重効用機などの製品例に対応する値です。三重効用では定格1.74という製品例があり、効用数と基準を付けて比較します。

定格COPが高い機種を選べば省エネですか?

定格条件に近い運転が多いほど、その性能を生かしやすくなります。低負荷運転が長い工場では、部分負荷性能と補機動力を含めた年間値が判断材料です。

蒸気はなぜ冷凍機に必要なのですか?

蒸気は吸収液から冷媒を分離し、吸収できる濃度へ戻す熱源です。熱で冷やす原理と再生の役割は、吸収式冷凍機に蒸気を使う理由でも説明しています。

冷凍機の設備と技術は、日立公式の紹介動画でも見られます。動画の機種紹介と、ここで示した説明用の計算条件は分けて読むと、実機との関係がつかめます。

まとめ

この記事のまとめ
  • 吸収式の基本は冷却能力を再生用の熱で割る熱COP
  • JIS基準のガス式では、低位発熱量による入力に機内電力を加える
  • 蒸気式の入力は蒸気流量と入口・出口のエンタルピー差から計算する
  • ターボ式とは入力が違うため、費用や評価範囲をそろえて比較する
  • 廃熱の温度と量、冷却需要の時刻が合う設備で利点を生かせる

吸収式もターボ式も、冷却能力のほかに熱源と放熱側が必要です。COPの式を書いたうえで、計測境界と運転条件を添えると、設備に合う比較になります。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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