光高温計の原理とは?線条消失・放射温度計との違いと測定誤差

光学式の高温計の外観構成を表す生成イメージ

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光高温計は、白熱する鋼材や炉内の対象を、離れた場所から測る放射温度計の一種です。目視式では、対象と内蔵電球のフィラメントを重ねて見て、赤い光の明るさが一致する状態から温度を読み取ります。

対象へセンサーを差し込まずに高温を測れるため、接触させにくい素材や小さな測定箇所で使われます。一方、目に入る光は表面の放射率や観測窓にも左右され、表示値だけで実温度を決めると誤差につながります。

ここでは、線条が消えて見える仕組み、赤外線式との違い、測定値が変わる原因を順に整理します。測定波長と熱放射のピークも、数値を入れて区別しましょう。

動画の補足:線条消失式で合わせるのは、赤い狭い波長帯での明るさです。目に見える色全体を合わせる測定とは区別し、温度範囲は機種とレンジの仕様で確認します。

目次

光高温計とは

光高温計は、対象が出す熱放射を利用して温度を求める計器で、英語ではOptical pyrometerと呼ばれます。代表的な目視式は、人の目を比較の検出器として使う線条消失形の光高温計です。

視野の中で基準となる線条と対象の明るさを合わせ、そのときの電球電流を温度へ換算します。線条はフィラメントとも呼ばれ、電流を流すと発熱して光を出す細い部分です。

熱放射を使う温度計には、赤外線を電子素子で検出する機器などもあります。どの方式も対象から届く放射を利用しますが、測定する波長帯と検出方法、読み取り方が異なります。

温度計全体の中での位置づけは、温度計の種類と原理の比較で確認できます。接触式は感温部へ熱を伝え、非接触式は対象から届く光を受け取るという違いが、誤差の調べ方にも表れます。

白熱する高温の対象を測る

目視式は、対象の熱放射が可視域で十分な明るさを持つ高温領域で使われます。溶解した金属や炉内の材料、加熱された線材など、対象を見通せる場所が測定の場になります。

例えばチノーの線条消失形IR-URNには、測定波長0.65µm、レンジを切り替えて700~3500℃を測る仕様があります。この数値は機種の例であり、光高温計すべての測定範囲を表すものではありません。

高い温度を測れるのは、測定器の本体をその温度へ加熱しなくても、対象からの光を受け取れるためです。本体には使用環境温度の範囲があり、炉口の放射熱を受け続けてよいという意味にはなりません。

持ち運んで使う電池式の機種もあり、現場で測点を変えて確認できます。携帯性を生かす場合も、一定の測定距離と観測方向を保てる場所を選び、前回と比較できる条件を整えます。

鋼材では、加熱温度だけでなく保持時間や冷却方法も品質に関係します。焼入れ・焼戻しなどの熱処理を管理するときも、表面の一回の測定と、処理条件全体の確認は役割を分けます。

炉内で加熱された鋼材の表面を表す生成イメージ
不透明な鋼材の表面は、高温での非接触測定の対象となります。写真は生成イメージで、実際の温度や放射率を示すものではありません。

赤外線式・二色式との違い

一般的な電子検出式の放射温度計は、受光素子の信号を演算して温度として表示します。目視の線条消失式では、人が対象へ照準を合わせ、電球電流を調整して一致を判断します。

画面に数字が表示される光高温計でも、明るさを合わせる部分が目視なら、その判断の工程は残ります。デジタル表示の有無と、温度検出の自動化は別の特徴として読みましょう。

二色温度計は、異なる二つの波長帯で測った放射の比を利用する方式です。線条と対象を見比べることを「二つの色を測る」と解釈し、二色温度計と同じ原理にしないことが大切です。

図1:接触・目視・電子検出で、温度を読むまでの経路が違う

非接触式でも検出方法は一つではありません。ここでの光高温計は目視の線条消失式です。

方式受け取るもの温度を読む工程主に確かめる条件
接触式対象から感温部へ伝わる熱熱起電力や抵抗などを温度へ換算挿入・熱接触・保護管・配線
目視の光高温計対象から届く可視域の放射線条と明るさを合わせ、校正された電流から読む照準・焦点・一致の判断・放射率
電子検出式の放射温度計仕様で定めた波長帯の放射受光信号を演算して表示・出力視野・対象寸法・放射率・光路
二色温度計二つの波長帯の放射二波長の信号比から演算両波長の放射率比・光路の透過条件

二色式でも放射率や光路の条件確認は必要です。二波長を使えば、どの対象でも誤差がなくなるという意味ではありません。

光高温計の原理

光高温計の仕組みを理解するには、対象から来る光と、計器内で発生させる光を分けて考えます。対象の温度を直接電流へ変えるのではなく、比較用の電球へ流す電流を調整します。

対物レンズは対象の像をつくり、その像を電球のフィラメントと重ねて見られるようにします。観測者はフィルタと接眼レンズを通して、同じ視野内の二つの明るさを比較します。

赤色フィルタは、比較する波長帯を赤の狭い範囲へ絞る役割を持ちます。全体の色合いが似ているかを判断するより、決まった帯域の明るさを比べることで温度の対応を定めます。

実際の計器には、光量や測定レンジを調整するフィルタなども組み込まれます。下図は結像と比較の関係を示すもので、フィルタの種類や配置は各計器の光学系で確認します。

図2:対象の像を線条面へ結び、赤い帯域で比較する

上側の点から線条面までの二本の代表光線を描いています。青点線は接眼側の経路を示し、実際の光線追跡ではありません。

高温の対象対物レンズ対象像と線条同じ面で重ねる赤色フィルタ等接眼部青点線:接眼側の経路のみ眼で比較対物側は倒立等倍の例。実機の寸法・倍率とは異なります。

線条は実際には発光し、対象像と一緒に観測されます。赤い帯域の選択と減光は測定用の光学機能であり、保護具の代用を示す図ではありません。

暗い線条・消える線条・明るい線条

フィラメントの電流が小さく、対象より暗い状態では、明るい背景の上へ黒っぽい線が見えます。電流を増やすと線条が明るくなり、背景との差が小さくなっていきます。

反対に、電流が大きすぎるとフィラメントは対象より明るくなり、明るい線として見えます。この場合は電流を減らし、暗い側と明るい側の間にある一致点を探します。

対象と線条の明るさが等しくなると、重なった部分の境界を見分けにくくなります。これが線条消失であり、電球を消灯することや、線条が物理的になくなることではありません。

明るさの比較がしやすいよう、接眼部の見え方と対象への焦点を整えます。輪郭がぼやけた状態や、対象の端へ線条を重ねた状態では、一致の判断そのものが不安定になります。

図3:線条が消えるのは、背景との明るさの差が小さくなるとき

対象の明るさを一定とした比較です。各視野の曲がった線が、同じ形のフィラメントを表します。

線条が暗い電流を増やす側へ明るさが一致線条の境界が見えにくい線条が明るい電流を減らす側へ

視野の色・線幅は説明用です。中央でも電球は点灯しており、背景と重なる部分で線条が見分けにくくなります。

電球電流を温度へ換算できる理由

電流を増やすと線条の温度と放射が変わりますが、その関係だけで対象の温度が自動的に決まるわけではありません。計器には、比較が一致した電流と輝度温度の対応を与える校正が必要です。

校正では、既知の輝度温度を持つ標準電球や黒体を基準に、計器の線条が一致する電流を調べます。指示目盛や内部の換算関係は、この対応を利用して温度を読み出します。

電球や光学部品の状態が変われば、同じ電流に対する見え方も変わり得ます。線条が点灯するという確認と、温度指示が基準に合っているという確認を分けることが、保全では大切です。

測定時に対象と比べる内蔵電球と、校正の基準にする標準電球は役割が異なります。校正は、比較用電球の電流から得られる温度指示を、標準電球や黒体の基準へ結びつける工程です。

650nmは熱放射のピークを示す値ではない

物体を高温にすると可視域の熱放射が強まり、赤く光る様子を目で認識できるようになります。温度が上がるほど黒体の分光放射のピークは短波長側へ動きますが、目に見え始めた時点で可視光が最大になるわけではありません。

黒体の波長当たりの分光放射のピークは、ウィーンの変位則で概算できます。波長をµm、熱力学温度をKで扱うと、比例定数は約2898µm・Kです。

黒体の波長当たりの分光放射のピーク
λmax = 2898T
700℃:T = 700 + 273.15
λmax = 2898973.15
λmax ≒ 2.98 µm
1500℃:T = 1500 + 273.15 = 1773.15 K
λmax = 28981773.15
λmax ≒ 1.63 µm
λmax:ピーク波長[µm] T:熱力学温度[K]。℃の数値を分母へ直接入れません。実物の分光放射は放射率の波長依存にも左右されます。

700℃の黒体で求めたピークは約2.98µmで、赤外線の領域にあります。それでも可視域の放射を使って比較できるため、ピーク波長と計器の測定波長は別々に考えます。

また、650nmは0.65µmに相当し、温度が変わるたびに計器のフィルタがピークへ移動するという意味ではありません。この機種例では0.65µmの赤の帯域を使いますが、実効波長はフィルタや眼の感度などによって異なります。

図4:測定する赤の帯域と、黒体放射のピークを区別する

横軸は波長の線形目盛です。点は計算したピークの位置を示し、放射の強さを表していません。

赤の測定帯域の例1500℃のピーク700℃のピーク0.651.632.98波長[µm] →長い波長側は赤外域

赤帯の幅は説明用で、特定機種の実際の透過帯域幅ではありません。黒体ピークの比較に、放射率による分光分布の変化は含めていません。

光高温計のメリット・デメリットは?

大きな利点は、測定対象へ感温部を接触させず、高温部の放射から温度を求められることです。接触による対象への影響や、センサー自体を高温へさらす負担を避けられます。

接触式を使う場合には、センサーの形式、保護管、雰囲気、連続使用条件に応じて耐久性を考えます。熱電対はすべて2000℃、測温抵抗体はすべて700℃まで使える、といった一律の上限では選べません。

具体的な使い分けは、熱電対と測温抵抗体の違いで整理できます。光高温計の測定範囲に入るから接触式より常に優れると判断せず、必要な測定点と運用方法を合わせて選びます。

表面の指示と内部温度は違う

不透明な鋼材を観測する場合、光高温計が受け取るのは主に見えている表面からの放射です。厚い材料の中心部や、壁の向こうの温度を直接読み取ることはできません。

加熱中の材料では、表面が先に高温となり、内部へ熱が伝わるまで時間がかかります。表面の指示が所定値へ達したことと、内部まで均一な温度になったことは別の条件です。

接触式でも測定位置を適切に決めなければ、必要な温度を読めません。流体温度の測定で使うサーモウェルの挿入長と応答も、どこから熱を受けるかを確認するという点で共通します。

ガラスなど光を透過する材料では、内部や背後から来る放射が混ざる場合があります。「どんな材料でも表面温度だけを測る」と広げず、その波長で対象が不透明かを含めて測定原理を確認します。

輝度温度と実際の温度がずれる理由

ある波長で対象と同じ明るさになる黒体の温度を、輝度温度と呼びます。黒体は入射した放射をすべて吸収する理想的な物体で、同じ温度なら実在物体の熱放射と比較する基準になります。

放射率が1より小さい対象は、同じ温度の黒体より自ら出す放射が小さくなります。周囲からの反射などを無視できる条件では、黒体を基準に読んだ輝度温度は実温度を下回ります。

放射率補正を使うときは、測定波長と対象の表面状態に合う値を使います。材料名だけで値を固定せず、酸化皮膜や粗さ、温度、観測方向が変わったときの影響も見ます。

光沢のある金属へ炉壁などの放射が反射して入ると、対象自身が出す光に反射成分が加わります。この場合は、放射率が低ければ必ず低めに出るという単純な判断では切り分けられません。

保温された配管の外装表面を測った値も、内部流体の温度とは異なります。保温厚さと放熱量・表面温度の関係を踏まえ、測っている面が管理したい温度と対応するかを確かめます。

図5:計器へ届く光は、対象の温度だけで決まらない

対象自身の放射、背景の反射、途中の窓や煙を分けて考えます。上下の光路は説明上ずらしています。

金属表面高温の背景反射した背景の光対象自身の熱放射観測窓煙・蒸気等計器

矢印は入射経路の区別で、放射の量や反射角を正確な尺度で示していません。窓・煙の吸収や放射、背景の強さによって指示への影響は変わります。

窓・煙・対象寸法による誤差を調べる

炉の観測窓を通して測るときは、窓が測定波長の光をどれだけ通すかが関係します。目で透明に見えることと、計器の測定条件に対して透過の影響を無視できることは同じではありません。

汚れや曇りが増えると、対象から届く光が変わり、指示が変動する原因になります。実際の温度変化と区別するため、窓の状態や観測経路を記録し、補正条件をそろえて比較します。

対象が小さいときは、目視式の光学的な特徴が役立つ場合があります。それでも、線条を重ねる部分が十分に見えるか、必要な倍率や焦点距離が合うかを仕様と実際の像で確かめます。

一方、電子検出式では指定された測定視野を対象で満たす条件が重要です。レーザーポイントの大きさだけを測定面積と考えず、測定距離と測定径の関係から対象寸法を確認します。

連続監視と校正では求める機能が違う

目視比較は、人が照準を合わせて一致を判断する測定に向いています。高速で変わる温度を連続記録し、その値を自動制御へ使う場合は、電子検出式など必要な出力を持つ機器を検討します。

PID制御の測定値と操作量の関係を考えるときも、計器の最高温度だけでは選定できません。応答、更新周期、出力、光路の汚れに対する保守まで、制御に必要な条件をそろえます。

また、表示の分解能が細かいことと、対象の実温度を同じ細かさで正しく測れることは別です。接触式の水晶温度計の分解能と精度でも同様に、表示桁数だけで測定の確かさを判断しません。

複数の温度計で比較するときは、同じ場所を同じ条件で測っているかから確かめます。ダブルエレメントの温度センサーは二系統の測定に使えますが、非接触で別の表面を測った値と無条件に一致する構成ではありません。

図6:表示が違うときは、測点・光路・指示の順に原因を分ける

温度の違いと、測定条件の違いを混ぜずに記録します。設定変更の前に比較条件をそろえます。

測点の確認材料のどの面・どの位置か。接触式との比較は、表面と内部の温度差を先に整理。
対象表面の確認酸化皮膜・付着物・粗さの変化はあるか。放射率は測定波長と表面状態へ対応。
観測経路の確認窓の汚れ・煙・背景反射は変わっていないか。前回の経路と補正条件を記録で照合。
計器と読み方の確認レンジ・焦点・線条の状態と一致の判断を確認。基準との指示差は校正で評価。

誤差を埋めるために放射率を都合よく動かすと、原因が見えなくなります。対象と基準の条件に対応した値を使います。

再現できる測定記録を残す

同じ材料を繰り返し測るときは、計器の番号と表示値に加え、対象の位置と観測方向を記録します。炉口のどこから、材料のどの部分へ照準を合わせたかが分かると、次の測定で条件をそろえやすくなります。

次に、レンジ、放射率の設定、窓やフィルタの条件を対応させます。表示の変化を追う記録では、窓を清掃した時期や対象表面の変化も残すと、運転条件の変化と区別する手掛かりになります。

目視の一致を一回で決めにくい場合は、対象の温度が安定していることを確かめ、繰り返した指示の広がりを見ます。値がばらつく理由を、対象の変動と照準・一致判断の変動に分けて調べます。

複数の観測者が交代する場合も、焦点の合わせ方や比較する位置をそろえます。対象の明るい部分だけを選んだ測定と、別の場所を選んだ測定を同じ測点の記録として混ぜないことが大切です。

校正を依頼するときは、使用する温度域やレンジを伝え、実際に使う条件に対応した指示差を確認します。校正結果に示された点の外側まで、同じ誤差が続くと決めつけず、計器仕様と照らし合わせます。

標準に対する指示差と、現場で対象を測るときの誤差要因も区別して残します。基準へ合った計器でも、測点や放射率、観測窓が違えば現場の値は変わるため、校正記録だけで条件確認を終えないようにします。

光高温計のよくある質問

赤く光っていれば、その色だけで温度が分かりますか?

見た目は周囲の明るさや眼の順応にも左右されるため、色だけでは計器の測定に代わりません。線条消失式は、定めた帯域で基準の線条と明るさを比べ、校正された対応から温度を読みます。

線条が消えたら、対象は黒体と考えてよいですか?

線条消失は、計器へ届く対象の光と線条の明るさが一致した状態です。対象が黒体であることを示す判定ではなく、実温度を求めるには放射率や観測経路の条件を確認します。

測定対象が動いていても使えますか?

接触せずに測れる利点はありますが、対象を視野に捉えて明るさを判断できることが必要です。移動速度、見える時間、対象寸法を考え、連続測定が必要なら検出方式や応答も含めて選びます。

校正した計器なら、窓越しでも同じ値を示しますか?

計器単体の校正と、窓を含む現場の観測条件は別です。窓の透過や汚れで届く光が変わるため、校正条件と実際の測定経路を整理し、必要な補正と点検を決めます。

まとめ

光高温計の線条消失式は、赤い狭い帯域で対象と電球の明るさを合わせ、校正された電流の対応から温度を読みます。非接触で高温を測れる一方、表示は放射率や光路の状態にも左右されます。

現場では、対象のどこを見ているか、どの光が計器へ届くか、どう一致を判断するかを順に確認します。測定範囲だけで選ばず、手動確認か連続監視かという用途まで合わせることが大切です。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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