「製造業の働き方改革」と聞くと、多くの方は残業を減らすことや、オフィスでのテレワークを思い浮かべるのではないでしょうか。
実際には、製造業には24時間動く設備を支える交替勤務や、納期や設備トラブルに左右される残業、工場カレンダーに沿った休日など、オフィスとは違う事情があります。そのため、働き方改革の進め方にも製造業ならではの工夫が必要です。
この記事では、製造業の働き方改革とは何かを、労働時間と休暇の現状、交替勤務、残業と上限規制、休日・休暇、製造業ならではの進め方、企業と働く人ができることという順で整理します。
製造業の働き方改革とは

製造業の働き方改革とは、長時間労働を減らし、休みを取りやすくしながら、生産性を保つための取り組みのことです。法律で決められたルールを守ることに加えて、仕事の進め方そのものを見直すことが含まれます。
土台になっているのが、2019年4月から順に施行された働き方改革関連法です。時間外労働の上限規制(中小企業は2020年4月から)や、年5日の年次有給休暇の確実な取得などが、すべての会社に求められるようになりました。
製造業では、これらのルールを現場の事情にどう合わせるかが課題になります。設備の稼働や納期と、働く人の時間と健康をどう両立させるかが、製造業の働き方改革の中心にある問いです。
では、製造業の働き方は今どうなっているのでしょうか。厚生労働省の毎月勤労統計調査(2025年確報、事業所規模5人以上)によると、製造業の月間の総実労働時間は155.5時間、所定外労働時間は13.4時間です。
調査産業計の135.1時間、9.8時間と比べると、製造業は労働時間も残業も長めの産業と言えます。一方で、年次有給休暇の取得率は全体より高く、休みは比較的取りやすい傾向があります。
労働時間は長めですが、有給休暇は比較的取りやすい産業です。
※労働時間は毎月勤労統計調査(2025年確報、全体は調査産業計)、有給休暇は令和7年就労条件総合調査(前年1年間の取得状況)。全体にはパートタイム労働者が多い産業も含まれます。
全体の値には、パートタイムで働く人の多い産業も含まれるため、単純な比較はできません。それでも、製造業ではフルタイムの正社員が多く、残業が生まれやすい仕事の構造があることは押さえておきたいところです。
また、同じ製造業でも、業界や工場の規模、職種によって働き方は大きく違います。統計の平均はあくまで目安として、自分の職場の状況と照らし合わせて見ることが大切です。
交替勤務の現状と課題

製造業の働き方で、ほかの産業と大きく違うのが交替勤務です。設備を長時間動かす工場では、働く人がグループに分かれて、時間帯を交代しながら生産を続けます。
設備をどれだけ長く動かすかによって、交替の組み方が変わります。
※勤務の組み方は工場によって大きく異なります。4班3交替など、休日を組み込んだ方式もあります。
交替勤務が必要な理由
化学プラントや製鉄所、半導体工場のように、設備を止めると再開に時間やコストがかかる工場では、24時間の連続操業が基本です。自動車や部品の工場でも、設備の稼働時間を延ばすために2交替を取る例は多くあります。
化学・樹脂業界などの連続操業の工場では、交替勤務は設備と品質を守るために欠かせない働き方です。そのため、交替勤務をなくすのではなく、負担を減らす方向で改善が進められています。
交替勤務では、次の班への引き継ぎも大切な仕事です。設備の状態や品質の気になる点を確実に伝えることで、夜間のトラブルや不良を防ぎます。
夜勤と健康の管理
夜勤を含む勤務は、睡眠のリズムが乱れやすく、体への負担が大きくなります。健康診断や日々の声かけを通じて、体調の変化に早く気づける職場づくりが欠かせません。
勤務の順番を朝→昼→夜のように前に進める組み方にする、夜勤の連続日数を減らすなど、体への負担を考えたシフトの工夫も行われています。
夜勤明けの運転や、休日の過ごし方など、勤務の外での体調管理も働く人自身の大切な仕事です。睡眠の時間をしっかり確保することが、事故を防ぐことにもつながります。
交替勤務のメリット
交替勤務には、夜勤手当や深夜の割増賃金で収入が増える、平日の昼間に休みが取れるといった面もあります。
役所や病院に行きやすい、通勤の混雑を避けられるなど、日勤だけの働き方にはない良さを感じている人もいます。
自分の生活に合うかどうかは人によって違います。働き方の良し悪しではなく、自分に合うかどうかで考えることが大切です。現場の仕事の中身は製造オペレーターとはで解説しています。
残業の現状と上限規制

製造業の残業は、仕事の量が波のように変わることから生まれやすい面があります。まず、法律で決められた残業の上限を確認しておきます。
大企業は2019年4月、中小企業は2020年4月から適用されています。
※厚生労働省「時間外労働の上限規制」をもとに作成。
残業が生まれやすい場面
製造業で残業が増えやすいのは、受注が集中したとき、設備が故障して生産が遅れたとき、新製品の立ち上げの時期などです。月末や期末に出荷が集中する職場もあります。
つまり、製造業の残業は個人の働き方よりも、生産計画や設備の状態に左右されやすいのが特徴です。そのため、残業を減らすには職場全体の仕組みを変える必要があります。
設備保全の担当者や生産技術の技術者は、トラブル対応で急な残業が発生しやすい職種です。一部の人に負担が偏らないよう、呼び出しの当番制を取るなどの工夫をしている職場もあります。
上限規制で変わったこと
上限規制によって、残業の上限は法律で決められ、違反すると罰則の対象になりました。原則は月45時間・年360時間で、特別な事情がある場合でも、年720時間以内、単月100時間未満などの上限を守る必要があります。
上限規制は、正社員だけでなく、交替勤務の人や技術職など、原則としてすべての働く人に関わるルールです。自分の職場の36協定でどこまで残業が認められているかを知っておくと、働き方を考えるうえで役立ちます。
さらに、2023年4月からは中小企業でも、月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が50%以上に引き上げられました。残業が多いほど会社の負担も重くなるため、残業を前提にした生産計画は見直しを迫られていると言えます。
残業を減らすための工夫
生産管理の部署が、受注の波をならすように計画を組むことや、設備の故障を減らす予防保全を進めることが、残業を減らす基本になります。生産計画の考え方は生産管理とはで解説しています。
技術職や事務職では、会議や書類の作業を見直すことも効果があります。仕事の量そのものを減らさなければ、残業は別の形で残ってしまうからです。
残業を減らすと、残業代が減って手取りが下がるという心配もあります。減った残業代を賞与や手当で還元するなど、働く人が納得できる形を考えることも、改革を続けるためには欠かせません。

休日・休暇の現状

製造業の休日は、工場の稼働日を決めた会社ごとのカレンダーに沿って決まることが多くあります。休日と休暇の現状を見ていきます。
工場カレンダーと長期休暇
多くの工場では、年間の稼働日と休日を「工場カレンダー」として決めています。土日休みを基本にしつつ、祝日に稼働する代わりに、年末年始・ゴールデンウィーク・夏季に長めの連休を設けるのが一般的です。
厚生労働省の令和7年就労条件総合調査では、1企業平均の年間休日総数は112.4日(全産業)です。休日の日数だけでなく、どの時期にまとまって休めるかも、働きやすさを考えるうえで大切なポイントです。
年次有給休暇の取得
2019年4月からは、年10日以上の年次有給休暇が付与される人に対して、会社が年5日を確実に取得させることが義務になりました。
製造業では、工場カレンダーの中に年休の計画取得日を組み込み、全員が同じ日に休む「計画的付与」の仕組みを使う会社もあります。ラインを止める日にまとめて休むことで、生産への影響を抑えられます。
同じ調査では、製造業の年次有給休暇の取得率は72.8%、取得日数は13.7日で、全体の66.9%、12.1日を上回っています。計画的に休みを取る仕組みが整った職場が多いことがうかがえます。
休みやすさの課題
一方で、少人数で回している現場や、特定の人しかできない作業がある職場では、休みが取りにくいという声もあります。休みを取りやすくするには、複数の作業をこなせる人を増やすことが欠かせません。
また、交替勤務の職場では、休みを取る人の穴を埋めるために、ほかの人の残業や休日出勤が増えることもあります。休みを取りやすい人員の余裕をどう確保するかが、多くの工場の悩みです。
製造業ならではの働き方改革の進め方

製造業の働き方改革は、制度を変えるだけでは進みません。設備、仕事の進め方、勤務の制度という3つの面から同時に取り組むのが効果的です。
どれか一つではなく、組み合わせることで効果が出やすくなります。
設備の自動化と予防保全
人が張り付いて行っていた作業をロボットや自動化設備に任せると、夜勤や残業の負担を減らせます。スマートファクトリーの取り組みで設備の状態を見える化し、故障の前に手を打つことも、突発的な残業を減らす効果があります。
無人で動かせる時間帯を増やせれば、夜勤の人数を減らすこともできます。自動化の考え方は人手不足・省人化のページでも紹介しています。
自動化は人手不足への対策でもあり、働き方改革と生産性の向上を同時に進める手段と言えます。
多能工化と仕事の見直し
一人が複数の工程や設備を担当できるようにする多能工化は、休みを取りやすくする基本の取り組みです。特定の人に仕事が集中しないため、急な休みにも対応しやすくなります。
段取り替えの時間を短くする、作業の手順を標準化するなど、日々の改善活動も働き方改革につながります。
現場で働く人自身が「この作業はもっと楽にできる」と気づいて提案できる職場ほど、改革は長続きします。改善提案の制度や小集団活動は、その受け皿として役立ちます。
勤務制度の工夫
設計や生産技術などの技術職、事務職では、フレックスタイム制やテレワークを取り入れる会社も増えています。2019年4月からは、フレックスタイム制の清算期間の上限が1か月から3か月に延びました。
終業から次の始業までに一定の休息時間を確保する勤務間インターバル制度も、2019年4月から導入が会社の努力義務になっています。交替勤務のある工場では、特に意味の大きい制度です。
工場の現場では、テレワークが難しい分、休憩の取り方や勤務の組み方で柔軟さを出す工夫が中心になります。短時間勤務や、育児・介護と両立しやすいシフトを用意する職場もあります。
企業の取り組みと働く人ができること

働き方改革は、会社が制度を整え、働く人がそれを使いこなすことで進みます。それぞれの立場でできることを整理します。
現状を知る、対策を打つ、定着させるの3つの段階に分かれます。
※進め方は会社の規模や職場によって異なります。
企業の取り組み
まず大切なのは、誰が、どの工程で、なぜ残業しているのかを数字でつかむことです。そのうえで、設備・仕事の進め方・制度のどこに手を打つかを決めていきます。
工場の管理職には、生産の目標と働き方のバランスを取る役割が求められます。工場全体を預かる立場については工場長・マネジメントとはで解説しています。
改革は、一度に大きく変えるよりも、一つの職場で試して効果を確かめ、ほかの職場に広げていくほうが進めやすくなります。現場の意見を聞きながら進めることが、定着への近道です。
働く人ができること
自分の担当以外の作業も覚えておくと、休みを取りやすくなり、職場全体の助けにもなります。作業の手順を書き残しておくことも、特定の人に仕事が集中するのを防ぎます。
また、自分の労働時間や有給休暇の残りを把握し、早めに休みの予定を伝えることも大切です。長く働き続けるためのキャリアの考え方は製造業のキャリアパスで解説しています。
困ったときは、上司や労働組合、社内の相談窓口に早めに相談することも大切です。無理をため込まずに声を上げることが、自分と職場の働き方を良くする第一歩になります。
まとめ
- 製造業の働き方改革は、長時間労働を減らし休みを取りやすくしながら、生産性を保つ取り組み
- 製造業の月間の所定外労働時間は13.4時間(2025年)で、全体の9.8時間より長い
- 交替勤務は設備と品質を守るために必要な働き方で、負担を減らす工夫が進んでいる
- 残業の上限は原則月45時間・年360時間で、年次有給休暇の取得率は製造業が72.8%と高め
- 設備の自動化、多能工化、勤務制度の工夫を組み合わせるのが製造業ならではの進め方
工場の安全や健康の守り方は製造業の職場環境と安全衛生で、転職時に確認したい勤務条件は製造業の転職・採用市場の動向で詳しく解説しています。
製造業で働く人のキャリアや働き方については、人・キャリアのページから関連記事もあわせてご覧ください。
出典
- 労働時間:厚生労働省「毎月勤労統計調査 2025(令和7)年分結果確報」(第2表 月間実労働時間及び出勤日数、事業所規模5人以上)
- 年間休日・年次有給休暇:厚生労働省「令和7年就労条件総合調査の概況」
- 時間外労働の上限規制:厚生労働省 働き方改革特設サイト「時間外労働の上限規制」
- 働き方改革関連法の内容と施行時期:厚生労働省「働き方改革関連法のあらまし(改正労働基準法編)」

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