コンデンサと電界の関係|電荷一定・電圧一定で距離と誘電体を比較

電子基板に実装されたフィルムコンデンサとセラミックコンデンサ

コンデンサの極板間の電界は、平行平板ならE=V/d=Q/(εS)で表せます。距離や誘電体を変えた結果は、電荷Qと電圧Vのどちらを一定にするかで変わります。

電源につないだままなら電圧が保たれ、電源から切り離せば理想的には電荷が保たれます。この違いを先に決めると、距離が式から消える理由や誘電体の働きを説明できます。

電界の定義から、コンデンサの式、絶縁体を入れた変化の順に整理します。同じ平行平板を使った数値例で、電源接続と切離の結果を見比べていきます。

動画の1分40秒付近は、距離と誘電率の変更を混同した説明です。電圧一定で距離を2倍にすると、容量・電荷・電界はいずれも半分になります。

2分09秒付近の「電圧と距離が一定でも電界が小さくなる」という説明も誤りです。全面へ誘電体を入れると、V一定では電界は同じで電荷が増え、Q一定では電界と電圧が下がります。

目次

電界とは

電界は、電荷を置いたときに電気的な力が働く空間を表す言葉です。その場所の電界を知ると、小さな正の電荷にどちら向きの力が働くかが分かります。

電界の強さは、試験用の電荷に働く力を、その電荷の大きさで割った値です。正電荷には電界と同じ向き、負電荷には反対向きの力が働きます。

電界と電気的な力の大きさ
E = F|q|  F = |q|E
E:電界の強さ[N/C=V/m] F:力の大きさ[N] q:試験電荷[C]、|q|はその絶対値。力の向きは、正電荷なら電界と同じ、負電荷なら反対です。

図1:電界の向きと、電荷が受ける力の向き

正極板から負極板へ電界が向き、正電荷と負電荷には逆向きの力が働きます。

+極板−極板電界Eは右向き正電荷の力負電荷の力

試験電荷は、元の電界を大きく乱さないほど小さいものを考えます。線の本数は見やすく描いたもので、実際の電荷数ではありません。

単位のN/CとV/mは同じ電界を表し、問題の与え方によって使い分けます。極板間の電圧と距離から求めるときは、V/mの形が便利です。

例えば1000V/mは1kV/mですが、1kV/cmは100kV/mです。センチメートルをメートルへ直す分だけ100倍になるので、数値だけを比べないようにします。

電気力線は、電界の向きと強さを見える形にした線です。向きは矢印、強さは線の密度で表しますが、空間に細い糸が存在するという意味ではありません。

磁界を表す線も似た使い方をしますが、電界と磁界は別の量です。線の定義の違いは、磁力線と磁束線の違いを並べて読むと整理できます。

コンデンサと電界の関係

コンデンサでは、向かい合う極板に正負の電荷が分かれて蓄えられます。片方に+Q、もう片方に−Qがあると、両極板の間に電界が生じます。

ここでは十分に広い平行平板を考え、端で電界が広がる影響を無視します。極板間を一様な誘電体で満たすと、中央部の電界は次の式で表せます。

一様な平行平板の電界
E = QεS = Vd
Q:片側極板の自由電荷の大きさ[C] ε:極板間の誘電率[F/m] S:向かい合う極板面積[m²] V:極板間電圧[V] d:極板間距離[m]

Q/Sは、極板の単位面積あたりにある自由電荷の量です。同じ面積に多くの電荷を蓄えるほど電界は強くなり、同じ電荷を広い面積へ分けると弱くなります。

誘電率εは、電界と電荷の関係を決める材料の性質です。真空の誘電率ε₀と材料の比誘電率εᵣを使ってε=ε₀εᵣと表し、詳しい定義は誘電率と比誘電率の違いで整理しています。

電気力線の本数をN=Q/εと書く説明もあります。これは電界の面積積分に対応するよう線を割り当てる約束で、実在する整数の本数を数える式ではありません。

電気力線の密度として読む表現
N = Qε  E = NS = QεS
N:一様な平板電界で、極板面を通る電界の面積積分ESに対応させた量[V·m]。無次元の本数ではありません。図に描く線の本数の尺度は任意です。

電束密度D[C/m²]を使うと、一様な平行平板ではD=Q/S、電界はE=D/εと書けます。誘電体を変えても同じなのがDなのかEなのかを、式の記号で区別することが大切です。

距離が式から消えるのは、何を一定にしたときか

E=Q/(εS)だけを見ると、距離dが電界に関係しないように見えます。この読み方が使えるのは、QとεとSを一定にして距離だけを変える場合です。

一方、E=V/dでVを一定にすると、距離が長いほど電界は弱くなります。二つの式が矛盾するのではなく、固定している量が違うために結果が変わります。

電気容量と電荷の関係から、同じ式を導く
Q = CV  C = εSd
E = Vd = QC × 1d
= dQεS × 1d = QεS
C:静電容量[F]。距離が約分で消えても、電源につないだ条件ではQ自体が距離に応じて変わります。

電源につないだままなら、電源が極板へ電荷を出し入れして電圧を保ちます。距離を2倍にすると容量は半分になるので、同じ電圧でも蓄える電荷は半分です。

電源から切り離し、外へ電荷が逃げない理想状態ならQが保たれます。距離を2倍にすると容量は半分になりますが、電荷が同じなので電圧が2倍になります。

図2:最初に、電源がつながっているかを分ける

理想電池に接続した左はV一定。右は充電後にスイッチを開き、漏れがなければQ一定です。

電源へ接続電源を切離V一定・Qは変わるQ一定・Vは変わる++点線:充電時の慣用電流

点線矢印は充電時の慣用電流の向きで、電子の移動方向は逆です。充電完了後の理想直流回路では電流はゼロ。距離を広げて電荷が電源へ戻る際は、点線とは逆向きになります。右も漏れや測定器による放電があればQは変化します。

この条件は、計算を始める前に問題文から拾います。「電池につないだまま」はV一定、「充電してから切り離す」はQ一定が基本の読み分けです。

面積や誘電率を一定にしたまま距離を変えると、図3のような違いになります。距離が2倍でも電界一定という結論を、電圧一定の回路へそのまま当てはめてはいけません。

図3:距離を変えたときの電界は、条件で違う

出発点をd₀、E₀として、電荷一定と電圧一定の相対変化を示します。

E/E₀1.00.501倍2倍3倍d/d₀Q一定V一定

面積と誘電率は固定。Q一定ならE/E₀=1、V一定ならE/E₀=d₀/dです。描画範囲はd/d₀=1〜3で、反比例の線は各計算点を結んだ近似です。

電界は電圧そのものではなく、距離あたりの電位の変化です。同じ100Vでも1mmの隙間と2mmの隙間では、V一定の電界はそれぞれ100kV/mと50kV/mになります。

この関係は、絶縁体を薄くして容量を増やす設計にもつながります。同じ電圧で薄くするほど電界は強くなるので、容量だけでなく絶縁性能と定格電圧も重要になります。

コンデンサに絶縁体を入れたときの大きさ

極板間に誘電体を入れると、内部の正負の電荷がわずかにずれる分極が起きます。その結果、極板の自由電荷がつくる電界を弱める向きの電界が加わります。

ただし、その効果だけで最終的な電界を決めることはできません。電源につながっていれば、新たな自由電荷が極板へ供給されるので、その分も合わせて考えます。

図4:分極の電界は、極板がつくる電界と逆向き

自由電荷を固定したときは、分極による逆向きの成分だけ全体の電界が弱くなります。

自由電荷がつくる電界 →← 分極がつくる電界+−

分極は、電子が誘電体を通って対向極板へ流れることとは違います。図の+と−は、電荷の偏りを模式的に示したものです。

電源を切り離してQを一定にした場合

Q一定で、隙間全体を比誘電率εᵣの誘電体で満たすと、電界は元の1/εᵣになります。距離が同じなら極板間電圧も1/εᵣとなり、容量はεᵣ倍へ増えます。

例えば比誘電率4なら、容量は4倍、電界と電圧は4分の1です。電荷を追加しなくても、同じ電荷に対する電圧が低くなるため、Q/Vで定義する容量が増えます。

電源につないでVを一定にした場合

電源につないだままなら、誘電体を入れてもVとdは同じなので、平均電界E=V/dは変わりません。容量がεᵣ倍になると、電源から電荷が補われてQもεᵣ倍になります。

分極が起こらないのではなく、追加された自由電荷の電界がその効果を補います。「誘電体を入れると電界が下がる」とだけ覚えず、固定条件まで一組で覚えるのが要点です。

図5:距離2倍と誘電率4倍の早見表

変更前を1として、面積一定の平行平板の変化をまとめました。

変えるもの固定条件CQVE
距離dを2倍V一定1/21/211/2
距離dを2倍Q一定1/2121
誘電率εを4倍V一定4411
誘電率εを4倍Q一定411/41/4

誘電体は隙間の全面・全厚を満たし、線形で均一な材料を仮定。距離の変更と誘電率の変更は別々の操作です。

面積Sを変える場合にも、同じ考え方が使えます。Q一定で面積を2倍にすればEは半分ですが、V一定ならQが2倍へ増え、Eは同じままです。

誘電体が隙間の一部だけにある場合

比誘電率の逆数をそのまま掛けられるのは、極板間を同じ材料で満たした場合です。空気の層が厚さ方向に残っていると、誘電体と空気で電界の強さが異なります。

厚さ方向に二つの層が並び、境界に自由電荷がなければ、境界に垂直な電束密度Dは連続します。誘電率の低い層ほどE=D/εは大きくなりますが、各層の電位差は電界と層の厚さの積で決まります。

Q一定ならDも保たれますが、V一定では各層の電位差の合計が電源電圧になるようDが変わります。境界を挟んでDが連続することと、挿入前後でDが同じことは別です。

この場合、全体の電圧を全距離で割った値は平均電界に当たります。材料ごとの局所電界まで同じになるわけではないため、絶縁性能を見るときは層ごとの電圧分担を考えます。

一方、厚さをそろえて面積方向の半分だけに誘電体を入れた場合は、二つの領域に同じ電圧が加わります。端効果を無視すれば電界も同じですが、誘電率が異なるのでDと各領域に面する自由電荷の密度は異なります。

問題を読むときは、電源の接続に加えて、材料が厚さ方向と面積方向のどちらに並んでいるかも描きます。図に電圧を加える向きを書くと、全体の平均値と材料内部の値を混同しにくくなります。

実際の積層セラミックコンデンサは、薄い誘電体と電極を何層も重ねて容量を増やします。平板一組の考え方から製品へ進むには、MLCCの構造と製造工程が参考になります。

銀色の端子を持つ小形の積層セラミックコンデンサ
積層セラミックコンデンサの外観イメージ(生成画像)

式から電界を求める計算例

説明用に、真空中の平板面積を0.010m²、距離を1.0mm、電圧を100Vとします。真空の誘電率を8.854×10⁻¹²F/mと近似して、最初の容量と電荷を求めます。

最初の状態
C = 8.854×10−12 × 0.0101.0×10−3 = 88.54[pF]
Q = CV = 88.54×10−12 × 100 = 8.854[nC]
E = 1001.0×10−3 = 100[kV/m]
1pF=10⁻¹²F、1nC=10⁻⁹C、1mm=10⁻³m。端効果・漏れ・材料の非線形性を除く説明用の条件です。

この状態から電源を切り離し、比誘電率4の誘電体を全面へ入れます。電荷8.854nCがそのまま保たれるので、増えた容量から電圧を逆算できます。

Q一定で、比誘電率4の誘電体を入れる
C′ = 4C = 354.16[pF]
V′ = QC′ = 8.854×10−9354.16×10−12 = 25[V]
E′ = 251.0×10−3 = 25[kV/m]
′は誘電体を入れた後の値。Qは一定で、電圧と電界は元の4分の1です。

同じ誘電体でも、100Vの電源につないだままなら結果は異なります。容量354.16pFに100Vが加わるので、電荷は35.416nCへ増え、電界は100kV/mのままです。

図6:数値計算は、固定量から順にたどる

容量は形と材料で求め、その後にQかVの固定条件を使います。

形と材料をそろえるS=0.010m²
d=1.0mm
誘電率は元の4倍
変化後の容量C′=4C
88.54pF → 354.16pF
固定条件で分かれるQ一定:V′=25V
E′=25kV/m
V一定:Q′=35.416nC
E′=100kV/m

QとVを独立に両方固定すると、Q=CVとつじつまが合わなくなります。

実際の部品で、このモデルを使う範囲

平行平板の式は、関係をつかむ出発点として役立ちます。実際の部品では誘電率が温度や電圧で変わり、漏れや損失もあるため、製品の特性を合わせて見ます。

村田製作所は、高誘電率系のセラミックコンデンサでは直流電圧によって容量が低下すると説明しています。温度補償用のC0GにはこのDCバイアス特性がなく、材料の種類と使用条件を区別して特性曲線を読みます。

ここでいう100Vや比誘電率4は、変化を比べるために置いた計算条件です。特定のコンデンサに100Vを加えてよいことや、すべての誘電体の比誘電率が4であることを示す値ではありません。

部品を選ぶときは、まず製品の定格電圧と使用温度を確認し、その条件で容量がどの程度変化するかを特性曲線で読みます。薄い誘電体ほど容量が増えるという理論だけで、許容電圧も同時に増えるとは判断できません。

測定回路がつながっている場合にも、完全な電荷一定とは限りません。電圧計の入力抵抗や回路の抵抗を通って電荷が移動するため、切離直後と時間がたった後では電圧が異なる場合があります。

測定値が式と合わないときは、単位、電源接続、測定までの時間、材料の特性の順に確認します。まず計算の前提を実際の回路へ合わせると、電界の式自体を誤りと決めつけずに原因を絞れます。

静電界の説明と、交流での電流の位相も分けて考えます。充放電の向きと電圧変化の関係はコンデンサで電流が進む理由につながります。

コイルは磁界に、コンデンサは電界にエネルギーを蓄える部品です。両者を比べるときは、インダクタンスの意味を並べると、それぞれが電流・電圧の変化にどう働くかを整理できます。

交流回路での利用は、力率の基本や進相コンデンサの役割にも広がります。平板の理論式と、実設備の定格・保護を結び付けて読むのが有効です。

コンデンサと電界のよくある質問

極板間の距離を離しても電界は変わらないのですか?

Qと面積と誘電率が一定なら、理想的な平行平板の電界は変わりません。電圧一定のまま距離を離す場合は、E=V/dに従って電界が小さくなります。

誘電率が高いほど電界は弱くなりますか?

電荷を一定に保って全面へ誘電体を入れる場合は、誘電率が高いほど弱まります。電源接続で電圧と距離を一定にする場合は、電荷が増えて電界は同じ値を保ちます。

極板の外側にも電界はありますか?

無限に広い理想平板では外側の電界が打ち消し合いますが、有限の極板では端に広がりが生じます。導体を用いて外部の電界の影響を抑える考え方は、シールドケーブルの仕組みにも関連します。

電気力線と電束密度は同じものですか?

電気力線は電界を線で可視化する表現で、電束密度Dは自由電荷と結び付いた物理量です。線の数え方とDの数値を混ぜず、単位も合わせて区別します。

電源を切ったコンデンサは安全ですか?

電源を切っても残留電荷があるため、切離だけを根拠に端子へ触れてはいけません。実設備の測定や交換は、機器に指定された放電・無電圧確認の手順に従います。

TDKの電力用コンデンサの安全指示も、運転後に危険な残留電荷があることを示しています。製品ごとの指定を守り、取扱資格や作業体制を含めて機器の手順で判断します。

まとめ

この記事のまとめ
  • 平行平板の電界はE=V/d=Q/(εS)で表す
  • 電源接続はV一定、理想的な切離後はQ一定で考える
  • 距離を2倍にすると、V一定ではEが半分、Q一定ではEは同じ
  • 誘電体挿入はQ一定ならE低下、V一定ならQ増加となる
  • 電気力線は可視化であり、式の固定条件と単位を一組で読む

電界の式を使うときは、変える量と保つ量を最初に書き出します。その後に容量、電荷、電圧の関係をたどると、距離や誘電率の影響を一つずつ確かめられます。

出典

MIT「Electromagnetic Field Theory」§3-3(書籍163ページ):誘電体境界でのDの法線成分とEの接線成分。

OpenStax「10.5 RC Circuits」:抵抗経路がある場合の放電。Tektronix「ABCs of Probes Primer」:測定器の入力抵抗・入力容量による回路への影響。

TDK Electronics「Operating and Safety Instructions for AC and DC Power Capacitors」:電力用コンデンサの残留電荷と取扱い。

NEWSLETTER

電気・電子設計・プラントエンジニアリングの記事を、週1回まとめてメールで受け取る

週刊MONOSCOPEは、登録時に選んだ職種・業種に合わせた記事を週1回お届けする無料のメルマガです。

実際に届くメールの例を見る

件名:今週のあなた向け記事|週刊MONOSCOPE 10/9号
登録内容:生産技術 × 自動車・輸送機器

週刊MONOSCOPEの見本(生産技術 × 自動車・輸送機器)

職種3本・業種3本・製造業で働くすべての方へ2本・今週よく読まれた記事3本が届きます。記事は毎週入れ替わります。ほかの見本を見る

電気・電子設計を選んだ状態で登録へ ›

無料・週1回。登録後に届く確認メールのリンクを押すと登録が完了します。配信はメール内のリンクからいつでも停止できます。

WEEKLY NEWS

今週の製造業ニュース10選

メルマガは職種・業種に合わせた記事。LINEとnoteでは、全員共通の10本を毎週土曜の朝にお届けします。

LINEでニュース10選を受け取るnote今週のニュース10選をnoteで読む ›
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

MONOSCOPEの運営者

プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

▶ お仕事のご依頼はこちら

目次