「鉄鋼・非鉄金属業界の主要企業」と聞くと、多くの方は日本製鉄やJFEスチールといった高炉メーカーを思い浮かべるのではないでしょうか。
実際には、売上高の上位には電線や非鉄製錬、アルミ圧延の会社も並び、事業の中身も規模も大きく異なります。さらに統合や海外企業の買収によって、業界の勢力図はこの20年あまりで大きく塗り替えられてきました。
この記事では、鉄鋼・非鉄金属業界の主要企業を、売上高ランキング、分野別の顔ぶれ、各社の特徴と強み、海外大手との比較、再編の動き、企業を見るときのポイントという順で整理します。
鉄鋼・非鉄金属業界の売上高ランキング

まずは、鉄鋼・非鉄金属の主な上場メーカーを、2026年3月期の連結売上高で並べてみます。
首位の日本製鉄が、2位以下を大きく引き離しています。
※連結売上高(IFRS適用企業は売上収益)。各社の決算データ(ユーレット掲載の有価証券報告書等の数値、住友電気工業は同社IR)から作成。上場メーカーが対象で、商社や非上場企業は含みません。
日本製鉄は2026年3月期に売上高が初めて10兆円を超え、2位の住友電気工業のほぼ2倍の規模になりました。高炉3社のうちJFEホールディングスが3位、神戸製鋼所が4位に入ります。
ただし、このランキングを見るときは、各社の事業範囲の違いに注意が必要です。住友電気工業は売上高の半分以上を自動車関連事業が占め、神戸製鋼所は機械や電力の事業も持っています。売上高の大きさが、そのまま鉄や銅の生産規模を表すわけではないと言えます。
前の期と比べると、動きは会社によって分かれました。日本製鉄は2025年3月期の8兆6,955億円から大きく増えた一方、JFEホールディングスは4兆8,596億円から、神戸製鋼所は2兆5,550億円からそれぞれ減っています。反対に古河電気工業は1兆2,018億円から、UACJは9,988億円から増えました(各社の決算データによる)。
鉄鋼大手が国内の需要減に直面する一方で、電線やアルミの会社は売上を伸ばしています。同じ業界でも、どの分野にいるかで業績の流れが違うことがランキングの推移からも読み取れます。
分野別の主要企業

「鉄鋼・非鉄金属業界とは」の記事で紹介した企業の分類ごとに、代表的な企業を整理すると次のようになります。
同じ業界でも、分野ごとに顔ぶれと強みが分かれます。
※複数の分野にまたがる企業も多く、分類は目安です。
高炉は3社に集約されている一方、電炉や特殊鋼、電線の分野では、中堅規模の企業が得意な製品で存在感を持っています。分野によって、上位の顔ぶれがまったく異なるのがこの業界の特徴です。
規模の目安として、特殊鋼大手の大同特殊鋼の2026年3月期の売上高は5,781億円、電炉大手の東京製鐵は2,681億円でした。高炉や電線の大手と比べると小さく見えますが、それぞれの分野では国内の上位に位置する企業です。
主要企業の特徴と強み

ここからは、売上高の上位に入る代表的な企業について、事業の中身と強みを見ていきます。
日本製鉄
日本製鉄は、国内最大の鉄鋼メーカーです。2012年に新日本製鐵と住友金属工業が合併して新日鐵住金となり、2019年に現在の社名に変わりました。世界鉄鋼協会(worldsteel)の集計では、2024年の粗鋼生産量が4,364万トンで世界4位です。
2025年6月には、米国の大手鉄鋼メーカーであるUSスチールの買収を完了しました。2026年3月期の売上収益は10兆632億円に達し、国内中心から世界で生産する企業へと姿を変えつつあります。
JFEホールディングス
JFEホールディングスは、2002年にNKKと川崎製鉄が経営統合して生まれました。中核のJFEスチールのほか、エンジニアリング事業と商社事業を傘下に持ち、2026年3月期の売上収益は4兆5,393億円です。
worldsteelの2024年の集計では、粗鋼生産量2,353万トンで世界14位に入ります。倉敷地区の高炉1基を休止して大型電炉を導入する方針を2022年に発表するなど、電炉への転換に踏み出している点も注目されます。
神戸製鋼所
神戸製鋼所は、素材、機械、電力を3本柱とする複合経営が特徴です。鉄鋼のほかアルミや銅、溶接材料を手がけ、圧縮機や建設機械などの機械事業、発電所から電力を供給する電力事業も持っています。
大手の高炉メーカーの中では、鉄鋼事業の比率が最も低いとされます。2026年3月期の売上高は2兆4,366億円で、自動車の弁ばねに使う線材などで高いシェアを持つ製品もあります。
住友電気工業
住友電気工業は、電線から出発し、自動車用のワイヤーハーネスや光ファイバー、電子部品まで事業を広げた会社です。2026年3月期の売上高は5兆1,102億円、営業利益は4,182億円でした。
同期の売上高のうち国内は1兆9,012億円で、海外が約6割を占めます(同社IRの数値から算出)。事業別では自動車関連が2兆9,372億円と最も大きく、非鉄金属業界の中でも自動車業界との結びつきが特に強い会社です。
住友金属鉱山
住友金属鉱山は、資源開発から製錬、材料の生産までを一貫して手がける非鉄金属メーカーです。国内最大の金鉱山である菱刈鉱山を持ち、米国やペルー、チリの銅鉱山にも権益を持っています。
電気自動車などに使う電池の正極材料も手がけており、国内で唯一電気ニッケルを供給する企業としても知られます。2026年3月期の売上高は1兆7,416億円でした。
UACJ
UACJは、2013年10月に古河スカイと住友軽金属工業が経営統合して発足したアルミニウムの圧延メーカーです。アルミ板の分野では年間100万トンを超える生産能力を持つ国内最大手です。
タイや米国にも板の生産拠点を持ち、自動車部品向けの押出材や、リチウムイオン電池などに使う箔も手がけています。2026年3月期の売上高は1兆1,817億円で、海外拠点を持つ加工型の非鉄メーカーの代表と言えます。
フジクラ
フジクラは、光ファイバーや光ケーブル、電子部品、電力ケーブルなどを手がける電線メーカーです。光ファイバーをつなぐ融着接続機では世界トップクラスとされます。
業績の伸びも目立ち、売上高は2022年3月期の6,704億円から2026年3月期には1兆1,824億円に増えました。同期の純利益は1,572億円で、非鉄金属業界の中でも利益率の高さが際立つ会社です。

海外の主要企業との比較

世界の鉄鋼業界では、中国企業が規模で大きく先行しています。worldsteelの2024年の集計をもとに、日本の大手と海外の主要企業を比べると次のようになります。
規模では中国勢が先行し、日本勢は技術で競っています。
※出典:worldsteelの2024年粗鋼生産ランキング(Wikipedia「List of steel producers」掲載値)。日本製鉄の数値はUSスチール買収前。
2位はルクセンブルクに本社を置くアルセロール・ミタルで6,500万トンです。上位15社のうち中国企業が9社を占め、世界の鉄鋼は中国勢の存在感が圧倒的と言えます。
一方で日本勢は、自動車向けの超高強度鋼板など、高い技術が求められる分野で差をつけているとされます。規模で競うのではなく、技術と品質で選ばれる立ち位置が、日本の鉄鋼メーカーの基本戦略です。
非鉄金属では、海外の鉱山から原料を確保する力が競争力を左右します。住友金属鉱山が米国やペルー、チリの銅鉱山に権益を持つように、日本の製錬会社は海外の資源にも投資しながら、世界の資源会社と原料を取り合っています。
再編・M&Aの動き

現在の勢力図は、2000年代以降の大型統合と、近年の事業の組み替えによって形づくられてきました。主な動きを年表で整理します。
国内の統合、再編の広がり、海外への展開の3つの段階に分かれます。
※年は統合・社名変更・上場などが実施された時点。
2000年代から2010年代の統合で、高炉メーカーは現在の3社体制になりました。アルミ圧延でも、UACJの誕生によって国内最大手が生まれています。
2020年代に入ると、日立製作所の傘下だった日立金属がファンド連合に買収されてプロテリアルとなり、JX金属はENEOSホールディングスの完全子会社から上場企業へと変わりました。親会社からの独立や上場で、成長分野に集中する動きが広がっています。
統合のあとには、設備の集約も続いています。JFEスチールは東日本製鉄所京浜地区の高炉1基を2023年度に休止すると2020年に発表しました。再編は社名や資本の変化だけでなく、働く拠点の見直しにもつながる点を押さえておきたいところです。
就職・転職で企業を見るときのポイント

売上高のランキングは、会社の規模をつかむ入口にすぎません。鉄鋼・非鉄金属の会社を比べるときは、次の点もあわせて確認したいところです。
売上高と並べて確認しておきたい点です。
いずれも、各社の決算短信や有価証券報告書、IRサイトの資料で確認できます。数字を比べるときは、決算期と会計基準がそろっているかにも気をつけたいところです。とくに素材の会社は年による変動が大きいため、同じ期どうしで比べることが欠かせません。
利益率とその推移を見る
素材の会社の利益は、市況によって大きく振れます。日本製鉄の純利益は、2023年3月期の約6,900億円から2026年3月期には約170億円まで減りました。買収や設備の再編に伴う損益も含まれるため、1年分だけで判断するのは危険です。
少なくとも3〜5年分の推移を見て、好不況をならした利益水準をつかむのがおすすめです。住友電気工業の営業利益率は2026年3月期に約8.2%と、素材の業界の中では高めの水準でした(同社IRの数値から算出)。
海外比率を見る
海外の売上や生産拠点が多い会社ほど、若いうちから海外拠点の立ち上げや技術支援に関わるチャンスがあります。住友電気工業のように、売上高の約6割を海外が占める会社もあります。
一方、国内中心の会社でも、輸出の比率が高ければ為替や海外市況の影響を受けます。海外との関わり方は、決算資料の地域別の売上で確認できます。
事業の集中度を見る
鉄鋼専業に近い会社は、鉄鋼の市況がそのまま業績に表れます。神戸製鋼所のように機械や電力を持つ会社や、住友電気工業のように自動車関連が中心の会社では、景気の影響の受け方が異なります。
どの事業で稼いでいるかによって、配属先の選択肢や求められる知識も変わります。セグメント別の売上と利益を確認し、自分が関わりたい分野がどれくらいの比重を持つかを見ておくと安心です。
まとめ
- 2026年3月期の売上高は日本製鉄が10兆632億円で首位、住友電気工業、JFEホールディングスが続く
- 高炉は3社に集約され、電炉・特殊鋼・非鉄・電線では分野ごとに顔ぶれが分かれる
- 世界の鉄鋼では中国勢が規模で先行し、日本勢は技術と品質で競っている
- JFE・新日鐵住金・UACJの統合を経て、近年は買収や上場による事業の組み替えが進む
- 企業を見るときは、利益率の推移、海外比率、事業の集中度もあわせて確認したい
業界の基本は鉄鋼・非鉄金属業界とは、数字で見た市場は鉄鋼・非鉄金属業界の市場規模と動向、企業どうしの関係は鉄鋼・非鉄金属業界の構造で解説しています。関連する職種として研究開発や生産技術もあわせてご覧ください。
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出典
- 売上高:ユーレット「日本製鉄」(ほかJFEホールディングス、神戸製鋼所、三菱マテリアル、住友金属鉱山、古河電気工業、フジクラ、UACJの各ページ)
- 住友電気工業の業績:住友電気工業「財務ハイライト」
- 世界の鉄鋼メーカー順位:Wikipedia「List of steel producers」(worldsteelの2024年集計に基づく)
- USスチール買収:Wikipedia「U.S. Steel」
- 各社の沿革・事業:Wikipedia「日本製鉄」(ほかJFEホールディングス、神戸製鋼所、住友金属鉱山、UACJ、フジクラ、JX金属、プロテリアルの各項目)
- 日本勢の強み:業界動向サーチ「鉄鋼業界の動向やランキング、今後を分析」

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