金型・加工業界の主要企業と勢力図|売上ランキング・各社の強み・再編動向

大型プレス機が並ぶ自動車部品工場の生産ライン

「金型・加工業界の大手企業」と聞いても、すぐに社名が浮かぶ方は多くないのではないでしょうか。

この業界は中小企業が中心で、上場している企業は多くありません。それでも、自動車の車体部品を量産するプレス大手や、ダイカストの専業大手、精密金型から事業を広げた企業など、業界の勢力図を形づくる企業は確かに存在します。

この記事では、金型・加工業界の主要企業を、売上高ランキング、分野別の代表企業、主要企業の特徴と強み、海外との比較、再編・M&Aの動き、就職・転職で企業を見るときのポイントという順で整理します。

目次

金型・加工業界の売上高ランキング

自動車ボディ部品を棚に保管する工場倉庫

ここでは、プレス・鋳鍛造・精密加工・金型を主力とする主な上場企業を、連結売上高で並べます。非上場の企業や、完成品メーカーの社内の金型部門は含んでいません。

図1:金型・加工関連の主な上場企業の売上高

上位には、自動車部品を量産する加工メーカーが並びます。

フタバ産業6,779億円
武蔵精密工業3,472億円
ユニプレス3,219億円
リョービ3,091億円
愛知製鋼3,043億円
三井ハイテック2,183億円
エイチワン2,096億円
アーレスティ1,670億円

※各社の連結売上高(億円未満切り捨て)。リョービは2025年12月期、三井ハイテックは2026年1月期、その他は2026年3月期。全社の売上高で、愛知製鋼は特殊鋼事業などを含みます。出典:Yahoo!ファイナンス各社の業績ページ。

首位のフタバ産業は約6,779億円と突出しています。自動車の骨格部品を中心としたプレス部品の大手で、マフラーなど排気系の部品も手がけていることが、売上の大きさにつながっています。

ランキングを見るときは、事業範囲が各社で大きく異なる点に注意が必要です。愛知製鋼は特殊鋼メーカーで、鍛造カンパニーの売上は全体の44%です。リョービはダイカストが89%を占めますが、住宅機器や印刷機器の事業も持っています。

一方で、金型や金型部品を主力とする上場企業は、パンチ工業が約421億円、黒田精工が約195億円、ニチダイが約110億円(いずれも2026年3月期)と、量産加工の大手に比べて規模は小さくなります。型をつくる企業より、型を使って量産する企業の方が売上は大きくなりやすいのが、この業界の勢力図の特徴です。

ランキングの中で異色なのが三井ハイテックです。精密金型の技術を出発点に、電動車向けのモーターコアを量産することで売上を伸ばし、2024年1月期の約1,958億円から2026年1月期には約2,183億円まで拡大しました。

分野別の主要企業

コンベア上を流れるアルミダイカスト部品

「業界とは」の記事で紹介した分類に沿って、分野ごとの代表的な企業を整理します。上場企業を中心に、報道や公開情報で事業内容を確認できた企業を挙げています。

図2:分野別の主な企業

主力の加工方法によって、代表的な企業が分かれます。

精密金型三井ハイテック、黒田精工、ニチダイ
金型部品パンチ工業(特注の金型部品)
プレス加工フタバ産業、ユニプレス、エイチワン
ダイカストリョービ、アーレスティ
鍛造・切削愛知製鋼、武蔵精密工業、田中精密工業
大型プレス金型(非上場)オギハラ、富士テクニカ宮津

※分類は主力事業による目安です。多くの企業は金型から量産、組立まで複数の工程を手がけています。

金型の分野では、自動車の車体用の大型金型と、電子部品やモーターコア用の精密金型で、主なプレイヤーが分かれます。大型プレス金型では、非上場のオギハラや、東洋鋼鈑の子会社である富士テクニカ宮津が知られています。

量産加工の分野では、特定の完成車メーカーとの結びつきが強い企業が多く見られます。どの完成車メーカーとの取引が多いかは、各社の業績や将来性を読むうえで重要な手がかりになります。

金型部品の分野では、パンチ工業が特注の金型部品で国内と中国でトップ級の存在とされ、海外比率は74%に達します。精密鍛造金型では、独立系のニチダイが複雑な形状の型に強みを持ち、ターボチャージャー部品などの精密部品も手がけています。

なお、切削加工や熱処理・表面処理の分野は、特に中小企業の比率が高く、全国規模で知られる上場企業は多くありません。地域の産業集積の中で、特定の技術で名前を知られる企業が中心です。

主要企業の特徴と強み

順送金型と積層されたモーターコア部品

ここからは、勢力図の中で存在感の大きい企業を取り上げ、事業の中身と強みを見ていきます。数値は各社の業績と企業情報で確認できたものです。

フタバ産業

自動車の骨格部品を中心とした、プレス部品の大手です。プレスと溶接の技術を核に、マフラーでは国内首位の位置にあります。2026年3月期の売上高は約6,779億円でした。

トヨタグループ向けが売上の約8割を占め、海外比率は55%です。特定の完成車メーカーとの深い関係が強みであると同時に、取引先の生産動向の影響を受けやすい構造でもあります。

武蔵精密工業

シャフトやギアなど、駆動系の部品を手がける自動車部品メーカーです。2026年3月期の売上高は約3,472億円で、ホンダ向けが約5割を占めます。

海外比率は88%と高く、米州や欧州、アジアに生産拠点を持ちます。アジアや南米では二輪向けが中心です。海外で働く機会の多さも、この会社の特徴と言えます。

ユニプレス

1998年に山川工業と大和工業が合併して発足した、自動車用プレス部品の大手です。車体骨格部品やトランスミッション部品を量産し、金型の設計・製作も手がけています。

日産自動車との関係が深く、北米、欧州、アジアに生産拠点を持ちます。2026年3月期の売上高は約3,219億円、営業利益は約136億円でした。金型から量産までを自社で担える点が強みです。

リョービ

独立系のダイカスト専業で首位とされる企業です。2025年12月期の売上高は約3,091億円で、ダイカスト事業が89%を占めます。

日米欧の自動車メーカーを主な取引先とし、海外比率は56%です。主力以外の事業を整理しながら、ダイカストへの集中を進めてきました。

三井ハイテック

福岡県北九州市で創業し、超精密金型の技術を強みとする企業です。金型の技術を生かして、モーターコアとリードフレームを量産しています。

2026年1月期の売上高は約2,183億円で、モーターコアなどの電機部品が71%を占めます。金型の技術を量産部品に展開して成長した代表例で、海外比率は50%です。

エイチワン

車体下部の骨格部品を主力とするプレス部品メーカーで、ホンダ向けが9割弱を占めます。2026年3月期の売上高は約2,096億円でした。

2024年3月期には約188億円の営業赤字でしたが、2026年3月期は約146億円の営業黒字に転じています。取引先の生産計画や自社の生産体制で業績が大きく動くことがわかる例です。

黒田精工

精密金型と、ボールねじなどの駆動システムを手がける企業です。2026年3月期の事業構成は、金型システムが47%、駆動システムが33%、機工・計測システムが20%です。

海外比率は53%で、M&Aによって欧米での展開を広げています。売上高は約195億円と大きくありませんが、精密加工の技術を複数の事業に生かしている企業です。

海外の主要企業との比較

天井クレーンで搬送される大型プレス金型

海外の金型企業は非上場も多く、企業単位で比べられる公開データは限られます。そこで、日本金型工業会がまとめた国別の金型生産額から、日本勢の立ち位置を確認します。

図3:主要国の金型生産と日本との関係

世界の金型生産は中国が過半を占め、日本は3位です。

金型生産額(集計年)
日本との関係
中国
約7兆382億円(2024年)
日本の金型輸入の約6割
米国
約2兆3,014億円(2021年)
日本の最大の輸出先(35%)
日本
約9,771億円(2023年)
需要の73.0%が自動車等向け
韓国
約9,627億円(2019年)
日本の輸入元で2位(約2割)
ドイツ
約6,440億円(2024年)
上位5か国で唯一の欧州勢

※ISTMA Statistical Book 2025をもとにした日本金型工業会の集計(1ドル150円換算)。国ごとに集計年が異なります。輸出入の比率は2025年、需要の比率は2025年。

中国は35か国の金型生産額の53.6%を占め、規模では日本を大きく上回ります。米国も日本の2倍以上の規模です。

日本は世界3位で、自動車向けの型が需要の大半を占めます。海外の自動車工場向けに型を輸出しており、2025年は米国向けが約715億円と最大でした。規模では中国に及ばなくても、自動車の量産を支える型の供給元として一定の地位を保っています。

量産加工の分野では、日本の大手は国内の完成車メーカーの海外展開に合わせて拠点を広げてきました。武蔵精密工業の海外比率は88%、リョービは56%に達しており、海外の工場で稼ぐ構造が定着しています。

韓国やドイツも、日本に近い規模の金型生産国です。特に韓国からの輸入は2025年で約274億円と、中国に次ぐ規模になっています。海外の企業は競争相手であると同時に、型や部品を調達する取引先にもなりつつあります。

再編・M&Aの動き

工場図面や資料を広げた製造業の会議卓

中小企業が多い業界のため、再編の多くは表に出にくいものの、確認できる主な動きを年表で整理します。

図4:金型・加工業界の主な再編の動き

合併による大型化、海外資本の参入、事業の選択と集中の3つの段階に分かれます。

合併と海外資本
011998年 ユニプレス発足山川工業と大和工業が合併
022003年 アーレスティ京都ダイカスト工業と合併
032009年 オギハラタイの部品大手サミットが筆頭株主に
金型大手の再編
042010年 館林工場オギハラの工場を中国のBYDが取得
052010年 富士テクニカ宮津宮津製作所の金型事業を承継して発足
062016年 東洋鋼鈑富士テクニカ宮津を完全子会社化
選択と集中
072018年 リョービ電動工具事業を京セラへ譲渡
082026年 取適法施行型の保管など取引慣行の見直しが進む

※各社の沿革・報道で確認できたものに限っています。取適法の施行は再編ではありませんが、業界構造に関わる変化として掲載しています。

2009年から2010年にかけては、大型プレス金型の大手だったオギハラにタイの自動車部品会社サミットが出資して筆頭株主となり、館林工場が中国の自動車メーカーBYDに譲渡されました。日本の金型技術が海外資本に渡った象徴的な出来事として知られています。

同じ2010年には、富士テクニカが宮津製作所の金型事業を承継し(2011年に富士テクニカ宮津へ社名変更)、2016年には東洋鋼鈑の完全子会社となって上場を廃止しました。大型金型の分野では、国内での集約が進んだと言えます。

量産加工の大手では、主力以外の事業を切り離して本業に集中する動きも見られます。リョービは2014年に印刷機器事業を三菱重工業の同事業と統合して合弁会社とし、2018年には電動工具事業を京セラに譲渡しました。

中小企業の間では、後継者不足を背景にした事業承継やM&Aが増えていると言われます。帝国データバンクの調査では、2025年1〜9月の金型メーカーの倒産・休廃業・解散が126件と、4年連続で増えるペースです。

就職・転職で企業を見るときのポイント

金属プレス工場を見学する求職者と案内員

勢力図を踏まえて、就職や転職で企業を見るときに確認しておきたい点を3つ挙げます。売上高の大きさだけで判断しないことが大切です。

図5:主な企業の取引先と海外比率

同じ量産加工の大手でも、取引先の偏りと海外比率は大きく異なります。

主な取引先
海外比率
フタバ産業
トヨタグループ向けが約8割
55%
武蔵精密工業
ホンダ向けが約5割
88%
リョービ
日米欧の自動車会社
56%
アーレスティ
SUBARUなどが主な得意先
53%

※海外比率はリョービが2025年12月期、その他は2026年3月期。Yahoo!ファイナンスの企業情報より。

売上高だけでなく利益率を見る

売上高が大きくても、利益率が高いとは限りません。2026年3月期の営業利益率は、フタバ産業が約2.8%、武蔵精密工業が約5.9%、エイチワンが約7.0%でした(各社の売上高と営業利益から算出)。

利益率は、価格交渉力や工程の付加価値の高さを映す指標です。1年分だけでなく数年分の推移を見て、安定して利益を出せているかを確かめると安心です。

金型を主力とする企業は、受注の波が業績に表れやすい傾向があります。2026年3月期の営業利益は、黒田精工が約3,300万円、ニチダイが約4億円の赤字でした。規模の小さな企業ほど、受注状況や設備投資の負担を合わせて見ておく必要があります。

取引先の集中度を見る

量産加工の大手には、特定の完成車メーカー向けが大半を占める企業が多くあります。エイチワンはホンダ向けが9割弱、フタバ産業はトヨタグループ向けが約8割です。

取引先が集中していれば仕事量は安定しやすい一方、その取引先の生産計画に業績が大きく左右されるリスクもあります。中小企業の場合も、面接などで主要な取引先とその比率を確認しておくとよいでしょう。

海外比率と事業の集中度を見る

海外比率は、武蔵精密工業が88%、パンチ工業が74%、愛知製鋼が23%と、企業によって大きく異なります(いずれも2026年3月期)。海外比率が高い企業では、海外赴任や海外拠点の支援に関わる機会が増えます。

また、ダイカストが9割近いリョービのように一つの事業に集中する企業もあれば、黒田精工のように金型と駆動システムを併せ持つ企業もあります。自分が関わりたい技術が会社の柱かどうかを確認することが大切です。

まとめ

この記事のまとめ
  • 上場企業の売上高上位は、フタバ産業などプレス・鋳鍛造の量産加工大手
  • 金型を主力とする上場企業は規模が小さく、業界の中心は中小企業
  • 各社は特定の完成車メーカーとの結びつきや、海外比率の高さに特徴がある
  • 世界の金型生産は中国が53.6%を占め、日本は3位
  • 企業を見るときは売上高だけでなく、利益率・取引先・海外比率を確認する

業界の全体像は金型・加工業界とは、市場の大きさや推移は金型・加工業界の市場規模と動向、企業どうしの関係や利益の出方は金型・加工業界の構造で解説しています。

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出典

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この記事を書いた人

BtoB製造業特化のWebマーケター。プラント業界にてエンジニアを10年経験した後、マーケティングの分野へ。工業技術ブログ「エネ管.com」を2017年から運営し、月間20万PVを達成。保有資格はエネルギー管理士、第三種電気主任技術者。

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