トタンとブリキの違いは?腐食に強いのはどちらか、犠牲防食とイオン化傾向で解説

溶融亜鉛めっきの槽から引き上げられる鉄骨の部材

トタンは鉄の板に亜鉛を、ブリキはスズをめっきしたもので、傷がないうちはどちらも鉄を水と酸素から守ります。違いが出るのは表面に傷がついたときで、亜鉛は鉄より先に溶けて身代わりになり、スズは鉄より溶けにくいため露出した鉄が先にさびるので、傷に強いのはトタンです。

この守り方の違いは、亜鉛による「犠牲防食」と、スズで覆うだけの「被覆防食」と呼ばれ、どちらになるかは鉄とのイオン化傾向の大小で決まります。ただし犠牲防食が届くのは水の膜がつながる範囲に限られ、缶の内側のように条件が変わると、スズのほうが身代わりになる場面もあります。

この記事では、鉄がさびるしくみ、トタンとブリキそれぞれの守り方と反応式、比較表と用途、イオン化傾向を使った覚え方を順に整理します。続いて、溶融亜鉛めっきやぶりきをつくる工場と JIS の規格、白さびと亜鉛の耐用年数の考え方、日本の生産とスチール缶のリサイクルまでを見ていきます。

目次

鉄のめっきとは?鉄がさびるしくみと表面を覆う理由

腐食とは、金属の表面が周りの水や酸素と反応して、酸化物や水酸化物、炭酸塩などに変わっていく現象です。鉄は空気中に置いておくだけで水と酸素の両方にさらされ、雨や結露で表面がぬれるたびに赤さびが少しずつ内部へ進んでいきます。

鉄のさびは、1つの水滴の中で電池ができることで進みます。酸素が届きにくい水滴の中央では鉄が電子を手放して Fe2+ として溶け出し、酸素の多い水滴の縁ではその電子を酸素と水が受け取って水酸化物イオンになります。

図1:鉄がさびるしくみ

水滴の中央で鉄が溶け、縁で酸素が電子を受け取る「局部電池」ができて、さびが進みます。

水滴(酸素が溶けている)中央=陽極Fe → Fe²⁺ + 2e⁻縁=陰極縁=陰極鉄板(電子は中央から縁へ流れる)赤さび赤さびO₂ + 2H₂O + 4e⁻ → 4OH⁻O₂ + 2H₂O + 4e⁻ → 4OH⁻e⁻e⁻

※構造を簡単にした模式図です。実際の鉄の表面には、こうした陽極と陰極が細かく入り混じってできます。

溶け出した Fe2+ は水酸化物イオンと出会って水酸化鉄になり、さらに酸素で酸化されて赤さびに変わります。赤さびの組成はオキシ水酸化鉄(FeOOH)や含水酸化鉄が混ざったもので、全体を1本の式で表すと次のとおりです。

陽極と陰極に分けた反応(中性の水の中)
陽極:Fe → Fe2+ + 2e−
陰極:O2 + 2H2O + 4e− → 4OH−
水酸化鉄ができ、さらに酸化されて赤さびになる
Fe2+ + 2OH− → Fe(OH)2
4Fe(OH)2 + O2 → 4FeOOH + 2H2O
全体をまとめた代表的な式
4Fe + 2H2O + 3O2 → 2Fe2O3・H2O
Fe2O3・H2O は 2FeOOH と同じ組成です。実際の赤さびは水の量によって Fe2O3・nH2O のように書かれることもあります。

赤さびはすき間の多いもろい層で、水や酸素を通してしまうため、できたさびが下の鉄を守ることはありません。黒さび(マグネタイト)との違いや磁石へのつき方は錆は磁石にくっつく?赤錆と黒錆の違いで整理しています。

そこで鉄の表面に別の金属の薄い膜をつくり、水と酸素を鉄に届かせないようにするのがめっきです。めっきは塗装や化成処理と並ぶ表面処理の一つで、鉄を守るしくみは大きく2つに分かれます。

  • 被覆防食:鉄より溶けにくい金属で表面を覆い、水と酸素を遮る(スズ、ニッケルなど)
  • 犠牲防食:鉄より溶けやすい金属で覆い、傷ができてもその金属が先に溶けて鉄を守る(亜鉛など)

鉄の板を覆う代表的なめっきがトタンとブリキで、この2つはちょうど守り方が正反対になります。どちらも鉄の弱点を補う方法ですが、傷がついたときの振る舞いがまったく違うため、使われる場所も分かれています。

トタンとブリキ:亜鉛めっきとスズめっき

トタンは鋼板に亜鉛(Zn)を、ブリキは鋼板にスズ(Sn)をめっきしたものです。工業の規格では、トタンは「亜鉛めっき鋼板」、ブリキは「ぶりき」と書かれ、ブリキの名はオランダ語で薄い鉄板を指す blik に由来します。

トタンとは:亜鉛が身代わりになる犠牲防食

亜鉛は鉄よりイオン化傾向が大きく、本来は鉄よりさびやすい金属です。それでもトタンが長くもつのは、大気にさらされた亜鉛の表面に水に溶けにくい緻密な酸化亜鉛などの皮膜ができ、亜鉛自身の腐食が遅くなるからです。

真新しい亜鉛めっきの銀色の光沢は、化学的にはまだ活性な状態です。光沢が消えて灰色に落ち着くのは皮膜ができて安定した印で、亜鉛は「さびやすいが、さびの膜で自分を守る」金属だといえます。

表面に傷がついて鉄が露出すると、亜鉛と鉄が雨水の膜でつながり、電池ができます。このとき溶けやすい亜鉛が陽極になって電子を出し、露出した鉄は陰極として電子を受け取る側に回るため、亜鉛が溶けている間は鉄は溶けません。これが犠牲防食です。

トタンに傷がついたとき(亜鉛が陽極、露出した鉄が陰極)
陽極(亜鉛):Zn → Zn2+ + 2e−
陰極(露出した鉄の表面):O2 + 2H2O + 4e− → 4OH−
Zn2+ + 2OH− → Zn(OH)2
全体
2Zn + O2 + 2H2O → 2Zn(OH)2
鉄は陰極側にあるので Fe → Fe2+ の反応が起こりません。亜鉛が出した電子が鉄の表面で酸素を還元し、溶けた亜鉛は水酸化亜鉛などの白い生成物になります。

図2:傷がついたときのトタンとブリキ

同じ傷でも、トタンは亜鉛が溶けて鉄を守り、ブリキは露出した鉄が溶けて穴が深くなります。

トタン(亜鉛めっき)ブリキ(スズめっき)鉄は陰極になり守られる鉄が陽極になり穴が深くなる雨水の膜亜鉛が溶ける Zn → Zn²⁺鉄(素地)雨水の膜スズは溶けにくいe⁻ はスズ側へFe → Fe²⁺e⁻ は鉄へ

※大気中では水の膜が途切れやすく、亜鉛の犠牲防食が届くのは傷や切り口のごく近くに限られます。広い範囲で鉄が露出すると、トタンでも赤さびが出ます。

ただし、犠牲防食はどこまでも届くわけではありません。日本製鉄は、大気中では電解質となる水の膜が連続しないため効果の及ぶ範囲が狭く、皮膜ができると亜鉛の溶け出しも抑えられるとして、大気中の犠牲防食は「あまり期待できない」と説明しています。

実際のトタンの強さは、皮膜で亜鉛自身がゆっくりとしか減らないことと、傷や切断面の近くを亜鉛が守ることの組み合わせです。新日鉄住金技報(2014年)は亜鉛系めっきの防食機構を、めっき層のバリア効果、犠牲防食、腐食生成物による抑制の3つに整理しています。

ブリキとは:スズで覆って守る被覆防食

スズは鉄よりイオン化傾向が小さく、鉄より溶けにくい金属です。傷のないブリキでは、スズの膜が水と酸素を鉄から遮り、スズ自身も大気中ではほとんど腐食しないため、傷がないうちはトタンより表面がきれいに保たれます。

ところが傷で鉄が露出すると、電池の向きがトタンと逆になります。溶けやすい鉄が陽極になって電子を出し、周りの広いスズの面が陰極として酸素の還元を受け持つので、小さな傷に腐食が集中し、穴が深く掘られていきます。

ブリキに傷がついたとき(露出した鉄が陽極、スズの面が陰極)
陽極(露出した鉄):Fe → Fe2+ + 2e−
陰極(スズの表面):O2 + 2H2O + 4e− → 4OH−
陰極(スズ)の面積が広く陽極(傷)が小さいほど、傷の部分の鉄が速く溶けます。鉄だけの板なら表面全体に散らばる腐食が、傷の一点に集まる形です。

ここで大事なのは、「傷では鉄が陽極になる」という原理と、実際にどれだけ速く穴があくかは別の話だという点です。腐食の速さは水の膜の有無、塩分、温度、傷の大きさで大きく変わり、屋内で乾いた状態に置かれたブリキなら傷があってもすぐに穴があくわけではありません。

トタンとブリキを比較して用途を理解する

「どちらが腐食に強いか」は、傷がないときの表面の変化、傷がついたときの鉄の守り方、屋外で何年もつかという3つの問いに分けると整理できます。比べる観点ごとにまとめると次の表になります。

比べる観点トタン(亜鉛めっき鋼板)ブリキ(ぶりき)
めっきの金属亜鉛 Znスズ Sn
鉄とのイオン化傾向鉄より大きい(標準電極電位 −0.76 V)鉄より小さい(−0.14 V、鉄は −0.44 V)
守り方の原理被覆+犠牲防食被覆防食のみ(大気中)
傷がないとき亜鉛が少しずつ溶けて白い皮膜ができるが、鉄は守られるスズはほとんど変化せず、光沢を保ちやすい
傷がついたとき亜鉛が先に溶け、傷の近くの鉄は赤さびにくい露出した鉄が先に溶け、傷の部分に腐食が集中する
めっきの厚さの例溶融亜鉛めっき(HDZT 77)で77 µm以上片面2.8〜11.2 g/m²(約0.4〜1.5 µm)
主な用途屋根・外壁、ガードレール・鉄塔、自動車・家電の鋼板食缶・飲料缶、18リットル缶、美術缶
主な JISJIS H 8641(溶融亜鉛めっき)、JIS G 3302・3313(鋼板)JIS G 3303(ぶりき及びぶりき原板)

傷がないときにトタンの表面が先に変化するのは、亜鉛がゆっくり溶けて皮膜をつくっているからで、鉄が傷んでいるわけではありません。傷に強いのはトタン、見た目を長く保つのはブリキと整理すると、それぞれの用途の理由が見えてきます。

トタンの用途:屋根・外壁から自動車・家電まで

トタンは、雨にさらされ、施工や飛来物で傷がつきやすい屋根や外壁に古くから使われてきました。亜鉛を厚くつけた溶融亜鉛めっきはガードレールや鉄塔、鉄骨にも使われ、水道や消火の配管の白管(亜鉛めっき鋼管)もこの仲間で、黒管との違いはステンレス配管と鉄配管の比較でも触れています。

日本鉄鋼連盟によると、亜鉛めっき鋼板の用途は自動車・輸送機器が50%、建築・土木が20%、電気機器が15%、その他が15%です。自動車の車体では亜鉛めっき鋼板の上に塗装を重ねており、電着塗装や粉体塗装と組み合わせて穴あきを防ぎます。

ブリキの用途:おもちゃよりも缶詰

ブリキというと昔のおもちゃが浮かびますが、いまの主な用途は缶です。JIS G 3303 の適用範囲は「主として飲料缶,食缶などに用いる」と書かれ、日本製鉄はほかに18リットル缶や紅茶・菓子の美術缶、エアゾール缶、キャップなどを挙げています。

缶にスズが選ばれてきたのは、長く食品の容器に使われてきた実績があり、はんだ付けや溶接、印刷がしやすいことに加え、缶の内側で鉄を守る働きがあるからです。酸素がほとんどない缶の内側では、スズのほうが鉄より溶けやすくなり、犠牲陽極として鉄を守ります。

FAO と WHO の Codex 委員会の実施規範(CAC/RCP 60-2005)は、内面を塗装しない缶詰の嫌気条件ではスズが通常は犠牲陽極としてごくゆっくり溶け、鋼を守ると説明しています。酸素がない密封状態と食品の成分によって、大気中とは電池の向きが逆になるわけです。

ただし、ビートやベリーのように色の濃い食品はスズが溶けると色があせ、ザワークラウトのようにスズが犠牲的に働かない食品もあるため、内面を塗装した缶を使います。殺菌まで含めた缶詰・レトルト食品の工程はレトルト食品の製造工程で整理しています。

昔のブリキのおもちゃがきれいな姿で残っているのは、屋内で傷をつけずに保管されれば、スズの膜が鉄を長く覆い続けるからです。屋根のように雨と傷が避けられない場所にブリキを使わないのも、同じ性質の裏返しです。

トタンとブリキの覚え方(イオン化傾向で考える)

トタンとブリキのどちらがどの金属かは、名前の語呂で覚えるより、鉄とのイオン化傾向の位置で考えると忘れにくくなります。イオン化傾向は金属が電子を出して陽イオンになりやすい順で、鉄より左(溶けやすい)なら身代わり、鉄より右(溶けにくい)なら覆うだけと決まります。

図3:イオン化傾向で決まる守り方

鉄より電位が低い(溶けやすい)亜鉛は身代わりになり、鉄より高いスズは覆って守るだけになります。

Zn 亜鉛Fe 鉄Sn スズCu 銅−0.76 V−0.44 V−0.14 V+0.34 V← 溶けやすい(イオン化傾向が大きい)  溶けにくい(小さい) →鉄より溶けやすい=犠牲防食鉄より溶けにくい=被覆防食

※値は25℃の標準電極電位(Mn+ + ne− → M)。実際の水や食品の中では、溶けている物質や酸素の量で電位が変わり、亜鉛とスズの働きが逆転することもあります。

高校化学で覚える並び「K>Ca>Na>Mg>Al>Zn>Fe>Ni>Sn>Pb>(H2)>Cu」で、亜鉛は鉄のすぐ左、スズは鉄の右にあります。標準電極電位の数字で見ると、2つの金属をつないだときに生まれる電圧のおおよその大きさも分かります。

鉄と組み合わせたときの電位差の目安(標準電極電位の差)
トタン:E = (−0.44) − (−0.76) = 0.32 V(亜鉛が陽極)
ブリキ:E = (−0.14) − (−0.44) = 0.30 V(鉄が陽極)
E:電位差[V]。電位の低いほうの金属が陽極になって溶けます。どちらの組み合わせも0.3 V 前後の電池になり、溶ける側が亜鉛か鉄かが逆になるだけです。実際の電位は水質・温度・皮膜で変わるため、数字は向きを判断する目安です。

同じ考え方で、ほかの金属の組み合わせも読めます。陽極で溶けやすい金属が先に溶ける関係は、粗銅の不純物の行き先を決める銅の電解精錬にも出てくる、イオン化傾向のいちばん基本的な使い方です。

現場で困るのは、亜鉛めっき鋼材をステンレスのボルトで締めるような組み合わせです。日建連の鉄骨工事 Q&A は、ステンレス鋼やアルミニウム、めっきのない鋼材と接すると亜鉛が異種金属接触腐食で早く減るおそれがあるとして、同じ材料を使うか、塗装や樹脂で絶縁するよう勧めています。

ステンレスの側から見た異種金属接触腐食やもらい錆は、SUS304が錆びる原因で詳しく扱っています。屋根や外壁のビス、配管の継手を選ぶときは、トタンとブリキで学ぶ電池の向きをそのまま当てはめると判断しやすくなります。

実際の工場では:めっき鋼板のつくり方と規格

亜鉛めっきとスズめっきは、めっきする物の形によって工場も規格も分かれます。鉄骨やボルトのような完成品を1つずつ浸す溶融亜鉛めっき、鋼板のコイルを流しながらめっきする連続ライン、缶の材料をつくる電気錫めっきラインの3つに分けて見ていきます。

溶融亜鉛めっき(JIS H 8641):構造物を丸ごと浸す

溶融亜鉛めっきは、加工や溶接を終えた鋼材を、融点(約420℃)より高い温度で溶かした亜鉛の槽に浸す方法です。鉄と亜鉛が反応して鉄‐亜鉛の合金層ができるため密着がよくはがれにくく、俗に「ドブ漬け」とも呼ばれます。

規格は JIS H 8641 で、2021年12月の改正で品質の決め方が「付着量(g/m²)」から「膜厚(µm)」に変わりました。これに伴い、旧 HDZ 55(付着量550 g/m²以上)は HDZT 77(膜厚77 µm以上)に置き換わりました。

日建連の解説によると、改正の理由は、対応する国際規格 ISO 1461 が膜厚計での測定を主としていることです。いまの膜厚計は精度も十分に高く、現場で簡単に測れるようになったことも挙げられています。

付着量から膜厚への換算(JIS の対応表と同じ考え方)
膜厚[µm] = 付着量[g/m²]めっき皮膜の密度[g/cm³]
(例)5507.2 ≒ 76.4 µm → HDZT 77(77 µm以上)
1 m² の面に厚さ1 µm の膜をつけると体積は1 cm³ なので、密度7.2 g/cm³ の皮膜なら1 µm あたり7.2 g/m² になります。JIS の対応表もめっき皮膜の密度を7.2 g/cm³ として換算しています。

JIS H 8641 は鋼製品や鋼構造物、鋳鍛造品に施す溶融亜鉛めっきを対象とし、コイルのまま連続でめっきする鋼板や鉄線は対象外です。膜厚は HDZT 35 から HDZT 77 まで7段階あり、屋外で長くもたせたい鉄塔や橋の部材ほど厚い区分が選ばれます。

連続ラインの亜鉛めっき鋼板とガルバリウム鋼板

屋根材や自動車の車体に使う亜鉛めっき鋼板は、薄い鋼板のコイルをほどいて連続して亜鉛の槽にくぐらせるか、電気めっきで亜鉛をつけてから再び巻き取ってつくります。日本鉄鋼連盟は製品を次のように分けています。

図4:鋼板に使う主な亜鉛系めっき

溶かした金属にくぐらせるか、電気でつけるかで、めっきの厚さと得意な用途が分かれます。

溶融亜鉛めっき鋼板溶けた亜鉛にくぐらせる。付着量が多く、屋根・外壁などの建材から自動車・電気機器までJIS G 3302
合金めっき鋼板亜鉛にアルミニウムやマグネシウムを加え耐食性を高める。55%アルミニウム‐亜鉛はガルバリウム鋼板の名で知られるJIS G 3321・3323Al 55%/Al 5〜13%・Mg 2〜4%
電気亜鉛めっき鋼板電気で薄く亜鉛をつける。高温に加熱しないので原板の加工性をそのまま生かせ、家電・鋼製家具・自動車部品にJIS G 3313

※日本鉄鋼連盟「亜鉛めっき鋼板」の製品説明によります。どれも上に塗装を重ねた塗装鋼板(JIS G 3312 など)としても使われます。

ガルバリウム鋼板は質量で55%のアルミニウムを含み、アルミニウムの膜が水と酸素を遮る被覆防食と、亜鉛の犠牲防食を組み合わせためっきです。

さらにマグネシウムを加えた合金めっきも広がっており、日本製鉄は自社の新しいめっき鋼板の平面部の耐食性を、同じ付着量の従来の溶融亜鉛めっき鋼板の約10倍と発表しています(2022年)。

一方、ボルトやブラケットのような小物部品は、完成品をめっき工場で電気亜鉛めっきし、クロメートなどの化成処理で白さびを抑えます。部品のめっきの選び方や水素脆性、六価クロムとの関係はめっきの種類と違いで整理しています。

ぶりきとティンフリースチール:缶の材料をつくる

倉庫に並ぶ銀色に光るぶりき(スズめっき鋼板)のコイル

ぶりきの原板は、高炉と転炉でつくった鋼を熱間圧延し、さらに冷間圧延で0.1〜0.6 mm ほどに薄くした鋼板です。日本製鉄のカタログでは、電解清浄と焼なまし、調質圧延で硬さを整えたあと、電気錫めっきラインで表面の酸化膜を除き、電気化学的にスズをつけて光沢やつや消しに仕上げます。

スズの付着量は片面で2.8〜11.2 g/m² の範囲から選び、表と裏で量を変える「差厚めっき」もあります。付着量の少ないものは塗装して使う缶や比較的腐食しにくい用途に、多いものは腐食性の強い中身の缶や内面を塗装しない缶に使われます。

スズの付着量を厚さに直す
2.8 g/m²7.29 g/cm³ ≒ 0.38 µm  11.2 g/m²7.29 g/cm³ ≒ 1.5 µm
7.29 g/cm³ はスズ(白色スズ)の密度。溶融亜鉛めっきの HDZT 77(77 µm以上)と比べると、ぶりきのスズは50分の1〜200分の1ほどの薄さです。傷がつけば鉄がすぐ露出するため、缶では内面塗装と組み合わせて使うのが一般的です。

図5:ぶりきの断面

薄い鋼板の上に、スズと鉄の合金層、スズ層、酸化膜、油膜が重なっています。

油膜(傷を防ぐ)酸化膜(化成処理)スズ層 約0.4〜1.5 µmスズ・鉄合金層鋼板 0.1〜0.6 mm

※厚さの比率は実際とは異なる模式図です。層の構成は日本製鉄のカタログ「ブリキ」によります。

スズを使わない缶の材料もあり、鋼板にクロムめっきを施したティンフリースチール(TFS、JIS G 3315)が代表です。日本製鉄は塗装して使うことを勧めており、塗料の密着のよさを生かして食缶・飲料缶や王冠・キャップ、ペール缶などに使われ、高価なスズの使用量を減らす選択肢です。

白さび・赤さびと亜鉛の耐用年数の考え方

白さびは亜鉛、赤さびは鉄のさび

トタンや溶融亜鉛めっきの表面に出る白い粉は白さびと呼ばれ、亜鉛の酸化物や水酸化物などからできています。日建連の解説は、白さびによる皮膜の消耗はわずかで耐食性にほとんど影響はないとし、乾いた環境に戻ると次第に消えて通常の外観になると説明しています。

白さびが出やすいのは、めっき直後の銀色で活性な表面に、乾きにくい水がたまる場合です。製品を密着して積み重ねたまま雨や結露にあてる、海岸や凍結防止剤で塩分が多いといった条件で起きやすく、保管と輸送の段階で風通しを確保するのが基本の対策です。

注意すべきなのは赤さびのほうで、トタンに赤さびが出るのは、その部分の亜鉛が使い切られて鉄がさび始めた合図です。広い範囲で赤さびが出たら、めっきの寿命が尽きつつあると考えて、補修塗装や部材の交換を検討します。

亜鉛の腐食速度と耐用年数の目安

大気の腐食しやすさは、国際規格 ISO 9223 で C1(とても低い)から CX(極めて高い)までの区分に分けられ、区分ごとに鋼と亜鉛の1年目の腐食量の範囲が決められています。並べると、亜鉛の減り方は鋼より1桁以上小さいことが分かります。

図6:大気の腐食性と亜鉛の腐食速度

同じ環境に置いたとき、亜鉛の1年目の腐食量は炭素鋼のおよそ20〜30分の1です。

C2:0.1〜0.7 µm低い(田園・乾燥地域など)。炭素鋼は1.3〜25 µm
C3:0.7〜2.1 µm中程度(都市・軽い工業地域など)。炭素鋼は25〜50 µm
C4:2.1〜4.2 µm高い(工業地域・海岸近くなど)。炭素鋼は50〜80 µm
C5:4.2〜8.4 µm非常に高い(海塩の多い沿岸・厳しい工業地域)。炭素鋼は80〜200 µm

※ISO 9223:2012 の1年目の腐食量(厚さ換算)。環境の例は目安で、区分は実際の環境の測定や試験片の暴露で決めます。

この腐食速度で亜鉛の厚さを割ると、めっきがなくなるまでの年数を大まかに見積もれます。ここでは HDZT 77 の77 µm を、1年目の腐食速度がずっと続くと置いて計算します。

めっきの耐用年数の粗い目安
耐用年数[年] = めっきの厚さ[µm]亜鉛の腐食速度[µm/年]
C3:772.1 ≒ 37年 〜 770.7 ≒ 110年 → 数十年〜100年規模
C5:778.4 ≒ 9年 〜 774.2 ≒ 18年 → 10〜20年ほど
1年目の腐食速度が一定と置いた単純な計算で、寿命の予測ではありません。2年目以降は皮膜で遅くなることが多い一方、塩分の付着や水たまり、異種金属との接触があると速くなります。

日本製鉄も、亜鉛めっきの大気中の耐用年数は環境で差が大きく、一概に何年とはいえないとしています。塩水噴霧のような促進試験の結果も実際の環境と合わないことが多いため、同じ地域に置かれた構造物の実績や暴露試験のデータで判断するのが確実です。

水の中では条件がさらに変わり、亜鉛は pH 6〜12の水では皮膜で守られますが、酸性や強いアルカリ性の水では急速に溶けます。日本製鉄は、約60℃以上の温水で腐食が急に速くなり、炭酸塩や硝酸塩を含む水では亜鉛と鉄の極性が逆転して鉄が孔食を起こすことがあると注意しています。

日本の生産とリサイクル:亜鉛めっき鋼板・ぶりき・スチール缶

日本鉄鋼連盟の資料では、2010年度の国内の粗鋼生産約1億1,077万トンのうち、約1,265万トン(11%)が亜鉛めっき鋼板になりました。高炉メーカーの製鉄所に連続めっきラインが並び、自動車や建材のメーカーへ出荷されます。

ぶりきも高炉メーカーが一貫してつくる製品で、日本製鉄は自社を国内最大のブリキメーカーとしています。製鉄所ごとの品種や強みの違いは日本製鉄とJFEスチールの比較で、鋼材が商社や加工業者を経て届く流れは鉄鋼・非鉄金属業界の構造で整理しています。

ぶりきやティンフリースチールでつくったスチール缶は、磁石で選別しやすいことから回収が進んでいます。スチール缶リサイクル協会の発表では、2024年度のスチール缶のリサイクル率は94.4%で、14年続けて90%を超えました。

回収した缶は鉄スクラップとして電炉や転炉で溶かされ、再び鉄鋼製品の原料になります。容器の再生材比率やリサイクルのしやすさは欧州で規制が強まっており、輸出品の梱包材への影響はEU包装規則PPWRで解説しています。

トタンとブリキのよくある質問

ガルバリウム鋼板はトタンと何が違いますか?

トタンが亜鉛だけをめっきするのに対し、ガルバリウム鋼板は質量で55%のアルミニウムを含む亜鉛との合金をめっきします。アルミニウムの膜で覆う働きと亜鉛の犠牲防食を組み合わせたもので、屋根や外壁にも使われています。

トタンに白い粉がふいたら交換が必要ですか?

白い粉は亜鉛の白さびで、皮膜の消耗はわずかなため、それだけで交換する必要はありません。交換や補修を考える目安は、亜鉛が使い切られて鉄の赤さびが広がってきたときです。

開けた缶詰をそのまま冷蔵庫で保存してもいいですか?

Codex 委員会の実施規範は、内面を塗装していない缶に食品を残すと、空気に触れてスズが急に溶け出すことがあるとして、清潔なプラスチックやガラスの容器に移して冷蔵するよう勧めています。缶の内側でスズが身代わりになるのは、酸素のない密封状態だからです。

トタン屋根をステンレスのビスで留めてもいいですか?

ステンレスは亜鉛より電位が高いため、雨水でつながると接した部分の亜鉛が早く減るおそれがあります。

亜鉛めっきやガルバリウム鋼板の屋根では、ビスの材質や絶縁の方法を屋根材メーカーの施工要領書で確かめ、指定に従うのが確実です。日建連も、同じ材料を使うか、塗装や樹脂で絶縁することを勧めています。

まとめ

この記事のまとめ
  • トタンは鋼板に亜鉛、ブリキは鋼板にスズをめっきしたもので、鉄を水と酸素から遮る点は同じ
  • 亜鉛は鉄よりイオン化傾向が大きく、傷では Zn → Zn2+ + 2e− で先に溶けて鉄を守る(犠牲防食)。スズは小さいので、傷では鉄が陽極になり腐食が集中する(被覆防食)
  • 傷に強いのはトタン、光沢を長く保つのはブリキ。ただし大気中の犠牲防食は傷の近くまでで、缶の内側ではスズが犠牲陽極になる
  • 溶融亜鉛めっきは JIS H 8641:2021 で膜厚管理(HDZT 77=77 µm以上)、ぶりきは JIS G 3303 でスズ片面2.8〜11.2 g/m²(約0.4〜1.5 µm)
  • 亜鉛の腐食速度は鋼の20〜30分の1ほどで、白さびは問題が小さく、赤さびが出たら亜鉛が尽きた合図。スチール缶のリサイクル率は94.4%(2024年度)

トタンとブリキの違いは、イオン化傾向と電池のしくみという化学の基本が、屋根の寿命や缶詰の安全という製品の性能に直結する例です。鋼材の需要と市況の全体は鉄鋼・非鉄金属業界の市場規模と動向で、材料と表面の技術の全体像は材料技術とはで整理しています。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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