プレート式熱交換器のU値は、温度・流量などをメーカーの設計シミュレーターに入力して概算できます。日阪製作所のWEB SIMULATORを使えば、機種の選定と合わせて伝熱性能を調べられます。
U値は総括伝熱係数とも呼ばれ、伝熱面積と温度差が同じときに、どれだけ熱を渡せるかを表す値です。流体の種類だけで決まる定数ではなく、流量やプレートの構成でも変わります。
ここでは、公式シミュレーターを使う準備から、結果の見方、熱収支の確認、U値を面積計算へ使う手順まで整理します。水同士の仮定例を使い、単位の換算と計算の流れも示します。
動画は公開当時のシミュレーター画面による説明です。入力欄の位置は現行画面と異なり、流量には体積のm³ではなく、時間当たりのm³/hなどの単位を付けて読み替えます。
プレート式熱交換器のU値の求め方
図1:プレートの両側を流れる高温水と低温水
隣り合う二つの流路を拡大した断面です。水は混ざらず、金属板を越えて熱が移ります。
流路の模式断面。実機では多数の板を重ね、二つの流体の流路を交互に設けます。ポート、ガスケット、流路数は機種で異なります。
プレート式は、伝熱板を何枚も重ねて高温側と低温側の流路を交互に作る熱交換器です。両側の流体を直接混ぜずに熱を移す構造で、板の形や流れ方が伝熱性能を左右します。
ガスケット式では、伝熱板にシール材を取り付け、フレームをボルトで締めて流路を保ちます。熱交換器全体の方式を先に整理したい場合は、熱交換器の種類と伝熱能力が参考になります。

公式シミュレーターを開く
日阪製作所のHISAKA WEB SIMULATORでは、選定条件を入力してプレート式熱交換器の設計を試せます。まず公式の入口ページからシミュレーション画面へ進みます。
入口では対応する流体や利用方法を確認し、入力画面では計算の対象と材質を選びます。水と水の標準条件のまま油やブラインを計算すると、粘度や比熱の違いを取り込めません。
ここで得られるのは、指定した条件とメーカーの機種に対応する設計結果です。別メーカーの伝熱板や、異なる流路構成の機器へU値だけを移すと、元の計算条件との対応が失われます。
六つの温度・流量条件をそろえる
図2:入力前に用意する六つの条件
四つの口の温度と、それぞれの流路を通る体積流量を一組で確認します。
流れと入出力の対応を示す概念図で、実機のポート配置図ではありません。流量の単位は使用する画面に合わせます。
六つの条件は、高温側の入口温度・出口温度・流量と、低温側の入口温度・出口温度・流量です。機器の入口と出口を基準に書き、設備の往き・還りという呼び名だけで判断しないようにします。
流量は、ポンプの最大能力ではなく、その運転条件で熱交換器を通る量を使います。バイパスがあれば総循環量と通過流量が異なるため、配管図で分岐位置も合わせて見ます。
計算前に、温度と流量が同じ運転状態を表しているかを確かめます。起動時の高い温度と、通常運転時の少ない流量を混ぜると、実在しない条件を入力することになります。
既設更新では、銘板や仕様書の設計値に加えて、安定運転時の測定値も用意すると比較しやすくなります。発注条件のまとめ方は、購買仕様書の記載項目に沿って整理できます。
高温側と低温側の交換熱量を合わせる
定常状態で外部への放熱を無視すると、高温側が失う熱と低温側が受け取る熱は等しくなります。入力する六つの値は独立ではなく、この熱収支を満たす組合せにします。
水の温度変化による交換熱量は、密度・比熱・流量・入口出口の温度差から計算できます。m³/hを使う場合は秒へ換算する必要があり、流量を3600で割ってkWの単位にそろえます。
例えば説明用に、水の密度を1000kg/m³、比熱を4.186kJ/(kg·K)とします。高温水6m³/hを70℃から50℃に冷やし、低温水6m³/hを20℃から40℃へ温める条件を考えます。
仮に低温側流量だけを3m³/hにすると、同じ20℃の温度上昇では受け取れる熱が半分になります。139.53kWを受け取るには温度上昇を40℃とし、出口を60℃にする計算になります。
設計計算では、自由に変えられる流量か出口温度を選んで熱収支をそろえます。実測値が合わない場合は数値を都合よく動かさず、測定時刻・計器・物性・放熱の順に原因を調べます。
kWは単位時間当たりの熱の移動を表し、一定時間に移った熱量のkJとは区別します。違いと時間を掛ける換算は、ワットとジュールの違いと変換方法で確認できます。
計算結果からU値を読み取る
必要な流体条件と材質、許容する圧力損失を入力したら、計算を実行して仕様書や結果を開きます。総括伝熱係数の欄では、数値だけでなく単位と、対応する伝熱面積も一緒に控えます。
U値の単位はW/(m²·K)やW/(m²·℃)で、温度差の1Kと1℃は同じ大きさです。kW/(m²·K)で書かれていれば1000倍してWに直すなど、比較する資料の単位をそろえます。
画面の結果とメーカーが個別に行った正式設計が異なる場合は、公式の利用説明どおり正式設計を優先します。概算結果をそのまま購入仕様にせず、使用条件を添えてメーカーへ渡します。
数値を保存するときは、機種・流体・四つの温度・両側流量を同じ資料へまとめます。U値だけを記録したメモでは再計算の条件が復元できず、後から別条件の値と混同しやすくなります。
プレートの材質と厚さは、壁を通る熱の抵抗に関係しますが、流体から壁へ熱を渡す抵抗もあります。この違いは、熱伝導率・熱伝達率・総括伝熱係数の関係から整理できます。
U値と伝熱面積の関係を計算する
図3:向流の温度差は同じ側の端点で求める
高温水は70→50℃、低温水は20→40℃です。二つの水は逆向きに流れ、両端の温度差はともに30Kです。
温度と位置の関係を示す模式図です。図1の上端が、この図の左端に対応します。低温水の入口は右側なので、左端では高温入口と低温出口、右端では高温出口と低温入口を比べます。
U値から熱交換能力を求めるには、伝熱面積と両側の温度差が必要です。向流の単純なモデルでは、交換熱量はU・伝熱面積・対数平均温度差を掛け合わせて求めます。
対数平均温度差は、向かい合う同じ端での二つの流体の温度差から求めます。高温側の入口と低温側の入口を引く方法では、向流の左端と右端を正しく対応させられません。
先ほどの水同士の例では、70−40も50−20も30Kなので、対数平均温度差も30Kです。仮に有効伝熱面積が2.00m²なら、交換熱量139.53kWからU値を逆算できます。
図4:熱量と面積からU値を逆算する仮定例
kWをWへ換算してから、面積と温度差で割ります。
反対にUを仮に3000W/(m²·K)と決めると、必要面積は139533.33…÷3000÷30で約1.55m²になります。実際の機種選定では、この面積だけでなく圧力損失や余裕も同時に満たします。
Qと温度差だけが分かっていても、面積がなければUを一つに決めることはできません。出口温度と面積を互いに求め直す具体的な手順は、熱交換器の伝熱面積の計算方法にまとめています。
流量・圧力損失・汚れを合わせて評価する
同じ水と水でも、流路の速度やプレートの形が変われば、壁の近くでの熱の伝わり方が変わります。U値は物性の一覧表から一つ選ぶ数値ではなく、運転条件を含む設計結果として扱います。
流れを強めて伝熱を改善しても、必要な送水圧力が増えればポンプ側の検討が必要になります。機器の伝熱性能を評価する際は、流速と圧力損失の関係も合わせて見ます。
図5:壁の両側と汚れが作る熱抵抗
高温流体から低温流体へ、熱が境膜・汚れ層・金属板を通って移ります。流体が板を通り抜ける図ではありません。
同じ面積基準の模式図。境膜は壁面付近の流体で、別の固体層ではありません。汚れは両側に発生し得ますが、図では高温側だけ描いています。
長く使った機器では、流量が同じでも汚れが伝熱を妨げ、初期と同じ温度まで加熱・冷却できなくなります。伝熱面に付くスケールは、こうした性能低下の原因の一つです。
既設のU値を測定から逆算するなら、交換熱量だけでなく流量・入口温度・出口温度も同時に記録します。積算熱量計の流量と温度差の測定は、測定値を理解する基礎になります。
能力低下を調べるときは、設計時と現在の運転条件をそろえたうえで、差圧と熱量の変化を比べます。流量が落ちただけの状態を汚れと決めると、清掃しても本来の原因が残ります。
メンテナンスは型式ごとの手順と使用流体に適合する方法で行い、加圧・高温のままフレームを緩めません。停止・隔離・冷却・残圧除去を含む作業は、メーカーの取扱説明書と設備の手順に従います。
更新見積もりでは、熱交換量だけでなく使用圧力、温度、接液材、設置寸法、分解時の空間も条件に含めます。承認段階での照合は、納入仕様書と承認図の確認ポイントにつなげられます。
条件を変えて比較するときの見方
シミュレーターで候補を比較する場合は、一度に変える条件を絞ると違いを追いやすくなります。最初に同じ温度と熱量で計算し、次に許容圧力損失など一つの条件だけを変えて結果を並べます。
結果に小さな伝熱面積が出ても、機器全体の設置寸法が同じ割合で小さくなるわけではありません。接続口やフレーム、分解用のスペースを含むため、面積と外形図を別々に照合します。
伝熱板の枚数を数えて、そのまま一枚の外形面積を掛ける方法も、正式な伝熱面積の確認には適しません。流体の分配部や有効な伝熱部の扱いを含め、計算に使う面積はメーカーの仕様値を用います。
温度差を小さくして熱を回収する場合には、温度計のわずかなずれが計算結果へ強く影響します。例えば入口と出口の差が小さい運転では、計器の表示桁だけを増やしても測定の確かさは上がりません。
既設測定では、負荷が安定している時間帯のデータを使い、温度と流量の時刻を合わせます。流量が変化した直後は機器や配管に蓄えられた熱も移動するため、定常状態の式に直ちに当てはめないようにします。
U値を比較する基準も、清浄時か汚れを見込んだ設計時かでそろえます。性能余裕を含む選定結果と、余裕を含まない単純な逆算値を同じ意味の数値として並べると、差の理由を誤って判断します。
公式シミュレーターの説明には、出力結果に10%以上の性能余裕を見込んでいると示されています。その余裕の扱いを結果の仕様書で確かめ、必要面積へさらに同じ余裕を二重に加えないようにします。
U値は無次元の熱効率や回収率とは異なるため、Uが二倍でも燃料費が半分になるという読み方はできません。設備の効果を見積もる際は、回収した熱量と年間の運転時間から評価します。
計算書を共有するときは、入力条件、選定した機種、U値、面積、圧力損失を一つの版として管理します。条件を変更したら日付と変更点を残し、過去の仕様書を最新版として発注へ回すことを防ぎます。
プレート式熱交換器のU値のよくある質問
水と水ならU値は同じですか?
同じにはなりません。水温に応じた物性、流量、伝熱板の形、流路構成、汚れの状態が変わるため、流体名が同じでも指定した条件で計算し直します。
U値483W/(m²·℃)をそのまま使えますか?
483は2018年の画面を用いた説明に登場する個別の出力例で、プレート式全体の代表値ではありません。同様に蒸気と水で2000〜4000という値も共通条件の保証値とはせず、現在の流体・温度・流量で計算します。
蒸気加熱も水と同じ式で計算しますか?
凝縮する蒸気側は、温度差と比熱だけでなく、蒸気とドレンの比エンタルピー差から熱量を求めます。シミュレーターでは蒸気加熱用の条件を選び、公式説明にある固定の蒸気条件が対象設備と合うかを確かめます。
低温側の出口が高温側の出口を超えてもよいですか?
向流では、そのような温度条件が成立する場合があります。比較すべきなのは同じ端で向かい合う温度であり、両側の出口温度だけを比べず、両端の正の温度差と熱収支を確認します。
温度と流量だけで必要面積まで決まりますか?
温度と流量から熱量と温度差は求められますが、面積の算定にはU値などの伝熱性能の条件が必要です。メーカーの設計では機種や流路、許容圧力損失も合わせて選び、必要な面積へ落とし込みます。
まとめ
- 日阪製作所の公式シミュレーターでU値と機種を概算できる
- 両側の入口温度・出口温度・流量の六つをそろえる
- 高温側と低温側の交換熱量を一致させる
- U値は流体・流量・伝熱板・汚れの条件で変わる
- 伝熱面積、温度差、圧力損失と合わせて結果を評価する
簡易計算は、更新設備の規模や条件を整理してメーカーへ相談する際に役立ちます。入力条件と計算結果を一組で残し、正式な設計仕様との対応を見ながら検討を進めます。
出典
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