電気分解とは?陰極・陽極の反応式の覚え方と水の電気分解

水素製造棟に並ぶアルカリ水電解の電解槽と配管

電池は化学反応から電気を取り出す装置で、電気分解はその逆に、電気を使って化学反応を起こす操作です。電気分解とは、直流の電気で物質から電子を引き抜き、別の物質に電子を押し込んで、自然には進まない酸化還元反応を起こす方法のことです。

電源の正極につないだ陽極では酸化、負極につないだ陰極では還元が起き、水なら 2H2O→2H2+O2 と水素と酸素に分かれます。アルミニウムや電気銅、か性ソーダと塩素、めっき、水素まで、電気分解は素材産業の土台になっている反応です。

この記事では、陰極・陽極の定義と電子の向きから、どの物質が反応するかの順番、水が関わる半反応式の作り方へと進みます。そのうえで、ファラデーの法則による生成量の計算、融解塩電解、工場で使われる電気分解、水電解による水素製造と電力原単位までを順に整理します。

目次

電気分解とは?

電気分解は、酸化還元反応を電気の力で進める操作です。酸化は電子を失う変化、還元は電子を受け取る変化で、ふつうの酸化還元では電子を放しやすい物質から受け取りやすい物質へ、直接電子が移ります。

電池は、その電子の移動を導線に通して電気として取り出す仕組みで、反応が進むほど物質の持つエネルギーは下がります。電気分解はその逆で、外から電気のエネルギーを与えて、エネルギーの高い側へ反応を押し上げます。

図1:電池と電気分解はエネルギーの向きが逆

電池は反応が下り坂を下るときの差を電気で取り出し、電気分解は電気を加えて反応を上り坂へ押し上げます。

電池電気分解反応物生成物H₂OH₂+O₂電気を取り出す電気を加える高い低い

※縦軸は物質の持つエネルギー(ギブズエネルギー)の高さのイメージです。水を分解するには、25℃で水1 molあたり237 kJ以上の電気のエネルギーが要ります。

電気分解に使う装置を電解槽、中に入れてイオンが電気を運ぶ液を電解液、電気を出し入れする金属や炭素の板を電極と呼びます。電解液には、塩や酸・塩基を溶かした水溶液のほか、塩を高温で溶かした液(融解塩)も使われ、電子は導線と電極を、電荷は液の中のイオンが運ぶことで回路がつながります。

水を例にすると、水素と酸素が反応して水になる変化は、放っておいても進む下り坂の反応です。逆向きの水の分解は上り坂なので、最低でも約1.23 Vの電圧をかけないと進みません。この値は水1 molあたりのギブズエネルギー237 kJを、電子2 molの電気量で割って求められます。

水を分解するのに必要な最低の電圧(25℃)
E = ΔGnF = 237,1002 × 96,485 = 約1.23 V
ΔG:水1 molを分解するのに必要なギブズエネルギー[J/mol] n:水1 molあたりに動く電子の物質量(2) F:ファラデー定数(96,485 C/mol、電子1 molの電気量)

電池と電気分解の違いを一言で言えば、反応が電気を生むか、電気が反応を起こすかです。陰極・陽極で何が起きるかを最初に一覧にすると、次のようになります。

確かめること陽極陰極
つなぐ電源の極正極(+)負極(−)
起きる反応酸化(電子を失う)還元(電子を受け取る)
水溶液で反応する候補電極の金属、Cl− などのハロゲン化物イオン、水・OH−Ag+・Cu2+ などの金属イオン、水・H+
水の電気分解での生成物酸素水素
電気分解の陰極・陽極の早見表。詳しい順番は「ステップ3」で整理します

電気分解の反応式を決める3つのステップ

電気分解の反応式は、新しく覚えることを3つに絞れば、あとは酸化還元の半反応式の組み立てと同じ手順で決まります。3つとは、陰極・陽極の定義、電子の流れる向き、それぞれの極で反応しやすい物質の順番です。

  • ステップ1:陰極・陽極の定義を確かめる
  • ステップ2:電子の流れる向きを書き込む
  • ステップ3:陰極・陽極で反応する順番と反応式をつかむ

ステップ1 陰極・陽極の定義を確かめる

電気分解の電源は電池や整流器で、電子は電源の負極から出て正極へ戻ります。電源の正極につないだ電極が陽極、負極につないだ電極が陰極で、電解槽の図ではまずこの対応を書き込むことが出発点になります。

混同しやすいのが、電池の正極・負極と電気分解の陽極・陰極です。電池の正極では電子を受け取る還元が起きますが、電気分解の陽極では電子を引き抜かれる酸化が起き、名前が似ていても起きる反応は逆向きになります。

装置電子が出ていく極電子が入ってくる極
電池負極:酸化(還元剤が電子を放す)正極:還元(酸化剤が電子を受け取る)
電気分解陽極:酸化(電源の正極が電子を引き抜く)陰極:還元(電源の負極から電子が押し込まれる)
電子が出ていく極で酸化、入ってくる極で還元が起きる点は電池も電気分解も同じです

陽極は還元剤、陰極は酸化剤と覚える方法もありますが、電極そのものが酸化剤・還元剤になるとは限りません。正確には、陽極では電子を放す物質(還元剤)が酸化され、陰極では電子を受け取る物質(酸化剤)が還元されると考えると、どの物質が主役かを取り違えずに済みます。

ステップ2 電子の流れる向きを書き込む

次に、電解槽の図に電子の矢印を書き込みます。電子は陽極の極板から導線へ引き抜かれ、電源を通って陰極へ送られ、陰極の表面で溶液中のイオンや水に渡されるので、矢印は陽極の極板から書き始め、陰極では溶液まで届かせます。

図2:電解槽の中の電子とイオンの動き

電子は導線の中だけを流れ、溶液の中では陽イオンと陰イオンが動いて電気を運びます。

直流電源+−電子 e⁻電子 e⁻陽極酸化陰極還元陰イオン陽イオン電解液(水溶液・融解塩)

※実線は導線の中を流れる電子、点線は溶液の中を動くイオンです。電子そのものが溶液の中を泳いで渡るわけではありません。

陽極から矢印を書くと、陽極の極板そのものが電子を出す候補だと目に入ります。銅や亜鉛のように溶けやすい金属を陽極にすると、溶液中のイオンより先に極板の金属が溶け出して陽イオンになるので、陽極の材質を見落とすと式を間違えます。

一方、陰極では電子が極板を通り抜けて、表面に来た溶液中のイオンや水に渡されます。陰極の金属自体は電子を受け取って変化することはないので、陰極で反応するのは溶液の中の物質だと考えて、溶けているイオンの種類を確かめます。

ステップ3 陰極・陽極で反応する順番と反応式をつかむ

陰極と陽極では起きる反応が違うので、反応しやすい物質の順番もそれぞれにあります。先に、電解するのが水溶液か、水を含まない融解塩か、電極が何の金属かを確かめると、候補の物質が絞れます。

ここで示す順番は、教科書で扱う濃度・電流の条件での目安です。工場では、イオンの濃度、液の pH、電極の材料と表面の被覆、電流密度(電極1 m2あたりの電流)を変えて、目的の反応が優先して起きるように条件を選んでいます。

陰極で反応する物質の順番と反応式

陰極では、溶液中の陽イオンか水が電子を受け取ります。受け取りやすさの目安はイオン化傾向で、イオン化傾向が大きい金属ほど陽イオンのままでいたがり、電子を受け取りにくいという関係を、4つのまとまりに分けて見ると整理できます。

図3:水溶液の陰極で電子を受け取るのはどれか

イオン化傾向の並びを4つに分けると、金属が出るか水素が出るかの見通しが立ちます。

Li・K・Ca・Na・Mg・Al水溶液では陽イオンは電子を受け取らず、代わりに水が還元されて水素が出る。金属を取り出すには融解塩電解水素が出る
Zn・Fe・Ni・Sn・Pb濃度・電流・電極の材料しだいで金属が析出する。亜鉛は工業的に水溶液から電解採取されている条件しだい
Cu・Hg・Ag水より先に電子を受け取り、金属として析出する。受け取りやすさは Ag+>Cu2+金属が析出
Pt・Auふつうの水溶液には陽イオンとしてほとんど存在しない。王水のような特別な液にしか溶けない候補にならない

※左上から右下へイオン化傾向が小さくなります。水素(H2)は Pb と Cu の間に入ります。

いちばんイオン化傾向が大きいナトリウムやアルミニウムなどのイオンは、水溶液中では電子を受け取りません。代わりに水が還元されて水素が出るので、たとえば食塩水を電気分解しても陰極にナトリウムは析出せず、陰極の反応は水素の発生と OH− の生成になります。

陰極で水が還元される(中性・塩基性の水溶液)
2H2O + 2e− → H2 + 2OH−
酸性の水溶液で H+ が多いとき
2H+ + 2e− → H2
どちらも電子2個で水素1分子。左右で原子の数と電荷がそろっています。

亜鉛からスズ・鉛までのまとまりは、水素より電子を受け取りにくいはずなのに、条件によっては金属が析出します。電極の表面では水素が出にくい(水素の過電圧が大きい)ためで、亜鉛は硫酸亜鉛の水溶液から電解採取する湿式法が世界の地金生産の9割以上を占めています。

電極の材料で陰極の反応が変わる例もあります。かつての水銀法の食塩電解は、水銀の上では水素がきわめて出にくい性質を使い、水素の代わりにナトリウムを水銀に溶かし込んで取り出していました。日本では環境への配慮から1986年までに水銀法をやめ、いまはイオン交換膜法に置き換わっています。

銅・水銀・銀のイオンは水より先に電子を受け取り、陰極に金属として析出します。白金や金は、そもそも陽イオンとして水溶液にほとんど溶けていないので、陰極で電子を受け取る候補にはなりません。

陰極の反応の順番まとめ

水溶液の陰極で電子を受け取る順番は、イオン化傾向の小さい金属のイオンから並べ、白金・金のように溶けていないものを除くと決まります。イオン化傾向の大きい金属のイオンしかないときは、水(酸性なら H+)が受け取ります。

水溶液の陰極で電子を受け取る順番
Ag+ > Cu2+ > H+・H2O
Ag+ + e− → Ag  Cu2+ + 2e− → Cu
Li・K・Ca・Na・Mg・Al のイオンは水溶液では電子を受け取りません。Zn〜Pb のイオンは条件によって析出します。

陽極で反応する物質の順番と反応式

陽極では、電子を放す物質が酸化されます。候補は電極の金属、溶液中のハロゲン化物イオン、水(塩基性なら OH−)の3つで、最も電子を出しやすいのは陽極の極板の金属です。

銅や亜鉛、ニッケルを陽極にすると、極板の金属が溶け出して陽イオンになります。銅の陽極が溶けて陰極に純粋な銅が析出する仕組みが銅の電解精錬で、めっきでも、めっきする金属と同じ金属を陽極にして溶かし、液中の金属イオンを補います。

陽極の極板が溶ける(銅を陽極にしたとき)
Cu → Cu2+ + 2e−
溶けにくい電極で、ハロゲン化物イオンがあるとき
2Cl− → Cl2 + 2e−
白金・金・炭素(黒鉛)の電極は、ふつうの水溶液の電気分解では自身が溶け出しません。

白金・金・黒鉛のように溶けにくい電極を使うと、次に電子を出すのは溶液中の塩化物イオンなどのハロゲン化物イオンです。食塩水なら Cl− が電子を放して塩素になります。水のほうが酸化されやすいはずなのに塩素が出るのは、陽極の表面では酸素の発生に大きな過電圧がかかり、濃い塩化物イオンの酸化のほうが速く進むためです。

塩化物イオンもない硫酸塩や硝酸塩の水溶液では、水か OH− が酸化されて酸素が出ます。

塩基性の水溶液(OH− が多い)
4OH− → O2 + 2H2O + 4e−
中性・酸性の水溶液(両辺に 4H+ を足して水にまとめる)
2H2O → O2 + 4H+ + 4e−
どちらも電子4個で酸素1分子。原子の数(O・H)と電荷が左右でそろっています。

黒鉛は水溶液の電気分解では溶けにくい電極ですが、高温で酸素ができる場面では例外です。アルミナの融解塩電解では約950℃の陽極で酸素と炭素が反応し、炭素の陽極が二酸化炭素になって少しずつ減っていきます。

工場の食塩電解では、黒鉛の代わりにチタンの板に酸化ルテニウムなどを塗った金属電極を陽極に使います。電極の表面で酸素が出にくいほど塩素が優先して出るので、被覆の材料が陽極の反応の割合を左右します。

陽極の反応の順番まとめ

陽極の順番は、極板の金属(白金・金・炭素以外)、ハロゲン化物イオン、水または OH− の順です。電極の材質から順に確かめると、どの物質が電子を出すかを図4の流れで判断できます。

図4:陽極で何が反応するかの判断の流れ

電極の材質、ハロゲン化物イオンの有無、液の性質の順に確かめます。

01電極の材質を見るPt・Au・C 以外の金属なら極板が溶ける(Cu→Cu2++2e−)
02ハロゲン化物イオンを探すCl−・Br−・I− があれば酸化されてハロゲンの単体に(2Cl−→Cl2+2e−)
03なければ水か OH−塩基性なら OH−、中性・酸性なら水が酸化されて酸素が出る

※硫酸イオン(SO42−)や硝酸イオン(NO3−)は水溶液の陽極ではほとんど酸化されません。

電気分解の注意点

ここまでの順番は、反応の候補を並べるための目安です。式を組み立てるときに間違えやすいのは、陽極の材質の見落としと、イオンの濃度や電極の表面状態で反応が入れ替わる場面です。

e−の矢印は陽極の極板から書く

電子の矢印を陽極の極板から書く習慣は、陽極が溶ける金属かどうかを毎回確かめるための手順です。陽極に銅を使った硫酸銅水溶液の電解では、酸素ではなく陽極の銅が溶け出すので、白金電極のときとは陽極の式も、液の変化もまったく違ってきます。

工場ではこの違いを使い分けています。銅の電解精錬やニッケルめっきでは、溶ける陽極で液中の金属イオンを補い、食塩電解や水電解では、溶けない陽極を使って液の成分だけを反応させます。

もう一つの注意点は、順番が条件で入れ替わることです。濃い食塩水では塩素が主に出ますが、塩化物イオンが少なくなると酸素の発生が増え、イオンの濃度が下がると後ろの順番の反応が割り込んでくるため、工場では液の濃度を一定に保って運転しています。

電気分解でいちばん迷う水の半反応式の扱い方

水溶液の電気分解で最も迷いやすいのは、水が反応するときの半反応式です。陰極は酸性なら 2H++2e−→H2、中性・塩基性なら 2H2O+2e−→H2+2OH− と形が変わるので、暗記より作り方を身につけるほうが確実です。

図5:水が関わる半反応式を作る手順

まず H+ を使った形で書き、液に H+ がほとんどないときは OH− を足して水に直します。

01H+ と e− で形を作る陰極なら 2H++2e−→H2。陽極なら 2H2O→O2+4H++4e−
02液に H+ が十分あるか酸の水溶液なら、そのまま完成。中性・塩基性なら次へ
03両辺に OH− を足すH+ と同じ数の OH− を両辺に足し、H++OH− を H2O にまとめる

※陽極の塩基性の式も、2H2O→O2+4H++4e− の両辺に 4OH− を足して整理すると得られます。

① 陰極の式を H+ で書く
2H+ + 2e− → H2
② 両辺に 2OH− を足す
2H+ + 2OH− + 2e− → H2 + 2OH−
③ 2H++2OH− を 2H2O にまとめる
2H2O + 2e− → H2 + 2OH−
陽極も同じ考え方で、塩基性なら 2H2O→O2+4H++4e− に 4OH− を足して 4OH−→O2+2H2O+4e− になります。

よくある疑問が、硝酸カリウム水溶液のような中性の液をどちらの式で書くかです。中性の水には H+ が1 Lあたり10−7 mol程度しかありません

電子を受け取って水素になる主役は水そのものなので、陰極は 2H2O+2e−→H2+2OH−、陽極は 2H2O→O2+4H++4e− と書きます。

この2つの式を電子の数をそろえて足すと、陰極で生じた OH− と陽極で生じた H+ が水に戻り、全体では水が水素と酸素に分かれるだけになります。代表的な水溶液の電気分解を並べると、表のようになります。

水溶液(電極)陰極の反応陽極の反応液の変化
NaCl 水溶液(陽極 C、陰極 Fe)2H2O+2e−→H2+2OH−2Cl−→Cl2+2e−NaOH ができる
CuSO4 水溶液(Pt・Pt)Cu2++2e−→Cu2H2O→O2+4H++4e−Cu2+ が減り酸性に
CuSO4 水溶液(Cu・Cu)Cu2++2e−→CuCu→Cu2++2e−Cu2+ の量はほぼ変わらない
AgNO3 水溶液(Pt・Pt)Ag++e−→Ag2H2O→O2+4H++4e−Ag+ が減り酸性に
NaOH 水溶液(Pt・Pt)2H2O+2e−→H2+2OH−4OH−→O2+2H2O+4e−水が減り濃くなる
H2SO4 水溶液(Pt・Pt)2H++2e−→H22H2O→O2+4H++4e−水が減り濃くなる
KNO3 水溶液(Pt・Pt)2H2O+2e−→H2+2OH−2H2O→O2+4H++4e−水が減る(極の近くは塩基性・酸性に)
代表的な水溶液の電気分解。NaOH・H2SO4・KNO3 は、いずれも全体では水の電気分解 2H2O→2H2+O2 になります

水の電気分解で水酸化ナトリウムや硫酸を溶かすのは、純水がほとんど電気を通さないためです。溶かした電解質のイオンが電気を運び、自身は電極で反応しないので、電解質は減らずに水だけが水素と酸素に分かれていきます。工業のアルカリ水電解も、水酸化カリウムの濃い水溶液を使います。

直列回路と並列回路で流れるe−の量の違い

電解槽を2つ以上つなぐときは、それぞれの槽に何 molの電子が流れたかを先に決めると、生成物の量が計算できます。直列は枝分かれのない回路、並列は途中で枝分かれする回路で、直列ではどの槽にも同じ量の電子が流れ、並列では枝ごとの電子の量の和が本流の量になります。

図6:直列と並列で電解槽に流れる電子の量

直列なら槽Aと槽Bに同じ電子が流れ、並列なら本流の電子が槽Aと槽Bに分かれます。

直列電源電源槽A槽B槽A槽BA・Bとも同じ量A+B=本流の量

※電流(A)×時間(s)で電気量(C)が決まり、電気量をファラデー定数で割ると電子の物質量(mol)になります。

並列の問題では、枝ごとの電子の量は直接与えられないことが多く、片方の槽で析出した金属の量から逆算して、もう片方の枝の電子の量を求めます。どちらの回路でも、最初に「どの槽に何 molの電子が流れたか」を確定させるのが手順の中心です。

電子の量から生成量を求める(ファラデーの法則)

電子の量と生成物の量を結ぶのがファラデーの法則で、電極で変化する物質の量は、流れた電気量に比例します。電子1 molの電気量がファラデー定数 F(96,485 C/mol)で、教科書では9.65×104 C/molを使います。

流れた電子の物質量と、生成する物質の質量
電子の物質量 = I × tF  生成量 m = I × tF × Mn
I:電流[A] t:時間[s] F:ファラデー定数 96,485 C/mol M:生成物のモル質量[g/mol] n:生成物1 molをつくるのに要る電子の物質量(半反応式の電子の係数)

同じ電気量でも、生成物の量は半反応式の電子の係数 n で変わります。

銅は Cu2++2e−→Cu で n=2、銀は Ag++e−→Ag で n=1、水素は n=2、酸素は n=4 です。

直列につないだ槽では、生成する物質の物質量の比は電子の係数 n の逆比になります。たとえば同じ電子量なら、n=1の銀は n=2の銅の2倍の物質量が析出します。

計算例:直列と並列につないだ電解槽

硫酸銅水溶液(白金電極)の槽Aと、水酸化ナトリウム水溶液(白金電極)の槽Bを直列につなぎ、10 Aで1時間電気分解した場合を考えます。直列なので、槽Aにも槽Bにも同じ量の電子が流れます。

① 流れた電子の物質量
電気量 = 10 A × 3,600 s = 36,000 C
電子 = 36,00096,485 = 0.373 mol
② 槽Aの陰極に析出する銅(n=2)
0.373 ÷ 2 × 63.55 = 11.9 g
③ 槽Bで発生する気体(0℃・1気圧、22.4 L/mol)
水素(n=2):0.373 ÷ 2 × 22.4 = 4.18 L 酸素(n=4):0.373 ÷ 4 × 22.4 = 2.09 L
Cu のモル質量 63.55 g/mol。槽Aの陽極でも、槽Bと同じく0.373 ÷ 4 = 0.0933 molの酸素が出ます。電流効率(流した電気のうち目的の反応に使われた割合)は100%とした理論値です。

並列の場合は、片方の槽の結果から枝ごとの電子の量を割り出します。硝酸銀水溶液の槽Aと硫酸銅水溶液の槽Bを並列につなぎ、本流に0.300 molの電子を流したところ、槽Aの陰極に銀が21.6 g析出した場合を考えます。

① 槽Aに流れた電子(銀は n=1)
21.6 ÷ 107.87 = 0.200 mol
② 槽Bに流れた電子(本流 − 槽A)
0.300 − 0.200 = 0.100 mol
③ 槽Bの陰極に析出する銅(n=2)
0.100 ÷ 2 × 63.55 = 3.18 g
Ag のモル質量 107.87 g/mol、Cu 63.55 g/mol。電流効率は100%とした理論値です。

工場では、流した電気の一部が副反応に使われるため、実際の生成量は理論値より少なくなります。理論値に対する実際の割合を電流効率と呼び、めっきの膜厚管理や電解工場の生産計画は、この電流効率を含めて電気量から逆算して決めています。

工場の電解槽も直列と並列でつなぐ(単極式と複極式)

直列と並列の考え方は、工場の電解槽の組み方そのものです。何十もの電解セルを1台にまとめるとき、セルを並列につなぐ方式を単極式、直列につなぐ方式を複極式と呼び、複極式では隣のセルの陰極と陽極が直接つながり、低い電流・高い電圧で運転します。

単極式は大電流・低電圧で、すべての電極に電流を配る必要があり、電流の通り道が長いぶん抵抗による損失が大きくなります。食塩電解では高性能な複極式の電解槽が省エネの技術として位置づけられ、交流を直流に変える整流器の電圧・電流の設計も、この組み方で決まります。

EU の資料に載っている同じ塩素生産能力(年15.8万 t)の膜法工場の例を見ると、単極式は電流密度3.7 kA/m2・セル電圧3.6 Vで、塩素1 tあたり2,860 kWhでした

複極式は電流密度6.0 kA/m2と高いのにセル電圧は3.2 Vで、塩素1 tあたり2,600 kWhにとどまります。同じ反応でも、セルのつなぎ方で電力が1割ほど変わることになります。

電気分解の応用〜融解塩電解〜

融解塩電解は、塩(酸と塩基の中和でできる化合物)を高温で溶かし、水を含まない液にして電気分解する方法です。水溶液では水が先に還元されてしまうナトリウムやアルミニウムのように、イオン化傾向の大きい金属を単体で取り出すための方法です。

塩化ナトリウムの融解塩電解(全体)
2NaCl → 2Na + Cl2
アルミナの融解塩電解(炭素陽極が消費される全体の式)
2Al2O3 + 3C → 4Al + 3CO2
NaCl:陰極 Na++e−→Na、陽極 2Cl−→Cl2+2e−。アルミニウムは、約950℃に溶かした氷晶石(Na3AlF6)にアルミナを溶かして電解します。

アルミニウムの製錬では、融点が2,000℃を超えるアルミナを氷晶石に溶かして、約950℃で電解できるようにしました。アルミニウム1 kgに理論上約3,000 Ahの電気が要り、電力の多さが製錬の立地とコストを決める産業です

反応式、炭素陽極の消費、製錬の電力は融解塩電解の解説で詳しく扱っています。

ここからは、工場で電気分解がどう使われているかを見ていきます。食塩電解・融解塩電解・電解精錬は個別の記事で詳しく扱っているので、この記事では全体の見取り図と、水素製造・電力の考え方を中心に整理します。

工場で使われる電気分解

電気めっきの槽に吊るした部品を浸す作業者

工場の電気分解は、つくるものの違いから4つに分けると見通しがよくなります。どれも陰極で還元、陽極で酸化という原理は同じで、電解液・電極・電流密度の選び方と、電気をどれだけ使うかが用途ごとに違います。

図7:工場で使われる電気分解の4つの用途

化学品をつくる、金属をつくる・精製する、表面を処理する、水素をつくるの4つに分かれます。

食塩電解食塩水から水酸化ナトリウム・塩素・水素
製錬・精製アルミの融解塩電解、銅の電解精錬、亜鉛の電解採取
めっき・表面処理品物を陰極にして金属を析出、アルマイトは陽極で酸化
水電解水から水素と酸素。再エネの電気でグリーン水素

※同じ電気分解でも、か性ソーダやアルミのように電力が原価を大きく左右する用途と、めっきのように品質(膜厚・密着)が主役の用途があります。

食塩電解:水酸化ナトリウムと塩素を同時につくる

食塩水を電気分解すると、陽極で塩素、陰極で水素と水酸化ナトリウムが同時にできます。電気分解を使うのは、食塩という安い原料から2つの基礎化学品を一度に得られるからで、難しさは陽極と陰極の生成物を混ぜずに取り出すことにあります。

日本では1999年に全量がイオン交換膜法になり、陽イオンだけを通す膜で槽を仕切っています。反応式、膜が Na+ だけを通す理由、塩水の精製や電力の計算はイオン交換膜法による食塩電解で詳しく扱っています。

金属の製錬と精製(アルミニウム・銅・亜鉛)

金属の分野では、電気分解の使い方が3つあります。アルミニウムは融解塩電解で酸化物から金属をつくり、銅は粗銅を陽極にして溶かし、陰極に99.99%の電気銅を析出させる電解精錬で純度を上げます。

亜鉛は、鉱石を焼いて硫酸で溶かした液から、陰極に金属を析出させる電解採取でつくります。同じ硫酸の液を電解工程で再生して浸出に戻す、閉じた循環で操業できるのも湿式法の特徴です

銅の電解精錬は陽極が溶けるので電圧が低く、電力は銅1 tあたり約300 kWhで済みますが、陽極で酸素を出す電解採取は約2,200 kWhと7倍ほどの電力が要ります。製錬所の配置や業界の構造は鉄鋼・非鉄金属業界の構造で整理しています。

電解めっきと陽極酸化(アルマイト)

電気めっきは、めっきしたい品物を陰極につなぎ、液中の金属イオンを品物の表面に還元して薄い金属の膜をつくる方法です。部品を引っ掛け治具に吊るす方式や、小物をまとめてバレルで回す方式があり、膜の厚さは電流密度と時間、つまり流した電気量で管理します。

亜鉛・ニッケル・クロムなど、めっきの種類と選び方はめっきの種類と違いで、鋼板の亜鉛めっきとスズめっきの違いはトタンとブリキの違いで扱っています。めっきの難しさは、角や穴の奥で電流の集まり方が違い、膜厚がばらつくことです。

めっきでは、陰極で金属イオンの還元と同時に水素の発生も少し起こり、流した電気の一部が水素に使われます。JIS の電気めっき用語では、理論析出量に対する実際の析出量の割合を電流効率と呼び、めっき時間は目標の膜厚と電流効率から逆算します。

計算例:1 dm2の面にニッケルを10 µmめっきする時間(電流密度2 A/dm2、電流効率95%と仮定)
ニッケルの質量 = 100 cm2 × 0.0010 cm × 8.90 g/cm3 = 0.890 g → 0.890 ÷ 58.69 = 0.01516 mol
必要な電気量 = 0.01516 × 2 × 96,4850.95 = 3,080 C
時間 = 3,080 C ÷ 2 A = 1,540 s ≒ 約26分
Ni2++2e−→Ni で n=2。ニッケルの密度 8.90 g/cm3、モル質量 58.69 g/mol。実際の膜厚は品物の形で場所ごとにばらつくため、薄くなりやすい部分を基準に条件を決めます。

アルミニウムの表面処理であるアルマイトは、反対に品物を陽極にします。陽極で酸化させて表面に酸化アルミニウムの膜を育てる陽極酸化で、膜厚や色の違いはアルマイトの種類と違いで整理しています。

水電解でつくる水素(グリーン水素)

脱炭素で最も注目されている電気分解が、水を水素と酸素に分ける水電解です。再生可能エネルギーの電気で水を電気分解すれば、製造時に二酸化炭素を出さない水素ができ、この水素をグリーン水素と呼びます。

水素は燃料電池の燃料のほか、アンモニアや製油所の原料、鉄鉱石を還元する水素還元製鉄にも使えます。電気分解自体は200年以上前から知られ、IRENA によれば1900年までに400基以上の工業用電解槽が稼働し、おもに水力発電の安い電気でアンモニアの原料になる水素をつくっていました。

水電解の水素は原料が水なので一酸化炭素や硫黄分が混ざらず、方式によって99.9%から99.9999%の高い純度で得られます。陽極側では同時に酸素ができ、水素1 kgあたり理論上約8 kgの酸素が副産物として出るので、酸素を使う設備と組み合わせる計画もあります。

アルカリ水電解とPEM型の違い

いま商用の中心は、アルカリ水電解と PEM 型(固体高分子形)の2方式です。アルカリ水電解は水酸化カリウムの濃い水溶液と隔膜を使い、OH− が電気を運びます。PEM 型は水素イオンだけを通す固体の高分子膜を使い、H+ が膜の中を陽極から陰極へ移ります。

アルカリ水電解(電解液 KOH 水溶液)
陰極:4H2O + 4e− → 2H2 + 4OH− 陽極:4OH− → O2 + 2H2O + 4e−
PEM 型(固体高分子膜の中を H+ が移動)
陽極:2H2O → O2 + 4H+ + 4e− 陰極:4H+ + 4e− → 2H2
全体(どちらの方式も同じ)
2H2O → 2H2 + O2
電子4 molで水素2 molと酸素1 mol。水素と酸素の体積比は2:1になります。
比べる点アルカリ水電解PEM 型(固体高分子形)
電解質KOH 水溶液(5〜7 mol/L)と隔膜フッ素系の固体高分子膜
電気を運ぶイオンOH−H+
運転温度70〜90℃50〜80℃
電流密度0.2〜0.8 A/cm21〜2 A/cm2
運転できる負荷の範囲15〜100%5〜120%
電極・触媒ニッケル系酸素側に酸化イリジウム、水素側に白金
水素1 kgあたりの電力(設備全体)50〜78 kWh50〜83 kWh
出典:IRENA「Green Hydrogen Cost Reduction」(2020年)の2020年時点の水準

選び方の軸は、電気の変動への追従、材料、設備の大きさです。アルカリ水電解は高価な貴金属を使わず大型化しやすい一方、PEM 型は電流密度が高く装置を小さくでき、太陽光や風力のように出力が揺れる電気にも追従しやすいのが強みです

ただし PEM 型は、酸素側にイリジウム、水素側に白金という希少な貴金属を使います。そのため、貴金属の使用量を減らすことが量産の課題になっています。

国内の大型実証(福島水素エネルギー研究フィールド)と導入目標

国内の代表的な実証設備が、福島県浪江町の福島水素エネルギー研究フィールド(FH2R)です。NEDO の事業として2020年3月に開所し、20 MWの太陽光発電の電気などを使って、10 MW級のアルカリ水電解装置で定格毎時1,200 Nm3の水素をつくれます。

電解装置は旭化成が納めたもので、同社の発表では1スタックの大きさとして世界最大規模とされています。目的は、再生可能エネルギーの余った電気を水素に変えて貯める技術を確かめることです

つくった水素は東京2020大会の聖火台や燃料電池車に使われ、製油所を水素の拠点にする液化水素の計画のような供給網づくりにもつながっています。

政策の目標は、実証の実績とは別の数字です。2023年6月の水素基本戦略の改定では、2030年までの導入目標として、国内外で日本関連企業(部素材メーカーを含む)の水電解装置を15 GW程度とすることを掲げました。FH2R の10 MWの約1,500倍にあたる規模です。

燃料電池は水電解の逆反応

水電解の全体の式 2H2O→2H2+O2 を逆向きにすると、水素と酸素から水と電気をつくる燃料電池の反応になります。PEM 型の水電解と固体高分子形の燃料電池は、膜と触媒の考え方がほぼ同じで、仕組みと種類は燃料電池の解説で扱っています。

逆反応である以上、水電解に使った電気をすべて取り戻すことはできません。水電解には理論上1.23 V以上、実際には損失のぶんだけ高い電圧が要ります

反対に燃料電池は1.23 Vより低い電圧でしか電気を取り出せないので、水素は電気を貯める手段としては往復で損失が出る点も押さえておく必要があります。

電力原単位で見る電気分解のエネルギー

電気分解の工場では、製品1 tあたりの電力量である電力原単位が、原価と二酸化炭素の排出量を左右する指標になります。電力原単位は、ファラデーの法則で決まる電気量と、セルにかける電圧の掛け算で決まります。

電力原単位の考え方

生成物1 kgあたりの電気量は、ファラデーの法則で反応式から決まり、電流効率が下がるとそのぶん増えます。電力量は電気量に電圧を掛けたものなので、同じ電気量でもセルの電圧を下げるほど電力原単位は小さくなります。

生成物1 kgあたりの電力原単位
W = 1,000M × n × F × Vη × 3.6 × 106
W:電力原単位[kWh/kg] M:モル質量[g/mol] n:生成物1 molあたりの電子の物質量 F:96,485 C/mol V:セル電圧[V] η:電流効率(小数) 3.6×106:1 kWh=3.6×106 J

セル電圧は、反応そのものに要る理論の電圧に、電極で反応を進めるための余分な電圧(過電圧)、液や膜・導体の抵抗による電圧の損失を足したものです

水電解の理論の電圧は1.23 Vで、反応の熱まで電気でまかなう熱中性電圧は1.48 Vですが、実際の装置のセル電圧は1.4〜3 Vの範囲にあります。

セル電圧のうち過電圧と抵抗の損失は、電流密度を上げるほど大きくなります。電流密度を上げると同じ電解槽でたくさんつくれて設備費は下がりますが、電圧が上がって電力原単位は悪くなるため、電極の被覆や膜、極間の距離を改良しながら、設備費と電気代の釣り合う点で運転しています。

セル電圧の内訳(食塩電解の資料で使われる式)
セル電圧 ≒ U0 + K × j
U0:理論の電圧と電極の反応に要る最低の過電圧(膜法の食塩電解で約2.35 V) K:電極・液・膜・導体の抵抗などで決まる係数[V·m2/kA] j:電流密度[kA/m2]。K を小さくする改良が省エネの中心です。

計算例:水素1 kgをつくる電力

水素(M=2.016、n=2)1 kgを、セル電圧1.9 V、電流効率98%の電解槽でつくる場合を計算します。電圧と電流効率は計算のための仮定の値で、結果は整流器や補機を含まない電解槽だけの電力量です。

① 水素1 kgの物質量と電気量
1,000 ÷ 2.016 = 496.0 mol → 電気量 = 496.0 × 2 × 96,485 = 9.57 × 107 C
② 電圧と電流効率を入れる
W = 9.57 × 107 × 1.90.98 × 3.6 × 106 = 約51.5 kWh/kg
同じ式で電流効率を100%として V=1.23 Vとすると約32.7 kWh/kg、V=1.48 Vとすると約39.4 kWh/kg。0℃・1気圧の水素1 Nm3(0.0899 kg)に直すと、計算例は約4.6 kWh/Nm3 です。

IRENA がまとめた2020年時点の水準では、電解槽本体で水素1 kgあたり47〜66 kWh、整流器・ポンプ・ガスの精製まで含めた設備全体で50〜83 kWhでした

理論の電圧から出る32.7 kWhとの差が、過電圧や抵抗の損失と補機の電力で、この差を縮めることが水電解の電極・膜・設計の開発目標になっています。

図8:製品ごとの電力原単位の目安

分母になる製品と、どこまでの設備を含むかが違うので、桁の違いを見る目安として読みます。

水素(水電解)水素1 kgあたり50〜83 kWh(設備全体、2020年の水準)=1 tあたり5万〜8.3万 kWhIRENA
アルミニウム(融解塩電解)アルミ1 kgあたり13〜15 kWh=1 tあたり1.3万〜1.5万 kWhECS 2002
塩素(食塩電解・膜法)塩素1 tあたり平均2,618 kWh(EU の電解の交流電力、同時に NaOH 約1.1 tと水素ができる)EU BREF
銅(電解精製・電解採取)銅1 tあたり精製 約300 kWh、採取 約2,200 kWh資源エネルギー庁

※水素は質量が小さいので1 tあたりにすると大きな数字になります。熱量や物質量で比べると見え方が変わるため、同じ分母・同じ設備範囲どうしで比べてください。

電力原単位が大きい工場ほど、電気料金の上がり下がりが製品の原価に直結します。電解工場は大口の電力を一定に使い続けるので、工場のデマンド電力や契約の考え方とあわせて、電気をいつ・どれだけ使うかの管理が経営の論点になります。

二酸化炭素の面では、電気分解そのものは二酸化炭素を出さなくても、使う電気を火力でつくれば排出は発電所で生じます。電力原単位を下げる技術と、電気を再生可能エネルギーに替える取り組みの両方が、脱炭素の中で電解産業に求められています。

電気分解のよくある質問

電気分解と電解は同じ意味ですか?

同じ意味で、工業の分野では「電解」と短く呼ぶのが一般的です。電解精錬・電解めっき・電解槽・水電解のように、ほかの語と組み合わせて使われます。

食塩水の電気分解で陽極から酸素ではなく塩素が出るのはなぜですか?

濃い食塩水には塩化物イオンが多く、陽極の表面では酸素の発生のほうが進みにくい(過電圧が大きい)ため、塩素が主に出ます。塩化物イオンが少ない液や、酸素を出しやすい電極では、酸素の発生が増えます。

水の電気分解で発生する水素と酸素の体積比はなぜ2:1ですか?

水素は電子2個で1分子、酸素は電子4個で1分子できるので、同じ電子の量で水素は酸素の2倍の物質量になります。同じ温度・圧力の気体は物質量に比例した体積なので、体積比も2:1になります。

電気分解に交流ではなく直流を使うのはなぜですか?

交流では電極の正と負が1秒間に何十回も入れ替わり、陽極と陰極が定まらないためです。工場では、電力会社から受けた交流を整流器で直流に変えて電解槽に送っています。

電気分解でつくった水素はすべてグリーン水素ですか?

いいえ、使う電気によって変わります。グリーン水素と呼ばれるのは再生可能エネルギーの電気で水電解した水素で、火力発電の電気を使えば、製造段階で発電所から二酸化炭素が出ます。

まとめ

この記事のまとめ
  • 電気分解とは、直流の電気で自然には進まない酸化還元反応を起こす方法で、電源の正極側の陽極で酸化、負極側の陰極で還元が起きる
  • 陰極は Ag+>Cu2+>H+・水の順に電子を受け取り、陽極は極板の金属(Pt・Au・C 以外)>ハロゲン化物イオン>水・OH− の順に電子を出す
  • 水の半反応式は H+ で書いてから、中性・塩基性なら OH− を足して水にまとめれば暗記なしで作れる
  • 生成量は流れた電子の量で決まり(ファラデーの法則)、直列の槽には同じ量、並列は枝の和が本流になる。工場の単極式・複極式も同じ考え方
  • 食塩電解・製錬・めっき・水電解が工場の主な用途で、水電解の水素は1 kgあたり50〜83 kWh。電力原単位の削減と再エネの電気が課題

電気分解は、半反応式の組み立てという化学の基本が、か性ソーダやアルミニウム、めっき、水素の工場にそのままつながる反応です。逆向きの反応で電気を取り出す鉛蓄電池の仕組みもあわせて読むと、電池と電気分解の関係がつかみやすくなります。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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