個人ばく露測定の義務化とは?2026年10月から工場で変わる測定のルール

襟元にサンプラー、腰にポンプを付けて化学プラントに立つ作業者

個人ばく露測定は、作業者の体に小型のサンプラー(空気を採る器具)を付け、その人が実際に吸い込んでいる化学物質の濃度を測る方法です。2026年10月1日から、この測定を誰が、どの方法で行うかのルールが変わりました。

これまで法律上の位置づけがあいまいだった個人ばく露測定は、職場の空気の汚れを調べる「作業環境測定」の一部になりました。

測定が必要になる主な場面は、第三管理区分の作業場、屋内の溶接作業場、化学物質のリスクアセスメント(危険性の調査)です。第三管理区分とは、空気の汚れ具合による3段階の区分のうち、対策が最も必要な区分を指します。

こうした場面では、講習を修了して登録を受けた作業環境測定士(測定の専門資格を持つ人)が測る形になりました。

この記事では、個人ばく露測定とは何か、10月から何が変わったのか、自社が対象になるのはどんな場面かを取り上げます。

あわせて、誰が測れるのか、溶接ヒュームと濃度基準値ではどう扱われるのか、工場は何から準備すればよいのかを、よくある疑問に答える形で整理します。

目次

個人ばく露測定とは?作業環境測定と何が違う?

個人ばく露測定とは、作業者の身体に小型のサンプラーを付けて、その人が実際に吸い込んでいる空気中の化学物質の濃度を測る方法です。

腰のベルトに手のひら大のポンプを付け、チューブでつないだ捕集器具(ろ紙のカセットや活性炭の管など)を襟元の呼吸域に留めて、作業時間を通して空気を採ります。

これに対して、工場で昔から行われてきた作業環境測定(A測定・B測定)は、作業場の中に測定点を決めて空気を採る「場」の測定です。

作業場全体の汚れ具合を評価し、第一管理区分から第三管理区分に区分して、局所排気装置の改善など設備面の対策につなげるのが目的です。

同じ作業場でも、発生源の近くで前かがみになる人と、少し離れて監視する人とでは、吸い込む量が大きく変わります。

場の測定は「作業場がきれいか」を、個人ばく露測定は「その人がどれだけ吸っているか」を見ると考えると、使い分けがわかりやすくなります。

個人ばく露測定の結果は、呼吸用保護具の性能を選ぶ根拠や、ばく露の程度が基準を下回っているかどうかの確認に使われます。

図1:作業環境測定(場の測定)と個人ばく露測定の違い

同じ作業場でも、何を評価するかによって測り方が変わります。

作業環境測定(A・B測定)
個人ばく露測定
評価するもの
作業場という「場」の空気の汚れ具合
一人ひとりの作業者が吸い込む濃度
サンプラーの位置
作業場内に決めた測定点(床から一定の高さ)
作業者の身体。採取口は襟元などの呼吸域
測る時間
測定点ごとに一定時間
原則として作業に従事する時間を通して
結果の表し方
第一〜第三管理区分
時間加重平均濃度。基準値や要求防護係数と比べる
主な使い道
局所排気装置など設備・作業場の改善
呼吸用保護具の選定、基準値以下かどうかの確認

※作業環境測定には、作業者にサンプラーを付けて場を評価する個人サンプリング法(C・D測定)もあります。これは場の評価の手法であり、個人ばく露測定とは目的が異なります。

2026年10月1日から何が変わった?

変更の根拠は、2025年5月14日に公布された「労働安全衛生法及び作業環境測定法の一部を改正する法律」です。この法律は段階的に施行されており、個人ばく露測定に関する部分が2026年10月1日に施行されました。

法律上の位置づけが「措置」から「作業環境測定」へ

改正前の個人ばく露測定は、作業環境測定ではありませんでした。健康障害を防ぐための措置(安衛法第22条)や、化学物質のリスクアセスメント(同第57条の3)の一部として行われていました。

第三管理区分の作業場や溶接ヒュームについては告示で測り方が決まっていた一方、リスクアセスメントの中で行う測定には、方法も実施者の要件も定めがありませんでした。

改正法では作業環境測定の定義を「デザイン、サンプリング及び分析」としました。そのうえで、個人ばく露測定を「労働者のばく露の程度を把握するために行う作業環境測定」として明確に位置づけました。

あわせて安衛法に第65条の3が新設され、どの場面で測定が必要かが条文に書き込まれています。

実施者の要件と測定基準が決まった

作業環境測定法の「指定作業場」に個人ばく露測定を行う作業場が加わったことで、こうした作業場の測定は作業環境測定士に行わせることが必要になりました。

さらに、デザインとサンプリングを担えるのは「個人ばく露測定に係るデザイン及びサンプリング」の登録を受けた作業環境測定士に限られます。測り方も、国が定める作業環境測定基準に従うことになりました。

罰則の対象になる測定もある

新しい第65条の3のうち、第三管理区分の作業場と溶接ヒュームに関する第1項の測定には、安衛法第119条の罰則が適用されます。

リスクアセスメントに伴う第3項の測定は「必要に応じて」行うものとされていますが、行う場合は同じく測定基準と実施者の要件に従う必要があります。

図2:個人ばく露測定の位置づけの変化

測ること自体より、「誰が・どの基準で測るか」が明確になりました。

改正前
  • 安衛法第22条の措置、第57条の3のリスクアセスメントの一部として実施
  • 第三管理区分・溶接ヒュームは告示で方法を規定
  • リスクアセスメントの測定は方法・実施者の定めなし
  • 精度のばらつきが課題
2026年
10月1日
改正後
  • 作業環境測定の一部として定義(安衛法第2条・作環法第2条)
  • 測定が必要な場面を安衛法第65条の3で規定
  • デザイン・サンプリングは登録を受けた作業環境測定士
  • 作業環境測定基準に従って測定

※第三管理区分と溶接ヒュームの測定方法は、実質的には従来と同じと説明されています。

自社は対象になる?測定が必要になる3つの場面

水洗式の塗装ブースで金属部品に吹き付け塗装をする作業者

改正後に「登録を受けた作業環境測定士による個人ばく露測定」が求められるのは、大きく3つの場面です。逆に言えば、この3つに当てはまらなければ、10月を境に新しい測定が突然増えるわけではありません。

図3:個人ばく露測定が必要になる3つの場面

いずれも屋内の作業場が対象です。

CASE 1改善が難しい第三管理区分有機溶剤・鉛・特定化学物質・粉じんの作業場で、専門家が改善困難と判断した場合。保護具選定のために測定し、その後6月以内ごとに1回
CASE 2屋内で続ける金属アーク溶接溶接の方法を新たに採用・変更するときに溶接ヒュームの濃度を測定。結果で換気や保護具を決める
CASE 3リスクアセスメント対象物ばく露の程度を把握するための測定や、濃度基準値を超えるおそれがある作業の確認測定など
CASE 1・2は測定の実施そのものが義務(罰則あり)。CASE 3は「必要に応じて」行う測定だが、行うなら登録を受けた作業環境測定士が測定基準に従って実施する。

改善が難しい第三管理区分の作業場

有機溶剤、鉛、特定化学物質、粉じんを扱う作業場で、作業環境測定の結果が第三管理区分になったケースです。そのうえで、外部の作業環境管理専門家が「第一・第二管理区分にするのは難しい」と判断した場合が該当します。

この場合、呼吸用保護具を選ぶために作業者に試料採取機器を付けて測定し、その後も6月以内ごとに1回、定期に測定します。

塗装、洗浄、めっきなど、設備の構造上どうしても局所排気が効きにくい工程で起こりやすい場面です。改正によって、この測定は安衛法第65条の3第1項の作業環境測定になりました。

個人サンプリング法(C・D測定)の手法で測る方法も残されていますが、どちらの方法でも、登録を受けた作業環境測定士に実施させることが求められます。

金属アーク溶接を屋内で続けている作業場

溶接ヒュームは2021年4月から特定化学物質(管理第2類物質)として規制されています。金属アーク溶接等の作業を継続して行う屋内作業場では、溶接方法の採用や変更のたびに濃度を測る決まりがあります。

この測定も第65条の3第1項の作業環境測定に位置づけ直されました。詳しい流れは後の章で説明します。

リスクアセスメント対象物の個人ばく露測定

化学物質の自律的管理のもとで、事業者は使用するリスクアセスメント対象物のリスクを見積もり、ばく露を減らす措置をとる必要があります。その過程で、屋内作業場で個人ばく露測定を行う場合が第3項の対象です。

厚生労働省の施行通達では、次の3つが含まれるとしています。

  • 危険性・有害性を特定し、ばく露の程度を把握するために個人ばく露測定を行う場合
  • 濃度基準値がある物質で、基準値を超えるおそれのある作業場で個人ばく露測定(確認測定)を行う場合
  • 濃度基準値がない物質でも、リスクが一定以上で、ばく露を正確に評価する必要がある場合

化学物質を扱う現場の全体像は、化学業界の企業の種類と仕事の流れもあわせて読むとイメージしやすくなります。

対象にならない測定

通達では、一定の測定精度が求められない簡易的・予備的な測定は、第65条の3の作業環境測定に含まれないと整理されています。リスクを大まかにつかむための検知管やリアルタイムモニターでの確認、数理モデルによる推計は、これまでどおり社内で行えます。

誰が測定できる?デザイン・サンプリング・分析の分担

作業台に並べた個人サンプリング用ポンプと捕集器具

個人ばく露測定は、測定の計画を立てる「デザイン」、現場で空気を採る「サンプリング」、持ち帰った試料を調べる「分析」の3段階に分かれます。改正では、この段階ごとに担える人が決められました。

図4:個人ばく露測定の3段階と担い手

計画と試料の管理は測定士、現場の装着は補助者も担えます。

01 デザイン測定の計画対象の作業と作業者、測定時間、サンプラーやポンプの種類・流量を決める。担い手は登録を受けた作業環境測定士
02 サンプリング現場での試料採取登録を受けた作業環境測定士が実施。測定士が書面などで方法を指定すれば、サンプリング補助者講習の修了者が補助できる
03 分析試料の分析作業場の種類や分析方法に応じた登録を受けた第一種作業環境測定士。一級化学分析技能士が補助できる場合もある
社内に登録を受けた測定士がいないときは、登録を受けた作業環境測定機関などに委託する。

デザインとサンプリングは「登録」を受けた作業環境測定士

作業環境測定士であっても、それだけで個人ばく露測定のデザインとサンプリングができるわけではありません。

個人ばく露測定講習(デザイン等講習)を修了し、作業環境測定士登録証を書き換えて「個人ばく露測定に係るデザイン及びサンプリング」の登録を受ける必要があります。

登録証の書き換えは2026年8月1日から始まっており、10月1日以降は講習の修了と書き換えが済んでいないと測定を実施できません。

中央労働災害防止協会の案内によると、デザイン等講習は9時間の講習と修了試験で構成されます。日本作業環境測定協会の講習の受講料は一般価格44,000円(税込、テキスト代別)です。

測定機関に勤める測定士だけでなく、自社で測定士を抱えるメーカーも、この講習を受けた人がいるかどうかを確認しておく必要があります。

サンプリング補助者は社内の人でもなれる

現場でポンプを付け、作業中にチューブが外れていないかを見守り、終わったら外して保管する作業は、サンプリング補助者講習の修了者が補助できます。

講習は学科4時間30分と実技1時間30分に修了試験を加えた内容で、中央労働災害防止協会は受講資格に制限がないと案内しています。

補助者は、測定士がサンプリングごとに指定した方法に沿って動くのが前提です。施行通達には「サンプリング方法指定書」の標準様式が示されており、主に次の内容を書面で指示します。

  • 作業場の名称
  • 対象の作業
  • サンプリング時間
  • 測定対象者
  • サンプラーとポンプの型式・流量
  • 終了後の保管方法 など

試料の回収や分析機関への送付は、方法を指定した測定士が行います。

分析は誰が行うか

第三管理区分と溶接ヒュームの測定では、分析は作業場の種類に応じた登録を受けた第一種作業環境測定士が行います。

社内に一級化学分析技能士がいる場合は、測定士が分析方法を指定したうえで、自社の事業場で採取した試料の分析を補助させることができます。

リスクアセスメントに伴う測定の分析も、2026年7月31日の告示(令和8年厚生労働省告示第292号)で担い手が定められました。分析方法に応じた作業場の種類の登録を受けた第一種作業環境測定士などが行います。

オキュペイショナルハイジニストの扱い

日本作業環境測定協会が認定するオキュペイショナルハイジニスト(職場の有害要因を評価・管理する専門家)は、講習なしでデザインとサンプリングの登録ができます。国際的な認証機関が認定する同等の資格者も同様です。

作業環境測定士試験に合格していない場合でも、「個人ばく露測定のデザイン及びサンプリングに限り行える第二種作業環境測定士」として登録を受ける道が新設されました。

図5:個人ばく露測定に関わる講習・資格

どこまで自社で担うかによって、必要な講習が変わります。

個人ばく露測定講習(デザイン等講習)
デザイン・サンプリング作業環境測定士(第一種・第二種)が受講。修了後に登録証を書き換えて測定を担える
サンプリング補助者講習
サンプリングの補助学科4.5時間+実技1.5時間+修了試験。測定士の指定どおりに装着・監視・取り外しを行う
オキュペイショナルハイジニスト等
デザイン・サンプリング講習なしで登録が可能。測定士試験未合格なら、デザイン・サンプリングに限る第二種として登録
一級化学分析技能士
分析の補助自社の事業場で採取した試料について、測定士が指定した方法で分析を補助できる

※改正前の旧デザイン等講習・旧サンプリング講習の修了者は、経過措置により新しい講習の修了者とみなされます。

溶接ヒュームの測定はどう進める?

局所排気のフードを近づけてアーク溶接をする作業者

溶接ヒュームは、アーク溶接の熱で金属が蒸気になり、空気中で冷えて固まった0.1〜1マイクロメートル程度の微粒子です。

国際がん研究機関(IARC)がヒトに対する発がん性があると分類しているほか、含まれるマンガンによる神経機能障害のおそれがあります。

製造業の現場では、製缶、架台、建機部品など溶接を含む加工工程を屋内で毎日行う工場が少なくありません。こうした工場では、溶接方法を新たに採用・変更するときに、次の流れで対応します。

図6:屋内で溶接を続ける作業場の測定と対策の流れ

測定の結果が、換気の見直しと保護具の選定につながります。

① 溶接ヒュームの濃度を測定作業者の呼吸域(溶接面の内側)にサンプラーを付け、溶接に従事する全時間を測定
マンガンとして0.05mg/㎥以上など
② 換気風量の増加などの措置溶接方法・材料の見直し、集じん装置、送風なども含む
効果の確認
③ 再度、濃度を測定措置の効果を個人ばく露測定で確かめる
結果に応じて
④ 保護具を選ぶマンガン濃度の最大値÷0.05で要求防護係数を出し、上回る保護具を選ぶ
⑤ フィットテスト面体付きの保護具は1年以内ごとに1回
記録の保存その作業方法を用いなくなった日から3年間

※厚生労働省のリーフレットをもとに作成。2026年10月以降、①③の測定は登録を受けた作業環境測定士が作業環境測定基準に従って行います。

測定のタイミング

測定が必要になるのは、溶接の方法を新たに採用するときと、変更しようとするときです。

厚生労働省のリーフレットでは、変更には溶接方法そのものの変更が含まれるとしています。さらに、溶接材料や母材、作業場所を変えることで溶接ヒュームの濃度に大きな影響がある場合も含みます。

新しい溶接機を入れる、ワイヤを替える、ラインを移設するといった場面は、測定が必要かどうかを生産技術と安全衛生の担当が一緒に確認しておくと漏れを防げます。

測定の方法

試料は、ばく露がほぼ均一と見込まれる作業ごとに2人以上の作業者にサンプラーを付けて採ります。採取口は溶接面の内側になるように留意し、採取時間は溶接に従事する全時間で、短縮はできません。

分粒装置を使うろ過捕集で粒子を集め、原子吸光分析などでマンガンの量を測ります。

何が変わり、何が変わらないか

施行通達は、溶接ヒュームの測定方法について「実質的な変更はない」と説明しています。

変わったのは、測定が作業環境測定として扱われることです。デザインとサンプリングは登録を受けた作業環境測定士が、分析は作業場の種類に応じた登録を受けた第一種作業環境測定士が担います。

これまで測定機関に依頼していた工場は、依頼先が10月以降の登録を済ませているかを確認しておくと安心です。

濃度基準値と確認測定はどう関係する?

3つ目の場面であるリスクアセスメントの中でも、特に現場への影響が大きいのが濃度基準値と確認測定です。

濃度基準値とは

濃度基準値は、厚生労働大臣が物質ごとに定めた「屋内作業場で労働者がばく露される程度の上限」です。

1日8時間の時間加重平均で比べる八時間濃度基準値と、濃度が最も高くなる15分間の平均で比べる短時間濃度基準値があります。

事業者は、濃度基準値が設定された物質について、ばく露の程度を基準値以下にしなければなりません。

厚生労働省が公表している一覧(2025年10月8日現在)には、270の物質(物質群を含む)が掲載されています。このうち79は、2026年10月1日から適用される物質です。

さらに2026年8月31日の告示(令和8年厚生労働省告示第332号)で48物質が追加され、2027年10月1日から適用されます。

使っている塗料や洗浄剤、接着剤のSDS(安全データシート)で成分を確かめ、一覧に載っているかを照合するのが出発点になります。

確認測定の対象者と頻度

「技術上の指針」では、リスクの見積りの結果、作業者の呼吸域の濃度が八時間濃度基準値の2分の1程度を超えると評価された場合に、確認測定を行うとしています。

測る相手は、ばく露が最も高いと想定される作業で、最も高いばく露を受ける作業者(最大ばく露労働者)です。

図7:八時間濃度基準値との比較と求められる対応

推定したばく露の程度によって、確認測定の要否と頻度が変わります。

基準値の1/2程度以下確認測定は求められない。リスクアセスメントとばく露低減措置は継続
1/2程度〜基準値以下確認測定を実施。その後は濃度に応じた頻度で行うことが望ましい
基準値を超えるばく露低減措置を講じ、少なくとも6月に1回確認測定。保護具は要求防護係数から選ぶ
低い八時間濃度基準値の1/2基準値

※「化学物質による健康障害防止のための濃度の基準の適用等に関する技術上の指針」をもとに作成。対策は代替、工学的対策、管理的対策、保護具の順で検討します。

最初の確認測定は、呼吸用保護具の要求防護係数を出すために作業者の呼吸域で測る必要があります。

一方、その後の定期的な確認は、ばく露状況に大きな変動がないことを見るのが目的のため、定点の連続モニタリングや場の測定で代えることも認められています。

センサー・計測の仕組みを活用した常時監視は、測定費用を抑える手段にもなります。

測定の外注と社内の分担

確認測定が必要な作業が見つかった場合、多くの工場では外部の作業環境測定機関にデザインから分析までを任せる形が現実的です。

一方で、測定のたびに作業者の段取りを組み、当日の作業内容を記録し、結果を保護具の選定や設備改善に反映するのは社内の仕事です。

化学物質管理者や保護具着用管理責任者が測定機関の窓口になり、結果の読み方を理解しておくことが、測定を「やっただけ」で終わらせないポイントです。

工場は何から準備すればいい?

保護具保管庫に並ぶ半面形の防じん・防毒マスク

施行後に慌てないためには、測定が必要な作業の洗い出しから始めて、誰に頼むかを決め、当日の段取りと結果の使い道まで決めておくことが大切です。

図8:個人ばく露測定に備える5つのステップ

最初の2つは、どの規模の工場でも今すぐ着手できます。

STEP 1対象作業の洗い出し第三管理区分の作業場、屋内の溶接、濃度基準値物質を使う作業をリストにする
STEP 2自社か外部かを決める登録を受けた測定士が社内にいるか確認し、いなければ委託先を選ぶ
STEP 3講習と登録自社で担うなら、デザイン等講習と登録証の書き換え、補助者講習の受講を計画する
STEP 4当日の段取り対象者の勤務、作業内容、休憩時間を確認し、通常どおりの作業で測れる日を選ぶ
STEP 5結果の活用と記録保護具の選定、換気や作業方法の改善に反映し、記録を保存する

STEP 1・2:対象作業を洗い出し、依頼先を決める

まず、次の作業・場所を一覧にします。

  • 作業環境測定の結果が第三管理区分になっている作業場
  • 屋内で溶接を続けている場所
  • 濃度基準値のある物質を使う作業

そのうえで、社内の作業環境測定士が「個人ばく露測定に係るデザイン及びサンプリング」の登録を受けているかを確認します。いなければ、登録を済ませた作業環境測定機関に早めに相談するのが確実です。

STEP 3:講習の計画は早めに

厚生労働省のリーフレットでは、講習は各回最大50名の定員で、施行日前後は大変混み合うと案内されています。自社で測定を担う方針なら、測定士のデザイン等講習と、現場の担当者のサンプリング補助者講習を、年間の教育計画に組み込んでおきましょう。

STEP 4・5:普段どおりの作業で測り、結果を使う

個人ばく露測定は、ふだんの作業でどれだけ吸い込んでいるかを見るための測定です。測定の日だけ換気を強めたり作業量を減らしたりすると、結果が実態より低く出てしまいます。

測定中に起きたこと(設備の停止、作業の中断など)は記録しておき、結果の解釈に使います。

結果が出たら、保護具の等級を見直すのか、局所排気装置を改善するのか、物質を置き換えるのかを決めます。設備投資の判断が絡む場合は、工場長の責任範囲と管理するKPIの中に安全衛生の指標を位置づけておくと、予算化しやすくなります。

現場からよく出る疑問

最後に、安全衛生担当者や現場の管理者から出やすい疑問をまとめます。

簡易測定や検知管はもう使えない?

使えます。通達では、一定の測定精度が求められない簡易的・予備的な測定は、第65条の3の作業環境測定に含まれないとしています。

リスクの大まかな把握や、日常の変化の確認には引き続き活用できます。ただし、保護具の選定や濃度基準値との比較に使う確認測定は、登録を受けた作業環境測定士による測定が必要です。

10月以降に講習が間に合わない場合は?

自社の測定士が登録を受けるまでの間は、登録を受けた作業環境測定機関などに委託します。省令でも、自社の測定士で実施できないときは、登録を受けた作業環境測定機関などに委託することとされています。

外部の測定機関に頼めば、社内は何もしなくてよい?

そうではありません。測定の対象作業を決めるのに必要な情報(使用物質、作業時間、作業者)を渡すのは会社側です。結果に基づいて換気の改善や保護具の選定を行い、作業者に正しく着用させる責任も事業者にあります。

屋外や出張先での溶接も対象?

溶接ヒュームの濃度測定が求められるのは、金属アーク溶接等の作業を継続して行う屋内作業場です。厚生労働省のリーフレットでは、建築中の建物内部などで同じ場所で繰り返し行わない溶接は含まれないとしています。

ただし屋外や毎回異なる場所での溶接でも、有効な呼吸用保護具の使用などの措置は必要です。

まとめ

この記事のまとめ
  • 2026年10月1日から、個人ばく露測定は作業環境測定の一部として位置づけられた
  • 対象は、改善困難な第三管理区分、屋内で続ける溶接、リスクアセスメント対象物の個人ばく露測定の3場面
  • デザインとサンプリングは、講習を修了し登録を受けた作業環境測定士が担う
  • サンプリング補助者講習の修了者は、測定士の指定に沿って現場の装着・監視を補助できる
  • まず対象作業を洗い出し、自社で担うか登録済みの測定機関に委託するかを決める

今回の改正は、測定の件数を一律に増やすものではなく、すでに必要だった測定の精度をそろえるための見直しです。

関連する職種としては、工場の設備改善を担う生産技術や、日々の設備点検を担う設備保全が、換気装置や作業方法の改善でこの取り組みに深く関わります。

出典

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プラント機器メーカーとプラントメーカーで約10年、設備の提案・設計・試運転に携わったのち、Webマーケターに転身。現在はBtoB製造業専門のWebコンサルタントとして、メーカーの情報発信を支援しています。エネルギー管理士/第三種電気主任技術者。工業技術ブログを2017年から運営(500本以上執筆)、YouTube登録者約2万人、Xフォロワー約1万人。

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