電動弁の電流値はどう読む?VA・Wと起動電流の違い、計算の条件

工場配管に設置された電動操作器付きボール弁

電動弁のカタログにある「50VA」は、電流ではなく皮相電力を表す値です。電流へ換算するときは、単相・三相の別と電源電圧に加え、定格運転と起動のどちらの値かを読み分けます。

例えば、単相100Vで50VAという条件なら電流は0.50Aです。ただし、消費電力のWやモーターの出力Wを、そのまま電圧で割ってよいわけではありません。電動弁の構造から、仕様表を読む順番を見ていきましょう。

動画と合わせて読む際は、交流の電力計算に力率が必要な点を押さえてください。また、電磁弁は電磁力で機構を動かすもので、電磁誘導そのものを開閉原理とする説明や、大口径では使えないという一括りの説明は適切ではありません。

目次

電動弁とは

電動弁は、モーターの回転を弁棒へ伝え、弁を開閉する自動弁です。配管の流体を通す弁本体と、その上部などに取り付ける電動アクチュエータを組み合わせて使います。

アクチュエータは、電気エネルギーを機械の動きへ変える駆動部です。モーターだけでなく、回転を遅くして必要なトルクを得る減速機や、所定の位置で停止するための機構などを備えます。

図1:電気を受ける駆動部と、流体を通す主弁

モーターの回転は減速機と軸を経由して弁へ伝わります。電源、機械の回転、配管の流れを分けて見ます。

電動アクチュエータモーター電源減速機回転軸主弁:ボール弁の例灰色の横配管:主流体の通り道

機能を示す模式図です。実際の内部配置や停止・復帰機構は型式ごとに異なります。青は電源、茶は機械的な回転の伝達を表します。

全開と全閉を切り替えるオンオフ用に加え、指令に応じて中間の開度へ動かす調節用もあります。弁が途中で止まることと、連続調節に適した性能を持つことは別であり、弁と操作器の仕様を合わせて選びます。

電源には交流と直流があり、AC100V、AC200V、DC24Vなどの仕様が用意されています。設置場所で使える電源と、注文するアクチュエータの定格を一組で照合することが出発点です。

電圧の数字が同じでも、ACとDC、単相と三相、周波数の条件が違えば同じ電源として扱えません。工場での電圧の使い分けは、400V・200V・100V・24Vの違いと合わせて整理すると読み違いを減らせます。

電磁弁との違いは駆動する仕組みにある

電磁弁は、コイルに電流を流して生じる電磁力を使い、内部の可動部分を動かす弁です。モーターの回転を減速機で伝える電動弁とは仕組みが異なるため、カタログに記載された電流も駆動方式に応じて読み分けます。

電磁弁には、電磁力で弁を直接動かす方式のほか、圧力差などを利用するパイロット方式があります。そのため、電磁弁という名前だけで大口径や高い圧力に使えないと決めつけることはできません。

一方、空動弁の操作空気を切り替える電磁弁では、主弁を動かす力を圧縮空気が受け持ちます。空動弁と電磁弁の関係を知ると、小さな電磁弁が大きな主弁を操作できる理由が分かります。

開閉の速さや使用できる差圧も、駆動方式だけでは決まりません。要求する作動時間と弁に必要なトルクをそろえ、機種の適用条件で比較します。特に急閉止が問題になる設備では、速さだけを利点として選ばないことが大切です。

電動弁の電流値

作業台上の電動操作器付きボール弁
電動操作器付きボール弁の外観イメージ(生成画像)。型式ごとの電源・電流は仕様表で読みます。

電動弁の電流は、アクチュエータが電源から受け取る電気の量に関わる値です。仕様表では、電源電圧、消費電力、モーター出力、定格電流などが並ぶため、まず欄の名称と単位を対応させて読みます。

電流の単位はA、電圧の単位はV、電力の単位にはWやVAを使います。「50A」という配管の呼び径表示と、電流の50Aも別です。製品表で数字だけを拾うと、弁のサイズと電気の定格まで取り違える原因になります。

単相交流ではVAを電圧で割る

単相交流の皮相電力は、電圧と電流の実効値を掛けた値です。例えば「単相100V・50VA」という仮想仕様であれば、50を100で割って電流を求められます。50VA自体が電流の大きさを示すわけではありません。

図2:50VAから電流へ進む前に読む二つの欄

先に相数と電圧を確定し、その条件の皮相電力を使います。

仮想の仕様票① 電源:単相AC100V相数・電圧を先に確認② 皮相電力:50VA対象の運転状態も確認50 ÷ 100 = 0.50A特定製品の定格値ではありません

同じ50VAでも単相200Vという別条件なら0.25Aです。同じ電動弁へ別の電圧を加えてよい、という意味ではありません。

単相交流の皮相電力と電流
S = VI
I = SV
I = 50 VA100 V = 0.50 A
S:皮相電力[VA] V:電圧実効値[V] I:電流実効値[A]。単相100V、50VAという仮定例です。

Wで表す有効電力は、単相交流では電圧と電流の積に力率を掛けた値です。同じ50VAで有効入力が30Wという仮定なら、力率は0.60になります。50VAを50Wと読み替えると、この区別が失われます。

逆に、Wと電圧だけが分かっていても、力率が不明なら単相交流の電流は一つに決まりません。VAとWの一般的な関係は皮相電力・有効電力の違い、力率の意味は力率と電力の関係で詳しく説明しています。

単相交流の有効電力と力率
P = VIλ = Sλ
λ = PS = 30 W50 VA = 0.60
P:有効電力[W] λ:力率[単位なし]。30Wと50VAは同じ運転状態での仮定値です。正弦波ではλ=cosφと表せますが、一般の波形ではP/Sとして扱います。

三相と直流は計算条件を分ける

三相の電源を使う機種では、単相の式をそのまま当てはめません。平衡した正弦波三相では、線間電圧と線電流の積に√3を掛けて皮相電力を求めます。線間電圧と相電圧の取り違えにも注意が必要です。

例えば、三相200Vで300VAという仮定なら、線電流は約0.87Aです。単相と三相交流の違いを踏まえ、相ごとの条件がそろった例と、不平衡や波形のひずみを含む設備の評価を区別します。

平衡・正弦波三相の計算例
S = √3 VLIL
IL = S√3 VL
= 300√3 × 200 = 約0.87 A
VL:線間電圧実効値[V] IL:線電流実効値[A] S:三相合計の皮相電力[VA]。単相の例とは別の仮想条件です。

直流の定常状態では、電力を電圧と電流の積で表せるため、DC24Vで入力が6Wという仮定なら電流は0.25Aです。ただし、起動時の電流や電子回路を含む最大値まで、この定常計算で保証するものではありません。

実際の選定では、換算するより先にメーカーが電流値を示していないかを探します。電圧や周波数ごとに表が分かれていれば、注文する型式の行を選び、同じ表の別電源の値を持ち込まないようにします。

モーターのWと電源側のWを混同しない

モーターの出力は、軸から機械へ渡す仕事の大きさです。電源から受け取る入力には内部の損失も含まれるため、機械出力と消費電力は同じ値ではありません。どちらもWを使うので、単位だけでは判別できない点が重要です。

例えば「モータ20W」「定格時50VA」が同じ表にあっても、20を50で割って力率を求めるのは早計です。20Wが機械出力を示していれば、有効入力ではないためです。欄の定義と注記まで読んで判断します。

図3:メーカー表でもWとVAは別の欄

日本工装の3200R・32A1RAの掲載値を例に、列の意味を分けます。

操作器列を分けて読むW と VA
モータ W20 W表の見出しは「モータW」。有効入力と断定して換算しない。
定格出力時50 VA所定の運転条件における、電源側の皮相電力。
起動時100 VA動き始めの条件は定格時と別。起動の仕様欄も読む。

出典:日本工装「電動式 トルク・推力一覧」。この型式の掲載例で、全電動弁の標準値ではありません。表だけで確定しない電源電圧や力率は追加していません。

力率は有効電力と皮相電力の比、効率は機械出力と電気入力の比です。前者は電源側の電圧・電流と電力の関係、後者は機械へ変換するときの損失を表します。二つを同じ「電気を使う割合」として扱わないようにします。

弁を動かすためのトルクが大きくなると、必要なアクチュエータも変わります。ただし、トルクと電流の関係には回転速度や減速機、モーターの方式などが関わるため、口径が倍なら電流も倍という計算にはなりません。

主弁の差圧やシートの抵抗も、動かす負荷に関係します。同じ呼び径でも条件をそろえず比較できないので、モーターの種類と特徴を踏まえ、弁本体と駆動部の組合せで仕様を読みます。

定格・起動・拘束の電流を読み分ける

定格電流は、メーカーが定めた条件で運転するときの基準です。起動時には運転中と異なる電流が流れるため、制御機器や電源の容量を定格電流だけで判断すると、動き始めの条件を見落とします。

一方、拘束電流は、モーターの回転が妨げられた状態に関わる電流です。正常な始動の途中と、回り続けられない状態は区別します。始動電流、突入電流などの名称や示す条件は、各メーカーの定義に合わせて読みます。

図4:大きな電流でも、起動と拘束は違う状態

倍率を一律に決めるより、仕様表がどの状態を示しているかを先に確かめます。

起動:停止から回り始める

モーターが動き始める過程。定常運転とは別に、起動時の電流やVAが示されることがあります。

定格運転:所定の負荷で動く

指定された電源・負荷などの条件で運転する基準。停止中の待機電流とは別です。

拘束:回転が妨げられる

回れない状態に関わる電流。正常な起動を続けてよい状態として扱いません。

定量的な時間波形ではありません。起動・拘束・瞬時逆転などの値は、モーター形式や電圧、出力で変わるため、対象型式の仕様を使います。

オリエンタルモーターのFAQでも、定格電流のほかに突入電流、瞬時逆転電流、拘束電流を区別しています。掲載される比率は形式や出力によって異なるので、特定のモーターの倍率を全電動弁へ共通に適用しないことが大切です。

電子制御回路を持つ製品では、モーター単体の特性だけで入力電流が決まるわけではありません。制御回路や保護機能を含むアクチュエータとしての最大電流、使用時間率、始動回数など、製品全体の条件を読みます。

電磁弁のカタログにある起動VA・保持VAも、モーター電動弁の定格・起動の表と同じものではありません。CKDの用語資料では交流電磁弁の起動と保持を分けていますが、その保持電流を電動弁の停止中電流へ置き換えることはできません。

電源容量と制御側の容量は別々に照合する

電動弁を動かす電源と、開閉指令を渡す回路は、それぞれの定格を持っています。制御装置の出力が受け持つのは操作入力なのか、モーターを直接開閉する負荷なのかを、機器の仕様と回路図で区別します。

例えば、ある接点の表示に5Aとあっても、その数字だけでモーター負荷を開閉できるとは判断できません。負荷の種類や起動時の条件を含め、制御装置側と弁側が指定する適用条件を対にして照合します。

図5:一台の値と、複数台を動かす条件を分ける

駆動電源の合計容量と、操作出力の条件は別の確認事項です。

駆動電源全体容量・同時起動を確認電動弁 A一台の仕様電動弁 B一台の仕様操作出力

青実線:駆動電源、茶破線:操作信号。機能配置を示す図で、実際の配線本数や端子接続、共通化の可否を示していません。各出力とグループ全体の定格を別々に照合します。

複数台が同時に動く設備では、一台分の定格電流の合計だけでなく、同時に始動する条件も電源側へ伝えます。動作時間が短くても起動時の負担は生じるため、一日の平均消費電力が小さいことと、必要な瞬時容量は別の問題です。

一つの接点へ操作線をまとめられるかも、メーカーが指定する回路で決まります。内蔵リレーの役割や並列運転の条件は、リレー付き電動弁の選び方へ進み、カタログの電流値だけで接続方法を決めないようにします。

更新時には、配管の呼び径と接続寸法に加え、弁にかかる差圧、必要トルク、作動時間も引き継ぎます。アクチュエータが変われば、電源電圧や電流、制御入力、位置確認の仕様も変わるため、旧機種と新機種を項目ごとに比較します。

電流が以前より増えたときも、すぐに口径やモーター出力だけを原因とせず、負荷と運転条件を分けて考えます。回転機での考え方はポンプの電流値が変わる理由とも共通しますが、弁の開閉負荷へポンプの特性をそのまま移すものではありません。

消費電力量は動作時間と待機を含めて考える

電源容量の検討と、使用した電気の量を調べることは分けます。消費電力量は有効電力を時間について積み上げた量で、VAに設置時間を掛けただけではkWhになりません。動いている時間と止まっている時間も区別します。

仮に、動作中の有効入力が一定の30Wで、一回20秒の動作を一日20回行うとします。この条件の動作分は約3.33Whです。これは計算方法を示す仮定で、実製品の一日分の使用量を保証する値ではありません。

仮定例:一日の動作分の電力量
E = P × t
= 30 × 20 × 203600
= 約3.33 Wh
E:電力量[Wh] P:有効入力[W] t:一日の合計動作時間[h]。一回20秒を20回、30W一定と仮定。待機、制御回路、ヒーター等は含めていません。

停止中にも制御回路やヒーターなどが電力を使う機種では、その分を別に足します。電動弁だから止まれば必ずゼロWとも、定格消費電力を一日中使い続けるとも考えず、機器の構成と運転記録に合わせて積算します。

多数の電動弁を持つ工場では、同時始動の組合せは電源容量へ、一日の開閉回数と待機状態は電力量へ反映します。設備を増設するときも、この二つを分けた資料があれば、盤側と機器側で同じ条件を共有しやすくなります。

VAと二種類のWは単位が似ていても役割が違うため、仕様表の欄ごとに使い道を整理すると次のとおりです。

観点VA(皮相電力)W(有効電力)W(モーター出力)
表すもの電源側の電圧と電流の積電源側で仕事に使う電力軸から機械へ渡す仕事
単相交流の電流電圧で割って求める電圧と力率で割って求める電流の計算には使わない
力率の計算P/Sの分母に使うP/Sの分子に使う使わない
電力量の計算そのまま使わない動作時間を掛ける使わない
読むときの確認起動時か定格時か待機分を別に足すか欄の定義と注記

電動弁のVAと電流のよくある質問

50VAの電動弁は何Aですか?

単相100Vなら0.50A、単相200Vなら0.25Aですが、電圧と相数が分からなければ一つに決まりません。さらに、その50VAが起動時か定格時かを読み分け、選ぶ機種の仕様欄と対応させます。

消費電力のWを電圧で割れば電流が出ますか?

直流の定常計算では使えますが、交流の有効電力から求めるときは力率が必要です。また、表示されたWが機械出力であれば電気入力ではないため、先に仕様表の欄の意味を確かめます。

定格電流以内の接点なら使えますか?

数字の大小だけでは判断できず、負荷の種類、電源条件、起動時の電流などとの適合が必要です。操作信号だけを開閉する接点なのか、モーター側の回路を開閉する接点なのかも分けて読みます。

口径が同じ電動弁なら交換できますか?

口径が同じでも、流体条件や差圧、必要トルク、作動時間などの要求は残ります。弁本体の条件に加え、アクチュエータの電源、操作入力、位置確認、電源喪失時の動作まで照合して選びます。

カタログのVAに24時間を掛けると一日の使用電力量になりますか?

VAは皮相電力なので、そのままkWhの計算には使えません。有効入力と実際の動作時間を使い、待機中の制御回路やヒーターなども含めて考えることで、設備の使い方に対応した使用量を求めます。

まとめ

この記事のまとめ
  • 電動弁はモーターの動きを弁へ伝える機器で、弁本体と駆動部を組み合わせて選ぶ
  • VAは皮相電力、Wは有効電力や機械出力の単位であり、欄の定義まで読む
  • 電流の計算は単相・三相・直流を区別し、電圧や力率の条件を明記する
  • 定格・起動・拘束を分け、電源と制御機器の適用条件を照合する
  • 多数台では同時起動の容量と、動作・待機を含む消費電力量を分けて考える

カタログの数字は、型式と電源、運転状態がそろって初めて比較できます。まず「何の電力・電流か」を読み、その値を弁の負荷条件と盤側の仕様へ結び付けると、更新や増設で確認すべき点が明確になります。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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